機動戦士Zガンダム 静寂なる宇宙へ   作:くまたいよう

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 今回はハマーン様のパートから。


父から子へ

 仮眠を取るハマーンは、何故ここにいるかを夢で見ていた。

 

 父の死語、二十歳になった際に見るように言われた遺言を一年早く見たのが転機であった。マハラジャが父から子へのものでなく公人としてシャアがキャスバルと伝えられたが、シャアはアクシズに残る者達を中心にしたジオン再興より父ジオン・ダイクンの意思を継ぐ事を選んだと理解した。

 

【だが、実際はシャアがハマーンには絶対に踏み入れない私心に流されたと考える余地が無いのは過ちである】

 

 そして、ハマーンなりにアクシズ内のダイクン派とすべき者達を割り出したが、その者達はハマーンがそうするのを待っていたのだと知る術が無かった。お茶会を兼ねた場で対面したが思わぬ切り出しが来た。

 

『シャアのガンダムだと?』

 

『はい、性能そのものは1年戦争でのガンダムを徹底的に調べた者達が、何とか入手したデータを元にした機体で詳細はわかりませんが、独自のサイコミュを搭載して仕上げたようです。それ無しにしてもハマーン様を初めとしたアクシズのパイロット達も【シャア大佐がアクシズに来て間も無く起きたあの戦い】で部分的にガンダムの恐ろしさを知っているハズです』

 

 ハマーンは眉をひくつかせた。

 

【あの戦い】

 

 シャアがジオングで相討ちに持ち込む迄に倒す事が叶わなかったアムロ・レイの乗るガンダムのデータを組み込んだジムは回避パターンを一部組み込んだだけでシャアの乗るMAですら射撃戦で攻略出来ない機体と化していた。

 

 今思えば皮肉だ。アレが即時戦争再開を望むエンツォの意図を挫く道の一歩目だった。未だブラックボックス化して解析は出来ないだけではない問題がある。

 

 そこからがアムロの強さを認める者達の意図の始まり、敵の中に味方を作る兵法の鉄則としては正しいやり方だった。

 

『ハマーン様、失礼ながらアクシズにいる者達は・・・・いえ、戦時中に散った者達からしてガンダムとアムロ・レイを甘く見すぎているようです。シャア大佐ですら、あのア・バオア・クー迄に相討ちで倒せなかった悪魔のような相手とする空気が薄いと思われませんか?』

 

『ですな、大佐がミネバ様を逃がす撤退戦の時に乗ったゲルググ。アンブロシアの時に乗った足を付けたジオング、アレ等でも倒せるかどうかな難敵ですぞ』

 

 確かにだが、ハマーンは遠回しに自分が特にアムロのガンダムを甘く見ていると糾弾されている気分だった。エンツォなら早期に戦争再開した際にアムロが新型ガンダムに乗って立ち塞がってもシャアが相討ちに持ち込んでくれるのを期待するだろうが、自分もその程度の認識でしかないのだと。

 

『率直に申し上げます。我等はシャア大佐を支持する側でもあります。ハマーン様のように力を実際持っていてニュータイプの事を信じる側がお互いの為にもシャア大佐に任せるままではなく地球圏の情勢を直接見る必要があると思われますが?』

 

『私に・・・・地球圏にシャアの次の偵察隊として早期に帰還するべきだと言うのか?』

 

『はい、形式はさておき。アクシズにいる同志達の命が掛かっています!』

 

 

 

 

 そして、シャアのガンダムを捜索するのを条件にした事でハマーンは結果的に信頼は出来るクルーを集めてセラーナに後を任せてしまったのだ。元々、早期帰還のキッカケが欲しかったにしても。

 

 実際、シャアのガンダムが放った謎の光は理解できず。データで見る限り何故か変化を見せたシオンをいきなり相手にしたら自分以外は無駄死にだったとしている上に、あのマチュのような者が地球圏に散在しては油断ならない。

 

 

 

 

 

 

「・・・・眠っていたか」

 

 ハマーンはアーガマに戻ったブライトに会いに行く。回収したルナ2を自分達の技術で運用するだけでなく、その要塞を任せるというブライトからしたら驚きどころではない案だ。

