fate/ideal sword   作:霞露草

8 / 9
襲撃者

 

「いいじゃないか。サーヴァントってのはこうでなくちゃ」

 

結界の起点で、間桐慎二は勝ち誇るような笑みを浮かべていた。

 

「後で萎びた衛宮でも見にいってやるか」

 

傍に控えるのは彼のサーヴァント、ライダー。

面妖な出立ちの女は、何かに気づいた様子で武器を出現させて警戒態勢に入る。

 

「どうした? ライダー」

 

その言葉の直後、科学室の戸が勢いよく開けられる。

 

「は? おい、なんでだよ。 なんでお前動けて。

おい、来るな、来るなよ! 来るなって言ってんだろッ!!!!!」

 

慎二の言葉も聞かずにジリジリと距離を詰める襲撃者。

 

「ひぃッ、ら、ライダーぁ!」

 

必然的にサーヴァントに縋りついた慎二は怯えながら戦況を見守り、そして───。

 

 

 

          ○

 

 

 

階下へ向かう途中にソレは現れた。

 

「あれは、サーヴァント!。 マスターは下がってて」

 

大柄な女だった。目隠しをしている面妖な出立ちは一目で異質だと理解できる。

 

「いざ参る!」

 

刀を抜いた武蔵がライダーに迫る。

二刀が命への最短をなぞり、削り取る。

勝負は瞬きの間に決着した。

武蔵の刃がライダーの霊核を貫いた。

 

「──ッ! この手応え......」

 

貫かれたライダーからは、滴るはずの血が流れていない。 やがてその姿をフードを目深に被った女へと変貌させると、武蔵の顔を凝視し、笑みを浮かべて霧散した。

 

「今のは──。 まあいいわ。 行きましょうマスター」

 

不気味な邂逅に目を背け、慎二の元へ急ぐ。

 

階段を降りた先の廊下に慎二はいた。

何かに怯えているような、一目で正気ではないと判断できる状態だったが関係はない。

 

「テメェ、報いを受ける覚悟はできてンだろうな!」

 

剥き出しの刀身が慎二に突きつけられると、そこでようやく慎二は我に帰る。

 

「ち、違う!違う違う違う違う!僕じゃない僕じゃない僕じゃない!」

 

「とことん堕ちたみてえだな。 テメェの行為は畜生のソレと何ら変わんねえんだよッ!」

 

「だから違う、僕じゃない! 殺したのは......」

 

「ねえマスター」

 

「んだよ、今はそれどころじゃ」

 

「あそこ、見て」

 

武蔵に促され、教室の一角に視線を寄越す。

そこには壁に磔にされ、絶命したライダーの姿があった。首はだらしなく垂れ下がり、至る所が血に塗れている。やがて、ライダーの霊基は消失した。

 

「何者かの襲撃か」

 

先刻に接敵した女の姿が浮かぶ。恐らくはマスターも学校にいたのだろうことは容易に想像ができた。

 

「分かんねえことを深く考えても無駄なだけだ。今は──」

 

断罪の矛先を慎二へ──。

しかし再び視線を寄越した先に、慎二はいなかった。

 

「どうやら逃げられたようね。 追う?」

 

「いや、今は被害者達を廊下へ運ぼう」

 

生命力を吸われた生徒達は、まだ微かにだが息はある。このまま放置していれば死ぬのは確実。しかし、士郎達には生徒達を助ける術は無い。

 

「衛宮君?」

 

背後からの呼びかけに振り返る。

そこにいたのは遠坂凛。この学校ではちょっとした有名人だ。

 

「それに、サーヴァント」

 

遠坂は僅かに暝目すると、諦めたように溜息を吐く。

 

「戦っていたのは貴方達だったのね」

 

「何で結界内にいたのに意識がある。 テメェもマスターなのか?」

 

士郎の問いに遠坂はあっけらかんと答える。

 

「そうよ。 まあ私のサーヴァント、いなくなっちゃったんだけど。 ほら」

 

マスターであるならば当然所持している令呪が、遠坂凛にはなかった。それ即ち敗退を意味するのだが。

 

「戦いに負けた訳じゃない。急にいなくなったのよ。 まあ私の話はいいでしょう。改めて礼を言うわ。生徒達を助けてくれてありがとう。 後のことは私に任せて貴方達はもう帰りなさい」

 

気丈に振る舞う彼女には振り払えない翳りがあった。しかし、士郎には関係のないことだ。この問い如何によっては。

 

「お前さんのサーヴァントはアーチャーか?」

 

「ええ、そうよ。 私の言うことなんて全く聞かない大馬鹿野郎だったわ」

 

その言葉を聞いて、士郎は学校を後にした。

 

 

 

 

                ○

 

 

 

 

アーチャーの存在が揺らぐ。

 

「あまり時間はないようだな」

 

片腕を抑えながら月を見上げる。

何かを思い出しそうな酷く綺麗な月だった。昔の記憶はほとんど消えてしまったけれど、こびりついたように離れない、薄ぼやけた大事な記憶を振り払うようにアーチャーは歩く。

 

「過去に異変が生じれば未来が揺らぐのは必然。 

だが、私はまだ消える訳にはいかない」

 

傷はやがて魔力で修復される。

けれど、存在力が修復される事はない。

 

「理想と言う名の妄執に取り憑かれた者が行き着く末路は虚無だ。何も成し得ず何者にもなれない。 ならば、そのような無様を私は殺そう」

 

進んで影の道を歩む。

月明かりは、今となっては眩しすぎるから。

だから、避けるように影に溶けた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。