『任せるわ、子供達には下働きでも何でもさせときなさい』
連絡を入れて来たマーサは亡命とも取れる形で来た者と連れて来た子供達の扱いをラシットに伝えた。
真意はともかく扱いは慎重にすべきなのは事実だった。ニタ研に関わっていた子供達を何名も抱えると危険だ。
何故ならば政治的にエゥーゴはティターンズ側が戦災孤児をニタ研のモルモットにしていた事を批判しているが、裏では自分達もやってると見なされてはいけない。尤もマーサならバレないようにするのを重視しているとラシットは仮想しているし、表向きはメラニーがアネッサ達をラビアンローズで目の当たりにした不穏分子から守る動きをしているのに対して連れて来られた子供達を守る事で対抗してるとしたら打算込みで納得してはいる。そもそも実動部隊に任せる案を先に言い始めたのはメラニーなので二人の暗闘は想像以上としなければならない。
加えてメラニーやマーサ以外からは戦力にしろ等の声が出かねない、当の二人はそれを利用して異分子を排除しつつ権利拡大を狙っているのも含めているハズとラシットは見ているが、それはスポンサーはともかくフラナガン機関に関わってたシャアにしてダカール後もジオンの残党と見なされる要因を持つ男を象徴にするエゥーゴには最悪に近い。
(伊達にキシリア様に関わる場にいたわけではないさ)
アレコレ考えてしまうラシットはシャアが聞いたら納得せざるを得ないまとめをして当面ソドンは下働きが足りないのは事実だからマーサの言うような流れは悪くない。
それから、アンブロジアからも一つ危険な提案が来た。
「そ、そんな・・・・」
「ペッシェ、元に戻らないって決めつけるの?」
「そんな事は・・・・っ、そうよね」
報告が来て、ペッシェは泣き出すが。下働きをするマリオンが確信を突いたフォローをする。そもそも、ペッシェは贅沢を言えない。そして、アンブロジアから来た下働きも合流となる。
「ロザミア・バダム・・・・で、あります」
「よろしく、君の事情は聞いた【記憶喪失】のようだが、それに関しては艦内の下働きしながらリハビリをさせるようともな。汗をかいてるだけでも違うから気長にやると良い」
自分の顔を見て何も思い出さない事にペッシェが泣くのを堪えるのをラシットは痛ましく見ていた。いっそ、騙し討ちで麻酔銃を撃ち込んだ事に怒りを向けられた方がと考えた辺りで説明をしてやるようにと艦長室から退室させた。
「結果的に人手は増えたって思うべきだけど、大丈夫なのエグザベ君?」
「いや、益々女子ばかりですが・・・・そんな事くらいではね、それにアネッサがなんか安心するから大丈夫ですよ」
いずれエグザベもアネッサが女装男子と気付くかもしれないとコモリは見ていたが、女子ばかりな状況でエグザベはアネッサからしても救いなのだ。当面はソドンの良心として健闘を期待するしかない。
そして?
「あ、アネッサさん。私達はこんな事をして良いんですか?」
子供達にやらせてるのは料理の下ごしらえ、カレー用のジャガイモや玉ねぎや人参の皮剥きや簡単な事をアネッサとマチュとニャアンが休息中のついでな説明をしていた。
「兵士にとって食事は銃に弾を詰めるようなもんって伝記にあったでしょ。だからこれは弾薬の手入れに近い、こんな事とか言ったら駄目だ」
「で、でも私達は連れ出されたにしても祖国や宇宙の為にパイロット候補に・・・・」
「ナイフやピラーすらロクに扱えないのが十年早い。昔の人は【百年兵を養う】と言った。つまり国の為に戦える体制を作るには百年は必要って言葉を知らないの?先ずは地道にやるんだ」
「アネさん、言ってる事は正しいけど古風過ぎるよ」
アネッサは正しいと言えば正しい。納得した子供達を遠回しに地道にやらせてるようでいきなり戦いたがる道からは遠ざけているのは良いが、やたら器用に皮剥きをしてるのは複雑とマチュが理解した一方。
「え、え・・・・と」
「ニャアンさん、下手っぴ。コンチの方が上手いじゃない」
「〜〜〜〜っ」
「う、うう・・・・」
ニャアンは餃子の皮包み、音声を多少出すおもちゃの方が上手いどころか教科書通りで子供達にジト目で見られて泣きそうになっている。
そして、恐るべき事に直面する側もあった。
「しかし、やはり信じられないものだよ。あの娘達がソロモンを消し飛ばしたエゥーゴの最強部隊の中核とはな」
カツラを取り、髪を下ろした状態なハマーンであるセラーナにして【リーガン・ローダン】と名乗った女性もソドンにおいて知識を活かして整備に当たっていた。元々エレカよりMSを扱う方が得意としていたセラーナだから本能的に今の状況は好ましい。
そして、本物のリーガンは元々ハマーンの影武者として訓練をしたのでアクシズでハマーンを代行している。元々は急遽仕上げたガザCは数で誤魔化すように計画してあるのでいきなり【セラーナが用意した機体】を必要とはしていない。
フォウにペッシェは身体を震わせているが、ラビアンローズから同行したニナは笑っていた。やはり狂気に囚われているとしたが二人にはこの場にいる理由はある。しかし?