 

「繰り返しますがエゥーゴ上層部は信用が出来ません!駆け付けた後に艦長から聞いた話で、まさかジャブローが引っ越し中だと見抜けないとは・・・・まるで【わざと】やったようではありませんか」

 

 マーサが台頭出来た理由、わざと戦乱を長引かせる為にそうしたとされウォンが左遷された一因とされてる事を述べた。流石のブライトも真偽はともかく失態以外の何でもないのでグゥの値も出ない。シャアには負けるが【ブライトはヤシマ家の婿殿】とされる立ち位置をまるで忘れているとしている指摘にも反論が不能、これでは自分が甲斐性なしで済まされる域ではない。それから下した決断にカッと目を開いて答えた。これは飽くまで賭けだとしながら。

 

「わかりました。同盟を結んだ者としてルナ2を預かります」

 

「良く決断して頂いた。では、私はグリプスがあった場に向かいましょう」

 

「流石はシャアを知る者ですな。悪い意味で指揮官として後方に留まりたがる者とは大違いです」

 

 ブライトは必死に平静を装った。ハマーンの意図を探る為、飽くまでハマーンがシオンに匹敵するニュータイプでなければという賭けだがやらねばならない。

 

 

 

【皮肉な事にハマーンはサイド3の一件で本能的にシオンのレベルに能力を発揮出来ないと知らないのだが】

 

 

 

 そして、司令室に案内されるとブライトも息を飲む光景があった。ニャアンの乗る黒と紫基調なキュベレイは基礎の起動から仮想敵をビームガンとサーベルで次々と撃破する訓練を繰り返しているが、ブライトからしても今すぐに実戦に出せる域だ。そしてプログラムを終えたニャアンに通信が繋げられた。

 

「大したものだ。そろそろファンネルを使っての訓練もやろう」

 

『ファンネル・・・・』

 

「待てニャアン。君は覚悟はあるのか?」

 

「覚悟・・・・ですか、それは【逆の立場になる覚悟】ですか?」

 

 

 

 ニャアンが言うのはミゲルとの一件を除けば外見に反し性格は臆病な小動物のようだったイメージが覆った事件。キュベレイをMK―IIを任されて間も無く行った訓練の際の事。

 

 

 

 

『つ、疲れた・・・・これがMS』

 

 まだ宇宙での発進と着艦程度でも大したものだと周りは見ていた。サイコミュの調整とチェックをしているスタッフに言わせればハマーンが見立てたように、サイコマシーンに適応する能力だけならハマーンクラスかもしれないと賛辞を送っていた。

 

『いえ、まだ私じゃ例の地球にいるゼータガンダムには勝てませんから・・・・』

 

「謙虚だな君は、もっと強気でいたまえ。とにかく栄養ドリンク持って来たから飲んで・・・・どうした?」

 

『これ・・・・【アフタミレランの複合剤】何で、私はこんな・・・・え、何で銃を』

 

『・・・・ミゲルにも言ったが、ディアブロというのは一思いに倒せないなら此方が正解だったハズなのだよ。だから・・・・っ!』

 

 ニャアンの目が怪しく光ったのに驚くスタッフは、キュベレイMK―IIのリアスカート部に収納されたファンネルが射出され極細のビーム撃ち抜かれ、上半身の半分程度の穴が空いた直後に蒸発した。騒ぎを聞いて駆け付けたブライトはカメラに撮されていた画像を見たが間近でビームに撃ち抜かれて蒸発する人間を見て直ぐに立ち直るニャアンのメンタルが恐ろしかった。

 

 

 

 

 

 ―――――――。

 

 

 

 

 そして、ニャアンはハマーンの言うようにターゲット代わりのデブリを適当にファンネルで撃ち抜いて訓練を重ねていた。

 

「大したものだな艦長、ニャアンはマチュや噂のシオン君に劣らぬよ。シオン君にはまだ勝てないと自重するのも含めてな」

 

 何故勝てないとするのか以前に何故戦う事になるのかとするがブライトは深入りはしなかった。

 

 

 

 

 だが、事態はブライトが危惧する可能性実現に対して皮肉な展開を向かえた。

 

