【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!! 作:そとみち
【side 物間】
「できた……!」
B組の寮、共用スペースで僕はようやく完成させた資料をぱらぱらとめくる。
完璧だ。とうとう完成した。非の打ち所のない資料だ。
「お!? できたんか! おめでとう!! 何だかわかんないけど!!」
「鉄哲。ふふ……骨の折れる作業だったよ」
「レポートの課題か? そンなのあったっけ?」
寒くなってきたのでもんぺを羽織っている鉄哲が労りの言葉をかけてくれた。
優しいな。こういう所がB組のいい所だよね。まずお互いに労わりあえるんだ。
毎日のように性癖を壊されているA組とは違うのさ。
そして僕の作った資料を見て鉄哲が零した疑問にはしっかりと答えてあげるとも。友達だからね。
「これはね……A組を言い負かすためのプレゼン資料さ!!」
「え!?」
鉄哲もこの資料の完成度には驚いたらしい。瞳をかっぴらいてしまっている。
フフ……文化祭から本当に頑張ったよこの資料を作るのに。
なにせA組と来たら毎日のように事件を起こす。噂話や詳細なデータを、B組に有利なデータを集めるのにも一苦労さ。
特に幾野くん。彼が常に噂話の先端にいる。昨日なんかは全国緊急ニュースにまで取り上げられてしまってまぁ。
本当にトラブルを呼び込む体質だよ。幾野くんも緑谷くんも。
全くいくら憎きA組といえどもアレに巻き込まれる気苦労は察してしまうさ。
あの変態を心配し続けるのも疲れるだろう。もっと落ち着かせるためにもこのプレゼンで幾野くんにぐうの音も出さないようにしてやるのさ。
どうにもテンションが上がってきてしまうね。この資料がB組の優位を証明しA組の平和すら守りあの幾野くんも黙らせるものになるんだからさァ! アハハハハ!!
「これは決定的なエビデンス!! 証拠を突き付けることが重要との見解を得たのさ! A組とB組を徹底比較!! これであの恐ろしい幾野くんを───ッふゥ」
「やめなさい」
僕の意識はそこで落ちた。
ああ、何をされたかは知ってるさ。拳藤の手刀が首元に叩き込まれたんだ。
彼女の愛は時々痛いね。受け止めるのは吝かではないけれど。
エンデヴァーとホークスとのチームアップを終えて、寮に戻ってきて、プロミネンスバーン(比喩表現)した翌日。
当然にして平日なので俺も朝から朝練で峰田と走り、午前の授業を受けて、飯を食べて。
んで午後のヒーロー訓練にみんなで頑張って取り組んでいた。
「……ぁむ……」
「お、八百万ちゃんがあくびなんて珍しい。可愛い。どったの、昨日夜更かしした?」
「ッ……~~~! い、イクノさんにだけは言われたくありませんわ!」
「いや一応日が変わる前には寝たけどね俺たち」
「末尾2文字が余計ですわね??」
崖の登板訓練を早々に上り終えた俺が、次の順番である八百万ちゃんが何だか眠そうな表情をしているのを見て声をかけたけど怒らせてしまった。
ううん、夜更かししたのかな? あくび可愛いなぁと思っての声掛けだったのだが。何故か結構な剣幕で怒られてしまった。
夜更かしする何か理由でもあったのか……わからん。なんだかちょっと八百万ちゃん顔赤くない? もしかして体調でも悪い?
気になった俺はバイザーモードでバイタルチェック。
しっかりばっちり健康だった。ツヤツヤしてた。心配いらんかったか?
