機動戦士Zガンダム 静寂なる宇宙へ   作:くまたいよう

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 今回のゲストは?


虹の先の世界

【ガンダム】

 

 言わずと知れたエース機の代名詞である。旧式や量産型でも存在感は大きい。少なくとも自分達が生きる時代はそうだとする認識は連邦だろうとジオンだろうとある。

 

「だからこそで、してやられましたね」

 

「そうだな」

 

 退役した同僚フィリップから【ちゃん】付けで呼ばれていた程に頼りなさが抜けない外見があまり変わらないサマナは寡黙が似合う飾り気が良い意味で無いゲームの主人公っぽい外見なユウに少し斜に構えて話す。エゥーゴに同行してると知らないフィリップ同様に最低限しか語らないユウの心情は昔から察せる側だ。自分達を投棄したと見せ掛けたアーマーの武装を使った奇策で突破した形になった敵を追撃して三日後にしてやられたと理解せざるを得ない光景があったのだ。

 

【アレックスのパイロットは機体を放棄した】

 

 幾ら7年前の機体を持ち出してチューンアップしただけとしても、シミュレーションでユウがどうにかクリアしたデータの元となったアムロ用に製造された機体なのだ。どうにか発見した機体はやりきった感を出すように放棄されていたが、理由はわかる。やはり改修をしてぶっつけ本番だったせいか無理が掛かっていて回路が所々焼き切れている。ムーバブル・フレームすら使ってない機体の限界かもしれない。

 

(けど、これが回収されてニタ研にでも回されたとしたら今度はどうなるのか・・・・)

 

 サマナも茶番紛いな流れだとした。連邦内にティターンズにされるがままな者ばかりでないのは嬉しいが巻き込まれては溜まったものではない。

 

【大体、この辺りには眉唾物な噂があるのだから】

 

 

 

 

 そして、クリスはまんまとユウ達から逃れて指定された場へと赴いていた。これから会うのはティターンズ寄りなら寧ろ安全だがエゥーゴ寄りな自分では危険だった相手である。今がチャンスと下調べはしてある。

 

 三つ編みにしたりの変装で普通の記者やOLのようになって、目当ての人物がアムロのとは違ってお情けで与えられている建物に入った。田舎風な隠居用の牧場庭園、しかしコロニーが落ちた場の近くでは住みたがる者はそういないだろう。

 

「急な来訪を失礼致します」

 

「構わないさ。寧ろ私に生真面目な君の方が職務上で失礼だな、少々ふてぶてしい方が良い」

 

【ジョン・コーウェン】

 

 初老とはいかないハズが少々老け込んだ印象だ。確かに四年前のデラーズ紛争のキッカケが自分の傘下で開発されていた核搭載型ガンダムの強奪となる最悪な過ちを犯した男には生真面目さは逆効果かもしれない。そもそも開始されていた派閥争いに生真面目さ故に邪魔者として参加してしまったも同然なせいで全て逆効果になったと自分で見ていた。

 

 今の戦争も開発されていたガンダム強奪で始まった上に、規模は小さいがルナ2で核に匹敵する被害を出したとは皮肉だった。

 

「クリスさんと呼ぶか、君はエゥーゴに所属しているようだが、実は【ツテ】で情報は得ていた。ティターンズとエゥーゴについてな」

 

 

 

 

 その頃、月の簡素な会議室にて。

 

 

 

「勝手にすれば良いだろう!」

 

「それが正しい考えと?」

 

「勿論だ。戦闘は彼等が専門だからな」

 

「はい、私達はクワトロ大尉というアドバンテージを活かす手腕くらいしか勝てる道筋は無いですから彼に任せます」

 

 ヒステリックに叫ぶ前任者ウォン・リーにはクワトロに任せる割合を増やすと認めさせる迄にマーサは手を焼いたが反論できずに左遷先であるコロニー【タイガーバウム】へ向かう姿には奇しくも地球でクリスが接触したコーウェンに近いとしている。積極的派とすべき男だが、それが裏目に出た末路としては溜飲を下げた。

 

 今思ってもウォン達の算段は間違いだらけであった。ジャブローを陥落させ連邦首脳部にティターンズ解散を要求させたとして、あのバスクやジャミトフには寧ろ好機だ。ジオンで例えたらエギーユ・デラーズのように自分の屍を踏み越えて行けと首脳部が命じたとして将来邪魔になる政治家達を叩き潰す手段に出かねないとしている。

