「次の方、どうぞ」
地中海近くの地域で嘗てのホワイトベースクルーであった女性はカウンセラーとして過ごしていた。
【セイラ・マス】
青い瞳で金髪をボリュームのある扇状にまとめた女性は将来を見越して【ある元手】をキッカケに株価で生計を立てつつ一年戦争後に元々医者を目指していた者としてコロニー落としを始めとした一年戦争の惨劇に見舞われた者達にカウンセラーとして接していた。
【実は北米を予定していたが、アムロ・レイから遠ざけられる気配を感じてこの地域を選んでいた】
この日は何かの予感があったが、白いスーツを着こなした【シロウズ】という男が入って来てやはりとした。
「元気そうだな」
「何をしに来たのですか・・・・シャア・アズナブル!?」
シャアは髪をストレートにした程度では惑わされないのは流石で覚悟はしていたが、やはり兄とすら呼んでもらえないとした。今はクワトロと名乗っているとして事情を説明したが、返されたのは戦中のトラウマ等に苦しめられている人々についてと、何より父についてだ。
「父にも責任があるか・・・・やはりな」
クワトロはサイド3に住んでいた時のシオンが見て来た事を聞いていて、それをセイラに話した。
自分達は身内。ジンバ・ラル辺りからした部下だが同志とすべき立ち位置だったので最近にセイラが思い始めたのとは次元が違う父の生々しい現実であった。
コントリズムと名付けられた思想で宇宙移民の自治権確率の為に奔走した父は狂人染みた努力をしながら崇拝されるに足る偉人とされる男になったのは事実だったが、偉人に有りがちな罠があった。周囲との折り合いが悪いのだ。それを付けなければ日々の糧に響く、その欠点をフォローする側になった人々が辟易しながらもやりつつ、例えばジンバ・ラルのように悪く言えば良いとこの恩恵を受ける側に難癖紛いの事で好き勝手言われる始末、それなりに暮らしていたシオンの一家は皺寄せを受けてハッキリ嫌いと言っていた側。
古代に軍の食糧関連を賄う部分が欠陥であった勢力は担当者が冤罪を被せられて斬られ不満を逸らす生け贄にされる有り様だったが、それを危惧されていたのに足元を固めねばならない現実に耳を貸さず理想論ばかり突き詰めていた点があり、デギン・ザビが台頭できたのはそこに一因があるとまで言われている。但し、一年戦争でザビ家がやっていた事はミイラ取りがミイラになったとまで言われていた。ユライア・ヒープのように補給能力の低さを理由に開戦の無謀さを訴えるかシャリア・ブルのように一ヶ月で終わらせると豪語するギレンに懐疑的だった者を冷遇した末の惨敗を招いたのだ。
知っているシャアからは対象が違うが父への視点の違いは【アナベル・ガトーとシーマ・ガラハウのように狂信者と皺寄せを受けた側】とするのがわかりやすい。
今のスポンサーの意見に逆らえずにジャブローを攻め、恐らく戦史上に残る失態を晒したシャアに言えた義理ではないがと自重はした。
「理想主義者だから・・・・けど、そのシオン君が見たのは違いがあったのね」
「私も多少は思っていたし、ジオン公国時代から一時サイド3に帰還した時に調べたが父が自分の過ちを認めてザビ家に後を託したとまでする空気が当時の首脳陣にあったらしい、エゥーゴのスポンサーの中にはダイクンの理念を嫌悪までしている者がいたしな、いやトップからしてそうなのかもしれん」
ここが今のシャアの問題点だ。
【アクシズでマハラジャの元で自分の小ささを知り、地球圏でブレックスの弟子のようになって学び直しているとすべき自分はダイクンの思想を受け継ぐにしてもどう立ち回るのか?】
それを理解出来たセイラは、シャアはこれからどうするのかと敢えて無難に質問した。
「父の実像と向き合わねばならんが、私の当面の理想は理解者を集めつつ戦いに勝ち、それを足掛かりに宇宙移民の代表となり改革を進めたい。例え古い血筋は断つような形ででもな。その過程で間違いを起こした時に私を殺してでも止めるのはアムロやお前ではないかもしれん」
「シオン君に新型のガンダムを早期に渡すように根回しをしたのはそれが理由?」
「当初はティターンズなアムロのようなニュータイプのパイロットがいた時の為だったが、彼は私が見込んだ以上のニュータイプだった。出来れば私の・・・・そうだ。同志となってもらいたかった。だが一方的な思いが相手を追い詰める事もある。幾つか光明があったがな」
シャアは思い留まった部分以外の本心は言った。
