ドラゴンクエストXI 一人(ふたり)の勇者   作:はたやま

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という訳で最近再プレイをしてどハマりしたドラクエ11の二次創作です。ハーメルン内にドラクエ11の作品数が少なかったので自給自足をすることにしました
拙かったり設定で矛盾が生じたりした時はどうか暖かい目で見守ってください…
感想や評価など励みになりますのでどうぞよろしくお願いします!


プロローグ 運命の始まり

夢を見ている

 

それはまるで御伽噺にあるような英雄譚だった

 

とある村の少年はある日、己には大いなる使命を持って生まれてきた存在なのだと母から告げられる

 

そうして村を旅立ち、たどり着いた王国で少年はいわれのない汚名を着せられ地下牢に投獄されてしまった

 

そこで出会った生涯の相棒と共に牢を飛び出し壮大なる旅が幕を開けた

 

旅の途中で少年は様々な仲間と出会い、困難を乗り越えて行った

 

火山の村では、才能溢れる魔法使いの少女と心優しき癒し手と共に人を攫う魔物から村人を救った

 

砂漠の王国では、世界中に笑顔と希望を与えんとする旅芸人と共に人々を苦しめる魔物を倒し、王子の心の霧を晴らしてみせた

 

闘士たちの集う国では誇り高き女武闘家と老練なる賢者と出会い、世界に巣食う悪しき魔王の存在を知った

 

一行は世界各地をめぐり秘宝を集め、空にそびえる命の根源たる大樹へと足を踏み入れた

 

だがそこに魔王が現れ、その力の前に少年たちはなすすべもなく倒れると、魔王は命の根源である力を我がものとし世界を闇で覆い尽くした

 

魔法使いの少女は最後の希望を託すため自分の命と引き換えに少年たちの命を救った

 

余りに多くの犠牲をはらいながらも再び少年たちは立ち上がり、新たに仲間になった王国最高の騎士と共に世界中の魔物を打ち倒し

 

ついには全ての元凶である魔王さえも討ち果たした

 

命の根源たる大樹が再び光を取り戻し世界には平和が戻った

 

しかし、少年の胸中から悲しみと後悔が消えることはついぞなかった

 

ああ、もしも、始まりの日に戻ることができたなら

 

その時は今度こそ───

*

 

「ん…んぅ」

 

一人の少年が夢から目覚めた、寝ぼけた目を擦りながら辺りを見回すと部屋の中はまだ暗く夜が明けていないことがわかった

 

「はぁ、またあの夢を見たなぁ…」

 

ベッドの上で一人ぼやく少年…レイはここ数年で何度も見た夢について頭を悩ませていた

 

(どこかの国の御伽噺なのかな?いや夢の中には命の大樹みたいなのも出てきたし…ロトゼタシアの話なんだろうけど、テオじいちゃんからもあんな話聞いたこと無かったしな)

 

夢で見た物語の舞台がロトゼタシアなのは予想がつくが、世界中を旅して回ったという育ての祖父からも聞かされていない内容であることがレイの中での最大の謎だった

 

(…考えても仕方ないや、明日に備えて寝ようっと)

 

やがて考えることを諦め再び瞼を閉じる

明日は16歳の誕生日、レイの住むイシの村ではしきたりとして成人の儀式が行われる大切な日であるため睡眠不足のまま臨むわけにはいかない

 

(けどやっぱり)

 

(何度みても悲しくなる夢だよな)

 

そうして初めて夢を見た時から変わらない気持ちを胸に残し、レイは再び眠りへと落ちた

 

*

 

「レイ起きなさい」

 

どこからか声が聞こえる

 

「レイ起きな!」

 

しかし悲しいかな人は春の暖かな眠りの魔力の前には等しく無力であり、レイもまたそんな人間の一人であった

 

「いつまで寝てんだい!さっさと起きな!!!」

 

こうしてレイの16歳の誕生日は愛しき母からのありがたい怒号によって迎えられたのだった

 

*

 

「全くあんたって子は…そののんびりとした性格は大人になっても変わらないねぇ」

 

「ごめん母さん、昨日の夜変な時間に起きちゃってさ」

 

台所で母と共に朝食を食べつつ軽い説教を受けるレイ。つかの間の団欒を囲みもう少しで食べ終わろうかと言うところで家の外から声がかかった

 

「レイー!起きてる?」

 

「ワンっワンっ!」

 

「あら、約束の時間には少し早いねぇ」

 

「なんだろ、行ってくるよ母さん」

 

