【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!! 作:そとみち
「なんだこれ」
夜の寮の共用スペースのソファで、俺は机に白紙を広げて首を傾げていた。
新しいチームアップミッションの封筒が届いたのだが、中に入ってた紙がただの白紙だったのだ。
なんやこれ。封入ミスかな?
表を見ても裏を見ても、ウォールハックで透かして見ても何もない。えー? 明日これ先生に聞いてみるべき?
「む。何を狼狽している幾野」
「お、常闇。いや……チームアップミッションの手紙が来たんだけど白紙だったんだよ。封入ミスかなこれ」
「ほう……どれ、貸してみろ。これはこうするものだ」
常闇が机の上に広がっていた白紙を手に取り、そして何故か急にジッポライターであぶり出した。
……え?
お前なんでライターなんて持ってんの!?
しかも常備!? えっ嘘……未成年喫煙はマジでヤバいって!
相澤先生にばれたら除籍処分だぞマジで!! 嘘だろオイ!? いくらタバコがカッコイイからってお前!?
「と、常闇! 俺は何も見なかったことにする! けど未成年喫煙はマジでヤバいから!! ……その、何か悩みがあれば相談してくれよ、ダチだろ俺ら!?」
「何の話だ」
しかし常闇はきょとんとした顔。
なんでライターもっとるねん! と聞けば、万が一
……ん? んん??
「いや常闇。光源を持つにせよライターじゃ大した光になんなくね?」
「…………そのような解釈の余地がないとは言わぬ」
「普通にLEDライトとかでよくね? 火を使うにせよ万が一のボヤとかあるし」
「……貴様の意見を否定はしない」
「あれか? ジッポライターカッコいいから持ち歩いてる的な……」
「五月蠅いぞ」
図星だったらしい。ンモー! 紛らわしい事をするんじゃありませんよー!!
それはそれとしてマジで万が一寮内でボヤでも起こしたらヤバいので持ち歩かず安全に保管しておくように諭しといた。
お前の趣味は欠片も否定しないけどここ寮で俺は寮長だからさ。常闇もそこには納得してくれた。
でまぁ話は冒頭に巻き戻り、あぶられた白紙の手紙に文字が浮き出してきた。
「おお! すげー! これあぶり文字っつーんだっけ? レモン汁とかで文字書くと……ってやつ」
「幼き頃によくこれで遊んでいてな。紙に特有のにじみ皺があった。しかし幾野、貴様はウォールハックを使えば読めたのではないか?」
「んー、基本的にウォールハックは無視するだけだからな。あぶり文字が書いてあるって知らないと紙ごと無視しちゃうからダメなんよ。俺も今知った意外な弱点」
「成程。……さて、しかしこれは……俺にとっても無関係な内容ではないな」
常闇が見事に見破ったあぶり文字を読めば、なんか漢字とカタカナだけで書かれた文章。
エクトプラズム先生かな?*1
で、呼び出されてるのは俺と常闇、そして緑谷。ほーん……面白い組み合わせ。
緑谷はパワーとスピード、常闇は万能、俺は奇襲支援特化。
いいメンバーだと言えるだろう。お互いにやれることが広いからかなり連携が取りやすそうだ。
フッと笑う常闇に俺も笑顔を返し、緑谷にも日時を伝えて俺たちはチームアップミッションに3人で臨むことにした。
それはそれとして。
「なんで集合場所が暗号形式で書かれてんだよクソッ!!」
「うーん……あ、もしかしてこれ、この町の事を示してる……かも?」
「アナグラムはどうだ? カタカナの割合が奇妙に多いぞ」
集合場所も集合時間も暗号で書かれてたから解読に時間がかかったよクソがよ!!
さて指定の日時場所についた。
『満月ノ夕刻ニ深淵デ待ツ』とか書かれてたけど普通に日時で書いてくれよ。試されてるのか?
