スカンジナビア半島にあるオスロ基地に於いてハヤト・コバヤシは伝聞のみの決定に目を通していた。カラバとは地上におけるエゥーゴの支援組織ではあるが、結局はエゥーゴ同様にスポンサーあっての組織。アースノイドばかりなスポンサーはティターンズがクリーンならどうなっていちかま懸念すべき点だ。
ただ決定を確認するだけな世知辛さとしたハヤトはアムロ、ボッシュ、クリスのいる休憩室に行ってお茶をセルフで淹れ漸く一息付けた。
「確か、ルオ商会の【ステファニー】だっけ、タイガーバウムコロニーに左遷されたウォン・リーの身内だから大変だそうだなハヤト」
「それだけじゃないさ、このアウドムラ含むガルダ級を何隻も使う引っ越しを地上にいたのに伝えられない以前に把握すらしなかった。後世の歴史家はどう記すかが怖い側が多いんだろうさ」
アムロとて政治に丸っきり無感心ではない、地上に散在するカラバ上層部がエゥーゴの地上解放を掲げる理念と受け入れ合うかも問題だが、確かに戦後が怖い流れだ。
「次に問題はジオン共和国からの合流組ですね、噂のアネッサさんがいるガンダム小隊にかなり組み込まれ、シャア大佐の妹君がとは・・・・」
「ボッシュさんの危惧も尤もですね【混成振りに関してはサイド6付近に向かった時期のホワイトベースに政治的意図を絡めた囮】とも言われてます。それより【ティターンズとアクシズ】のどちらが先かです」
クリスの言うようにパワーバランスが有利になってしまった空気があるエゥーゴはティターンズとアクシズなどちらを先に対処するかだ。鍵となりかねないのが悩みだ。
「それはそうとだな・・・・」
アムロ達が食べているのは【小豆餡を使った菓子類】だ。別に甘党になった訳ではない。
「いや、これだこれ!胃に優しいぞ」
「いやあ、脱アル中には和菓子が良いとした狙いは当たりでした」
「小豆菓子は生クリームや苺を組み合わせたら更に拡張性があるらしいです。いずれソチラも頂きたいですね」
三名のアル中脱出作戦は継続中である。半分は偽装とは言え数年酒を続けた末に酒断ちした際に甘いもの欲しがる現象には勝てない。酒とどう付き合うかが大人になってからの難題だが、こんな事でアムロより先に大人になれるとは思わなかったハヤトは次の菓子を食堂に注文して噂のアネッサ達には見せられないとした。
だが宇宙にいるアネッサがアムロに最も見せられない危機に瀕していた事は知る術が無い。
そして。そのアネッサの危機を招いてしまったとしているフォウは自室で休憩し始めた際に自分の身体を抱くように恐怖に震えていたが、何度かてもらったようにアネッサにしてもらいたい我欲に気付いてしまう、結局はアネッサを手元に置いておきたい欲望が根生えたのが自分としたが、それは弱さにもなるが強さになるとも知らない。僅かに気が逸れた頃合いをわかってたようにマチュが尋ねた。
「落ち着いた?」
「マチュ、私は・・・・アネッサの為に。アネッサの為に貴女に頼ったりしたのに、これじゃ私が何もしない方が・・・・いっそ」
「フォウが何もしなかったらね・・・・キリマンジャロを思い出してみてよ、あの時はアネさんが私の持ち込んだゼータを生身で遠隔操作出来るの確認したからクワトロ大尉からも偽装投降作戦許可出たんでしょ」
確かにそうだった。フォウは特にムラサメ研で原理が近いものを目の当たりにしてモルモットにされていたが、あのゼータから感じるものは次元が違った。だからこそフォウは応対した司令官の態度が嫌悪対象だからにしても自分がやってしまった。
「何にせよ実験もしてないフォウが遠隔操作したのキッカケで破壊しちゃった。つまりね、フォウが私を頼らないとアネさん助けられないって考えてるのが大間違いなんだよ、私達はフォウが頼りなんだから自信持ちなさいよ。それ以前に、元はと言えば落ち込んでたアネさんを贅沢言うなって叱ったり励まして性根を入れ替えさせて私達のエースにしたのフォウじゃないの?」
「私が・・・・」
自覚が無い理由はマチュにはわかる。ニタ研のモルモットとして過ごしたフォウは自己肯定感が皆無なのだ。今は特効薬になるのは無事だった場合なアネッサだけとしたが、意識が戻ったと連絡が来てマチュがフォウを連れ出し、到着した医務室に大半が集まっていた。
「あ、アネッサ。大丈夫か?」
念入りに医務室で寝かせていたアネッサが目覚めて大半が駆け付け、エグザベが何とか一声掛けた。冷静に考えたらファビアンの件以来な現象だが、やはり恐怖は拭えない。
【レベルが違う】
今回のはアネッサの変調を何度も目の当たりにしてるメンバーに言わせたら感じたプレッシャーが違った。コモリが意を決してララァについて聞き、全員が覚悟を決めた。
「えぇ、ララァに会いました・・・・ところで?」
生唾を飲む、アネッサが何を言うかで今後を決めるからだ。
「レズンさん達がうっかり言った事、クワトロ大尉がロリコンって話ですが、あの見た目じゃ原因は1年戦争のララァ相手じゃなくて、ララァ以外かアクシズ時代に何かあったからとかでは?」
確かに聞くところで数歳離れた程度では特にロリコン呼ばわりされる筋合いは無い。死に別れたなら尚更だから断じてロリコンではないとする言い分は真っ当だ・・・・真っ当だが?
