【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!! 作:そとみち
皆様の応援心より感謝です。
【side 八百万】
正直に言えば、彼がここまでやるとは思いませんでした。
今回、私とペアを組んだ峰田さん。
イクノさんとは同じ中学で、親友であるとも聞いています。
あの型破りな方と付き合えるほどですから、時々懐の深さを感じさせることがある方です。お体は小さいですが。
ただ、イクノさんと同じく、下品なことに対しても明け透けなのはいただけません。どちらがどちらに感化されてそうなってしまったのでしょうか。
さて、そんな程度の印象であった彼は、しかしこの試合で私の印象を大きく変えました。
私達がヴィラン側で先にビルに入り、私が個性で作ったバリケードで入り口をふさいでいた時です。
「なぁ八百万、悪いけど捕縛テープ幾つか作れる? その個性で」
「え? ええ、作れはしますが……有効になるのでしょうか? もしもし、オールマイト先生?」
『今回はオッケーとしようか! 八百万少女の個性は万能の道具が作れるものだ! 現実でも手錠とか作ることがあるだろうしね!』
「……だってよ。4本くらい頼むわ。オイラが攻撃、八百万が守りで行こうぜ」
「わかりましたわ。峰田さんの動きはテストで見ています、信頼していますわ。部屋から出て攻め込むおつもりですか?」
峰田さんの出した意見に私は反対しませんでした。
確かに彼の俊敏さは目を見張るものが在ります。昨日の個性テストでも飯田さんほどではありませんでしたが、あの謎の玉を使って飛び跳ねる速度はすさまじい物でした。
だからこそ、私はバリケードの他、相手が入ってきたことを察知できるセンサー類や、起爆式の地雷などを設置することでこの部屋の守りに徹する。作戦としては悪くないと考えたのです。
「あー……いや、オイラはイクノみてぇに索敵はできねぇからな。出過ぎて裏を取られても怖いし、この部屋で基本的に迎え撃とうと思ってる。入ってきた瞬間にオイラが相手を縛るよ。梅雨ちゃんと常闇ならオイラの方が速いと思う」
「……信じていいんですの?」
「駄目だが?」
「は?」
「まだオイラも常闇と梅雨ちゃんの本気を見たわけじゃないし、駄目かもしれないとは常に考えておいてほしいわけよ。八百万は頭もよさそうだし、オイラが駄目でも何とかしてくれるだろ? むしろオイラが信じてるわ」
駄目だったときは任せた、と。
逆にそう言われてしまい、私はむしろ彼への評価を高めました。
自信満々というわけではなく、あくまで未知の相手への対処という点で油断せず。お互いに出来ることを全力でやるということでこの場でできる最適解を出したのですから。
正直に言えば、ヴィラン側に準備された5分という時間は短すぎます。
爆豪さんと飯田さんのように全く打ち合わせをしないのも問題ですが、イクノさんと葉隠さんのようにしっかりお互いの個性のすり合わせをするだけでも時間はつぶれてしまう。
ならば、お互いが核兵器を守るために出来る最善を成すことで、お互いの持ち味を活かす。
いい手です。そこまで考えていらっしゃるかは分かりませんが。
「とりあえず、オイラのもぎもぎはオイラ以外にはくっつく効果がある。絶対に触らないでくれよな、マジで1日は剥がれないから」
「わかりました。触らずに相手に対処できるものを創造しておきますわ」
「ん。入り口まわりと天井、あと柱のあたりにいっぱいくっつけておくから気ぃ付けてくれな」
そうして峰田さんが部屋の天井や壁、柱に個性の玉を設置し、私は核兵器周りにモーショントラップを配置して準備は完了いたしました。
訓練が始まり、ヒーロー側のお二人がこの部屋を目指して迫ってきています。
二人一緒に、ではないようです。インカムを使って連携なさっているのでしょう。
相手の生体反応を拾うレーダーを創造し、それで位置は把握できていました。
「峰田さん。常闇さんが8時方向の窓の外から飛び込んできそうですわ。蛙吹さんも逆側におります、外から奇襲を考えているようですわね」
「オッケー。そこまでわかれば十分。助かるぜ八百万」
相手が突入して来そうな窓をわたくしが示せば、峰田さんはその傍の柱の陰に隠れました。
そして、黒い影が部屋を覗き込んだ次の瞬間、常闇さんが窓をたたき割って突入して来ました。
私はいつでもトラップを発動できるようにワイヤーを握り、峰田さんの動きを待ちます。
────いえ、表現が正しくありません。
待とうとしたのです。
ですが。
「いざ……ッ、なにッ!?」
「ホイ一丁あがりィ!」
待つまでも、無かったのです。
常闇さんが突入した瞬間に、峰田さんが部屋の中を跳ねまわりました。
最早目にもとまらぬ速度で、常闇さんにむけて玉を投擲したのです。
それもただの玉ではなく、わたくしがお渡しした確保テープの両端に個性の玉をつけたものを、回転させながら凄まじい勢いで。
