「ど、どういう事だっ!?」
グワダンのブリッジでハマーンは心底動揺してしまった。
【送られた画像はまだ一部にしか出回ってないようだが、映るのは間違いなく自分とミネバだとした】
『私はアクシズのハマーン・カーンである』
何故かアクシズが接近して来て地球圏に宣戦布告。間違いではない、今のように混沌としている中では接近している事をわざと告げる故な利点はある。
だが、自分が此処にいるのに。彼処にいるハマーンは誰だ?とした際に周りは声こそ出さないが顔で物語っていた。
【それは此方の台詞だ】
動揺のせいもあるが、ハマーンは理解する迄に時間が掛かった。そもそも、周りにいるのはザビ家やカーン家の支持派ではなくダイクン派だ。そのダイクン派の案に乗っているから地球圏に来ている。
ダイクン派は本音を言えばエゥーゴに行きたいのだろう、シャアがジオンの子を名乗った以上はそうしたいがハマーンをキャスバル専用ガンダムの存在を引き合いに口車に乗せてアクシズ・・・・本来は敵対する派の集まる場から逃げ出した。ダイクンを暗殺したのはザビ家と僅かに広まっていたので、敵より味方が危険な環境から脱する絶好の機会だった。
直ぐにグワダンにガンダムやキュベレイを手土産にシャアの元に行かないのは都合良く丸め込んで使った義理立てであるのは理解出来ずにいた。
グワダンクルーとなっているダイクン派は、別にハマーンがダイクン派になるならそれは都合良い話だ。亡きマハラジャも傍目にはダイクン派だった説があるのが一般兵の視点。
【だが、ハマーンとシャアの間にある確執の真相を当人達しか知らないのが踏み込まれない理由である】
今のハマーンの味方は一人もいない。早目に知れたら対処は可能だったハズが二の足を踏むしかない。サイド6でマチュすらこれを狙っていたから冷静だった。
【ハマーンはまんまとセイラやアネッサ達の策略に嵌まってしまった】
「・・・・様、ハマーン様?」
「っ、シュウジ。何か・・・・気付いたか?」
「食事の時間です。お腹が空きました」
ハマーンは自分の頭から頬に恐ろしいサイズの汗が流れた気分で周りは笑いを堪えるのに必死であった。呆気に取られたたがアホな子を相手する事で頭が冷え退散をしたが、逃げ出す口実を得れたからがバレてるのでクルー達から内心でこう思われてた。
【良いぞ坊主。良くやった!】
そして、今日は中華系のメニューで食事を始めた。やはりシュウジは良く食うと言うより事態なんか気にもしていない。呆れる他は無かった。
「お、おい。頼むから食べたら私と会話をしてくれ」
「会話、それはアナタが望む言葉を出してくれですか。それなら出して欲しい相手が違うとガンダムが言っている」
「こ、この・・・・っ」
殴ってやりたくなるがシャアのガンダムの解析が進まない今、シュウジは鍵なので堪えた。
今思えば、手荒に吐かせようにもそれは許さない者ばかり連れて来てしまった。だがニュータイプとしては感性が高いので汚れ役を他に任せる手段は通用しないから耐えねばならない程度はわかっていた。
だが、何とか聞き出せてはいる事はある。
何処から来たか、どこであのガンダムを手に入れたのかだが、実は恐るべき内容である。
それに、シュウジが協力してくれているのは次は自分をにしてもアネッサを狙っているからだが、下手をしたら。
【構想通りに行った場合、シュウジはアネッサに絶対ぶつけてはいけない事になりかねないとしたが、その理由をハマーンは全力で避けていた】
そして、知略だけでどうにもならない域は今日も激化していた。
「エネルギーが・・・・っ」
『弾切れか・・・・っ!』
アネッサとヤザンは今日もビーム系の飛び道具をお互い使い果たしてしまった。接近戦か回復する迄に時間稼ぎをとしたが、後方にいたゲルググタイプ二機がチャンスと見たのか静止されながら突撃して来た。
『えぇい、邪魔だあっ!』
ハンブラビは今日はまだ使っていないショックワイヤーらしき何かを投擲したが、ゲルググ二機の間で弾けて蜘蛛の巣のようになって絡め取った。アネッサはアレが最初に危ない目に合わされたのを単機でやれるように再現したのだとわかった。
「投擲?」
言ったように、ハンブラビは手持ちのサーベルを投げて来て弾いたが、その隙に密着した。パワー比べに持ち込むならとしたがアネッサは悪寒がしてバルカンを撃ちながら放れたら下から何かが飛び出して来て危ないところだった。
いや、危ないのは相手の見た目だ。
ゼータのロングテールライザーに当たる部分が股の間からゼータに向けて飛び出した。あんなのを喰らったら末代までの恥とした。