「ここか」
「記された暗号が正しく解読できていればな」
「なんだか物々しいね……」
「扉に刻まれてる模様なんだこれ。ガッシュベルの魔本の表紙か?」
「他出版社の作品はやめよう??」
なんか魔術書の表紙みたいな物々しい扉を開いて俺たちは中に入って行った。
さて中に入れば……なんか顔に単眼が掛かれた暖簾を下げて白いローブを着ている人たちと、その中央に五芒星の魔法陣のようなものがあって。
で、ろうそくで光を取っており……呪術的な道具が飾られて……その中央には漆黒のスーツを着て片目を眼帯で隠した男がいて。
ああそうか。
カルト教団か。
「ダイブセンサーの録画モードON。強制捜査に踏み切ろう緑谷、常闇。カルト教団だぜコイツら」
「判断が速いよ幾野くん!? でも僕も知らないヒーローだ……ビルボードチャートには間違いなくいなかったはず。新人さんかな、チェック漏れてた……!」
「闇の饗宴に相応しき空間。ここは……」
「フフ……聞きしに勝る唯我独尊だなイグジスト。我が名はオッドアイ……この世界ではそう呼ばれている」
「中二病か、なるほどね」
「幾野くん少しくらいは話聞いてあげよう?」
フムOK。完璧に理解したわ。
とりあえずこのオッドアイとか言う中二病のヒーローが俺たちを呼んだってとこまではわかったわ。
人の趣味にケチはつけないけどそういうのは20歳になる前に卒業しとけって。常闇はまだ高校生でちっちゃいし可愛いから許されてるけど20歳超えて続いてたらそれはもう共感性羞恥モンスターになるんよ。
単眼マスクにローブの人たちがサイドキックなんだって。大変ですね。労働環境に不満があったらラーカーズのサイドキックとかどうです??
「汝らが目指すもの……それはこの世界の言語で形容するならば
「そろそろ俺帰っていい?」
「僕もちょっと帰りたい」
すごい中二がかった長ったらしいセリフを聞かされて俺は眠くなってきた。
なんなん。このオッドアイさんは俺達に何をさせたいん。
タイムイズマネーなんすよタイムイズマネー。この辺シビアだよ俺は。マウントレディにどれだけ日頃こき使われてると思ってんだ。
「クク……話は単純だ。汝らの闇を───────其の身を以て私へ示せ!!」
しかし、話の流れで急になんかオッドアイがこちらに突撃して、手を振りかぶってくる。
なるほど、これは分かりやすい。
力試しってわけね!!
その攻撃で俺たち3人の思考は一気に切り替わった。奇襲に対して即座に反応できる程度には実戦経験を積んでいる。インターンに真っ先に出向した俺らだからこそ。
「デク! ツクヨミ!」
「うん! フルカウル……25%っ!!」
「ダークシャドウ!」
『アイヨッ!』
「えっあっちょっと待って違っ」
俺らは常に授業や放課後の特訓でチームアップでの連携を練習している。
相手の能力が不明だが、だからこそまず遠距離に攻撃が放てて相手の攻撃もいなせる常闇が相手の突進を止める。
動きが止まったオッドアイに俺がダイブワイヤーを投擲、その身に埋めて逃走を許さない。抵抗すればライトニングB・Bで電流を流したっていい。多分力試しだからそこまではしないけど。
で、相手の動きが止まったところで緑谷だ。力試しだから25%で落ち着けたが、それだって十分な威力を感じることはできるだろう。
もちろん緑谷だってヒーロー相手に拳をぶつけるつもりはない。拳をオッドアイの顔面に振りかぶって─────寸止めだ。
しかし25%だ。寸止めでも衝撃波は発生する火力なので、それで部屋中に風圧が巻き散らされた。
「周りにいるサイドキックの方々! 攻めてくるなら容赦はしないっす!」
「説明を求める。なぜ急に襲い掛かってきたのかをな」
「僕も知らないヒーロー……幾野くん、ダイブセンサーで
「ああ、すぐ調べる。俺もその線があると思ってた」
緑谷がオッドアイを後ろ手に拘束し、常闇はダークシャドウで周囲のサイドキックを牽制。
俺がいつでももう片手のダイブワイヤーを放てるように構えつつ、ダイブセンサーで周囲のスキャンとHNへの接続を試みていると……。
「────すみませんでしたァ!!」
「オッドアイも!! オッドアイも早く謝ってアンタほら早く!! やっぱイグジストガチで強いんだよ人気だけじゃないよあの子!!」
「クハハハハハ!! 私の個性『
「ダメだあのバカ話聞いてねぇぞクソッ!! 違うんですマジでこのヒーローが頭おかしいだけで!!」
「ちゃんとヒーロー登録もしてるヒーローです一応! 世間で名前が売れてるイグジストの闇を暴くんだってずっとほざいてて! マジでチームアップミッション申請しちゃって止められなくて!! 無敵なんだからどうせ無駄だって言ってもオッドアイバカだからわかってくれなくて!!」
唐突にサイドキックの人たちが全員土下座をし始めた。
えっ何。何この急な展開。俺ちょっとついていけない。
しかしHNへ接続すれば確かに、ちゃんとヒーロー免許が発行されてるヒーローであることはわかった。
個性は『
ええ。正気か?