「けど、何故貴女達はアネッサちゃん達の側で子供達の相手をしないの?」
「「怖いんです」」
ニナからの問いにニタ研時代の忌まわしき記憶を蘇らせていたと正直に述べ、マリオンも同意した。確かにあのくらいの時期からとしたのはリーガンも同じだ。そして、アルフが気になる事を述べた。
「ふむ、だがフォウはともかく?」
「モンターニュさん、リスト持って来ました」
「あ、ありがとうロザミィ」
「私はロザミアですが・・・・」
元々の劣等感は否定しない、それにロザミアの記憶が消えたショックで深刻なのだ。艦内を動き回るロザミアに対して複雑な目を向けるしかなかった。
「名前も記憶もロザミィが戦いの記憶を無くしたのが幸いかもしれない事に比べれば些細な事だよペッシェ、それとも自分を覚えてない事が重要なのか?それは小娘だからさでは済まされんぞ」
正論だ。そもそも騙し討ちした自分は憎まれていないだけマシと割り切りたいのに女々し過ぎるとしていたが周りは責めはしなかった。それにリーガンは自己肯定に繋げている。
「柄にも無く闘志が湧いたとやだよ、ロザミィはコロニー落としで家族を失い、ニタ研に入れられるような不幸を辿った。そんな子供達をもう出さない為に、コロニー落としをする者は成敗してやらねばな」
言っている事は正しい、休息に入るリーガンと入れ違いにファビアンブが来たが此方も複雑にしている。
「こんな自分が役に立つなんて思わなかったよ」
ファビアンの過去はニュータイプ寄りな側は聞いた。確かにリーガンはハマーンではない、恐らくスミレから聞いた話では正体はセラーナだが、セラーナは多分ハマーンのフリを強化措置までしてしているからこそファビアンがやった事を知らない側だった。
【それが、リーガンがハマーンではないと確信した決定打なのは皮肉極まる】
「ファビアン、貴方は【ニムバス】じゃない。乱暴したいからやった訳じゃない貴方は・・・・その心を大事にして」
「痛み入るよマリオンさん。自分はそうするから貴女は、今戦ってるニュータイプ達に力を貸してやってくれ」
思わずニムバスの名を出したマリオンの言葉は痛々しかった。言うようファビアンはあくまで命令に従ったのだ。だから、マリオンの言うようになると信じる事にした。
そして、次の除幕が上がる。コモリが入手した情報をラシットに報告したが内容が問題だ。
「何っ、ティターンズがガス専門の補給艦と接触した?」
「はい、それも【Gー3】ではないかと」
「それは不味いな。30バンチ・・・・っ!いかん、ソドンを連中が向かうだろうコロニーに直行出来るルートに突撃させる!」
「え、しか・・・・っ、ああ!?」
『緊急事態だ。クルーは所定位置、パイロットは乗機に至急乗り込めるよう準備してブリーフィングルームに待機してくれ!』
艦内放送の通りにした戦闘パイロットにブリッジから事情が説明された。
『良いか、この艦は共和国からの兵多数だが見方を変えればジオン関係者多数だG―3に対して足を鈍らせるだけで体裁が悪い!』
事態がわかった。G―3による大量逆算の元祖はティターンズではない、外から見たらシャアのダカール演説でジオン残党が合流していると見るべきエゥーゴ内の微かな不和、ソドンでいえばラビアンローズ内のような事を煽られてはたまったものではない。ティターンズ側の形勢逆転策としてはこの時期にやる価値はある。
アネッサも元はと言えばサイド3出身なので、その辺りを楽観視はしないとして戦闘パイロット達は待機に入った時、ブリッジにリーガンが入って来た。
