機動戦士Zガンダム 静寂なる宇宙へ   作:くまたいよう

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 ハマーン様の本物と偽物回。


本物と偽物

『恥を知れ俗物!』

 

 ハマーンはシャアの誘いをこの一言で返してしまった。

 

【他が聞いたら過去に何かがあった故とするだろうが、シャアの心がハマーンにはないと見抜いたのが原因でもある】

 

 結局、シャアは地球に対する異変の予兆と目を掛けた若者にミネバを優先させているのだ。

 

「まあ、先に言った方が勝ちってのがあるし」

 

 拗れたと聞いたグワダンのダイクン派はシャアの意図はまだしも、先に歩み寄った事実が肝心であるとした。真意はさておいて、シャアがハマーンに協力を要請とだけは聞いた。見方を変えればハマーン個人より優先させる事項があるのは自分達の指導者に望む事として悪い事ではない。

 

 今はハマーンを連行する形でルナ2のブライト達と合流すると同時にルナ2に逃げ込んだ形になるエゥーゴの失脚組を上手く使うのが先決だ。肝心な時に内乱が起きる厄介さは身に染みているがシャアには聞くべき事がある。

 

「大佐、それより噂のゼータガンダムに。発見したコアファイターをフロントアーマーに変形させて組み込んでしまって、大丈夫なのですか?」

 

「アネッサ達なら解明するさ、発見者によると自然現象の薔薇になる前は月の光のせいか繭みたいに見えたらしいが・・・・そのままだったら繭を中から破って【蝶】として生まれたのかな?」

 

 何の比喩だとしたいが、シャアには言ってしまった事がある。今は艦内から宇宙を見ているシュウジと会った際に言われた事が根拠だが、避けていた事だった。

 

 

 

 ーーーーーーー。

 

 

 

 

『私は貴様と、私を愚弄したアネッサだけは許さん!』

 

 自分はともかく、最小限な手腕で嵌められたのが余程に癪だったのだろう。だが、シャアからは決定的な一言が来る。

 

『・・・・アネッサが【ララァ】だからだろう?』

 

『・・・・っ、貴様。自分から言うとはな』

 

『聞いただけなお前にはわからんさ、私とて初めて会った時に見たさ。アネッサはララァでありアムロであり・・・・何より初めて会った時のお前だった』

 

『喋るなっ!』

 

 屈辱の極み、まるで自分がララァにアムロと並んではいた時期があるとする言い方であるが、アネッサが名を出した者全てを連想させる存在だと言い放たれている。シャアからしたら、自分を徹底的に咎めて殴ったりする等はセイラですら有り得なかった故も含めていた。サングラス越しにアネッサに見出した希望を宿す瞳を見たハマーンは益々口惜しさを増す。

 

『自分の殻に閉じ籠もっている内は、我々は新しい世代や時代に相応しくない。だがアネッサは君に感謝しているだろうな。聞くところでサイド6でマチュを助けてくれた・・・・自分を導いてくれる【お姉ちゃん】になってくれた存在と巡り合わせたからだ』

 

『愚劣な言い方だな、アネッサの方が姉ではないのか?』

 

『違うな、マチュがお姉ちゃんだ。彼女はやるのではなく【なりたいからなった】・・・・やるのとなるのは違うのだ・・・・お前にはわかるだろ』

 

『っ、黙れぇぇえっ!!』

 

 本能で察した。鬼の形相で叫ぶハマーンにとって【姉になった女】は最大級な禁忌なのだ。

 

 それに、マチュは当たり前にそうなったとしている。寄りによってシャアが関心を向ける相手にだ。ハマーンはそれを見ようともしなかったし、二人がそうなったからしてやられた故に激しく拒絶するしかなかった。

 

『ハマーン、生きている内に生きている者のするべき事がある。それをやるのが死んだ者への手向けになるのだ・・・・だから、私は・・・・』

 

 

 

 ーーーーーー。

 

 

 

 ハマーンに言った事の最後の部分でシャアは苦い思いをしていた。結局、マチュに任せれば良いからと距離を置くのを正当化してると含め。

 

「大佐、僕はアネッサを殺したいのに何故ハマーン様と違って手元に置くのです?」

 

「私の手向けだ」

 

 シュウジすら要領が得ない、シャアとてこの後にやる事は更なる道化かとしているが、当面はセラーナが手強いとしていた。

 