次は大型化したクローの小刻みな攻撃、小回りは効くからとした時だった。
『アネッサ、これを使え!』
やむを得ずで徴用されたファビアンのゲルググが持って来たものを受け取り使用した。ヤザンのハンブラビは悪い予感がして回避したが、ソレは後方のデブリに命中して粉々にした。威力だけはかなりな域だ。
【ハイパーハンマー】
一年戦争でファーストガンダムが何度か使ったらしい武装だが、得体が知れないものを出したハッタリは効いたようだ。
『洒落た外見で、えげつない事しやがるな!』
「チョキにはグーってやつだ!」
クローに対してのハンマーでは微妙な言い分だが、振り回してからの二撃目を避けたハンブラビは離脱した。ヤザンからしたら消耗してる時に数と奇策からな戦術を駆使されたら不利だとしたからだ。
「助かりました・・・・けど何でこんなの?」
『はは、君も意外とノリは良かったぞ』
電撃にやられたゲルググ二機を回収してアネッサとファビアンは帰艦した。見てしまったものに思うところは有り余るが、悪意が無いのは認められている。いや、それはどちらに思うべきかとした。
その頃、ルナツーではノリや悪意が及ばない戦いが始まっていた。
『してやられた』
ブライトは、そう言いたい気分だ。確証が無いが、策謀とした場合は恐れ入る。まんまと押し付けられて、封じ込まれて、決断を迫られる状況に追い込まれた。
マーサは念の為にグリプスのあった場に捜索隊を向けたが、結果的に自分の元にエゥーゴ内の左遷された側の下にいたり。ひどい事にラビアンローズから下らない理由で追い出された者達迄も来る形になった。アネッサ達に下卑た事をしようとしたり内部からラビアンローズを乗っ取り掛ける騒ぎをと比較的マトモな側から聞いた。
【片っ端から修正してやろうとしたが、殴ったくらいでどうにもならない、無意味どころかルナツーでも同じ騒ぎをされかねないとしてトーレス達に止められた】
今のエゥーゴは現場からしたら都合良いスポンサーなマーサを取り敢えず信頼して外からは上手い流れなっているが、世渡りに失敗した側がブライトの元に逃げ込んだ形になった。
「だからだな。ルナ2を」
メッチャー・ムチャに至っては、自分達が真なるエゥーゴだとか主張すべき行動をとしている。これでは?
【ジオンの真似をしている下らない連中】
ティターンズか、その支持派がそう噂しているのを閑職に回されていた頃に何度も聞いたがそれそのものだ。一年戦争で自分が指揮したホワイトベースが命拾いする形に影響を受けたザビ家の内輪揉めとそう変わらない。
クワトロから聞いたが、一年戦争でオーストラリアにキシリアの部下達が迷惑に押し掛けた際に。
『ズゴックか何かのMSで、この潜水艦を沈めてしまえませんかね?』
そう言った男がいたと聞いた。もっと穏便に出来ないかと指揮官に却下されたらしいが、指揮官は出来ればそうしたかったと、今のブライトは何故かわかった。
「ルナ2に何か仕掛けがあっては終わりです。例えば、地球に落ちるようなルートにエンジンを吹かすようになってたら?」
「そ、そんな馬鹿な事があるかっ!」
「そんな馬鹿なレベルの作戦に引っ掛かったから我々はここにいるのです!」
馬鹿なレベルとするのはジャブローであろう程度はメッチャーにもわかる。
エゥーゴは一にも二にも三にも四にもジャブローであるとせざるを得ないのが実状。キリマンジャロとは真逆な失態にはどうもならない。
今思っても、マーサの情報提供はクワトロ達に近い内にキリマンジャロを攻略させる算段だったが、捕虜だったペッシェを使った撹乱程度なハズの通信を逆手に取って擬装投降をし、内部からの徹底破壊に及んだアネッサの作戦はクワトロですら唖然とさせられたものだ。
【アネッサはキリマンジャロに何か怨恨でもあるのかとする容赦の無さは味方からしても異様であったと思い出した】
流石に反論は難しいにしても直ぐに黙らせられるからには返り咲きを狙うのか怪しい、相変わらずリード中尉を思い出す男だとした。あの男の見た目を太らせて老いたらこんなだとするイメージに重なるのだ。取り敢えず司令官室から追い出し、もとい・・・・退室してもらってブライトは痛感していた。
(ツケは高くついたな)
奇しくも、デラーズ紛争で同じ事を思った男がいたと知らないブライトは肩書きに相応しい振る舞いをする事に関しては無頓着だったツケが来たとしている。エゥーゴの一部に対処する必要が追加されて前線の指揮官として動きを制限されたし重荷を付けられた。
何よりも?
