機動戦士Zガンダム 静寂なる宇宙へ   作:くまたいよう

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 次なる舞台な回。


エーベルハルトの大失敗

【フォウの記憶が戻った】

 

 一年戦争で【キョウ】という不良少女として過ごしながらニュータイプ研究所に入れられて体よく消された記憶を求める存在にされた経緯。あのサイコガンダムは被験体にされた者が思念そのものをコピーしたか入り込んでしまったようでフォウに悪影響を与えていたが、マチュ同様にワケありなゼータに乗ったりしたのが皮肉に働いたようだ。あのゼータに搭載されているものはサイコミュとするにはあまりにも簡要なハズだが、アクシズでサイコマシーンに関わってはいたスミレにすら解析不能なブラックボックスとなっている。

 

 マチュやフォウにはそれはそうだろうとした。

 

【ニュータイプとしても規格外な存在により別物に変貌しているのだから】

 

 泣き疲れたフォウを寝かし付けた後にマチュはアネッサの部屋で向き合っていた。

 

「日本にいるカイさんがムラサメ研絡みの何かを調べてるならいずれフォウが知っている事に当たるかもしれないけど、無い方が良いかも」

 

 マチュはこういう時のアネッサの本音くらいは察していた。

 

【最悪の現実がある】

 

「聞いた話でさ、カイさんって人と一緒にいるレコアさんとかも問題じゃないの。ジャブローからダカールの件ってレコアさんが地球に降りた意味は無いし骨折り損のくたびれ儲けで存在忘れられてたくらいで何か役に立ちたいから同行したそうだし」

 

「ドウナルンダ!ドウナルンダ!」

 

 ハロをつつきながらなマチュの言い分は間違いではないがレコアに関してはジャブローに入らないで良かった結果が出ているのでアネッサのように面倒見てもらっていた側には複雑だ。

 

 当面、ティターンズに一先ずは痛打を浴びせられた。

 

 提示された資料にはマチュが住んでいたサイド6に運び込まれた空調機を装おったGー3ガスで再度の30バンチ事件を起こそうとしたように、何故かクワトロが提示できた事についてはマチュはアーガマと一緒にいた艦が細かい事をやったのだろうとした。

 

 月面へのコロニー落としはジャブローの報復でグリプスにルナ2をぶつけた側が不明云々はともかく、コロニー自体を巨大レーザー砲に改造中だったとは毒ガスと同じくジオンのやり口である。

 

 少なくともティターンズが第2のザビ家だと主張するエゥーゴの主張が通る可能性は出たし今までの濡れ衣が晴れる切っ掛けにはなる。カラバでは士気が上がり、アネッサ達もノンアルコールで祝杯をあげていたが?

 

「エマさんが元気無かったね」

 

「見りゃわかるだろうけど、エマさんは良い人だよ。ティターンズの表向きの理念を信じて配属された誠実な連邦兵士って割と多かったようなんだ。この前のカムナ・タチバナやダカールで戦闘停止に従った側みたいに、だからさ。例えば30バンチに関わってしまったのがいた場合は、今は拘束されてショックな事実を突き付けられてるかもってのが他人事じゃないのさ。場合によっては自分もソッチ側だったんだしね」

 

「ま、指名手配されてる私じゃ立ち入れないけど」

 

 マチュの覚悟が固いのは周りは感心してしまっているが理由はある。聞くところなシュウジにニャアンを見捨てて平和に暮らせていた保証が無い。シュウジの赤いガンダムを始めとしたイレギュラーが無ければイズマコロニーが第2の30バンチになっていた可能性があるのでエゥーゴにとっては有益な新米が一人来たような状況が最悪でないだけマシだ。

 

「エゥーゴ内はともかくとして、問題は【ジオン】なんじゃないの」

 

「ああ、ハマーンって人も気になるけど。問題はサイド3やアフリカやらにいる人達がどう動くかだな。ダイクン派なら味方してくれるかもしれないけど、ザビ派ならどうなるかだ」

 

 アネッサがクワトロを殴ってから聞かせてくれた事だ。エゥーゴの設立時に信頼出来るメンバーばかり集めたが、仮にクワトロがシャアと早期に明かしてはジオン残党やダイクン派の中のタカ派が雪崩れ込んで組織が乗っ取られたりし兼ねない。連邦内からはジオンについてダイクン家のザビ家の違いを頭に入れてない者は多いのでティターンズを喜ばす結果になりかねない。

 

【シャアが偽名を使うのは本人だけでなくエゥーゴの為でもあった】

 