そう言って愛用の両手剣を背に、腰に片手剣を携えて家の外へと出る。そこには幼なじみでこの日共に儀式を受けるエマと愛犬のルキが待っていた

 

「おはようレイ!」

 

「ワンっ」

 

「おはようエマちゃん、それにルキも。時間までは少し早いと思うけど?」

 

「レイはのんびり屋さんだからね、早めに来てちゃんと起きてるか確かめに来たの」

 

「わざわざどーも、いくら俺でも大事な日にはちゃんと起きてるよ」

 

「とか言って、どうせ今朝もペルラおば様に叩き起されたんでしょう?」

 

「うぐっ…」

 

少し拗ねた様子で返してみるが図星を突かれてケラケラと笑われてしまう。レイは生まれてこの方この幼なじみに優位に立てた試しがないのだ

 

「…ん?そういえば今日はいつものスカーフしてないんだね」

 

「えっと…その事なんだけどね」

 

レイが気になったのはエマがいつも頭に巻いているオレンジ色のスカーフの事だ。しかしそのことを指摘するとエマは少しバツが悪そうな反応を示す。その様子にピンと来たレイは一転してニヤリとした顔を浮かべた

 

「もしかして風に飛ばされて木の上にでも引っかかったんでしょ?」

 

「うぅ…実はそうなのよ」

 

普段はしっかり者として村では有名なエマであるが、時々こういったドジな一面も見せることがある。もっともそういった部分は親しい人間の前でしか見せたことは無いのだが

 

「わかった、まずはそれを取りに行ってから儀式に向かおっか」

 

「ごめんなさい、お願いするわレイ」

 

「おや、そろそろ出発するのかい」

 

二人がそろそろ出ようかというところで支度を整えたペルラも家から出てきた

 

「風で飛ばされた幼なじみ殿のスカーフを先に取りに行ってくるよ」

 

「なんだいその言い草は。エマちゃんこの子のことをお願いね、気がつくとすぐフラフラどっかに行っちまうんだから」

 

「任せてください、おばさま!」

 

「アンタもだよ、儀式の間しっかりエマちゃんを守ってあげるんだ」

 

「わかってるよ母さん」

 

「それじゃあ私は先に神の岩の麓にいって待ってるから、準備が出来たら2人揃って来るんだよ」

 

そういうとペルラは村の奥へと歩いていきルキもそれに続いて行った

 

「よし、俺たちも行こっか」

 

「そうね、行きましょ」

 

まずはエマのスカーフを取りに村の中央の思い出の木へと二人も、歩き出して行った

 

*

 

無事にエマのスカーフを取り戻した二人は村の奥へと進んで行き、神の岩と呼ばれる巨大な岩山への道を歩いていた

 

「二人とも、今日は頑張んなよ!」

 

「怪我をせずに無事に帰ってくるんじゃぞ」

 

「二人ともいいなー、おれも早く大人になりたいなー」

 

二人が儀式を受けることを祝おうと村のみんなが道々で声をかけてくれる

すると一人の母親が二人に声をかけてきた

 

「おはよう二人とも、ねぇ少し聞きたいことがあるんだけど」

 

「どうしたのおばさん」

 

「何かあったんですか?」

 

「実はさっきからマノロがどこにも見当たらないの、ここに来る途中で見なかったかと思って」

 

マノロは村に住む子供のひとりで少し鈍臭いところのあるイタズラ小僧として有名な少年である

 

「歩いて来る最中は見なかったよな」

 

「そうね、声をかけてくれたみんなの中にはいなかったわね」

 

そこでふと三人の頭に嫌な予感がした

 

「まさかあの子、勝手に神の岩に昇って行ったんじゃ…」

 

「まさかとは思いたいけど…マノロのことだしなぁ」

 

「ありえない話では無いかもしれないわね」

 

「わかったよおばさん、一応本当にいないかどうか気にしながら登ってみるよ」

 

「ごめんなさいね、二人の大事な儀式の日なのに」

 

「『汝、みんなに優しくせよ』それが村の教えだからね、任せてよ」

 

マノロの捜索を引き受けると二人は歩き出し神の岩へと続く橋へとたどり着いた

そこにはエマの祖父である村長のダンとペルラが二人の到着を待っていた

 

「レイと孫娘のエマ…ふたりが無事にこの日を迎えられて、村長としてこれ以上嬉しいことはない」

 

ダンは二人に簡単な祝辞を述べると改めて儀式の説明を始めた

 