 

 それに、ジャブローを占拠した場合は見方によってはエゥーゴの部隊は。

 

【ジャブローに閉じ込められた図になる】

 

「地球で歩いてみたいと思った身として言わせて頂きますが、ワクチンも打たないで不用意に南米アマゾン地帯にいきなり宇宙移民が長期間滞在したらどうなるか、現地の伝染病にやられるのが有りがちですな」

 

「所詮はルナリアンと言われるでしょうね」

 

 マーサの元に入り込んだシロッコは苦笑していた。月に住む者がルナリアンと揶揄される以前に地球の事を見てないだけでなく忘れている事が多い、これではザビ家と変わらない。

 

【そもそも30バンチ事件も激発性な伝染病で全滅したと伝えられている】

 

 コロニー内で対象不能な伝染病等が流行ったらとしたら有り得ない図ではない。所詮は出資者では政治家にも軍略家にもなり得ない。

 

 ブレックスはバスクをこう評した。

 

【自分のやっている事に酔う人間、彼は軍人ではない、政治家だ。一年戦争も知らない人間に宇宙移民の心がわかるものか】

 

「ミスター・ウォンにも多少形を変えて当て嵌める事ですな、周りを鼓舞して積極的な事をやりたがり軍人らしさを求めてる」

 

「はい、結成初期にアーガマにいるような若年兵に修正として手を出したりしたりまでしたようですが、それは現場指揮官殿の役目です。場合によってはヘンケン艦長のように見た目に反してフランクな者が嫌な役を任せて自分は常識人ぶっていると見られますよ、それはいけない事です」

 

「エゥーゴの出資者として成功した暁に政治家にでもなるつもりとクワトロ大尉が推測したようですが、自分の役割と役職を演じる方が先決でしょう。MSパイロットとして出たがる私にも注意が必要ですが、彼が口と顔を出す必要があるのですかな?」

 

「まあ、男なんてそんなものと言われるレベルです。結局は五十歩百歩ですよ、ガンダムに乗ったり乗りたがる方がまだマシにね」

 

 ほくそ笑むマーサはシロッコの危険な目に気付いたか否かは定かでは無いが、どちらにせよ今更だとした。自分達はクワトロ大尉=シャアを引き込んだのだからと。

 

 

 

 

 

 一方で。

 

 

 

「戦争って、お金ばっか掛かって虚しいもんってやつね。賞金もらって買いたいもの買っておさらばってもんじゃないのに」

 

 マチュはハロをつついたりして聞かされたエゥーゴの実態にジト目でうんざりしていた。出資者が強いのは先立つものが用意できるからにしても動かした先の事を考えていないのは問題だった。自分だって最近は母に言われてたからにしてもシュウジやニャアンと一緒に地球に行った際に免疫が無い伝染病にでも掛かったらと思うと身が震えたから思えるのだが。奇しくもインド洋でのシャアが辛い現実を見たのでアウドムラに乗っていた者達は痛感している。

 

「ねえ、これからどうする気よ。輸送機じゃ駄目だからビッグトレーって陸上戦艦を砂漠用にしたようなのを使ってるけど?」

 

「まあ、それは組織の事情で・・・・って、何やってんの!」

 

「ま、マチュ。逆立ちなんかしたら駄目よ!」

 

「何よ、フォウさんもアネさんの目を何で塞いだりしてんの。アネさんは・・・・嗚呼、ごめん美人だし本命持ちだから気にしないでた」

 

「ま、待ってよ。私は・・・・私は、その・・・・」

 

 マチュが言うように陸上戦艦を五名で運用等は贅沢だが、休憩室のベンチでこれはと大慌てである。突飛さについてスミレとペッシェが言い聞かせているが何か引っ掛かると怪訝に思った夜。

 

「アネさん、わかってんのに何やってんの!有無を言わず来なさい!」

 

「な、何だよマチュ・・・・痛っ。な、殴ること無いだろ」

 

 仮眠中なフォウが頭を抱えてベッドで苦しんでいた。

 

【強化の副作用】

 

 マチュには言ってないが、事情はわかっているので乗り切るしかないとしていたのだが、それでも頭に来る部分があるのだ。

 

「こうしろ!」

 

 後ろからあすなろ抱きにさせる、これはペッシェにも予想外である。

 

