【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!! 作:そとみち
お気に入り登録数が一
『さァ!! 神野以降初めてのビルボードチャート!! その意味の大きさは誰もが知るところです!!』
今年の下期ビルボードチャートの発表会が始まった。
スタジアムを貸し切った大会場に、全国各地から予定をすり合わせてヒーローたちが集結し、発表を見守る。
『これまで発表の場にヒーローが登壇することはありませんでした! しかし今回は!! ご覧ください!!』
燦燦とライトアップされるステージ上に、下期ビルボードチャートの上位10人が並んだ。
オールマイトの引退により大きな混乱が巻き起こったヒーロー界隈において、その時点での成績でチャートを計算するのは民意を正しく集計できないという公安の判断により、8月から11月までの活躍や支持率も取りまとめられて発表されたのが今回のランキングである。
俺もまぁこの日を楽しみにしてたよね。マジでさ。
なんてったって俺たちチームラーカーズからランクインしてるんだからよォ!!!
ん?
俺はどこにいるんだって?
ここだよ。
ビルボードチャートのMCやってるよ。
『早速発表していきましょう!! ナンバー10!! 前回9位からワンランクダウン!! ドラグーンヒーロー『リューキュウ』!! こないだはお世話になりました!!』
「MCで挨拶しないでイグジスト。でもこちらこそお世話になったわ、元気そうね」
会場でいつものメスボディヒーロースーツに身を包み、俺が何故かこのビルボードチャート発表会の司会を務めることになったのだ。
急に先日チームアップミッションの依頼が来て、差出人がまさかの公安。
世間の注目を集めるためにMCをやってもらえないかという話で、当然のように俺はOKを出したのだ。
まぁな。ぶっちゃけ俺も含めて支持率取れば相当上位に行ける自信あるし。ヒーローを少し齧る人であれば俺のことは知ってるだろう。ラーカーズも同時にバズりまくりだからな。
まぁビルボードチャートはプロヒーローだけがノミネートされるので俺は選考外なんだけどさ。3年後は見てろよ。ホークスの最速記録抜いてやるからよ。
『ナンバー9!! こちらもランクダウン! しかし未だ衰え知らず!! 具足ヒーロー『ヨロイムシャ』!! 甲冑めっちゃかっこいいですね!!』
「フン……上位3位を除けば斯様な番付は全て時運による誤差。この甲冑は特注よ、そなたにもよさが分かるか」
『渋くて好き! 後でチェキお願いします!』
「ちぇき……?」
次の紹介はヨロイムシャ。この人とはまだ連絡先交換してない。ベテランヒーローのお爺ちゃんだ。
うーん、俺の高齢者からの人気ってどうなんだろうな。ゴミ拾いする中で朝散歩してるおじいちゃんおばあちゃんとはよく挨拶するんだけど動画とかネット人気とか見ない人にはあれかも。
でも甲冑褒めたらめっちゃ嬉しそうだった。かっこいいよなぁこれ。武者の鎧ってロマンだよね。
『ナンバー8!! 『
「貴方たちのお陰といっても過言じゃないけどドッキリ生放送はまだ許してないからね!?」
続いて第8位、マウントレディの紹介に入る。やってやったぜ俺たちはよォ!!
俺が全力で賛辞を述べたらマウントレディがキレ気味にツッコミ返してきて会場が爆笑に包まれた。すっかり色物になっちまいましたね。誰のせいだか。
でもシャンプーのCM契約は続いててむしろ売り上げ伸びてるらしいし、本人も素の顔の美しさとノリツッコミお姉さんの二面性を上手く使ってる。そういう所流石ですわ。
あとでメシ奢ってくださいね。高級焼肉で手を打ちますよ。
『ナンバー7!! こちらも大躍進!! 成長止まらぬ期待の男『シンリンカムイ』!! チームラーカーズの躍進が止まらない!! 今年はラーカーズの年か!!』
「偏向報道になるからほどほどにしておけイグジスト」
並んで第7位はシンリンカムイ。こちらも常日頃お世話になってるヒーローだ。
極めて真面目な人なんだけどジョークには理解のある人だ。だいたい俺と峰田とマウントレディでアホなことしてると冷静にブレーキをかけてくれる役目を果たしている。
この人の腕の変形によるスイング機動は瀬呂がめちゃくちゃ参考にしてて、最近は速度上げた俺のダイブワイヤーよりも瀬呂の方が速く動けるくらいだ。俺が地面無視してもなお瀬呂の方が速いのはこの人の指導のお陰が大きいな。
