────青く 広く 澄み渡る空
私たちを見守る この空
この空を 黒い星が包む時
終焉は訪れる
獣は狂い 人は喚き
地を這うは 生命の化身
飛来せし終焉は
この村を 破滅へと追いやる
窮地に舞い降りるは
14つの流星
流星 村を窮地から救い
塵となって消えた─────
──────そこは、大海原に浮かぶ「イバラ大陸郡」。モンスターと呼ばれる化け物と、人間達の島々。
モンスターと人間は、日々争い、命を落とす。儚く脆く、そして美しい。命の尊さは、失われることにある。
旅の舞台はイバラ大陸郡の南に位置する「マカラカ村」。人々は「白星様」と、その眷属と呼ばれる「十四流星」を崇めている。
旅の主人公は「ヒロ」。駆け出しの片手剣使いだ。心優しい青年で、人の命のためなら、自分の命なんてどうだっていいと思うような人間だ。
マカラカ村にはとある伝承がある。空を覆う星が、村を滅ぼす。ただそれだけの伝承、ちっぽけで壮大な伝承だ。
ヒロはこれから、普通のハンターだとは思えないような、長く続く旅を送ることとなるだろう。その中で、彼を育ててくれるものがあるはずだ。
君には、その様子を観察して欲しい。イバラ大陸郡の、小さな村で育って行く、とある青年の物語を。
…さぁ、彼が目覚める時だ──────
ゆらゆらと揺れ動く船の中で、僕は今目覚めた。身体を起こし上げて、部屋を見回してみる。丸い窓から見える青い海と星のきらめく夜空、壁にかけられたハンターナイフ、机に立てかけられた親子の写真。その一つ一つが、僕がハンターになったことを実感させる。
僕の名前は「ヒロ」。つい最近ハンターになったばっかの、ひよっこだ。故郷を出て、中央国家と呼ばれる島でハンター登録を済ませて、今は僕の拠点のある村へと向かっている最中。
小さな村から来たものだから、大きな船だとか、沢山人がいる場所だとか、初めて見るものばっかで、正直疲れている。今夜はゆっくりと休んで、明日に備えるつもりだ。
…ただ、少し目が覚めてしまったものだから、なにかして時間を潰したい。
そうだ。そういえば、船の甲板から見る夜空は絶景だって、村の船乗りが言ってたっけ。ちょっと外へ出てみようかな。
階段を昇って、ドアを開けて。外へ出ると、涼しい風が頬を撫でた。ひんやりとした空気が、肺の中を満たしていくのがわかる。
ふと顔を上げてみると、満天の星空が僕を迎えていた。部屋の中から見える切り取られた風景とは、大違いだ。そこに広がっていた空は、とても暗くて、でも眩しくて、とても綺麗だった。
先進大陸という物は凄いもので、海だけでなく空にまで船があるらしい。よく目を凝らすと、空の船がいくつかあるのが分かる。いつか、空の船にも乗ってみたいな。
そんなことを思っている間に、僕の瞼は重くなってきた。
目を擦りながら、僕は部屋へと帰っていった。
空には、大きな星が輝いていた。
翌日。拠点となる村に、到着する日。
部屋の窓から外を見ていると、島が見えてきた。
ワクワクとした感情が、胸の中で高まっていくのがわかる。あの島で僕は、ハンターとしての人生を送るんだ。
船員さんから貰ったこんがり肉を食べながら、僕は期待に胸を踊らせていた。
トラブルは、その時に訪れた。
「「モンスターがっ、モンスターが来たぞーッ!!」」
船員さんが大きな声でそう叫ぶと同時に、声の主とは別の船員さんが僕の部屋のドアを叩いた。
「おいボウズ!お前、確かハンターだったよな!手を貸してくれねぇか!」
話を聞いたところ、どうやら水竜ガノトトスが船を襲撃しているらしい。
ただ、僕はまだハンターになりたてで、ガノトトスなんて倒せるわけが無い。
でも、そんなことは関係ない。人が死んでしまうと言うのに、じっとしている訳には行かない。
僕はハンターナイフを急いで装備して、船員さんの後をついて行き、船の上へと出た。