「よいな、16歳となったお前たちは成人の儀式を果たし、一人前の大人にならなくてはいかん。神の岩の頂上で祈りを捧げ、そこで何が見えたかわしに知らせるのじゃ。そこまでが成人の儀式じゃからな」

 

「はい村長」

 

「わかったわおじいちゃん」

 

村長の説明を受けると次にレイはペルラと向かい合った

 

「レイ…自慢の息子がここまで大きくなって、お母さん嬉しいよ。いいかい、エマちゃんは幼なじみなんだからあんたがしっかり守ってあげるんだよ」

 

「任せてよ母さん、絶対に二人とも無事に帰ってくるから」

 

「大丈夫ですよおばさま、村で一番強いレイと一緒なんですもの、怖いものなんてありませんわ」

 

息子の頼もしい一言と幼なじみからの信頼を目の当たりにしペルラは表情を綻ばせた

 

「なら、今日はレイの大好きなシチューを作って待ってるからね、力を合わせて頑張ってくるんだよ」

 

こうして母と村長に送り出され、二人は儀式へと足を踏み出して行った

 

*

 

橋を渡り少し歩くと頂上へと続く洞窟への階段が見えた。そこから上を見上げればはるか高くそびえる神の岩が見て取れた

 

「『我らイシの民大地の精霊と共にあり』…か」

 

「ん?」

 

「おじいちゃんから聞いたの、あの神の岩には大地の精霊さまが宿ってるんだって」

 

「あー俺もテオじいちゃんからよく聞かされたな」

 

「小さい頃から16歳になったら神の岩に登って大地の精霊さまに祈りを捧げるんだって言われてきたけど…こんなしきたり誰が考えたのかしら?一人前になる前に崖から落ちて怪我でもしたらどうするのよ」

 

「うーん…やっぱり厳しい儀式を通じてでも伝えたいことがあるんじゃないかな」

 

「本当にレイが同じ日に生まれたことが唯一の救いだわ、独りでだったら絶対めげてるもん」

 

「確かに、誰かと一緒にいた方が頑張ろうって気になるよね…ってどうしたルキ?」

 

「ヴー!ワンっワンっ!」

 

とりとめのない会話をしていると突然ルキが吠え始めた。その視線の先を見てみると

 

「ま、魔物!?」

 

「おースライムだ」

 

3体のスライムの登場に驚くエマとは対照的にレイの態度は極めて落ち着いたものだった

 

「こっちに来るわ!」

 

「んー大丈夫だと思うよ」

 

そういうとこちらへ向かいかけていたスライムたちはレイの姿を見ると一目散に逃げていった

 

「ほらね大丈夫だった」

 

「すごいわね…レイが強いのは知っていたけれど、見ただけであんなふうに逃げるなんて」

 

「魔物は人間よりも感覚が鋭いからね、自分よりも強いと思った相手にわざわざ攻撃したりはしないんだよ」

 

レイは幼少の頃より世界中で旅をしていた祖父のテオから手ほどきを受けており、10歳を超えてからは村の外で魔物と戦い始め集めた素材を村のために役立てたり、月に一度来る行商に売ることで家の蓄えとしていた

そのため1年ほど前から村の周辺に現れるような魔物ではもはやレイの相手にはならなくなっていたのだ

 

「にしても妙だね、今まで神の岩に魔物が出たなんて話聞いたことなかったんだけど」

 

「確かにそうよね…さっきの魔物あの洞窟から出てきたのかな?」

 

今までにない出来事にエマは不安げな顔を浮かべるが、安心させるようにレイが言葉をかける

 

「悩んでいても仕方がないし先に進もう。大丈夫だよエマちゃんのことはちゃんと俺が守るから」

 

*

 

二人は洞窟の中へと進み険しい道を歩いていく。やはり洞窟の中にも魔物はいたがレイの姿を見るなり皆道を開けるように逃げ去っていった

そうしてしばらく進んでいくと洞窟を抜け神の岩の中腹にたどり着いた

 

「見て、真っ白だわ」

 

「こんなに濃い霧がかかってるなんて」

 

二人の目に飛び込んできたのは一面にかかった霧であった。この日イシの村は快晴であったため山の上とはいえ霧がかかることが不思議に思っていると二人の耳に叫び声が聞こえてきた

 

「た、助けてー!」

 

「マノロ!?どうしてこんなところに」

 

「いや、エマちゃんストップ!」

 

駆け出そうとしたエマをすんでのところで止めたレイその視線はマノロの背後にいる魔物に向けられていた

 

