【シャア・アズナブル】
言わずと知れた【ジオンの赤い彗星】として連邦から恐怖の象徴だった男、最近はエゥーゴを率いていると何故か不自然に広まっていた男の登場に議員や放送を見ている連邦国民は固唾を飲んだし騒ぎ出す者もいたが、運営本部からの一言で静められる。
「静粛に!陳情であるとも言った!ルナ2にジャブローやキリマンジャロへの攻撃に不鮮明な点が多いのが今回の話題であります。エゥーゴ側の主張を聞きたいと思っている人々は地球上にも宇宙にも多いはずです!いかなる理由があっても一方の主張ばかりでは公平性を欠く。絶対民主政治を標榜する地球連邦政府議会として彼の言葉を止める権利は無いハズ!エゥーゴ代表の代理として参上した彼の主張を受け入れるかは皆さんにお任せします。続けたまえ!」
【代理】
そうなのだ。ブレックスの事情はさておき、今の内にやるべき事があるからこそエゥーゴ側は勝負を掛けたのだ。
「感謝します。私は何としてもお伝えしたい事があり、現在所属しているエゥーゴとカラバのスタッフの力を借りてこの場にいます。エゥーゴやカラバは最近の情報で広まるようなテロリスト等ではない事は勿論、真なるジオンの意思を継ぐ者として語りたい。勿論、ジオン公国のシャアとしてではなく。父、ジオン・ズム・ダイクンの子、キャスバル・レム・ダイクンとしてである!」
その言葉に多種多様な驚きがあった。外で戦うシャノン達を紹介したアンブロジアコロニーにいるダイクン派のように歓喜の涙を流す者から【恐れていた事が現実になったとする者】まで様々だ。
最初にスクリーンにルナ2での戦闘が映された。白いガンダムMK―IIがバルゴラというMSの武装を貫いた後の未知の爆発が何故かルナ2に現れた【小アナベル・ガトー】の凶行とされた事、捕虜にした者の証言と入手したデータによりジャブローの爆発がティターンズの自作自演である事。ティターンズ派の議員が異を唱えたが基地内部で起動した事が問題なのだ。持ち込んだ核ではなく地下に埋め込まれた最終手段としてなのか起動させた際のIDや指紋認証コードから自作自演だとする流れを説明された。
ルナ2をグリプスにぶつけた主犯やキリマンジャロを先送りにしつつジャミトフ達が宇宙で右往左往し、エゥーゴの代表であるブレックスが直接来ないハズの段階を狙われた親ティターンズ派は反論が出来ないのを見透したシャアは更なるカードを切る。
「そして、これをご覧下さい。これを早目に公表すべきとしたのが私が赴いた理由!ティターンズにより伝染病により全滅したと広められている30バンチコロニー内の映像。住民の遺体とコロニー内での状況を見ればわかりますが、明らかに伝染病ではない!ザビ家率いるジオン公国軍も前大戦で使用した【G―3ガス】によるものです。この一件こそがエゥーゴと呼ばれる組織が結成された理由であります!」
出席している者達が黙らせられた。これを入手していたのがエゥーゴ側の手札であったとして、この場の敗北を悟ったのだ。壇上に立つシャアの言葉を待つ気配が広がる。
―――――。
「これで第一段階だけど・・・・えぇっ!?」
外で陽動から防衛に当たるシャノン達からしたら口にするような段階だが、ダカールの防衛隊は戦闘を止めるどころか議事堂にまで攻撃しようとして向かうコースを辿った。中にはナパームすら持っていると確認されたので近く付かせる事だけは厳禁として迎撃せざるを得ない、アレを近くで投擲でもされたら地獄絵図だ。特に元ティターンズなエマにはショックだ。
(或いは、それが狙い?)