「ふむ。幾野くん、急に話に混ざって悪いが……後で少し相談に乗ってもらえないだろうか」
「ん、飯田。お前までどしたの……なんかお前まで目元にクマできてんじゃん」
「実を言うと僕も若干寝不足でね。委員長として口惜しい限りだが、昨日の夜に解決しない悩みを抱えて中々眠れなかったんだ。君ならいい解決策が思いつくかもしれない」
「おー、ええよ。でもあれか? 深刻な話だったら時と場所考えるか?」
「いや、そこまで深刻という物でもないのだが……しかし確かに今は授業中だったな。では夕飯後にいいだろうか」
「おっけ」
続いて飯田もヘルメットを脱げばなんだか眠そうな顔だった。
おいおい委員長副委員長が二人して睡眠不足か。俺と峰田なんかは6時間寝れば十分すぎるくらいに体が慣れてるけど、毎日ハードな運動してるみんなの睡眠時間が削れるのはよくない。
夜に悩みを聞かせてくれるってことなので俺も備えておきますか。
さて夜。
「実は……物間くんのことだ」
「物間ぁ? なんで急に」
部屋で二人きりで話すほどではない、いやむしろみんなにも聞いてほしいということで共用スペースで切り出された飯田の話に俺は首を傾げる。
物間の話? え、別に特段仲が悪いわけじゃないよねあいつと?
確かに煽ってくるけどさ。可愛いもんじゃない?
「幾野くんはちょうどインターンで不在にしていたが、じつは先週にA組寮に彼が突撃してきて見事に煽り散らしていったんだ。君が不在なのを良い機会だと言わんばかりに」
「鬼の居ぬ間に洗濯してんなアイツも」
「うむ。君がいるとカウンターをかけてくれるから正直これまではあまり危惧していなかった……決して彼のことが嫌いだとかではないのだが、あの煽りにみんなが困ってしまっているのも事実だ」
「あー……あんときの物間くん元気やったね」
「幾野がいねぇとアイツ張り切り出すからな。確かにちょっとウザかった」
「病気なんだよ心の」
「闇を孕みし男……」
ふむ。そんなことがあったとは。
確かになー。俺は煽りとか全然ノーダメージでむしろ煽り返してやるんだけどA組は善良で優良な少年少女が集まってるから俺というフィルターを通さず物間のアレを食らったら大変なのかも。
「その悩みをぷちゃへんざラジオに投稿などもしてみたがよい回答は得られず……」
「おもしれー事してんなお前」
「どうしたものかと悩み、結局昨日は中々寝付けなかったんだ。寮の平和を委員長として守りたいという想いが……!」
「ほーん……いや確かに、寮の話になりゃむしろ寮長の俺の仕事だわな。成程ね……」
俺は腕を組んでうーんと悩む。これは確かに色んな火種になりかねない話題だ。
夏休みの合同訓練でA組とB組の距離は縮まり、今やかなりお互いに仲良くなれていると確信を持って言えるだろう。
今の時点でも決してA組みんなが物間を嫌っているわけではない。そこまで煽りが加速する前に俺が止めてたし、あいつの克己心、高みを目指す意志の強さはみんなが評価していた。
が、今後もアイツの煽りが続いてしまえば心証も変化してしまうかもしれない。
そりゃよくないな。あんなのだってダチなんだ。俺の個性を、エグいほど使い勝手の悪い個性を使いこなそうと努力してた姿を見て俺の中のアイツの評価は高くなっている。
できればみんな仲良くしてほしい。
そのためには俺はどんな答えをするべきか。
「八百万くんも同じように悩んでくれていたのだろう? 生活リズムの整った君が寝不足になるほどだ、僕が思い当たる原因がそれくらいしか見当たらない」
「えっ、あ、はい! そ、そうなのです! どのように物間さんの暴走を止めようか悩んでおりまして……!」
「そっかー。両委員長が気にし続けちまうのはよくないわな。んー……そうなー……」
俺は改めて考える。
物間の煽り癖。アレはもう生来のモノだ。なにせ俺が言っても拳藤ちゃんが言っても治らなかった。
カウンターで止める技を覚えてからは俺が対処するか拳藤ちゃんが手刀で気絶させるかだが、それをやられても治らない。心操に頼んでもなぁ。毎回洗脳出来るわけもねぇし。
アレそのものを止めるってのは正直現実的じゃない。毎回拳藤ちゃんに連絡入れるのも拳藤ちゃんが大変だしな。
となれば……あれだな。物間の煽り癖を逆にいい方向に何とか持っていけないか?