「……ヒーローの立場を使って学生を呼び出した上で奇襲して、個性を使って記憶を覗くとか……割と笑いごとにならないのでは? 出るとこ出たら捕まるのでは?」
「俺らもそれ説明したの!! でもコイツバカだからわかってくれなかったの!!」
「ハハハ!! 汝らの力は理解した!! さあ次は見せてくれ汝らの深淵を!!!」
「病院を紹介したほうがいいのでは?」
「保須市総合病院オススメですよ」
「闇に墜ちし男……憐れな」
サイドキックの人たちが非常に丁寧に謝罪をしてくれたので一先ず大ごとにはしないことにした。
この能力自体はとても有用だと思う。例えば捕えた後のヴィランなんかにうまく使えば他の仲間の場所とか個性とか口を割らせたり襲撃計画を聞き出したりできそうだ。警察と連携すればいい仕事できそう。
でも本人が余りにもおバカで楽観的中二病だから他人の迷惑とか考えずに力使ってる。
紙一重のバカのほうかこいつ?
「そもそも人の恥ずかしい過去を聞き出すとか割と最低の行為だと思うんすけどその辺どう思ってんすかオッドアイさん。あと何で俺ら呼び出したんすか」
「イグジスト……汝はこの世界に於いて輝かしいほどの名を馳せている! そんな汝の内に潜む深淵を解放せんと招集したのだ!! 他の二人も体育祭での活躍に闇の力を見た! さあ見せてくれ汝の深淵を────」
俺がその行為を指摘してもまだあきらめてない。ええ……余りにもタフすぎる……。
オッドアイがバカ丸出しの笑顔でまた俺の方に腕を伸ばしてきたところで、しかし。
「────その手を止めてくださいオッドアイ。それ以上幾野くんに近づくな」
「貴様の深淵は侵略行為。闇の同胞とはいえ、友に害を為すのであれば俺も容赦しない」
「っ!? なっ……これほどの殺意を、汝らは……この男の抱える闇とは一体!?」
「そんなガチに構えなくても俺に個性効かんけどね? でもサンキュ」
その腕を緑谷がフルカウルの光を纏って掴み、常闇もダークシャドウもいつでもオッドアイを捕縛できるように構える。
二人とも目がマジギレである。ううん……まぁ、そうよな。
俺の闇の過去を引き出すとなれば、それはやはり個性事故の話が口から出るだろうし。
オッドアイは何も知らずエンジョイ勢でやってるとはいえ、いやだからこそ二人もキレるか。ありがとな。
まぁそもそも掴まれても闇を引き出されたりしないんだけど。無視するし。
でもめんどくせぇのに捕まったな俺。
ここで何も説明せずにサヨナラしても余計オッドアイの興味を引いてしまう可能性あり。さらにめんどくさいことになったらやだ。
つまりここは、常識のある人に事情を説明してオッドアイを止めてもらえばいいだろう。
「えーと、後ろのサイドキックの皆さんの中で一番話の分かる人って誰です?」
「あ、はい。じゃあ俺が一応一番年長なんで話聞くよ。ごめんなうちのバカが迷惑かけて」
「ども。ちょっと耳貸してもらっていいです?」
俺はサイドキックの一人、年配の人……顔のマスクを外してもらえばなんだか苦労してる風の真人間っぽい人に頼ることにして、耳打ち+テレパシー声で俺の事情を説明した。
これを伝えること自体は別に恥じる事でも何でもない。この世界にはよくある悲しい事故だから。
でもそれを聞いたことでサイドキックの人も表情が一変。真っ青になってオッドアイを蹴り飛ばした。
「お前マジでイグジスト達に謝れ!! 土下座しろ土下座ァ!! 警察からの協力依頼があった時だけ個性使えばいいんだよお前は!!」
「フフ、どうしたというんだ我が眷属よ……私の無限なる探求心を止められるものなどこの世界には誰もあっ痛いやめて蹴らないで痛い!」
「黙れバカお前マジでバーカ!! 前々から言おうと思ってたけど今回はマジでブチキレだわ俺らも!! ホントにごめんなイグジストくん!! 二人も!! キツーく言っとくから!!」
「アッハイ。いや今のところ俺らは実害なかったんでいいんですけど」