それを咄嗟に迎撃しようとした常闇さんの反射神経も流石でしたが、しかし黒い影が玉の片方を弾こうとした瞬間に、そこがくっついて支点となり、常闇さんの体を綺麗に一周。
見事に確保テープが常闇さんのお体に縛りつけられました。
「ケロ……!!」
「当然タイミング合わせてくるよなぁ!! わかってるんだぜ梅雨ちゃんっ!!」
そしてその瞬間、核兵器を跨いだ逆側に蛙吹さんが現れました。
彼女もインカムで常闇さんとタイミングを計っていたのでしょう。一瞬の時間差を置いて、部屋の逆側の窓から突入してまいりました。
峰田さんは距離がある、今度こそわたくしが──────そう思ってワイヤーを引っ張り、ネットランチャーを彼女に向かって放ちます。
しかし、カエルの個性を持つ彼女は素早く飛び跳ねてネットランチャーを避けてしまわれました。
もちろん、私の手札はそれだけではありません。しかしこの部屋の中で、素早い動きの蛙吹さんを捉えられる武器は何を────と、考えたその隙に、でした。
「『跳峰田』ッ!! 梅雨ちゃんも逃がすかよォ!!」
「ケロッ!? くっ…!」
峰田さんが凄まじい速度で壁を、天井を、床を跳ね飛び、蛙吹さんに飛び込んでいきます。
そして先ほどと同様に、確保テープのついた玉を投げて……しかし、蛙吹さんに回避されてしまいました。
蛙吹さんはあの玉の恐ろしさを理解していたのでしょう。テープにも巻かれるまいと、大きく後ろへ跳躍したのです。
増強系でないわたくしからすれば蛙吹さんの動作は恐ろしい速度でした。しかし、峰田さんはさらにそれを上回ります。
「へっ! こうまで近づけば舌での反撃は難しいよなぁ梅雨ちゃんっ!」
「峰田ちゃん……いやらしいわ、この間合い」
「心にグサっとくるセリフはやめろよぉぉ!?」
さらに峰田さんが飛び跳ねて蛙吹さんに接敵。
それを迎撃するために蛙吹さんが廻し蹴りを繰り出したところで、峰田さんが個性の玉を蛙吹さんに投擲。
とうとう避け切れず玉を食らった蛙吹さんが思わずそれに手を伸ばし……自分の胸と手がくっついてしまったことから、着地の体勢が崩れます。
舌を伸ばして柱に巻き付けて自分の体を引っ張り逃れようとしたところで、相手の手札をすべて切らせた峰田さんが3投目の確保テープ。
まるで詰将棋のように、最後は蛙吹さんの体にも確保テープが巻かれ、相手チームはお二人とも行動不能となったのでした。
『ヴィランチーム WIN!! どっちのチームも悪くなかったぜ!!』
「っしゃオラァァァ!! オイラ達の勝利じゃーーーーい!!」
「……不覚」
「流石ね峰田ちゃん。私が立体機動で負けるなんて、ケロ」
「────────」
私は、ほとんど何もできませんでした。
いえ、バリケードを設置したり、トラップを設置はしていたのですが……それらを有効活用する前に、峰田さんが全て終わらせてしまいました。
凄まじい機動性。閉所であればあるほど、峰田さんの玉で跳ね飛ぶあの動きは有効なのでしょう。
必ずくっついてしまうという力も万能です。極論、あの玉が体のどこかにくっついたらほぼ勝負が決まってしまうような物。
そして、その個性を十全に使いこなしていた峰田さんの戦闘技術。
ああ、これが。
これが、首席の実力、なのですね。
「八百万ー! 捕縛テープと索敵めっちゃ助かったー! 勝利のハイタッチしようぜハイタッチ!!」
「は、ハイタッチですか? ええと、こうですか?」
「そうそう─────ああっと身長差で思わずハイタッチがパイタッ」
「お下品ですわ!!」
「ふんげっふ!!」
彼の手が私の胸に向かってきたので、準備していた掌でビンタを返してやりました。
なるほど、間違いなくイクノさんの親友ですねこの方は。
クラネスハインド様よりファンアートを頂いたので紹介させていただきます!
①自撮りするセンちゃん
【挿絵表示】
②自撮りを峰田に送ったセンちゃん
【挿絵表示】
自撮りを峰田に送付する作中のシーンを描いていただけました。
幾野くんと峰田くんの理解度が完璧すぎて震える。
絶対こんな感じでした。峰田……お前のメッセージアプリの画像一覧が怖いよ……。
ファンアート心より感謝申し上げます。有難うございました!
※考察※
原作タイアップ漫画「チームアップミッション」にて、最速のヒーローであるホークスと緑谷・常闇・峰田がひょんな事から追いかけっこをするという話があります。
その中で常闇の飛行も緑谷のスピードもさらっと避け切ったホークスですが、狭い路地裏に誘導された後に、
・峰田単独で
・仲間の手助けなしで
・【跳峰田】による360度オールレンジ跳躍により
・逃げる際中のホークスの背中に一度とりつく
という離れ業を見せています。
その時は羽根を掴んでしまったため逃れられますが、その後はホークスも警戒したのか3人と距離を離して簡単に追いつかれないようにしています。
どう考えてもヤバイ。
つまり閉所、狭い空間ならば峰田はトッププロの速度も上回る、という認識でこの作品は書かれています。かしこ。