欠点は見方を変えれば長所になることもある。俺達がよりプルスウルトラするための何かいい案は……
ん? プルスウルトラ?
「閃いた」
「む、何か案が出たのか幾野くん! 流石だ!」
「ああ。完璧な解決策が出たぜ。俺らの成長にもつながり、物間が己を見直すきっかけになる作戦がよ。まぁ聞けよ───」
俺は改めて物間対策をみんなに説明した。
それにみんなも頷いてくれて、次に襲撃があった時にはそれで対処してみよう、ということになった。
さらに翌日。
夜の寮でみんなで団欒の時間を過ごしているところに。
「おっやーーーー!? 弛んでるねェA組のみなさん!! 余裕だね!! でもいいのかなァ!? 今日こそ考えを改めるかもしれないよ!?」
(((来た……!!)))
タイミングよく物間がA組に乗り込んできた。
コイツ元気だよなぁ。俺がコイツを嫌いになれないのってこういう元気な所があるからかもしれん。基本的に笑顔だし。
ぶっちゃけコイツの煽りについてはおもしれーヤツ……って目でしか俺見てないし。
さて、しかしA組のみんなには既に対策を伝授している。
俺達の更なるプルスウルトラを見せてやろうぜェ!!
「物間くん───」
「おやァ飯田くん、どうしたんだい!? しっかり聞いてよ!? 今日はすごいよ!?」
「───ああ、拝聴させてもらうよ。麗日くん、悪いがホワイトボードを準備してくれないか」
「はーい!」
「んん??」
始まった。
俺考案の、物間の煽りに対する作戦が。
「上鳴くん、切島くん。どうやら物間くんはお手製のレポート用紙に資料を準備してくれたようだ。プロジェクターを用意してあげてくれ」
「おう! 幾野、物置にプロジェクターあったよな? スクリーンも!」
「ああ、手前のC棚にあったはずだ。電源の延長コードはA棚の下の方な」
「物間! ここに紙を置くとスクリーンに映るからな! バッチリ頼むぜ!!」
「うん???」
「物間さん、お茶を準備いたしましたわ。喉に優しいお茶ですのでご賞味ください。冷たい物もありますわ」
「夜食ボックス*1からお菓子持ってきたぜー。しっかり物間の話聞かねーとな!!」
「僕、机と椅子準備するよ!」
「なるほど????」
まず俺たちは、物間の話を否定から入るのをやめることにした。
俺からこのように話題提起したのだ。
『形はどうあれアイツの考えをまずは素直に聞いてみようぜ。否定から入るからストレスになるんだよ。アイツも色んな情報仕入れて煽ってきてるわけで、それなりに労力を俺達に果たしてくれてるんだって……プラスに考えてみようぜ。物間の頑張りを受け止めてやろう』
俺のこの言葉を素直に聞くA組のみんなもどうかと思うんだけどね??