【正確には素性や危険性を知って尚も受け入れてくれたブレックスやヘンケンのような自分の理解者の為である】

 

「アネさん、私にまだ聞かせられない事についてはミリタリー性方面とかなら許容してあげるけど、この前の戦闘で頭おかしくなりそうだったでしょ。私もそうだったけど、アレがニュータイプの力の一端だとしたらアネさんの方が厄介でしょ。正直に言いなさい」

 

 アネッサはマチュがいてくれて感謝した。確かに断末魔とやらが聞こえたし引っ張られそうな何かが恐ろしく響いた。アレがニュータイプの力の一端で、もしもそんなのが続くのだとしたらと。

 

 マチュにしても自分もそうだとしても諸刃の剣になる程に先鋭的な力を持っているアネッサが近くにいるのは皮肉な流れだ。だが、自分達にはそれに負けてはいけない理由はある。近くにいて欲しい存在を大切にしたいという根源的なものから口に出すのも嫌な現実に基づく理由がだ。

 

「やるんだ。生きている俺・・・・いや、自分が」

 

「まあ、それならそれで計画性が必要よね。地球に行きたがり始めた時に先立つものをどうするかとかで考えてたから言えるんだけど・・・・誰か来る?」

 

 入って来たのはシャアと同じ髪と目の色をした女性、マチュはハマーンと同じ髪型だとしたがハマーンとは違う冷たさがある。

 

「失礼、少し宜しくて?」

 

「え、貴女は・・・・」

 

「アナタハ、アナタハ?」

 

「私は【セイラ・マス】・・・・本名はアルティシア・ソム・ダイクンよ」

 

 シャアの妹だと説明された。以前に見たアングラ出版物の中にはセイラの名があったが、そこから想像する流れはとした時にセイラから自分と同行するよう告げられた。ある意味で情勢へのカウンターが開始された日だった。

 

 

 

 

 そして、ティターンズにも転機が訪れた。

 

 

 

「何っ、受け入れ拒否だと!」

 

 建設中のグリプスを破壊され、コンペイトウに入港しようとするティターンズだが、バスクは受け入れ拒否を言い渡された。シャアの演説を広められた故だが、ジャミトフは気付いた事がある。

 

「ふふ、まだ青いなバスクよ。連邦政府からはまだ具体的な事は通達されてないだろう。いっそティターンズ権限として乗っ取ってはどうだ?」

 

「し、しかし乗っ取っても。管轄下に置く迄に時間が掛かるハズでは?」

 

「そうだ。だが、精密な構図でやる必要はあるのかな?」

 

 この後に聞かされた内容は流石とバスクは思った。コーウェンはジャミトフがバスクを指揮官に選んだのを失敗としていたが、それなりに利害は一致する部分があったのだ。

 

 

 

 

 ―――――――――――。

 

 

 

「宇宙に上がって、アネさんのゼータも向かう先で即座に宇宙戦に出来るようにしますと。けど、大丈夫なの?」

 

 マチュの言い分は尤もだ。ゼータ二機と砂漠で見つけたコアファイターを搭載したシャトルで宇宙に上がったのはギンバライトにいたメンバーをセイラが率いた構図。そのまま快速挺に乗り移ったがペッシェからしても意識の戻らないロザミィがこれから向かう先に光明があると賭けるしかない。そして着いた場は。

 

 

【ジオン公国残存拠点アンブロシア】

 

 

「ようこそいらっしゃいました!」

 

 党首であるカイザスがオフィスにおいて整った髭を生やした人の良さそうな顔立ちで出迎えた。流石にシャアが直接来るとは思わなかったが、彼には思わぬ来訪者があった。

 

「あ、アルテイシア様・・・・アルテイシア様であらせられると」

 

「はい、私がアルテイシア・ソム・ダイクン。兄の演説により情勢が動いている隙に快速挺でこの場に来ました」

 

「おぉ・・・・おぉぉっ、キャスバル様が身分を明かしただけでなく。アルテイシア様と和解していたとは・・・・」

 

 

 

 ―ー―ー。

 

 

 

「アホか」

 

「はいはい、人前で不満漏らさないだけ良く出来ました」

 

 マチュがゲストルームに通されたアネッサを気遣っていた。やはりお姉ちゃん宣言は伊達ではないがそれだけではない。

 

「で、此方はアネッサの言うようなダイクン派内の【知らない側】ってとこね。あのカイザスって人は歓喜の涙流してたし」

 