「すごい真人間」
「サイドキックとヒーローを逆転した方がよいのではないか」
オッドアイがサイドキック達に物凄いボコボコにされてた。まぁ逆の立場だったら俺もそうするだろうな。マトモな人がいてくれてよかった。
その後改めて全員から土下座を頂いて俺たちは解放されてチームアップミッションは何もせずに雄英に帰ることになった。
……不祥事だよなこれ? ダイブセンサーで録画しといた映像を後で雄英から求められそう。まぁ俺らのせいではないんだけど。
「ちょっと……いやかなりハズレだったね今回は……」
「チームアップミッションってたまにこういう事あるよな。俺は初めてだけど他の所行ったヤツらが全然勉強にならなかったーって話聞くもんな」
「人の振りを見て我が振りを正すよい反面教師となった。闇は他に押しつけるモノではない」
「常闇はバランス取れてるよー。かばってくれてサンキュな、緑谷も。ダークシャドウも」
「まぁ……ね。誰だって恥ずかしい過去を赤の他人に知られたくないでしょ」
「当然の行いだ。狙われたのが貴様でなくとも止めていた……恥じる様な過去のない俺とは違う」
『イクノモタイヘンー! デモデモキイテー、フミカゲモハズカシイオモイデガアッテー! ジツハイクノトハジメテアッタアトニュウガクスルマデ───』
「五月蠅いぞダークシャドウ」
「ピェー!」
「……人には色んな闇があるよね」
「聞いてほしいと思ったときにそういうのは言えばええ」
帰り道、赤みのかかった月を眺めながら3人で疲れたため息を零すのだった。
俺の名前が出てた気がするけど俺は何も聞いてないデス。
時は流れて休日。
「ソバ食わねぇか幾野」
「急にどうしたの轟」
インターンもない休みの日にロビーでのんびりとラーカーズの動画チェックしてたら轟から声をかけられた。
顔を上げて見ればその手にはパックに入ったソバが。……いやこれ打ちたてのソバってやつじゃね?
明らかに市販のものじゃないもん。打ち粉ついてるし。パックに何のバーコードシールもついてないし。
「実はよ、昨日のチームアップミッションで……」
話を聞けば、先日轟と上鳴、あと士傑高校の夜嵐と肉倉パイセン(夜嵐経由で連絡先交換して自撮り送った仲)でチームアップミッションをしたらしい。
士傑高校と合同ミッションとは贅沢な。いいなー俺も参加したかった。
で、その内容を聞けば……
「……頑固ヒーローガンテツの所に行く予定だったのが間違って隣町のソバ屋さんに行っちまって」
「大目玉すぎん??」
「めっちゃ怒られた。で……そのソバ職人さんの所でソバ打ち体験させてもらって」
「エンジョイしてんな??」
「結構楽しかった。んでコレ。クラスのみんなの分までは量がねぇから、普段世話になってる礼としてどうかなってよ」
「なるほど。事情は理解」
随分と楽しい体験をしてきたようだな轟。
いや遅刻は大目玉にもほどがあるんだけど、まぁ緊急ミッションはチームアップミッションでは基本的に来ない所もあるし、その辺はヒーローガンテツがちゃんと怒ってくれただろうから俺は何も言うまい。
しかしソバ打ちか……いいなぁ、楽しそう。そういう経験子供の頃にしてこなかったからな俺。
さてんじゃソバだけど……轟の手にある袋を見れば、5パックくらい入ってた。5人分くらいになるのかな。
そこそこ量あるな? 俺一人じゃちょっと多い……けど5人をクラスの誰かから選ぶってのもちょっと変だし、しかし20人分には足りないし。20人分って相当な量になるからね。
意外と寮の食事事情って大変です。寮長としてかなり気を遣う所だ。ランチラッシュはすげぇよマジで。
「ありがてぇ……んだけど実は俺もう昼飯食ったんだよね。すぐには入らないかな」
「ん、そうか……」
「ごめんな、俺にまず声かけてくれた気持ちはマジで嬉しいよ。そーいや上鳴も一緒だったんだろ? アイツのはどしたん?」