でもみんないい意味で単純なので成程……と理解してくれた。
爆豪ちゃんと峰田だけはまたイクノの口八丁が始まったわって顔で見てた。鋭い。
そして、重ねて俺が心掛けるように言ったことがある。
「意外な歓迎を受けたけれどB組の方が上だということにようやく気付いたのかなぁ!? まぁやらせてもらうさ!! まずはこの資料を見てほしいね!! 」
「フム、インターンにおけるA組とB組の事件解決率の数字か」
「グラフにしたのさァ!! さあ見てほしいのはここの数字!! 解決率は実はB組の方が明らかに上回ってるんだよねェ!! ちゃんとブラド先生から仕入れた情報だよ!! この時点でB組がA組を上回ってるのさ!!」
プロジェクターを用いてプレゼンを始める物間。
そしてそれを真剣な表情で聞き始めるA組。
そう。話を聞きたくないと思って受け取るから話が鬱陶しくなるわけで、まず真剣に話を聞いてみるように促した。
その上で、俺達も聞きっぱなしではない。
これを物間のプレゼンではなく、ディベートという形にしてしまうのだ。
「なァ物間。気になったんだけどよ、事件解決率の数字はそのグラフで見るとB組とA組で5%くらい差があるけどさ……これ、A組とB組全員から数字取ったのか?」
「ん? そりゃあ……もちろんじゃないか! 全員さ!」
「いえ、そう考えるとおかしいですわ。B組ではまだインターンに出向していない生徒も何名かいらっしゃいます。人数比が異なってしまうはずですわ。B組の方は確か年末にかけてラーカーズへの出向から次のインターン先を探す方もおられたはず……でしたわよね、イクノさん?」
「うん。鱗とか凡戸とか角取ちゃんは来週が初めてだったかな」
「余計な情報を漏らすねぇ幾野くんは! インターンに参加した全員って意味だよねぇ!!」
「この解決率自体のデータは本当によく集めてくれてると思うんだけど……物間くん、事件の件数そのもののデータはないの? 誰が一番事件に係わったのかとか……チームアップミッションの結果とかも知りたいな、僕」
「そのあたりの数字は今回の資料では入れてないよねぇ!? ちゃんと数字は取ったけどさァ! 次にしようか緑谷くん!! 因みに事件数ダントツ一位は幾野くんで二位は君だよ!! 三位が幾野くんに巻き込まれてる峰田くんさ!!」
「知ってた」
「事件数と解決率の数字の比率はぜひ見てェよなー、誰がどんな分野で解決に貢献できてるか見えるわけじゃん?」
「物間くん、その辺のデータも見たいな……次はお願いしてもいい?」っっっ(←汗の表現)
「任せておいてよバッチリ資料作ってくるよォ!! でも今は次の資料に進ませてもらいたいなァ!!」
うん。狙い通り。
真剣にディベートするって目的で話を聞くと、物間の煽りに関する資料は恐ろしいほどツッコミどころに溢れてるのだ。
これは俺が普段から物間にカウンター決めるためにやってることだ。コイツは煽るために恣意的なデータだけを集めてくるから、ツッコミ所がそこかしこに存在する。
真面目に受け取れば受け取るほど粗が見えてくる。
俺としてはそういう所が可愛いもんだと感じていたので、その受け取り方を教えてやったのだ。
情報の真偽を計る力、情報に踊らされない力ってのも大切だからな。
「しっかし……今回は資料まで作ってきて、物間ってそういう所真面目だよな」
「あれだけの資料、作るのも大変だろう。熱意は評価できる」
「マメよねー物間」
「普段のレポートとかインターンの書類だって大変なのにその隙間で作ってるわけだろ? すげぇよ」
「確かに……クラスの関係やB組の事を真剣に考えていないとここまでの熱は籠められないよね」
「熱い男だぜ……!!」
「努力の男☆」
「背中がぞわぞわし始めたよねェ!?!?」
A組のいいところが出始めた。コイツら人の努力を笑わないのだ。
特に今回は物間がすげぇしっかり資料作ってきたからな。ホントによくやるよなコイツ。マジで。
さぁ旗色が悪くなってきたよ物間くん?? 根っこが善人だから褒められると逆に困ってしまうだろう。