 ペッシェの言い方はサイド3内で育ったアネッサはジオン・ダイクンのマイナス面を見ていたのは聞かされていた事からのもの。革新とやらを進めてばかりで周囲との折り合いに悩む側にはたまったものではなかったと、デラーズ紛争でジオンの亡霊とすべき側と対峙したペッシェからしても身につまされる話だった。今は悪く言えば夢見がちなカイザスには落ち着いて接するしかない。

 

 そして、カイザス同様キャスバル派であるエーベルハルトに戦闘パイロットとなる四名が今後についての相談で呼ばれていた。ややふっくらしてカイザス同様に親しみやすい見た目だが悲壮感が出ている。

 

「事情は聞いている。実はシャア大佐が目を掛けている君達に折り入って聞いて欲しい事があるのだ」

 

 出されたのは小惑星アクシズの映像、シャアが一年戦争後に身を寄せていた場だが、映ったものが問題だ。核パルスと思わしき光がある。つまり、地球圏に向かってジオン残党がゆっくり迫って来るのだが、切っ掛けが問題だ。

 

「つまり、エーベルハルトさんは。アクシズと度々に連絡取ってたけど、ダカールの少し前にティターンズの事を【ハマーン・カーン】って人に喋ってしまったと」

 

「オシャベリオシャベリ!サケノンデタカオッサン!」

 

「すみません、オモチャなもので」

 

「いや良いさ。人手不足からの疲労と寝起きで頭が回らなかった等と恥ずかしい限りだ。非難は幾らでも受ける!藁に縋る思いなのだ!知っての通り、シャア大佐がザビ家を断罪しながら身分を明かした後にザビ家の残党が大量に帰還をしては、宇宙移民にとって不幸な結果にしかならない!」

 

 マチュはジト目で見るしハロを積極的に止めようとしないが、寝起きからのミスは最近のアネッサ達はエーベルハルトの猛省する姿も相まって積極的に責める気にはなれなかった。人手不足故な弊害は身に染みているし、ガンダムに乗る前にそれなりに見てきたものもある。

 

 この場合、ティターンズをどうするにしても場合によってはアクシズが火事場泥棒をする絶好の機会となる。

 

【その場合、実はザビ家を内部から倒したとアングラで知られていてダカールで信憑性を増したシャアを中核にするエゥーゴやシャア支持派がどうなるか】

 

 キリマンジャロをアッサリ陥落させたアネッサ達に相談するのはわからないでもなかった。

 

 とにかくアネッサのゼータを宇宙戦用にしてからが先決なので先ずはそこからとなる。

 

 

 

 ―ー―ー―ー。

 

 

 

「で、どういう事よマチュ。貴女がサイド6で出会った人がハマーンなんじゃないの?」

 

「うん、私は聞いたしエーベルおっさんの見せてくれた画像と同じ顔!本物でないならおかしいくらい威厳だのカリスマとかだのあったね」

 

「じゃあ、アクシズにいるのは一体。ペッシェは何か心当たりは?」

 

「わからない。けど、あの画像で見たハマーンは何か違うとは思う」

 

 四人が秘密にするべきだとしたが、時間が無いのは認識した。今後にティターンズをどうするかだけで戦闘パイロット達には手に余る難題なのだ。

 

 

 

 

 

 ―ー―ー。

 

 

 

 

「軌道は安定しました。近い内に地球圏に到着致します」

 

「そうか、シャアにまた会えるか。ハマーン」

 

「はっ、シャアは必ず我々の元に!」

 

 ザビ家の生き残りであるミネバは時代錯誤な王座に座って跪く女性ハマーンに対して年相応な笑みを浮かべた。まだ幼女であるのに担ぎ上げられた緊張感が薄れているのは二歳の頃に面倒を見てもらっていたシャアに会えるかもしれない期待からの安心感があるのだと周りは推測した。

 

(シャア、ついにこの日が来た。待っていろシャア・・・・)

 

 

 

 

 

 ―ー―ー―。

 

 

 

 

 

「【ハマーン様】の様子はどうかな?」

 

「はい、見事にハマーン様ですよ」

 

「しかし、恐ろしいものですな【セラーナ様】は。御自分をハマーン様と思い込むよう強化措置させるとは」

 

「そう言うな。マシュマー・セロとか言ったかな、彼のようなハマーン様の熱狂的支持派すら覚悟を聞き、泣いて感激しているのだ」

 

 暗躍する者達が感心したようなそうでないような笑みを浮かべながら述べるようにアクシズ内では地球圏に早期帰還したハマーンすら予期しない出来事が起きていた。ましてハマーンに口を滑らせたと思い込んでいるエーベルハルトには予想する術は無かった。




 ハマーンじゃないよセラーナだよな回。
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