【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!! 作:そとみち
サブタイトルにネタバレがあります。(手遅れ)
【side 峰田】
オイラはヴィランのアジトを制圧し、ヴィランたちはもぎもぎネットで縛り付けて完全に動かせなくして、ヴィランの携帯を奪って梅雨ちゃんに電話した。
ヴィランの携帯のパスワードを聞き出すのに苦労したぜ。教えなけりゃお前らこのまま放置だぞって言ったら教えてくれたから意志の弱いやつらで助かった。
状況は梅雨ちゃんとクラスのみんなも聞いてくれたし面構署長にも連絡済み。あと数時間もすりゃつくだろ。遅くにはなっちまうが、まぁそれなりにデカいヴィラングループを潰せたってことで大目玉にはならねーと思う。
「さぁて。やることがいっぱいあるな……」
そしてオイラは改めてこのヴィラン共のアジトを見渡す。
中にはいろんな所から盗み奪われてきたのだろう犬たちがワンワンと檻の中で鳴いていた。
しかし鳴いてるのは元気がある犬だけで、中には衰弱しているような犬もいる。
犬の管理に力を入れていなかったのだろう。すぐに売買に回して管理はしてないのか、売る時にも詐欺をしてたのか……とにかく犬たちがかわいそうだ。
檻は汚れ放題だし、トイレの始末もたいしてやれてねェ。
まったく、クソヴィラン共がよ。こんなに汚しやがって。
「お、ちゃんと掃除用具はあるじゃねェか。よしよし」
備え付けられたロッカーを開けて見れば中にはちゃんと掃除用具が入っていた。
水道もあるし掃除は問題なく出来そうだ。
みんなが来るまで、犬を逃がさないように気を付けながら掃除だな。
汚れちまってる犬もいるから綺麗にしてやろう。せめてもの人間からの償いだと思ってくれや。
「うっし。檻を一つ一つ開けてくからお前ら逃げるなよー、森に出ても野生動物に襲われちまうぜ」
バケツとモップを片手に、オイラは掃除を始めたのだった。
ウッヒョォォォ掃除楽しィィィ!!!
三時間後。
ヴィラン共から異常なものを見るような目で見られながらも掃除に精を出しまくってると、にわかに外が騒がしくなった。
複数人の足音、カンカンとなる金属の音……来たかな。
扉に身を隠して外を覗き見れば……見覚えのある顔がいっぱいだ。
A組のみんなと面構署長が、犬用の檻を地面にぶつけながらも持ってきてくれたのだ。
「おーい! ここだー! 遅い時間にサンキューなー!!」
扉から体を出して腕をブンブンと振る。
それに気づいたA組が、安堵の表情を見せて……そしてその先頭から、ぴょいんとオイラに飛び込んでくる姿があった。
梅雨ちゃんだ。
「ケロ」
「おー梅雨ちゃん! 電話出てくれてありがとなー、マジで番号覚えててよかっ」
「ケロ!!」
「ふぎゃんっ!?」
しかし突撃してきた梅雨ちゃんは、そのしっとりした掌でオイラの両頬をパチンと挟み込んで有無を言わさず捕まえられた。
え、何!? オイラ犬の着ぐるみ着てるけど普通に峰田なんだけどォ!?
「……ふむ。口田くん」
「うん。【囚われし哀れなものたちよ、主人の元へ帰るのです! こちらの檻に走るのです!】」
梅雨ちゃんにぎゅむーっとほっぺを挟まれてる傍で、A組のやつらと警察が協力して手際よく犬たちを開放して無事保護して。
で、ヴィランたちも警察がきっちり捕まえて。事件はなんかオイラが関わることなく無事に決着となってしまった。
え、なんでオイラ梅雨ちゃんに捕まってんの? オイラも犬になるんか?
「峰田ちゃん」
「な、なんでしょうか梅雨ちゃん」
「……峰田ちゃん」
「なんか怒ってるぅ!! 上鳴助けてェェ!! 飯田ァァァ!!」
「自業自得だわ」
「全て蛙吹くんに任せてある。君たちはゆっくり撤収したまえ」
助けを求めた上鳴も飯田も何故かそっぽを向いてすぐさま撤退していってしまった。
なんでぇ!? イクノなら助けてくれるのに!! オイラ悪い事してないよねぇ!?
いやさ、事前に話を通さなかったのは悪かったと思ってるよ? 電話する時にちゃんと話しとけばよかったなーとはオイラも思ったさ!
でもなにせヴィラングループが急に来やがったもんだからマジで時間なくてさ! そこはごめんだけどそんな怒ることかなぁ!?