「何あれ、霧が魔物に?」

 

「スモークか、実際に見るのは初めてだな…今行くぞ、マノロ!」

 

言うやいなやレイは腰の剣を抜きつつ駆け出した。霧の魔物「スモーク」はレイの姿を見ると狙いを変えレイに攻撃を仕掛けてきた

 

空気を凝縮させ弾丸のように放つスモーク、レイはそれを躱し、ときには剣で斬り払うことで接近する

 

そして間合いに踏み込んだ勢いそのままに剣を振り抜いた

 

「せやぁっ!」

 

レイの振るった剣は魔物の体を捉えたかに見えた、しかしスモークは斬られる瞬間に体を霧散させ攻撃を回避し、そこし離れた場所から様子を伺い始めた

 

「マノロ無事か?」

 

「う、うん。ごめんよレイにーちゃん」

 

「説教は帰ってからおばさんにたっぷりしてもらいな。危ないからエマちゃんのところまで下がってな」

 

「わ、わかった」

 

マノロをエマの元に下がらせたところで強い風が巻き起こった、そうして霧が結集していき魔物となって現れた

 

「もう一体増えた!?」

 

『『シュー!』』

 

先程までレイのことを警戒していたスモークであったが、数の利を得たことで再びレイに攻撃を仕掛けようとしていた

 

(二体同時か。独りでなら余裕もって戦えそうだけど、時間をかけすぎるといつ後ろの二人を狙い出すか分からないな…仕方ない)

 

目を閉じる、深く呼吸をする、そうして意識を研ぎ澄ませ集中していく

 

そして目を開けた時レイの意識は完全に切り替わっていた

 

()()、マノロを頼む。ルキは2人を守れ」

 

左手に片手剣を右手に背中に背負っていた両手剣を手に取り構える

 

一瞬の静寂が辺りを包み込み──

 

ダンッ

 

仕掛けたのはレイの方だった

 

地を這うような低い姿勢で走り出し、二体のスモークへ肉薄する

スモークたちは先程と同じく空気弾を放ちレイを迎え討とうとする体を霧に変えれば

 

(さっき避けられた時、やつの体は完全に霧になってた。けどそこからすぐに体が元に戻ったってことは、恐らく長時間体を霧に変えるとそのまま元に戻れずに霧散してしまうからだ)

 

もしそうでなければ攻撃の瞬間だけ体を実態化させていればこちらは手も足も出なかっただろう。そう予測を立てたが故にレイは両手に剣を持ち接近を試みた

スモークの攻撃をかいくぐり、右手の大剣を薙ぎ払うように振り攻撃を仕掛ける、案の定スモークたちは体霧散させることでこれを躱す

しかしレイの狙いは()()()()()()()()()()この状況であった

 

「まず一体目!」

 

片方のスモークが実体化する瞬間左手の剣を投擲する。すると今度はスモークの体に深々と剣が突き立ちその動きを止めた

 

『シュオオオオ!?』

 

片方に攻撃が命中したことに驚いたのかもう片方のスモークも動きを止めた

その隙を見逃さずレイは左手に魔力を集中させ呪文を発動させる

 

「メラ!」

 

手のひらから小さな火球が放たれスモークに命中する。しかし致命傷には至っていなかった。だがこの時点で既に勝負は決していた

 

「今度は斬るぞ」

 

二体のスモークに迫るレイ、両手剣を担ぐように構え全身に魔力を流し一時的に膂力を強化する

 

すなわちそこから放たれるは

 

「これで終わりだァ!!」

 

霧の魔物をまとめて両断するぶん回しの一撃である

 

*

 

「いやー何とかなってよかった」

 

「お疲れ様レイ!」

 

「すっげー!レイにいちゃん強えー!」

 

スモークを倒しマノロを助けたレイは二人からの賞賛を受けつつ剣を鞘に収めた

 

「それはそうとマノロ、一体こんなところで何してたんだ?」

 

「お母様も姿が見えなくて心配してたわよ」

 

「うぅ…実は、先回りしてエマねーちゃんをおどろかせようと思ったんだ。でも魔物に襲われて…」

 

どうやらマノロはイタズラを仕掛けようとして神の岩に登り魔物に襲われたのだと言う

 

「それにしても変だな、神聖な神の岩にこんな魔物が現れるなんて」

 

「やっぱりそうよね…それはそうとダメよマノロ、こんな危ないことしたら!」

 

「この先はさらに道も険しくなるからな…ルキ悪いけどマノロを村まで送り届けてくれるか?」

 