シャノン達は、考えてみれば裏事情が自分達が把握している程度では済まされないのかもしれないとした。例えばナパームを持つハイザックは明らかに最初からそうするつもりな段階だったと、真意はさておいて今は戦うしかない。演説は後でゆっくり聞けば良いとする余裕すら無くなっていた。
それをまだ知らない議事堂ではシャアの演説が次の段階に入っていた。
「私がこの場を借りて、父の意志を継ぐものとして語るのは、地球連邦軍を私物化を進めるティターンズの動きが公開した情報を根拠に極めて横暴になってきたからに他ならない。これはかつてのザビ家と同様のやり方である。いや、地球上で始まったこの動きは、ザビ家よりも悪質である!」
体制における一組織に対する言い分として極端としたが、既に所業が所業であるとして更に聞く価値はあると大半から認識された。それにジオンの意思についてもだ。そもそもザビ家が台頭したせいで有耶無耶になり掛けているがダイクンの理念は一理あると思っていた者も存在していたのだ。
「父の真の意思はザビ家のような欲望に根ざす宇宙への進出ではない、真に人間の進歩を目指した宇宙への歩みである。人は状況に応じて進化していく、だから人は歩み続けなければならないとする理念に基づいた意思だ」
学生のような事を言うと吐き捨てながら退廷する議員もいるが、それが後になって大きな代価を払う事とは知らない。聞いている人間からも見せたらパニックとなる存在が迫っていたからでもあるからだ。
「人が宇宙に出たのは何故かと思い出してもらいたい。地球が人の重みで沈むのを避けるためだったのだ。しかし、宇宙に生活圏を拡大したことによって人類そのものが力を身につけたと誤解してザビ家のような勢力を認めてしまいたいと思ったのだ。不幸と認識する必要がある。もう、この歴史を繰り返してはならない」
シャアを招き入れた議員は、自分達以外の何名かが打算を含めてもシャアの演説に飲み込まれているとしていた。要はオーラが違う、外見がジャミトフのような老人とは違うのもあるが一年戦争以来の迷走とは違う内容でもあるので逆に新鮮なのかもしれないと。
「人類が宇宙に出ることによって、手に入れられるのは、純粋にその能力を広げることができることなのである。新しい環境で、人の能力は刺激を受けて、今まで眠っていた能力が拡大する。例えば人同士が、より理解できるようになるということだ。俗にいわれるテレパシーとも異なる分かり方ができるのだ。なぜか?簡単なことだ。人が住む環境が地球以上に巨大になったために、人が種として共存する同一意識を持つためには、人の共同認識の能力が拡大しなければ、一つの種として共生することが出来ないからにすぎない。これまで、地球に住む我々の大脳皮質の能力は、五十パーセントも使っていなかったといわれる。残りの能力は、宇宙に進出したときのために、神が我々人間に与えて下さったものなのだ」
【神】
外で戦うロベルトは上手い事を言ってくれたと思った。ニュータイプの有用性を人工的に造ってまで証明したい側とは相容れない。宇宙進出による自然な進化こそが正道としてくれるならヤヨイのような例は減ってくれる。
【セイラに、今の状況で言っておくべきと吹き込まれた結果であるにしても】
『地球を故郷と思うあまり、地球を離れずに暮らすことが最良と思う人々は、地球に魂を引かれた者である。人の能力の拡大の可能性を否定して、人の間に戦闘状況を生み出すことによって、人類を生き続けさせようとするのがジャミトフの狙いである。しかし、それでは過去から言われていたように、戦争が文明を発展させたという古い規範から人は一歩も出ることは出来ない。違う!人は、違うのだ。宇宙に出て、心を開き、まだ目覚めていない人の能力を高めれば、人は、戦争なくして、永遠に発展し、増殖し続けることができる。宇宙は、無限である。この無限という意味を考えていただきたい。どのような叡智をも呑み込むだけの果てしなさを持ったもの、という意味である。その果てしなさに対して、永遠に叡智を放出できるのもまた人類でしかない。その叡智と気力、そして、精神を、なぜ人は、他人にぶつけることだけで満足して死んでゆけるのか?それが、人に与えられた使命ではない。神は、宇宙駆ける者として人を創造されたのである』
エマはペッシェがこれを聞いてくれて何かを吹っ切って欲しいと思った。軍事技術の発展前提ではクワトロの演説は相容れない。