遠回しにバカと言われ、殴られ、そしてフィルターの掛からない側の現実をぶつけられて知っている者のような危惧を抱いたシオンに対する意図は決して鬼子と呼ばれた時のままではなかったハズとして本題を切り出した。
「アルテイシア、私の危惧は何故か私の正体がエゥーゴの外で広まっている事だ。お前が人質にでもされて生きているらしいアムロ・レイがティターンズ入りでも強要されたらどうなるかという点なのだ。私と来て欲しい」
「・・・・一つ条件を飲むなら」
「条件と・・・・っ、アルテイ、シア・・・・?」
「兄さん、私・・・・財団を立ち上げる人生設計を立ててます【アストライア】財団とでも名付ける予定ですが・・・・その為の人材を探しているのです。条件は、兄さんの青写真通りに情勢が落ち着いたら兄さんの元にいるニュータイプを全て私にお渡し下さい」
「・・・・出資者の無理難題とやらより無茶と思わないのか?」
「地に足を着けた生活が出来ない貴方の元に概念だけではないニュータイプを置いておくのは危険だからです。貴方が良くても周りが黙ってはいません・・・・心理的に崩れる事にしては意味は無い、それ無しにしてもいずれ思い込みで極端な流れに走りたがる貴方を見たくはありません。いっそ死んでくれれば良いとどれだけ思っていたか・・・・!」
「未来でも見たかのような言い方だな。だが良いさ・・・・少なくともシオンをお前に預けるのは考えに入れていた。彼は医者も視野に入れられるくらいは勉学に勤しんでいた身、何より戦後にそうなる事を考えているようだ。その方がお前の為に良い」
利害が一致しただけかもしれないが、鬼子扱いよりはマシになったのかもしれないとしてシャアは妹を連れ出す事に成功した出発前、ガンダムタイプのMSを持ち出したアムロが軍に反旗を翻したとするニュースが流れ込んでは来たが、それは偽りだとわかってしまった。それはシャアでなくとも一目でわかったのは話題に出たシオンを始めとした一部であった。
「え、コレがアムロ・レイのじゃないって何でわかんのアネさん?」
マチュの疑念は尤もだが、アネッサからしたら百式の試運転でシャアの撃墜した仮想敵がアムロ・レイだとすると、この映像にある陸戦型のようでフルアーマーなガンダムタイプは長期戦をやっているせいでフルに戦ってはいないとしてもな根拠で他が驚愕すべき事を言った。
「アムロ・レイの操るガンダムタイプの戦闘力はこれの【6倍】はあるよ、今は多少鈍っていたとしても誤差に入らない」
流石に誇張し過ぎだと言いたいがアネッサの目が真剣なので異を唱えられない、だが当のガンダムを駆るパイロットにはシャアやアネッサのような見方はしてもらえないならではな事態は迫っていた。
ー――――。
「私、エースになりたかったワケじゃないんだけどね・・・・」
フルアーマーで陸戦型となったアレックスで昼夜問わず中継地点を挟みつつキャリフォルニア付近を単機で暴れ回って長いクリスは疲労が溜まっていたが、目の光りは衰えてなかった。左の二の腕を出して針無しの注射を念の為に行う自分の撃墜数は相手を出来れば殺さないながらも30を越えていた。例え旧式ばかりだとしてもと考えたが、そろそろ噂の可変機のような相手が来てもおかしくないとしながらアリゾナ州辺りに来ていた。グレートキャニオンもホワイトベースの逸話がある地であるだけでなく深い岩崖や川の上にも身を隠す場多数である。ここから次を考えた時に遭遇戦がまたも起きた。
(回避された・・・・っ)
それなりに慣れて来た腕部ビームキャノンの射撃が交戦から5分後に現れたハイザックに回避されてしまった。動きと機体からしてティターンズの手練れかと思ったが、連邦軍の青いカラーなので違うかとした。キャノンとマシンガンを障害物交じり場で撃ち合うが、何故か後退したが追撃は避けた。
(もしかして、後方に隊長とかエースが来てて自分がやるから下がれってパターン・・・・だとしたら、凄く強いのが来る・・・・)
周囲を警戒しながら身構えるクリス、身構えている時に死に神は来ないとアムロから聞かされた事はある。
【身構えてても来る死に神が言うなと言いたい実力者からな言葉だから拡大されて受け止められてはいるが】
息を潜めるようにアレックスの倍の岩山を背に構えて地形を確認したが、後方を図にするとかなりの距離が背にしている場から空いてると見れた。
(・・・・っ、いけない!)