「ワンっ!」

 

「いい子だ。マノロ、村に帰ったらおばさんにしっかり謝って説教を受けてきな。それだけ心配をかけたんだから」

 

「うんわかったよ」

 

そうしてマノロはルキを引連れ麓へと続く道を戻って行った

 

「マノロ見つかって良かったわね」

 

「うん、道中は弱い魔物ばかりだったし、ルキがいれば安全にかえれると思うよ」

 

「そうね…それにしても」

 

「なに?」

 

「レイったら集中しすぎて口調が少し荒くなってたわよ」

 

「え、嘘、またあの癖出てたの!?」

 

「うん、あたしのこと呼び捨てにしてたし」

 

まじかー…と頭を抱えるレイ、エマが不快な思いをしていないのはお互いに分かってはいるのだが、本人的には少しだけ恥ずかしさを覚えているのである

 

「普段よりも男らしくて私は嫌いじゃないわよ♪」

 

「柄じゃないからあんまりいじらないでほしいんだけどな…」

 

くすくすとエマにからかわれながらさらに奥へと歩を進める二人

 

頂上は目前まで迫っていた

 

*

 

程なくして二人は頂上へとたどり着いた

 

「惜しいなぁ…天気が良かったらきっと絶景が見られたはずなのに」

 

「うん、そうだね…」

 

あいにくの空模様にぼやくエマをよそにレイは奇妙な感覚に襲われていた

 

(なんだろう、すごく胸騒ぎがする)

 

「レイ?どうかしたの?」

 

レイの様子を不審に思ったエマに声をかけられる。しかし、レイの焦燥感は募る一方であった

 

そして─

 

「っ!?エマちゃん上だ!」

 

「えっ」

 

レイが叫ぶと同時に曇天の空から何かが飛来した。それは薄紫色の羽に身を包んだ大きな鳥の魔物であった

 

「キエぇぇぇ!!!」

 

「なに、あの魔物…」

 

「ヘルコンドルか!ここら辺の地域にはいないはずなのに!?」

 

魔物の名はヘルコンドル、レイはかつて祖父から受け取った魔物図鑑から様々な魔物の特徴を目で見て記憶していた。

目の前の魔物はすぐさま二人に攻撃を仕掛けてきた

 

「危ないっ!」

 

「きゃあっ!」

 

レイは間一髪でエマを抱えながら攻撃を躱す、しかし体勢が崩れた二人に向かってヘルコンドルは容赦なく牙をむいた

 

「ぐあっ!」

 

「レイ!」

 

何とか起き上がり両手剣の腹でヘルコンドルの一撃を受け止める。しかし不十分な体勢で受けたために、レイは大きく弾き飛ばされてしまった

 

「レイ!大丈夫なの!?」

 

「くそっ…っ!エマちゃん後ろだ!」

 

「え?」

 

レイの視線の先では旋回してきたヘルコンドルがエマに凶爪を振り下ろそうとしていた

 

「あっ…」

 

(間に合わないっ!)

 

もはやエマに回避することは不可能

 

(だめだ!嫌だ!)

 

レイが今から走ったところでその手はもはや届かない

 

()()()()()何も失わないって誓ったのに!)

 

ヘルコンドルの一撃は彼女の体を引き裂き命を奪い去る

 

 

 

はずだった

 

 

勇気を胸に いかづちを手に

 

「っ!────!!!」

 

レイの叫びと共に左手の紋章が輝き、天から降り注いだ雷がヘルコンドルを穿った

 

「ギエぇぇえ!?」

 

雷撃を受けたヘルコンドルは断末魔をあげその体は塵へと返った

 

「はぁっはぁっ…エマちゃん!」

 

未だに状況が呑み込めなレイではあったが、すぐにエマの無事を確認するために駆け寄って行った

 

「エマちゃん!エマちゃんっ!!」

 

「んぅ…レイ?」

 

エマの体に怪我をした様子はなく、気絶で失われた意識もすぐに戻ったことでようやくレイは安堵した

 

「はぁ〜良かったぁ…」

 

「レイが助けてくれたの?あの魔物は?」

 

「それが…」

 

レイは先程起こったことをエマに説明した

 

あと少しでヘルコンドルの攻撃がエマに襲いかかっていたこと

 

助けようとしても間に合わなかったこと

 

咄嗟に浮かんだ言葉を叫ぶと左手のアザが輝き空から雷が降り注ぎ魔物を撃ち落としたこと

 

全てを聞いたエマは不思議そうに首を傾げた

 