 

 

 そのセラーナは既に策を動かしていた。

 

 

 

「「ーリさんの、ひ・つ・じ、ひつじ♫メーリさんの・・・・♫」」

 

 やや困り顔なアネッサと笑顔でノリノリなマチュがニャアンのウクレレやマラカスをバックコーラスにしてメーリさんの羊をアップテンポに歌っていた。

 

「歌って踊って可愛らしい事ですな・・・・」

 

 アクシズから交渉の特使として送られて来た金髪を綺麗に纏めた女性はソドンに接触したが、あろう事か見習い兵として教育する戦災孤児ばかりなメンバーで来た・・・・と、見せ掛けて。アクシズから逃げ出したりした側が幼女達すらモルモットにする非道を行っていた証拠を手土産にとした流れだ。強化人間等にされる前だからにしても扱いに困るのでアネッサ達が任されたが、アレでは幼稚園のボランティア見習いだ。

 

「彼女達は連れて来た子達のような生い立ちなのですか?」

 

 映像で見るラシットからしても、エゥーゴ最強のパイロット達だ等と言えはしない。平均より小柄なマチュが主導権握っているのでは知らない側は信じはしない、鬱状態から立ち直り掛けてるアネッサと馴染んだか微妙なニャアンのケアになっているか微妙な気がした。

 

「しかし、ハマーン・カーン様はティターンズにも接触しようとしているようですが?」

 

「政治と言うものです。連邦内でスペースノイドに好意的であるのに生まれや縁故で配属された者がいるとしたら、やる価値はあります」

 

 それはそうだろうとラシットにはわかった。エマ・シーンのような者がいない保証は無い。当面はティターンズやアクシズの次の動きを警戒したいとしながら警戒任務に着任したが、何かがおかしいのだ。

 

 

 

 

 ーーーーーー。

 

 

 

「子供達の世話をしてくれて、お礼を言います。手土産代わりのお菓子ですが」

 

 アネッサとマチュに出されたのはレーションにもなるクッキーの類いであった。お茶会とするものの毒でも入ってないかチェックが義務付けられた後では微妙だ。そして、ラシットに話を通したので女性は【ウィッグ】を外す。そして、生身で直接目の当たりにしたマチュがやはりとした。

 

「貴女、ハマーンさんじゃないわね?」

 

「口の聞き方に気を付けてもらおう、私はアクシズのハマーン・カーン!それ以上でもそれ以下でもない」

 

 確かに威厳は本物だ。それに自身で敵に成り得る艦に乗り込むような行動力は目を丸くするしかない。

 

「どうやら、お嬢さん達は【私の名を語る女】に出会ったらしいな」

 

 隠し事は辞めた。リーダー格と見なされたマチュは自分達からしたらサイド6にいるハマーンにアクシズが何故か接近した事を黙っている上での計略を明かしつつ、今頃は混乱して周りがダイクン派ばかりなせいで身動き取れずに宇宙の迷子となっているかもと告げると目の前のハマーンは高笑いした。

 

「ふふ、可愛い少女達と思ってたが大したものだよ。ならば話は早い、あの女は将来に幼いミネバ様を傀儡にしつつジオン公国を復活させ、地球にコロニー落としや全面核攻撃を辞さない戦いを企む痴れ者、正にジオンの亡霊だ。成敗するべきだよ、手を組まんか?私と共に奴を粛清しつつ、宇宙を静かにして美しい地球を守ろうではないか」

 

「ちょ、ちょっと・・・・私は、その。一応アッチのハマーンさんに助けて貰ったから・・・・」

 

「ならば、お前が生け捕りにでもして命は取らない事でお礼とするが良い。それくらいは許可してやろう」

 

 無茶ではあるが、アネッサと共にハマーンを嵌めた身では上手く返答は出来ない。それにマチュは確信した。アネッサの言うように、目の前のハマーンに対して自分達が知るハマーンが戦ったら負ける。何故か苛烈で濁っているようで恐怖よりも寧ろ【悲哀】を感じる・・・・これではマチュなりに見て来た光景を参考にしたら、感じた通りになってしまう。

 

(でも、キラキラ・・・・この人は多分だけどキラキラを見せなきゃ・・・・)

 

 この日、奇妙な日々の始まりとなった。




 拗らせる本物と、大体な偽物な回でした。

 そして、不穏なるシャア絡み。
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