話し合いは長く続いた。
納得できる事も、できない事もあった。
それが曲がりようのない現実であり事実である事も理解した。
禍根もあろう。
怨恨もあろう。
しかし、今は常時ではなく非常時。
聖杯戦争の真っ只中。
死んでしまえば、想いは消える。
「分かったわ。 貴方は、士郎でもあり村正でもあるのね。 2人の意識は混ざり合って、新しい衛宮士郎になった。そう言う解釈でいいのかしら」
「まあ、そう言うこったな」
積年の恨み故に現実を受け止めるのは難しい。
けれど、さすが最高傑作と謳われるアインツベルンのホムンクルス。
「そう」
イリヤスフィールは端的に一言溢すと立ち上がる。
「貴方とどう接していけばいいのか、私にはまだ分からない。この感情─憎悪は簡単には消せない。だから、見極めさせてもらうわ。 この聖杯戦争で、貴方がどんな人間なのか」
力強く、その容姿とは見合わない凛々しい眼差しが士郎を見据える。
士郎は応じるように立ち上がると、一言。
「好きにしな。 唯一の肉親であるのは確からしいからな。 まあ、なんだ。 いつでも飯、食いに来ていいからな」
照れる士郎を見て微笑む武蔵。
「普段はお爺ちゃんみたいな雰囲気なのに、こーゆー場面では年相応なのね」
からかうような一言に、士郎は武蔵の頬をつねり反撃する。 そんな二人の姿を見て、初めて笑顔を見せたイリヤスフィールは、胸に優しい温かさが灯るのを感じてその場を後にした。
○
いつもと景色が違って見える。
燻んだ灰色の景色が今はこんなにも色付いて見えるのは、私の心情が変化したからなのかな。
初めは殺してやろうと思った。
だから褐色のアーチャーの提案を呑み込んだ。
けれど、今はなんだか違う。
胸がポワポワしてて温かい。
この感覚は嫌いじゃない、むしろ好き。
足取りがとっても軽い。
跳ねるように、どこまでも飛んで行けそう。
鳥の気持ちってきっとこんな感じなんだろう。
士郎が言った言葉は、涙が出るくらいに優しくて嬉しかった。
「早くご飯、食べに行きたいなぁ」
あの落ち着く居間で、話に花を咲かせて。
きっと楽しい時間になるに違いないわ。
そう思うと、心が弾んでしまう。
「───えッ」
胸から、手が咲いた。
血を吸って開花するみたいに。
命が、溢れる。
口から、胸から、血が止まらない。
鮮やかな血が、乾いた地面を染めている。
意識が、遠のく。
赤い瞳をした誰か。やめてよ、私からもう、幸せを奪わないで。 お願いだから、、、。
「士郎と、、、ッ、、一緒に、、」
あぁ、消えていく。
命を保つ熱が、血が、意識が。
けれど、この温かな気持ちさえあれば、私はもう、なんにも怖くなんてないんだから。