「不思議ね、まるでレイが雷を呼んで魔物を倒したみたい」

 

「うーん、どうなんだろ。必死すぎて自分でも何言ったか覚えてないしなぁ」

 

「たとえ偶然だったとしても、レイが居なきゃ起きなかったことだとあたしは思うわ」

 

「だから、ありがとうレイ」

 

「…うん、俺もエマちゃんが無事で本当に良かった」

 

心からの感謝をレイに述べるエマ

そんな二人の無事を祝うかのように空を覆う雲が晴れ始め、神の岩の頂上に光が降り注いだ

 

「わぁ!レイ見て!」

 

「すごい…!」

 

そこからの眺めはまるで世界が見渡せるかのような景色だった

 

晴れ渡る空には虹がかかり、はるか遠くにはどこまでも広がる大海原が光り輝いている

村の中でしか暮らしてこなかった二人にとって余りにも広大な世界がそこには広がっていた

 

「世界ってこんなに広かったんだ」

 

「うん。今ならご先祖さまが儀式で何を伝えたかったのかはっきりわかるよ」

 

感動の余韻に浸っていた二人であったが、しばらくするとエマが肝心な事を思い出した

 

「あっそうだお祈り!色々ありすぎて祈りを捧げるのを忘れてるわ私たち!」

 

「そういえばそうだね」

 

「もうレイったら、さっきはあんなにかっこよかったのに、こういうところは本当にぼんやりしてるんだから」

 

「あはは、ごめんごめん。それじゃあちゃんとお祈りしてから村に帰ろう」

 

「ええ、そうね」

 

こうしてお祈りを捧げた後、二人はイシの村への帰路へとついたのだった

 

*

 

村に帰った二人を待っていたのは村人たちの暖かな祝福であった

村長を含めて幾人かは神の岩の頂上に雷が落ちたのを目撃しており不安を抱えていたようだったが、余計な心配はかけまいとしたレイとエマは雷が魔物から自分達を助けてくれたことだけ伝えた

 

そして二人はレイの家で待つペルラにも儀式の報告をするために帰ってきた

 

「ただいま母さん」

 

「おばさま、ただいま帰りました」

 

「おかえり二人とも。無事に成人の儀式を終えたようだね、村中で噂になってるよ。エマちゃん、うちのレイが足でまといにならなかったかい?」

 

「酷い言い草だな…」

 

「そんなことないわおばさま!レイったら凄かったのよ!」

 

そうして少し興奮気味な様子で儀式での出来事をペルラに語るエマ、しかし頂上での話を聞いたペルラは驚愕の声を上げていた

 

「なんだって!?レイのアザが光って魔物を退けた?…そうかい、そんなことがあったんだね」

 

「母さん?」

 

母のただならぬ雰囲気にレイも押し黙ってしまう。そしてペルラは言葉を続けた

 

「考えないようにしていたけど、おじいちゃんの言う通り運命には逆らえないのかねぇ…ついにあのことを話す時が来たようだね」

 

そういうとペルラは棚の中からあるものを取り出した

 

「これは?」

 

「綺麗な首飾りね」

 

「成人の儀式を終えたらこれをレイに渡すようおじいちゃんから頼まれててね」

 

初めて見る、しかし何故か懐かしさを感じる首飾りを受け取った

 

この時レイの中には強烈な予感があった

 

「実は16年間村のみんなにも言わないで、ずっと黙ってたことがあるんだ」

 

この首飾りを受け取ったら、続く母の言葉を聞いてしまえば

 

「あんたはね」

 

引き返すことの出来ない運命が動き出してしまう

 

「勇者の生まれ変わりなんだよ」

 

そんな予感が

 

───────────────────────

 

とうとう運命が動きだしたね

 

頂上では咄嗟に手助けをすることが出来たけど…やっぱり()()()とは少し違った出来事が起こり始めているね

 

けど、きっと大丈夫

 

今度こそ俺の…俺たちの力で、失うはずのものをみんな救ってみせよう

 

だから信じてるよ、レイ

 




何とかプロローグを書き終えました…でも書いてる間すごく楽しかった!
独自設定だったり特技や呪文に対しての独自解釈だったりが多分に含まれていますが、矛盾だったりさすがにその解釈は無理じゃねみたいな指摘などを頂けると大変助かります
さてレイに力を貸す謎の存在や夢に見る御伽話の正体とはいったい…
感想や評価などお待ちしています!

PS レイの片手剣×両手剣の二刀流は完全に自分の趣味ですあしからず

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