「昨日寮に帰ったら耳郎にソバ見つかって、事情話したら爆笑されてた。で、その恨みにウマいソバ食わせて太らせてやるって言って……女子たちに昨晩振舞ってた。好評だったみてぇだ」
「ははは。アイツも馬鹿だね」
んもー上鳴ったら恋する男子なんだからー! 耳郎ちゃんも上鳴の事気にしててふと聞いちゃったんだろうなー。気になる彼氏の手作りのソバの味はどうだったんだろ。今度それでからかってやろ。
因みに俺は昨日はインターンで夜まで不在でした。楽しそうなイベントしてやがってよ。
「んじゃ俺も今夜いただくかな。生ソバって日持ちするのかな? 半分ずつくらいで食べりゃ……」
「二日くらいは冷蔵庫で持つらしいけど昨日のヤツだからちっとあれかもな。凍らせとくか?」
「いや凍らせたら風味がアレっしょ。じゃあ全部茹でて……そうだ、轟も一緒に食おうぜ。お前ソバ大好きだったろ」
「あ、いや悪い。俺は今夜外出予定がある……母さんの見舞いしてから実家に顔出すんだ」
「ふむ?」
折角だし今夜俺と轟と、あと峰田とかまだソバ食べてない男子とかで食べればちょうどいいんじゃね? と思って提案したが、どうやら轟は今日は見舞い→実家に顔出す流れらしい。
そっか、そういえば休みだったな。轟は寮生活以前は休日に冷さんの見舞いに出かけてたが寮生活になってからは手紙書いたりメール送ったりしてその回数を減らしていた。
でも今日はインターンもチームアップミッションも無い日だ。であれば見舞いもしつつ、実家の冬美さんにも顔を出してくるという事なのだろう。
…………ふむ??
「よし俺も行くわ」
「幾野もか? いやありがてぇけど……ソバはどうすんだ」
「だからさ、ソバも持っていくんだよ。名案を閃いたぜ俺は。まずソバを病院に差し入れる……あそこ差し入れた食材とかちゃんとお願いすれば晩飯に出してくれるから冷さんにも食べてもらおう。で、実家に残りを持ってって、そこで冬美さんに茹でてもらって俺らで蕎麦食べようぜ。ちょうど5人分くらいはあるみたいだしいい量だろ」
「おお。……いいなそれ。母さんに食べてもらえるんなら嬉しい」
「だろ? よっしゃ決定!! 外出届出してくるわ!!」
俺の名案に轟も微笑んで了承を見せた。うむ、完璧なプランニングといえよう。
ソバが無駄になる事も無い。冷さんも喜んで食べるだろう。冬美さんとも会えるし俺も二人に会えて嬉しい。パーフェクトプラン。
早速俺は外出届を出して外行きの服に着替え、轟と一緒に冷さんのお見舞いに向かうのだった。
なおその後の顛末。
「焦凍ォーーーー!! 幾野くんから聞いたぞ!! ソバ打ちしたらしいな焦凍ォォォ!! 俺の分は!!」
「なんで親父まで呼んだんだよ幾野」
「いや、夏雄さんいないんじゃ一人分余るなって。後で知られた方が絶対アレじゃん? いいじゃん、親父さんにもソバ食わせてやれよ」
「……まぁ、いいけどよ」
「お父さんの分もちゃんと茹でてあるわよ。慌ててないで早く手を洗ってきてね」
「む! 幾野くんも来ていたか……ゆっくりしてくれ。いつも家族が世話になっている」
「こちらこそいつもお世話になってますお義父さん♥」
「幾野」
「……君と冬美がそう望むなら俺は構わんぞ」
「ちょっとお父さん!? 絶対幾野くんそういうのじゃないからね!? この子なりの冗談だから!」
「いやスンマセン俺も普通に彼女いるんで冗談です」
「峰田がいたらまた『罪深い』って言われるぞお前」
夏雄さんは普通に大学のほうが都合つかないって事だった。
なんで俺の方でエンデヴァーに『焦凍くんが打ってくれたソバを頂いちゃいます♥』と自撮り付きで茶化しラインを送ったらその日のヒーロー活動一気に仕上げて夕飯の場にやってくるエンデヴァー。
で、4人で轟の打ったソバを食べた。めっちゃ美味かった。
またちょっとだけ轟家の家庭環境を円滑にしてやれたかな。
はよ家族みんなで心から笑えるようになってね♥待ってる♥
そろそろ一旦本編に戻ります。
チームアップミッションはまた適宜挟んでいきたい。