 

 

「・・・・何、ティターンズがア・バオ・・・・ではない。ゼダンの門ではなくコンペイトウに?」

 

「距離的には正解ですが、彼処は確かデラーズ紛争の件で・・・・今はティターンズ寄りではない連邦宇宙軍の管轄ですな」

 

 ハマーンもだが、彼処には慎重さが求められる。仮にティターンズがあの要塞に入ってデラーズ紛争の真意を知る反ティターンズ派に当たったらとした時、周りの展開図を推測していたハマーンは理解した。

 

「む・・・・成る程、やってくれるよジャミトフ。噂のゼータガンダムでも一苦労だろうな」

 

「なっ、何の事でしょう?」

 

「月にコロニーを落としたから各コロニーにはダカールの件無しでも警戒されている。再度やるには手間だ。バスクのような武闘派気取りなようでまるでヤクザ等と言われる輩からしたら腹いせを行う手段があるではないか」

 

 嫌な沈黙が走った。コロニー落とし以前にコンペイトウと名を変えたソロモンが邪魔とするならばな結論が出た。

 

「ま、まさか・・・・っ!ティターンズは【ソロモンを月に落とす】気ですか!?」

 

「奪還したい側な我々がルナ2とグリプスをこうしたのが裏目に出たか、間に合わないな・・・・噂のガンダム達が最近は宇宙で次に備えた訓練を開始して、丁度阻止に行ける距離にいるらしいから・・・・任せるしかないな」

 

 嘲笑のようで期待を含めた表情をハマーンは浮かべた。ある意味で好機かもしれないのだ。

 

(シャア、お前が期待した少年と託したガンダムはこれで良くも悪くも真価を見せざるを得ない、どんな事になるか楽しみだな)

 

 

 

 

 当のアネッサのゼータが搭載されているソドンも最近は小規模な戦闘も重ねて錬度は上がって来たが、緊急事態にクルー達が息を飲んでいた。茶髪を後ろで簡素にまとめている中年女性であるラシット艦長から説明が行われた。

 

 

 

 

「急なもので戦力を集結させたら間に合わないから、このソドンを単艦で突っ込ませる。最速でゲートを艦首で貫く形に上陸させる頃にはエゥーゴの各部隊は到着するしティターンズと駐留軍に動きを止めたところを討たれる可能性は減るだろう、それに相手は恐らく足並を揃えられてはいない。構造上で指定された四ヵ所に爆弾を仕掛け、タイミング良く爆発させれば軌道は逸れる。そして設置後に安全確認して離脱の流れ、勝機はある!爆弾に関しては代わりなものがあるのでソレを使うぞ!」

 

【鹵獲機】

 

 今までの戦闘で回収出来るだけ回収したものがあるので使う。レズンを始めとした腕利きも合流して工作隊として参加する流れ。

 

 シャアが地球からまだ戻ってない内にこれではたまったものではないがジオンの人間からしたら特にグラナダは昔は自分達の拠点だったのでアンブロシアに合流したかなりの数が参加を表明してくれているとした後にコモリからは念押しにエゥーゴ上層部から意図不明な指令が伝えられる。

 

「逃げ出しても罪には問わないとされているわよ?」

 

「関係ありません、作戦成功しますし」

 

 豪胆に言ってのけるアネッサには周りは息を飲むしかない。アネッサとの距離感からして百合疑惑が出ていたフォウが何かを言いたい顔をしているのを周りは気にしているが、フォウは人を大量に死なせるとアネッサとマチュがどうなるか推測しているので覚悟を決めた。そして作戦が決まってMSデッキに向かう。ゼータは左のデッキに二機なので途中で別れたがマチュは気にはしていた。

 

「ねえアネさん、皆アネさん頼みにしてるけど逃げ出しても罪に問わないとか以前に何かおかしい空気無い?」

 

「わかってるよ、状況とかに殺気があるようで薄い。多分だけど【目眩まし】じゃないか?」

 

 アネッサが言うのはコンペイトウ落下を阻止するのは不可能ではない、つまり各勢力からしたら。

 

 エゥーゴからしたら上層部に考えも勝算もある。

 