『ティターンズは、地球の重力に魂を引かれた人々で、地球の論理だけで革命を進めようとしているのだ。しかし、それは改革ではない。地球に住む人と宇宙に住む人という階級だけを作り、その緊張感の中で、特定の人々だけが、利益を得る社会構造を作るだけである。それでは中世である。人に成長するなと言うに等しい。人は、長い間、この地球という揺り籠の中で戯れてきた。しかし、時は、すでに人類を地球から巣立たせるべき時が来ているのだ。この期に及んで、なぜ、人類同士が戦い、地球を汚染しなければならないのだ?地球を自然の揺り籠の中に戻し、人類は、宇宙で自立しなければ、地球は干涸らびて水の星ではなくなる日は近いのである!しかし、今ならば、まだ地球はまだ美しく、残す価値がある。ならば、自分の欲望を満たすためだけに、地球に寄生虫のようにへばりついて、地球を汚すことは、何人にも許されない。故にティターンズと武力による衝突も辞さないとして立ち上がった。これが父ジオンの理念を組み込んだブレックス・フォーラ准将の率いるエゥーゴの理念であると代理を勤める私は申し上げます!』
エゥーゴの理念についてのまとめは必須だった。
【元々ザビ家とは別物なダイクンの理念に賛同していた男が立ち上げた組織にダイクンの遺児を迎え入れたと認識してもらう為だ】
そして、僅か数分前から始まっていた戦いも佳境に入っていた。
【サイコガンダム】
アネッサが破壊してくれたハズが早速に同型機を投入したのかとしたが、フォウからしたら中身に何があるか理解出来ていた。コピーの一つなのかアレがオリジナルかは関係無い。元々、アレを動かすべく訓練を受けていたハズがエゥーゴを率いているシャアの噂を聞いて脱走に踏み切った。そのまま薬切れ関連で死ぬならそれも運命としていたと頭に過る頃はサイコガンダムは自分達の機体全高の三倍弱になるサイズの巨体からビームを乱射し始めた。
「ちょ、ちょっと正気なの。流れ弾だけで議事堂に当たったら立場無いじゃん」
幾ら武力で制圧しても自国の兵士が権力の象徴である場に損害を与える意味は大きすぎる。後になって勝てば官軍と言おうにもソコまでどれだけ苦難の道か程度は歴史を多少学べばわかるハズとマチュは慌てながら回避をした。
『あ、あいつは本気だよ』
サイコガンダムの指、頭部は勿論。以前無かった箇所に配置されていて全身からビームを撒き散らすが回避するし反撃のビームも撃つ。Iフィールドに弾かれてしまうが、以前アネッサがやったように目眩ましで、隙を見て実体弾が直接攻撃を急所に見舞うしかないとする四名の中でフォウの動きが鈍い。マチュがシールドで庇いながら何をやってるのかと怒鳴ってしまうが声が聞こえた。
【ここから助けて】
「たっ、助けてって言ってるね。パイロットじゃなくて・・・・あのデカブツの心?」
「だっ、駄目だよ!私にはやれない、やれないよ・・・・【ジル】!」
何故か出た名前にマチュが困惑するが、戦況が動いてはいた。ホバー移動で左右に動くフルアーマーゼータは両肩のミサイルポッドを開いて発射。規模からして当たってもどうという事は無いと判断して正面から向かうジェリドであったが目眩ましである。次いで間に合った【対MA用の試作品であるミサイル】を二発見舞われてしまう。通常の比ではない威力と粘り強い爆発で巨体はボロボロになり腹部ビーム砲が使用不可となった。
「ぐっ、まだだああっ!まだ・・・・ぐああっ!」
「な、何よこの状況?」
残ったビーム砲を乱射しながら突撃する手段に出て距離が詰められてしまう。街が間も無く射程に入るからアネッサとペッシェは接近戦で仕留めようとするが、レンジ外からの砲撃が来た。二人は回避するがサイコガンダムに命中するのも構わずな攻撃には唖然としたし、サイコガンダムも許容範囲として前進するが。一斉攻撃が来なくなったとしている。
「何かあったようだな」
―ー―ー―ー―。
「やめろ!やめるんだ!」
先程にマチュが助けたアッシマーのパイロットである【アジス・アジバ】は隊長達に呼ばれて味方や市街地に当たるのも構わずな砲撃を開始した部隊を止めに入っていた。幸い相手が良かったので沈静化は楽だった。
【RX-75ガンタンク】
一年戦争初期に開発された戦車と人型の中間の機体を複数、主砲の射程距離が改良されて約三百キロメートルを越えているのである。交戦中にセンサーの視覚外からの砲撃を見舞う際の使い方を検討されていて博物館行きを見送られていた。
戦術としては正しいが、シャアの演説がタイミングが悪すぎたのが一因で攻撃を止められていた。
【現にティターンズは、このような時でさえも戦闘を仕掛けてくるのだ。この暴虐な行為は嘗ての地球連邦軍から膨れあがった組織が、逆らう者は全て悪と称して、掃討しようという意志を持っている証明である。これこそ悪であり、人類を衰退させてゆくと言い切れる】