「艦長、私も手を貸させてくれ」
「貴女が?」
「良いか艦長、ティターンズがG―3でコロニーを潰す。その後にどうするかだが、コロニーをまた月に落とさせたりもあるが、旧ジオンに悪用させたら、第2次ブリテッシュ作戦に繋がりかねんぞ」
リーガンの意見は正しい。自分には指揮権はあるとしてラシットは決断をした。リーガンが持ち込んだ機体は発進が可能なのだ。
【Gー3(ゲー・ドライ)】
エルメスタイプをMSとしたのがキュベレイならば可変MAとしたのがこの機体だ。字面にすると、略称がこれから対処するものに被るのは間が悪いとした。
「そんなわけだ。この場にいる者には複雑なジオン臭いメットとパイロットスーツしかなくて失礼だが宜しく頼むぞ」
リーガンの挨拶は確かにだ。ジオンにいた者は少なくとも色を変えたりはしているのはティターンズカラーのMK―IIを白く塗ったようなものとしている。エマの場合は白く塗ったMK―IIが危険視されているのを皮肉としてそのままだが。
『ねえ、貴女は・・・・いえ、良いわ。私は、私は貴女の機体の方が・・・・』
『何を言っ・・・・ふふ、そういう事か。マチュ、私はアネッサちゃんは当面の敵と見てないよ、相討ちが良いとこだからでなく・・・・私はまだ【いなくなる】わけにはいかん、残したものがたまったものではないからな』
不穏な言い方以前にマチュはリーガンの機体を【知っている】のだ。アレはアネッサを不幸にする機体だ。だが、今はマチュも映像で見た30バンチの再来は御免被りたい・・・・だが?
「何で皆して、貴女迄も【ちゃん付け】で呼ぶ」
「む、何やらクルーの末っ娘扱いだからだろ・・・・ふむ、不満なのはわかるが大人になる前に良い意味で子供でいられるのも幸せと実感してみるべきだ。君達は本来そうあるべきなのだからな」
「は、はい・・・・っ?」
マチュとフォウが間に入り、キョトンとするアネッサをリーガンは可愛いと思っている図はレズンもやれやれとした。確かに、それに反応しないのを含めてまだまだ子供達なのだから。しかし、スミレからしたら痛々しかった。セラーナである故な本能でアネッサ達への気遣いが出ているとして説明が始まるが違和感がある。何やら【復興中なサイド5コロニー】に狙いを定めたようだがと。
【サイド5】
それが肝だったと全員が何となく察した。ルウムやテキサスとジオンからシャア絡みに対する心理的な効果がある。
それが、少なくとも皮肉な流れとなっていた。
「では、アルテイシア様はコチラに」
「私はオペレーターくらいはやれますが?」
「此処はホワイトベース程に人手不足では無いのです」
セイラはロザミアと共にソドンに合流していた。サイド3付近に旧ジオンが多数駐留している状況でアンブロジアにたままでは危険なので次を考えていたが、まさか嘗てマス家に引き取られていた辺りに行くとは思わなかった。シャアの妹でありホワイトベースクルーが前線指揮官のような事をやるのは道化なのか否かだ。艦長席ではなく用意された指揮官席に座って間もなくサイド5中域に接近で準備は整う。
「では、サイド5救援作戦を開始。各員の健闘を祈ります!」
セイラの一言でソドンMS隊は第一陣の発進準備をしながら接近する。ティターンズの反撃と数多の策謀が絡み合う事態が動き出した。
偽ハマーンなセラーナはリーガン(ハマーンの影武者)を名乗り、リーガンはアクシズでハマーンやってるな展開。まあ、知る側からしたらファビアンのお陰でソドンにいるハマーンは偽者と確信な展開。
前書きにあった舞台は再興進むサイド5でした。