 ティターンズからしたらゼダンの門に逃げ込む隙が出来る。

 

 コンペイトウにいる駐留軍は【良い機会】になる。

 

「自由、自由!自由チャンス!」

 

「ハロは極論だけど、駐留軍は例の観艦式絡みで縁起でもないとこから離れて選択の自由になるチャンスだ。ティターンズの根回しがどれだけか次第か」

 

 アネッサのゼータは宇宙でも使えるようにしたフルアーマー装備だ。内部で何があるかわからないのだから選択をした。

 

『戦闘区域に入ります!各MS、予定通りに準備!』

 

「宇宙は落とさせない・・・・」

 

「ペッシェさん、気負い過ぎないで。僕達は内部での担当なんだから」

 

 アネッサ達とは反対側のデッキでは言ったように発進は見送られた。エグザベもフラナガンで顔を合わせた事があったかもしれないペッシェの物言いは気になったが、作戦に集中すべきだとして当面はアネッサとマチュが発進する画像を見て無事を祈った。

 

 マチュのゼータが先行してそちらに気を取られたのを見てアネッサは自分のゼータに持たせた長物【ハイパー・メガ・ランチャー】を構えさせチャージを済ませた最大出力で撃つ。現存MSが支障なく運用出来る中で最強の威力であるメガ粒子砲が複数の敵機を飲み込んで消滅させてしまうのを三度も繰り返した。敵側からしたら気付いたら標準サイズのMSから放たれたとは思えない攻撃で友軍を多数葬られた事で動揺させられ、その隙に次はソドン単艦の突撃が開始されて目的地のゲートを強襲揚陸艦らしい形に艦首部をめり込ませた。

 

「よし、工作開始だ!」

 

 ラシットの号令で開かれたゲートから四ヵ所に向けて詰め込んだ艦載機が総出撃した。構造を知る元ジオン兵多数なので複雑だが、今は作戦成功に動くしかない。エゥーゴの援軍も来たのでマチュは万が一の為にソドンを防衛。アネッサもソドン内で装備をメガビームライフルに変えて内部に突入する。内部に敵が残っていた場合、設置の為に固定の邪魔をさせるワケにはいかないのだ。

 

『アネッサ、残るは此処と反対側だ』

 

「わかりました。此処の仕上げはやりますのでエグザベ少尉は残りに回って下さい」

 

 後を頼んだエグザベはこの時にアネッサの変化を見落としていた。固定を終えようにも身体が動かなかったのだ。やればコンペイトウ落下は阻止できるが、その後はとする声が聞こえたのだ。

 

(誰だよ、グラナダに落とした方が良いなんて考え・・・・てっ?)

 

 ビームが飛んできたので回避した。Iフィールドには無意味だが過信は出来ない、坑道から姿を見せた相手は黄土色のダルマのような機体でマリーダと会った時の光景で見たMSのようで違うものだが、既視感を抱く機体だ。

 

 突撃してくるがパイロットの腕が実戦向きでないとわかる。回避してメガビームライフルを向けた時に【わかってしまった】。

 

「何やってんだ・・・・【親父】!」

 

『お、お前。カミーユか・・・・お前は・・・・なっ、何でその機体・・・・なっ、何だその洗練されている機体は。どこで、手に入れた?』

 

「・・・・親父、母さんはどうしたのさ・・・・おい、聞いてるのか?」

 

 画像を出す迄もなくわかる。本名がカミーユなアネッサの父である【フランクリン】は技師として外見を観察するだけで性能の推測は出来る優秀さであるのは知っていたのだが、関心が再会した息子より乗っている機体のみに向けられていたし、見る目が何故かスタイリッシュな欲情対象に向けるような下卑たものでアネッサは吐き気を催してしまった。




 設定によると、技術者に言わせたら宇宙世紀80年代最高傑作機がZガンダムとされるが、生存したフランクリンがZ見たら?がジークアクスのソロモン落とし落下に介入なおぞましさになった。

 おさらいとしてオリ主は転生憑依系カミーユでシオンと偽名を変えてエゥーゴでは女装男子パイロットなアネッサになったややこしさ。
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