アネッサ達にハヤトからはダカール防衛隊で内紛があったとして状況がわかった。出撃前に甘い期待なので禁物としていた事が現実となったのだ。そして、サイコガンダムに応戦する側の現実も。
「よくわからないけど、なんかわかった!」
マチュには【最悪の結果】が見えた。いっそ先程の砲撃がサイコガンダムを破壊してくれた方が楽だったと。
【アネッサも自分達が見たのと同じ状態になりかけている】
動きがフォウ程ではないが支障が出ている。周りで人が死にすぎているのが原因とマチュにはわかる。アネッサの感性の高さは自分達の中では図抜けている。これをマチュなりに計算した結果、このままではフォウがマシンの中にある存在に乱されるどころではない。下手をすれば見てしまった結末になるとしてマチュは怒鳴りつけた。
「どうすんのよ!あのデカブツの始末をアネさんにやってもらうつもりとして、それでニュータイプになれるの?」
【なりたい】
マチュの問い掛けには最初から答えは出しているハズで、自分から協力も申し込んだのにとしたフォウはレバーを握り直した。
「ま、マチュ。その【斧】を貸して!私には良くわかるから!」
マチュがサイド6で初めてゼータに乗る前の機体に装備されていた武器は解析不能だが切れ味だけでサイコガンダムには天敵。覚悟を決めたのだとして言われるままにフォウのガーベラに斧を渡した。
「エゥーゴめ、エゥーゴめ、エゥーゴめええ。覚悟ぉぉ!」
~~~~~~~。
アネッサ達が足を破壊して膝立ちになりながらの頭部と指のビームを議事堂に向けて発射されたが、間に入ったアネッサ機の前に弾かれてしまう図には流石に強化されたジェリドも驚愕した。
「MSがビームのバリアだと。ならば!」
フルアーマーゼータをサイコの拳で殴り付けようとする瞬間に勝負は着いた。
「ジルぅぅっ!」
フォウはガーベラに持たせた斧でジェネレーターとサイコミュのあるコックピット下を切り裂いて破壊した。名を読んだ存在の思考パターンからして死角になる位置がわかるのだ。正確に切り裂かれて緊急システムにより射出されたブロックは無惨に街中に落下したのでアレではパイロットの命はあってもとした時に別の機影が近付いた。
『此方は、ダカール防衛隊所属のカムナ・タチバナ。戦闘停止命令が出た事の通達と暴走した者の逮捕命令により来た。君達の本隊にも話を通してはいる』
先日交戦したばかりな男が来てキナ臭いが好都合とした。実はIフィールドにエネルギーを使っていて部が悪いしミサイルもサイコガンダム相手に使ってしまっている。
『ティターンズを信じてくれて感謝する』
撤退する部隊、アネッサ達もジェネレーターとコックピット下を破壊される前から正に死に体なサイコガンダムを残して撤退した。シャノン達から労いと後で録画した演説を一緒に聞こうと通信が来たが、フォウは自分が動揺したせいで早目にサイコガンダムを楽にしてやれなかった事に後悔した。
―――――。
「正気なの?」
ペッシェが青ざめた。見せられたのはサイコガンダムのビームや後方からの砲撃だけではなく、ティターンズが街中でナパームまで使ってしまって凄まじい惨状となった映像だった。演説内容はジャブローや30バンチ事件の真相も含まれた末にな凶行。コレによりティターンズの非道や実態は証明されたが後味が悪すぎた。
そして、議事堂手前迄に被害が出た時にシャアの追い討ちとなった。
【テレビをご覧になっている方々は、お分かりのはずだ!これがティターンズのやり方なのです!我々が議会を武力で制圧してしまった事も悪いのです!だがティターンズは、この中に自分達の味方となる議員がいるにも拘わらず私一人の口を封じるために地球連邦政府の象徴である議事堂まで破壊しようとしているのです!】
最後にシャアがこう断じた事によりティターンズは宇宙で拠点を破壊された事から右往左往している事を含めて痛手を被るだろうとしたが把握してない部分を含めて戦争の終わりには程遠い。
【私の話はここで終わるが、人類は終わる事なく歩み続けなければならない!】
大混乱により議員の半数近くが逃げ出してしまったが最後をまとめて撤収したシャアとスタッフを護衛したガンダム達がまるで正義の巨人みたいに映ってると映像やカラバスタッフから茶化されているがアネッサは気付いた事があるのでフォウを休憩室に連れ出した。
「フォウ、もしかして・・・・」
「あ、アハハ・・・・そうだよ・・・・【戻った】よ、あたしの記憶。戻ったんだよおお!けど、やっぱりガッカリしただけだったんだよおおっ」
ガックリ膝を着いたフォウをアネッサも膝立ちになって支えてあげるがフォウはそのままアネッサに縋って泣くしかなかった。
ところで【ジル】って誰?で済ませられたらまだマシだったかな回。