『ナンバー6!! ザ・正統派の男は堅実に順位をキープ!! シールドヒーロー『クラスト』!! 涙を流されていますけれど大丈夫ですか!?』
「これはオールマイトが引退したことへの悔し涙だ……気にする必要はない」
続いてはこちらはあまり縁のないヒーロー、クラスト。申し訳ないけどあんま知りませんでした。
オールマイトのファンらしい。個性が確か『盾』だったかな。シンプルな個性で、だからこそ並大抵の努力ではこの順位にはいないだろうな。
そこは素直にリスペクトだ。あとで連絡先交換してもらお。
『ナンバー5!! 勝ち気なバニーはランクアップ!! ラビットヒーロー『ミルコ』!! 今日もおみ足がステキですッッ!!』
「ははは!! 公の場だってのにあんなこと言ってるぞお前んとこのヒヨっ子! 面白いヤツだ!!」
『続いてナンバー4!! ミステリアスなシノビは解決数も支持率もうなぎ上り!! 忍者ヒーロー『エッジショット』!! ラーカーズ全員トップ10入りだァ!! すごいぞーカッコいいぞー!!』
「身内の恥でありイグジストの美点でもあり。常にコイツは周りを笑顔にする。貴様も見習えミルコ」
「フン! イグジストよりも私の方がスタイルがいいから私の勝ちだ!! ガキには負けん!!」
『おっとスタイルで俺と勝負するつもりですかミルコ?? 俺も自信あるんすよ後でアンケート取ってみますかズイッターで!! 負けませんよ俺は!!』
「ハハハ!! やってみるかイグジスト? 私が勝つに決まってるだろう!!」
\イグジストー!! ちゃんとMCやりなさーい!!/
ミルコがスタイルの良さで挑発してきたので俺もノッてやって壇上でにらみ合ってたらマウントレディからお叱りの言葉が来たのでんにゃぴってなりながらMCの仕事に戻った。
観客席の皆さまにも笑われてる。いいよいいよもっと笑って。笑顔になるのが一番ですよ。
美女と美少女(欺瞞)の顔が接近してキス目前ってところまで迫るシーンも見せてやったから視聴率も伸びるだろう。もっと俺を見て俺を。
『さて……ここまでの紹介でやはりというべきか、今回のビルボードチャートでは神野の事件にかかわったヒーローたちの支持率が軒並み上がってるようですね』
ナンバー3の発表の間に一息ついて支持率データなどをスクリーンに映して解説していく。
この辺のデータは俺も見させてもらった。浮動票が無くなったなーって印象だけど多分その浮動票は俺に投票されてるんじゃないですかね。あとマウントレディ。
人は有名なものに惹かれる生き物だからね。人気が出たから人気が出るようなところあるから。
実際の所、ヒーローとしての実力、っていう意味じゃ10位よりも下にだっていくらでも強いヒーローはいるだろう。俺の知りあってる範囲でもギャングオルカやファットガム、サー・ナイトアイだって立派な強ヒーローだ。
だからこそこのビルボードチャートで問われるのは強さだけではない。
支持率。人気。
人々が彼らヒーローを見て安心できるほどの、平和の象徴になれるかどうかだ。
『ではナンバー3の発表です!! 活動休止中にもかかわらずこの順位を勝ち取った男!! 支持率は今期ナンバー1!! ファイバーヒーロー『ベストジーニスト』!! 本日は体調不良による欠席ですが一刻も早い復帰をみんなが待ってます!!』
第三位の発表。三位は休止中とはいえ神野で多大なる貢献を果たして支持率を勝ち取ったベストジーニストだ。
爆豪ちゃんの職場体験先でもあるな。俺はまだ縁がないけど復帰したら一度は話してみたいものだ。いいデニム紹介してもらえそうだし。
『ナンバー2の発表です!! マイペースに!! しかし猛々しく!! 破竹の勢いで2番手へ!! ウイングヒーロー『ホークス』ッ!! 流石の最速の男!! 最速最年少のナンバー2おめでとうございます!!』
「はは、ありがとイグジストくん」
第二位、ホークスの発表に入る。
先日チームアップミッションでご一緒し、美味しいご飯を奢ってもらった仲だ。向こうのノリが軽いのもあって随分と気に入ってもらえてたようで柔らかい笑みを見せてくれていた。
うんうん、嬉しい。この人好きだなー俺。性格が好き。
羽根もかっこいいし。お洒落もわかってる感じのスーツだし。
改めて見ると上位10位に入るヒーローってやっぱりヒーロースーツがカッコいい・可愛い・エロい人ばっかりだな。人気ってそういう所もあるよなー。
『そして!! 暫定の一位から今日改めて正真正銘ナンバー1の座へ!! 長かった!! フレイムヒーロー『エンデヴァー』!! おめでとうございますっ!!』