そこに居たのは、水竜ガノトトスと、戦っているハンター、倒れている船員さんだった。
ガノトトスは僕が思っていたよりも大きくて、とても怖かった。正直、逃げてしまいたいだなんて思ってしまった。
「そこの片手剣ハンター!手を貸してくれ!見たところ新人のようだが、安心しろ!俺たちがフォローしながら戦う!だから少しでも多くこいつにダメージを与えろ!」
既に戦っていた大剣を担いだハンターが、僕を呼び、指揮を執る。恐怖で動かない足を動かして、ガノトトスへと攻撃を計る。
僕のハンターナイフは、ガノトトスの鱗に容易く弾かれてしまった。刃が通らないんじゃ、ダメージもクソもない。
折角来たのに役に立てないんじゃないか、僕もそこに倒れている船員のようになってしまうんじゃないか。たくさんの緊張、恐怖、圧迫感が僕を襲う。やっぱり、僕にハンターなんて、まだ無理だったんだ…。
そう諦めかけた時だった。
「おい!アブねぇっ!!!」
その声に気付いて顔を上げた時、ガノトトスと目が合った。ガノトトスは口を大きく開けていて、まるで今からブレスを吐くようだった。
あぁ、終わったな。そう思った。
人間とは面白いもので、勝ち目がなくても、こんな時に力が湧いてくる。
死にたくない、その一心で、僕はハンターナイフを握った。ガノトトスがブレスを吐くその一瞬、横に回避し、走りながらガノトトスに近づく。
刃が鱗に弾かれてしまうなら、狙うべきは──!!!
僕はガノトトスの顔の近くまで来たところで、ハンターナイフを勢いをつけて振り下ろした。
狙ったのは、ガノトトスの目だった。
ハンターナイフはガノトトスの目に刺さって、ガノトトスをひるませた。
「チャッ、チャンスだ!!今すぐ畳みかけろッ!!」
大剣を担いだハンターが他のハンターに指揮を執る。ハンターは一斉に動きだして、ガノトトスにダメージを与えていく。
間もなくして、ガノトトスはハンター達に討伐された。僕はその間、ずっと呆けていた。
ハンターナイフが目に刺さる感触、初めて感じた「命を奪う」感触。船の揺れと混じって、ほんの少し気持ち悪くなってしまった。
「お前、やるじゃねぇか!」
俯きながら吐き気を抑えていると、体験を担いだハンターが僕の背中を強く叩いてそう言った。
「痛ッ…!」
バシッと音の鳴るほど強く叩かれた背中は少しヒリヒリとして、だけど、気持ち悪さをほんの少し和らげてくれた。
「おい、片手剣ハンター。これ、お前のだろ?」
体験を担いだハンターが、ハンターナイフを僕に渡してきた。僕は即座に持ち手の部分を確認した。
「you are my hero」と刻まれた持ち手。間違いない、僕の物だ。
ガノトトスを倒せたからか、ハンターナイフが帰ってきたからか。なぜかは分からないけど、僕の瞳からは涙が溢れてきてしまっていた。
大剣を担いだハンターさんたちを困惑させてしまいながら、僕は泣き続けた。
それからしばらくして、船はまた動き始めた。その頃には僕ももう泣き止んで、船の修理を手伝っていた。
「おいボウズ、お前の目的地が見えてきたぜ。」
船員さんの指さす方向を見ると、小さな村が見えてきた。海に面した、小さい、だけどもどこか賑わっているような村。
先程まであったことが嘘のように、僕の心は弾んでいた。
それからさらにしばらくして、船の修理も終わる頃に、船は村の船着場に止まった。
自室から自分の荷物と写真を持って、僕は島へ上陸した。
木製のアーチ状の門には「マカラカ村」と書かれていた。
僕の冒険は、ようやく始まるんだ。
そんなふうに、僕の心は踊っている。
どうも、作者の翡翠星と申します。
Twitterでモンハンの創作をしているものです。
この度は、私の創作小説を読んでくださり、誠にありがとうございます。
これからのヒロくんの旅路を、これからも見守っていただけると幸いです。