【選択を迫られている】
ハマーンとの対話で痛い部分を突かれていたのを思い出した。
――――――――――。
『私は艦長と似た人物を知っています』
立場に関しての話題で無意識にハマーンが切り出していたのかはブライトは理解できないが目の色に切実なものがあった。聞いておかねばならないとした。
『自己の利益より、立場上の責任を、組織の在り方を、人を、部下を、同志を思いやる立派な御方でした』
ハマーンは遠回しにしているが、自分の父マハジャだとは言わなかった。だが、部下にエンツォのようなタカ派、つまりデラーズ紛争に参加すべきだったがアクシズに来ていた男を招き入れてしまった。結局、病死をしたが生きていてもブライトのような生真面目さが仇になる形に命を使い果たしていたかもしれない。
『利己的にならないのは立派ですが、貴方は自分と身内を不幸にする御方に見えます』
それは父であるブライトには侮蔑に聞こえたが、ハマーンにはブライトがマハラジャと重なるような既視感で危機感を抱いていた故な苛立ちだった。
仮に組織人の在り方を選ぶなら良いが、善人で生真面目なら上手くやれるワケではない。見落としがあるし最終的に非情な手段をやっていれば良かったと後悔する自分と皺寄せを受ける身内や隣人になりかねない。
良くて、後の歴史や戦史に苦労人として戦い抜いた立派な男として記されても、本人達は間違っても嬉しくもないどころか不幸のどん底だろうとした。
【つまり、お前は知らない側か後の歴史に立派な男とされるが、そのせいで部下達や身内どころか自分自身をどん底レベルに不幸にした男となると予想されたのだ】
リュウの件で思うところがあるブライトには戯れ言とは聞こえない。これがハマーンの策謀ではなく弱さと良心から来ている故な曖昧さが刺さっていた。乱暴に言えば自分達の一番の益になる事は。
【ブライト・ノアが悪党で良いくらいな利己的な立ち回りをすれば良い】
それは、ブライトの弱点を的確に突く故にハマーンとは違う形に二の足を踏ませる形になった。
そして、ティターンズにも揺らぎは出た。
「何だと、帰還命令だあ?」
またもアネッサのゼータとの死闘は痛み分けになった。ヤザンからしたら最高に楽しい時間が続いていて次に備えていた時に、ガディから艦長室に呼び出されたら帰還しろな内容の極秘指令、30バンチからジャブローの情勢でジャミトフは大将から准将に迄降格され、地球の各地ではエゥーゴ派が多くなっているようだ。
「しかも、下手したら我等には【逮捕状】が出かねん・・・・留まるのは危険だ」
「不祥事のスケープゴートとやらか、トチ狂って見境なくなったんかい」
「しかし、ヤザン隊長程のパイロットをバスク大佐にジャミトフ閣下・・・・いだっ、隊長?」
「ふん、まあ良いさ。ゼータと戦えなくなるのは尺だしな」
部下であるアドルの耳を掴んで退室したヤザンは気付いた事を述べた。今はこの自分に似合わぬ好青年しか気心が知れた部下はいない故でもある。
「良いかアドル、俺はお前の言葉でハッとしたぜ。お前は俺を買ってくれてるが。バスクがそんなの考えると思うか?」
アドルもハッとなった。隊長としてヤザン程に頼りになる強者はいない、ゼクノヴァを恐れずゼータに真っ向から互角かそれ以上に戦うヤザンには益々尊敬を強めているが、バスクが理解するかどうかは懐疑的だ。アドルからしたら噂の出所は不明だが、あのエマ・シーンすらジャブローにてどさくさ紛れに始末されたとされている。尤もエマが何故死んだとされているかは不明なのが肝心だったのだが。
「バスクが・・・・例えばだ。ハンブラビ以上の機体が完成したからで楽観視してるってのあるかもなあ。それに関しちゃあゼータ仕留められなかった俺が言えるこっちゃねえ」
「そ、そんな・・・・」
「良いさ、それにだ。俺に言わせりゃそんなのにやられる程に奴等はひ弱じゃない、俺のやり合ったパイロット以外も女ばかりな部隊だったのは気に入らねえがな」
ヤザンにしたらアフターサービスだ。アネッサが以前にマラサイのテストをしていた時に戦ったパイロットとは諸事情と直線の対決にてわかっているが、別に自分から詮索する理由は無い。万全な状態で自分の相手をするアネッサのゼータこそが今のヤザンの望みだ。
(また会おうぜ、嬢ちゃんやる羽目になっている坊や・・・・その為になら今は我慢してやる)
混乱と足踏み開始な回。
セイラやアネッサの作戦はハマーン本人の周囲の要素込みが重なって成功しましたな回です。