「……素直には受け取れんがな」
そしてとうとうナンバー1、エンデヴァーの紹介だ。
流石にここで俺も「いつも息子さんと娘さんがお世話になってます!!」とか「俺の自撮りにまともな返事返してくださいよ!!」とか茶化すつもりはなかった。
さっきから公安委員会の会長がめっちゃ睨んできてるからね。妙齢のお綺麗な女性です。そんな人のシワをこれ以上増やしてしまっては申し訳ない。
手遅れ? 知らん。俺を呼んだ公安が悪い。
俺を呼ぶってことはこういうノリを求めてたんでしょ? 知ってる知ってる。
エンデヴァーは硬派で通ってるヒーローだ。俺も茶化すのは時と場合を選びます。
ナンバー1おめでとうの自撮り今夜送りますからね。
さて公安委員会会長からの有難い講話が挟まった。
内容は簡単に言えば「オールマイト引退したから次を担うヒーローたちを応援したってね」ってもの。
それはそう。オールマイトが平和の象徴として存在したからこそ日本の犯罪率は世界的に見てかなり低かったのが、引退後にどうしても増加傾向にあるという。
難しい話だよなー。その辺はマジでさ。
ヒーローという立場に「ヴィランを捕える」という役割のほかに、平和を維持する象徴としての在り方も求められるのだ。
どうしてみんな平和に暮らせないんだろう。むんむん。
『────それではお一人ずつコメントをお願いします!』
講話が終わり、再びMCに戻った俺はそれぞれからコメントを頂いていく。
ここは流石に俺も口を挟むつもりはない。それぞれの想いがあるだろうしな。
話を振られたら返すくらいでええやろ。マウントレディだけは弄るけど。
ではリューキュウから。
「皆様のご声援ありがとうございます。これからも救える命を救えるよう、頂いたナンバーに相応しいヒーローとなれるよう邁進してまいります」
うん無難。この人真面目なほうだからなー。そこがいいって人も多い。俺もです。おっぱい。
次、ヨロイムシャ。
「これからもやるべきことは変わらん」
シンプルイズシンプル。まぁ……お爺ちゃんだからな! 許したろ!
次、マウントレディ。
「……皆さまの応援に、期待に応えられるように今後も頑張りたいと思います……!」
「声作るのキツいっス」
「緊張してんのよ私も!! むしろ何でイグジストはそんなリラックスできてるのよ!?」
「いやぁ……マウントレディの綺麗なお顔見てると落ち着くんスよね俺。お姉さんみたいで」
「ちょっとキュンってしたけど! いま視線がバッチリ私の胸に向いてるわよね??」
やはり会場大爆笑。
ごめんなさいねマウントレディ。俺ももうなんかマウントレディを前にするとからかわなきゃいけないって刷り込みがされてしまってるというか。
ホントに甘えられる相手に甘えすぎる癖があるな俺。いつも本心から有難うって思ってんすよ俺。
トップ10にマウントレディが入れてよかったってめっちゃ喜んでますからね。俺らのお姉さん。
まぁそれを口に出すのは恥ずかしいから言わないんだけど。からかうけど。胸はガン見するけど。おっぱい。
次、シンリンカムイ。
「チームに誘ってくれたエッジショット、共に働くマウントレディらと共に……諸先輩方に恥じぬ働きをしていく所存」
ちょっと固いな。体が木だからってコメントまで固くならなくていいんやで?
でもまぁそこもシンリンカムイのいい所よ。素直に尊敬してますよ。
次、クラスト。
「なぜあの日私は神野にいなかった……!! その想いが未だ胸を締め付ける!!」
やはりオールマイトオタクか。緑谷と話が合いそうだ。
どうしても参加できない作戦ってのはあるからな。気持ちは分かるけど全部を助けるなんてオールマイトでもできないんだからそれは仕方ないっすよ。
次、ミルコ。
「今悪い事企んでる奴! 私にぶっ飛ばされる覚悟しとけよ!!」
うーん。いつものミルコ。
この人こそ唯我独尊って感じだよなー。そういう所も好きです。おっぱい。
次、エッジショット。
「イグジストやチームの二人のお陰もあり、結果として多くの支持を頂いたことは感謝している。が、ヒーローの本質は安寧をもたらす事……そのためにこれからも邁進していこう」
あ、俺のこともちょっと持ち上げてくれた。優しい。
マスク外すとヒゲ生えたオッサンなんだけど割と気遣いできるタイプなんだよねエッジショット。これからもお世話になります。
さて次、ホークス。
俺はこれまでと同様にホークスにマイクを向けたところで、にこっと笑ったホークスが俺の手からマイクを奪い取って行った。
え、急に何。演出?