「意識無くして寝込んだからみんなして心配してたら、目覚めたばかりでいきなり何をすっとぼけてんのよ!このバカ妹はぁぁあっ!!」
「ま、マチュ!病み上がりにドラゴンスリーパーは駄目よ!」
ペッシェが言うドラゴンスリーパー=背後から右脇で首、左脇で腕を固めてアネッサを制裁するマチュを宥めた。時折アネッサがズレのを周りは良く知っているが、これは流石にとしてマチュとフォウがお説教しとくから念の為ニャアンも残して退散!と決定した。一応ニャアンも残る事になったのでマチュのやり過ぎは宥められるとした。
【だが、それがマチュの策だった】
「で、何時までそうする気なの【ララァ】?」
「先ずは貴女の作戦は見事ね・・・・いや、マチュのやり方凄い。ドラゴンスリーパーって見かけは派手だけど。角度次第で実は痛くないパターンが多いしね、自分がああなった時にララァの姿見た側残すのも上手い」
「何かわかったのよ、緊迫下であんなボケを噛まされたら脱力するしかないわよ。少なくとバレてもアネさんが頑張ってるの察してくれそうなのばかりだし、但し?」
アネッサに縋るのを我慢するフォウは例外だ。マチュもアネッサが本来辿る最悪の結末を見たがフォウには及ばない、このままでは人格が別物になりかねない危惧がある。
「ララァ・・・・嗚呼、もうララァでアネさんなのかもね」
「あ、あの。アネッサさん、アネッサさんは自分に起きてる事わかります?」
「わかんない。夢を見てるみたいだよ、他の何かになった夢を今の自分・・・・アネッサだけど、何かララァって人の記憶が少しある。多分、アネッサじゃない、ん・・・・っ」
言い終わる前にアネッサをフォウが首を絞めながら押し倒していた。
「返せ、アネッサを・・・・アネッサ、を・・・・返せぇぇええっ!」
泣き叫ぶフォウをニャアンが引き離すが、フォウには本来の身体能力が無かった。スタンガンを使うまでもない理由は短時間で依存症とすべき弊害が出ていたのだ。
「フォウ、頭冷やしなさい!で、何でアナタ。いやアネさんは抵抗しないの」
「いや、臨死体験くらいすれば・・・・戻るかもしれないし。けど、フォウは力入ってなかったよね、でなけりゃ握り潰されてたしニャアンが簡単に引き離せないよ」
「・・・・っ、成る程。わかったでしょフォウ!アネさんだよ、フォウの事しか考えてないじゃん!アネさん以外の何なのよ?」
「アネッサ・・・・」
「フォウさん、アネッサさんに【贅沢言うな】って言ったそうじゃない、だから・・・・」
「う、ぅぅう・・・・アネッサぁぁっ」
アネッサの胸にしがみついて泣き出したフォウはひたすら謝罪していた。記憶が混ざっているだけなのにアネッサを苦しめた自己嫌悪だった。
「アネさん、わかってると思うけど。私達は手を貸すし自分なりにやるからフォウだけは守りなさい?ララァなんかアネさんには私で例えればコックピット内でハロが喚いてるようなもんよ」
「わ、わかってる・・・・わかったから、フォウ。もう泣かないで」
「ごめん、ごめんねアネッサぁぁ・・・・っ」
そんな二人を暫くそっとしておくしかないがマチュとニャアンは気付いた事があり、ジト目になりながら確認し合う。
「・・・・ヒソヒソ(この期に及んで何でフォウ抱っこして、あやしたりしてあげるくらいしてやれないのよ、あのヘタレはっ!!)」
「・・・・ヒソヒソ(アネッサさんはフォウさんにピュア過ぎるんだよ、でも良いなあ・・・・)」
退散した2人だが、しばらく様子見で2人きりしにしてあげたかったワケではない。居合わせた為に先が見えていたので、傍で気を引き締めたりはしてはいけないとしのだ。
【現に離れた場ではマチュとニャアンの予測通りになっていた】
「ど、どうした坊主?」
「・・・・ついに、来たか!」
グワダンに乗るシュウジは周りに構わずアネッサのいる方向を凝視していた。殺さなければならない存在がついに現れた。算段を進める事にした一方で、シュウジの乗っていたガンダムはグワダンのカタパルトから飛び出していた。
『大佐、説明しましたが。その【装備】はあまりにも貧しくて哀れな側に裏回しされたものだから私情厳禁ですよ』
「わかっている。しかし、赤く塗ったのだから使わせてもらうさ【アルレット】」
通信相手は自分が呼んだアルレットだが、アネッサ以上かもしれない毒舌が懐かしかった。思えばジオン公国軍時代の部下達は自分に遠慮が無い者が多かった。ファルメルのクルーやジオングの説明をしてくれた者、だが干渉に浸る間は無いとして赤いガンダムの両肩にジョイントされた装備を射出してターゲットに向けた。
【但し、相手はティターンズでもアクシズでもない】
(味方のハズの部隊をこうするとは・・・・だが!)
クワトロの意識がサイコミュを通じてビットに伝達し、迫る艦二隻を多少支障が出る程度のポイントを見切って損傷を与えていた。これなら退散してくれるだろう。
(・・・・ブライト、やるな。わざとエゥーゴの失脚組を私のいる方へ送り出したか。ふふふ・・・・使えるものは全て使わせてもらう!)
不敵に笑うシャアだが、その笑みが嘗ての赤い彗星に近付いて来たと知る術は無かった。
シャアのノリが戻ったか?な回。