アレックスを全力で斜め前方に突撃させた。背にした岩山を背後から高出力のビームが貫通して青ざめた。ジグザク移動で何とか敵機を確認したが
(ガ、ガンダム・・・・?)
青いガンダムMK―IIとすべき機体だが、両腕に資料で見たギャプランの系統かと思われるムーバブルシールドを装備していた。アレックス同様に高速ホバー移動も可能になっているようでお互いに障害物となる地形を避けながらビームキャノンを撃ち合うが、明らかにクリスより上手だった。アレックスのように俊敏な機体を知っているようで動きが捕らえられる寸前だった。ミサイルの半分を斉射して障害物となる岩山を破壊した隙を突こうとしたが構わずに突撃して来たので夢中で回避したが、スレ違い様に左肩を抉られてしまう。
【ビームバヨネット】
ライフルの先端からビームサーベルとして形成出来るタイプの武器なので汎用性が高い、アレックスの腕武ガトリングで虚を突くのは止めた。動きを止めるとやられてしまう。
『どうやら、アムロ・レイではないようだな』
通信が繋がり、相手は自分に近い年齢な男性だとはわかるが、思わずクリスはギクッとなってしまう。本当なのは事実だが、相手の声色は重さが違うのだ。
『此方は、キャリフォルニア方面所属のユウ・カジマだ。アレックスのパイロット、直ちに降伏をしろ』
【ユウ・カジマ】
クリスも聞いた事があった。一年戦争途中のアムロを参考にしたシミュレーションを唯一クリアした男、だとしたら自分がアムロではないとする事に確信を持てるのだろう、連邦兵では誰よりもアムロの強さを知る者の一人かもしれない。戦後にどうなったかわからなかったが確かに知っている側からしたらアムロにぶつけるべき人材の一人ではある。
(勝てない・・・・なら!)
短時間だが、力関係を理解したクリスは再び岩山に隠れた。ユウからしたら先程のように貫通させるべきビームを撃つべきだとしたが上空に何やらショルダーキャノンを撃ったようだ。何かの信号弾かとしたが、一瞬虚を突けただけで充分であった。突撃して来るアレックスに反応したが、スレ違っただけであった。何のつもりとしたが、背後を狙おうとした瞬間に違和感があった。
(装甲がパージされ・・・・っ!)
ユウは長年の勘から危険を察した。パージされた装甲は規則正しく地面に落ちて全武装をオートで発射していたのだ。仮にアレックスの背中を狙ったら撃破されていた程のミサイルとキャノンが襲って来たが、どうにか回避してアレックスを見送った。元々推力がオーバースペックなのでああされては追い付けない。
『ユウさん、無事ですか!』
『サマナ、見ての通りだ。これで言い訳が着くか?』
元々、ユウをティターンズ側に引き込もうとする側からの流れで【アルフ】から皮肉を込めたデザインのガンダムタイプを送られたのだ。正直、これでアレックスが逃げた先の報告をすれば体裁が着く、ユウの同僚であるサマナもあんな動きをする相手がただ遮二無二逃げたと考える程に愚かではない。
――――――。
(ありがとう、バーニィ・・・・)
相手がアムロなら通用しないだろうが、一瞬が勝負を分ける事もある点に賭けるバーニィのダミー作戦に引っ掛かった事から敗北を喫した際の古傷が痛むが、これがクリスの命運を分けたのは間違い無い、敗死か良くて捕虜にならなかった事の違いは次元が違うのだ。クリスはアレックスの追加装甲を失ったのは予定の許容範囲としてフットペダルを踏んだ。
ユウの機体はビルドファイターズのを弄った機体。レイヤーみたいな立ち位置からでした。