そしてホークスは俺にだけ見えるようにマイクの電源をいったんオフにして、小声で俺の耳にだけ聞こえるように話す。
「幾野くん、ちょっとだけ好きにやらせてね」
「ん」
なんかやるつもりだな?
了解、俺もただのMCだし今日の主役はここにいる皆さまだからね。
頷きを返すこともせず、ん、と小さく声を出すだけで了承した。
「……ここまでのコメント聞いてましたけど。そんな話聞いて誰が喜びます?」
マイクをONにしてホークスが不遜な表情を浮かべてディスりから入った。
ワーオ。やるね。会場も一瞬にして困惑の色の沈黙に包まれる。
「フン! いいぞ生意気だ!」
「相変らず和を乱すのが好きだな……」
「我慢が苦手なだけですよ。えーと……支持率ちょっと出してくれるかいイグジストくん」
バサッと羽を広げて羽ばたき始めたホークスが、俺の力……ダイブセンサーの能力を期待してお願いしてきた。
まぁ先輩ヒーローに言われりゃやりますよ。この人に悪意はないと俺は信じたいところだし。
首元を弄りダイブセンサーを起動。公安の公表データから支持率のランキングを転送し、会場の大画面スクリーンに映し出す。
「ありがと。さて、支持率だけで言うとベストジーニストさんが休止による応援ブーストがかかって一位。二位が俺、三位がエッジショットさん。で、四位がかなり差が広がってエンデヴァーさん……すぐ下にラーカーズの二人もいる」
支持率ランキングで見ればホークスの言う通り、ラーカーズの3人が今メチャクチャ伸びてきているところだ。話題性もだけど渋谷の事件の殆どに絡んでるからな。ニュースでもネットでもラーカーズは大人気チームである。
それから考えるとエンデヴァーが4位に入ってるのは寧ろすげぇなって俺としては思うけどね。この人広告関係はあんまり力入れてなくてこれだし。
何でこの支持率にエンデヴァーが入っているかというと、事件解決件数がとんでもないことになってるからだ。
オールマイト現役時代からそうなんだけど、実は解決数はエンデヴァー事務所がダントツで一番多い。
ナンバー2という順位に甘んじてしまっていたけど、誰よりも人を助けてたのは実はエンデヴァーだったりする。その辺はまぁ数字の妙とも言えるけど。他にも解決数は多いヒーローいるしね。
「支持率って俺は今一番大事な数字だと思ってるんですよね。過ぎたことを引きずってる場合でも、やる事変えないなんてこと言ってる場合でもないっすよ。象徴はもういない……節目のこの日に俺より成果出てない人たちがなァにを安パイ切ってンですか! ラーカーズくらいですよチームアップっていうリスクもある危険パイ切って伸びようとしてんのは! もっとヒーローらしい事言ってくださいよ……変化が、進化がないとどうにもならないでしょ」
さて……そんな不遜な態度でホークスは挑発にも取れる様な内容を言い放った。
言ってることは全てが全て否定できるものはない。頷けるところが多々ある。
例えばチームラーカーズ。俺もインターンでお世話になってるけど、それだってマウントレディが人気を、いわゆる注目を集めるために迅速にチームアップの話を進めてくれたから、という所も大きい。
支持率とはすなわち人気だ。勿論ヒーローとしての実力がなければ支持が得られないという前提があって、じゃあその先にどのように人々から支持を、人気を得られるか。
もう少し踏み込んで推察すれば……ホークスの言ってることは恐らく、こうだ。
『オールマイトという象徴が引退した今、次の象徴になる覚悟があるのか』
これを遠回しに、挑発という行動で示したのだろう。
やるなぁ。自分を悪者にする覚悟まであってやるんだから……すげェなホークス。ちょっと敬意深まったわ俺。
「俺からは以上です。さァお次どうぞ───支持率俺以下、ナンバーワン」
「…………」
ふわりと降りてきてエンデヴァーにマイクを渡すホークス。
ううん、絵になるなぁこれ。会場のカメラがさっきからフラッシュ炊きまくりだ。
ここまで演出……なんだろうな。ホークスってそういうことするイメージある。チームアップしたときも俺らの力を見るために説明せずに作戦振って来たし。
しかしこりゃエンデヴァーも中々やりづらいぞ。頑張れー! 焦凍くんやご家族が見てますよー!!
「……若輩にこうも煽られた以上、多くは語らん」
「───俺を見ていてくれ」
己が背に向けられる期待の重さを受け止めたエンデヴァーの言葉に、会場中より万雷の拍手が送られた。