ヒールであることに誇りを抱えるタイプだよな。性根がヤンキー説。
「しかしそこまで言うってことはB組の方が優れてるって認めたという事だよねェ!? 全くそんな浅はかでいいのかい君たちは!? こっちもやりがいがないってもんだよ!!」
おっと、しかしここまでA組が真剣に話を聞き届けたところで物間が角度を変えて攻めてきた。
上下関係をはっきりさせる言葉を投げかけることで心の平穏を掴もうとしているのだろう。
だが甘い。そういう話が出た時にも俺はどうすればいいかみんなに伝えてある。
折角だ物間くん。俺たちの成長の糧となってくれ。
「いや─────それはまた違う話だと思う」
「物間の意見はよくわかった。資料もよく作っていたが、それはそれ、これはこれだ」
「いいと思うぜ、物間はそのままでよ。俺らは俺らの考えがあるからよ」
「お互いに尊重しあっていこうぜ」
(∩∩)って笑顔を見せてみんなが物間対策の神髄を実行する。
そう、俺たちに必要なのは……スルー
いやこれマジでヒーロー活動に必要な事なんだよ。ホント。
なにせヴィランってのはとにかく煽ってくる。俺の経験上、あいつらクソみたいな価値観でヒーローを否定したり怒らせるようなことを言ってくる。
プロヒーローもそれに激昂したり、話をマジに聞いたりして調子を崩すことがある。ヴィランだからこそできる暴言に、俺達は負けてはいけないんだ。
USJ……ステイン……林間合宿……俺らが大変な経験をしたヴィランであればあるほど、悪党なりの屁理屈をかざして煽ってきやがった奴らだ。
結論から言えばクソヴィランの話なんて聞く必要はまったくない。
こないだの毒ガスの個性事故のような事情がある相手であればしっかり話を聞く必要があるが……基本的には市民の生活を脅かすヴィランを被害なく捕まえるのが俺らヒーローの仕事なのだ。
そこでこの物間が光る。
こいつの煽りをスルー出来れば、ヴィラン戦でも相当優位につけるぜ、と。
かつてのヒーロー殺しパンチで見事にヴィランの煽りをスルーした経験から説明したらみんな納得してくれて。
で、物間って寧ろ俺らにそういう煽りに対する耐性をつけさせるために頑張ってくれてんじゃね? って言ったら成程!! ってみんな納得してくれてた。
A組ってなんでこんなに優しいやつらが多いんだろう(真顔)
「いやー、中々斬新な話だったな! A組にいたらこういう発想の話は得られなかったぜ!!」
「だね! 逆説だからこそわかるところあるなぁ」
「興味深い資料でしたわ。次はぜひ戦闘タイプと支援タイプの個性での解決事件の種類なども情報が見たいです」
「幾野に言われて真面目に聞いてみたら割とマジで面白かったわ。プレゼンの才能あるね物間」
「やっぱり幾野くんかい本当に君はさァ!?!?」
「いつも俺たちA組の成長のきっかけになってくれてありがとね物間くん♥愛してるよ♥」
「君の愛は歪が過ぎるんだよねェ!?」
「─────あ??」
「ステイ。葉隠ステイだ」
「ケロ。あれはセンちゃんなりの煽りよ透ちゃん」
おおよそ資料の内容もプレゼンし終えて、俺達はスルー力を身に着けることができた。
物間のお陰だな。相手の意見はしっかり聞いて、その上で自分の気持ちを大切にして、お互いに尊重するという名のスルーを覚えたのだ。
いいんだよ。意見なんて人の数だけあるんだから。
今回俺達が逆に煽る様に資料作ってきてくれってお願いしたから次はもっとしっかりした資料を作ってきてくれるよ物間が。それ見てまた見解を深めてスルー力の訓練しようぜ。
俺のスルー力を受けて見ろ(ハイパー化)
「────あ、物間! やっぱりここにいた! ごめーん、ウチの物間ちょっかい出してない?」
「拳藤!! 拳藤~~~!!」
そこで物間の保護者が顔を出し、物間を引き取りに来てくれた。子犬のように駆け寄っていく
私服の拳藤ちゃんいいな……もともとスタイルいいからな。自然と服を引き立てる。サイドテールもいつも可愛い。