「マ、マチュ・・・・私は初めてじゃないんだからね?」

 

 これがフォウの現実、強化の副作用。薬漬けがネックとキリマンジャロで言ってた通り時々来る症状を気合いだけで乗り切るのはアネッサとの口約束だが、信じたりしてるだけで良いワケじゃないとマチュから更なる修正代わりに頬をつねられた。

 

 それをペッシェは痛ましく見ていた。ロザミィが今頃どうなっているのかとしてマチュが思い当たった事を質問した。

 

「あ、そだ。所属した研究所が違うし、薬や催眠とかされたりじゃないようだけどペッシェさん何か強化人間が落ち着く方法知らない?」

 

「え、それは。知ってる子は私がお姉ちゃん代わりになったりして・・・・」

 

「お姉ちゃんねえ。じゃあ私が皆のお姉ちゃんになってみるかな、見た目がとか言うんじゃないわよ。こう言った時にあたふたしてたり任せっきりじゃ私が適任よ。代案ないなら今からそれよ!」

 

 フォウが気分だけは楽になったと微笑む。スミレからしたらマチュが一番男前である。アネッサは学生時代は悪く言えばガリ勉なボッチ系だったので王子様系女子として妙な意味で浮いていたが外見と性別でカリスマはあったマチュの方が仕切り役には向いていた。

 

 

 

 しかし、そんな彼女達には事態が放って置いてくれない。

 

 

 

「ドローンからのアラーム?」

 

「マチュ、フォウに着いててくれ」

 

「わかった。さあ!」

 

「いや、選手交代じゃ・・・・いえ、失礼します」

 

 堂々とベッドに座り両手を広げるマチュに甘えるしかないフォウは自分より小さいけど大きい少女の膝に乗せられて後ろから抱かれた。

 

 白いMK―IIは諸事情で搭載されてないのでペッシェに自分の乗って来たゼータを動かしてもらう。本当にこれで良いのかと考えた時。

 

「~~っえ?」

 

 マチュは虹を見た。だが、虹の先に意識を飛ばせて見た光景が問題だったのだ。

 

【そこは、古い血が絶たれた世界だった】

 

 過去の清算として、本来指導者であるべき存在は亡霊であり忌まわしき記憶の象徴であり自らの暗黒面を具現化したかのような女と共に消えた。

 

 そして、自分の心を蝕む行為を繰り返してでも戦いから逃げなかった少年は無限に増大する能力と苦痛を敢えて受け入れた。

 

 少年と同じ視点で戦いを見れていたマチュは見事すぎる戦闘能力に慄然としていた。これは絶対に対等な戦いではない。否、対等を求める事が既に間違いだった。

 

 ひたすら自分の役割をこなして限界を越えた少年の心は既に肉体から飛び出していたが、それすらも力に変えてしまった愛機は主であり相棒を守り続けて唯一の救いを見せたが、少年は行ってはならないところへ消えた。

 

 少年を想い続けた少女は戦いが終わって自分達の象徴でもある機体を見つけたが、機体がロクに動かなくなったとして何より致命的な間違いをした。

 

【言葉を発せずとも感じられるニュータイプになりつつある事が仇になった】

 

 それが一因で一緒に皆のところへ帰ろうとした寸前に致命的な見落としをしたのだ。せめて、ずっと見続けるべきだったが少女にとっても厳しくも優しい姉であった女性の乗る機体を探したかった事に気を取られたせいでもある。

 

 

 

 そして、永久に後悔する日々が始まる。

 

 

 

「悔しいね」

 

 マチュの意識を呼び寄せたのはフォウの声だった。そして、マチュはキリマンジャロの事を理解した。自分達を助けてくれたゼータガンダムの正体をわかっていたのだ。

 

「だから私は・・・・なりたいんだよ、超能力染みた力とかMS動かすとかだけじゃなく無駄に命を奪わないで生きていけるニュータイプにさ、このままだとシオン、じゃなくてアネッサもああなっちゃうってマチュもわかったんでしょ。力貸してくれないかな?」

 

 苦痛を和らげてあげるハズが、縋る側に変わっていた。戦闘が始まる迄にマチュの嗚咽が止まらなかった。




 改めて言うがジークアクスはこの作には間が良すぎるし悪すぎた。

 スミレ達が乗り込んだのは違うシリーズのビッグバトルみたいな戦艦なのか否か。
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