でも個人的にはやっぱヒーロースーツの時のあの目元のマスクがいっちゃん好き。マウントレディもつけてるけどあれかなり好きなんだよね……いいよねアレ……。
A組だとああいうタイプのマスク誰もつけてねぇからなぁ。芦戸ちゃんと爆豪ちゃんのはなんかちょっと違うし。
「あれ……なんか逆に物間がやられた感じ? 幾野なんかやった?」
「いや特には。みんな真剣に物間の話を聞いて勉強させてもらってたところだよ」
「絶対嘘じゃんその顔」
「今日はどうにもやりこめられたけどねェ! でも覚悟してなよA組ィ!! 次はもっと根拠のある資料を持ってきてぐうの音も出ないくらいにB組の優位を証明してやるさァ!!」
どうしていの一番に俺を疑ったのかね拳藤ちゃん。普段の言動か。
まぁでも今回は俺の方でちょっとうまく経験値稼がせてもらったようなところはあるかもな。ごめんな物間をおもちゃみたいに考えてて。遠慮なく煽りあえる友達って貴重だからさ。
捨て台詞を吐く物間の耳を引っ張って持って帰ろうとする拳藤ちゃん。
しかし、そんな二人に飯田が声をかけた。
「ふむ。……物間くん、最後に一つだけA組委員長として伝えておきたい」
「ん? なんだい飯田くん! まさか委員長直々に敗北宣言かなァ!?」
「いや。────そもそもA組の誰もが、A組に比べてB組が劣っているなんて欠片も考えていないのだが」
「────────」
あ。飯田がトドメさした。
うん、いや、実はその通りなんだよね。物間の根本が崩れるから俺も流石にかわいそうで言わなかったんだけど……A組の誰もがB組の事認めてる。
体育祭の頃はまだお互いに交遊も無かったからともかく……今は職場体験を経て林間合宿を経て、その後の夏休み中の個性訓練で一気に距離が縮まって。
で、今だって俺らと同じように放課後毎日別の体育館で訓練をしまくってるB組の事を、誰もが軽んじてなんかいない。みんなそれぞれよいライバルであり友として認識している。
チームアップミッションでもインターンでもクラスの垣根を超えて組むことが多いし。みんなB組の事を信頼しているんだ。
爆豪ちゃんに聞いてやってもいいよ。A組とB組比べてどう? って聞いても「全員俺が超える壁」ってフラットな評価で返してくると思うよ。
まぁなんというか、つまり。
クラス同士の垣根が崩れた今となっては、ぶっちゃけ物間のやっていることはただの独り相撲なのである。
「お互いに切磋しあえる良き仲間だと感じている。クラスは違えど
「…………~~~!! 拳藤ぉ~!!」
「ハイハイ、今日はアンタの負けだよ物間。いい薬になったわ、サンキュね飯田。んじゃ帰るぞ! お邪魔しましたー!」
その言葉で情緒不安定になった物間を拳藤ちゃんが今度こそ持って帰った。
……いや、もうなんかあの二人完全にデキてんじゃん。
B組も春が来てるのか……一年に春が多いな。
物間お前拳藤ちゃん大切にしろよマジで。ホントいい子なんだから。
「……ふむ。僕の意見は間違っていただろうか」
「いや、俺らも幾野の言う通り聞いてみたら割と得るもんあったしディベートなら参加してぇわ」
「自分の確たる意見を持つこと、人の意見を聞くこと。どちらもヒーローに必要な素質なのかもしれませんわね」
「B組からも何人か混ざってディベートしたら面白そうなー」
「そん時はまた物間に資料作ってもらおうぜ」
そして後片付けをするA組にも物間の襲撃をいい意味で乗り越えた達成感が溢れていた。
うんうん。物間も煽れる、A組もそれを受け止めてスルー力とディベート力を鍛えられる。全方位winwinになったな。
よかったよかった。
「しかし、流石は幾野くんだ。いつも助かるよ」
「俺なーんもしてない」
「…………」
「ステイ。葉隠ステイよ」
透ちゃんの熱い視線が突き刺さるのを俺はスルー力で気付かないふりをしました。
二連発のプロミネンスバーン(比喩表現)は今の俺には無理です。エンデヴァーに及んでいない。枯渇する。
最近すっごい絞り取ってくるんよね透ちゃん。そんなところも好き。
こういう雑な話書くのめっちゃ楽!
シリアスな話の後は雑な話を書くにかぎる(確信)