やれそうだったから一人でやったけどヤバかったらちゃんと撤退しようと思ってたし! オイラ冷静だったよねぇ!?
そして残されるオイラと梅雨ちゃん。
じっとオイラを見下ろす梅雨ちゃんの目。この瞳を見る機会が、最近は増えたような気がする。
「峰田ちゃん。…………本当に心配したわ」
「梅雨ちゃん……いや、そこはマジでゴメン」
「ダメ。許さない」
至近距離で、吐息すら触れそうな距離にある梅雨ちゃんの瞳に涙がにじむ。
えっ。そんなに心配させちまったかオイラ。
ごめんって。泣かせるつもりは全然なかったんだって。
「……もちろん峰田ちゃんの力は信じてるわ。一人でも何とか出来るって……信じてたの。けど……悲しいわ」
「な、んで?」
「私達に……私に、何も相談がなかったのが悲しいの」
「……すまねぇ。けどあの時は時間が無くて……」
「でも、センちゃんがいたら峰田ちゃんは相談してたでしょう?」
「……!」
梅雨ちゃんの言葉にオイラは息を呑む。
言われて気付いた。確かに、寮にもしイクノがいたらオイラはラブラバの話を受けた後にすぐに相談しただろう。こんなことがあるかもよって。
けど、確かにすぐに事態が動いたからって……オイラはみんなに相談しなかった。
巻き込みたくなかった。オイラが独断で動いた方が万が一の時にオイラが責任を被れるからって、そう思ってのことだったけど……でも、逆の立場になったら、そうか。そうだよな。
気付かなかった。なんてこった。オイラがみんなを信じ切れてなかったのか……そりゃ梅雨ちゃんも悲しい気持ちになる。
クソ。女の子を泣かせねぇってイクノと誓ってんのによ。
なにやってんだよオイラは……!!
「……ごめん」
「ダメ。……許さないわ」
「……巻き込みたくなかったんだよ。あの場ではヴィランかどうか分からなかったから……もし善良な引き取り主だったらアレだし、オイラの独断で動けばオイラだけが怒られりゃ済む話だったし……」
「そんなこと言ってもダメよ、峰田ちゃん。……頼ってほしいのよ。貴方に、私は」
「なんで……」
瞳から涙があふれる梅雨ちゃんに、オイラは申し訳なさで目をそらしてしまう。
どうしてそんなに、オイラに気持ちを向けるのか。
まるで、昔のイクノみてぇに……いや、もしかして、梅雨ちゃん、まさか。
「────好きだから」
「ヒョォエッ!?」
梅雨ちゃんのその想像していなかった予想通りの言葉に思わずオイラは変な声を上げちまった。
こういう時に締まらねェなオイラは!! でも聞き間違いじゃねぇよな今の!?
「……峰田ちゃんが好きよ。いつもセンちゃんの隣にいて、クラスからも一目置かれて、女子を茶化すスケベな所も……優しい所も。誰よりも友達のことを想える貴方が……好き。一目惚れだったわ。入試で貴方に助けられてから……ずっと目で追ってたの」
「ちょっ、まっ!? 待って梅雨ちゃん!! オイラちょっと駄目!! 受け止めきれなくてテンパってるよォ!?」
「ダメ、逃がさない。……好きなのよ。大好き。そんなあなたが、何の相談もなしに一人でヴィランのアジトに乗り込んでしまったことを知った私の気持ち……わかる? 本当に心配したし……どうして声をかけてくれなかったのって、思ってしまったの。もう自分の気持ちを抑えきれなくなってしまったの」
「あっあっあっ……?」
「好きよ、峰田ちゃん。私は貴方が好き。……だから今、返事を聞かせて。どんな返事でもいい……重い女だって、面倒な女だってフラれてもいい。返事をしてくれればそれで許してあげるわ」
オイラの頭は余りにもストレートな想いをぶつけられて沸騰し、碌な返事を返せないところで……梅雨ちゃんが頬を掴む手を緩めて、改めてオイラの目を正面から見つめてきた。
可愛い。こんな時に改めてそんな感想を持つのもどうなんかと思うんだけど、やっぱ梅雨ちゃん天使。
丸い瞳に涙をたっぷりと溜めて。
この瞳が……ずっとオイラを見てくれていた。
それに気づかないなんてクソボケかよ俺は。イクノの事言えねぇじゃねぇか。
女子に涙の告白なんてさせちまったオイラだけれど。
返事はもちろん決まってる。
「────オイラも梅雨ちゃんの事好きに決まってんだろぉぉ!! 好きじゃなきゃ障害物競走でも声かけねぇし騎馬戦でも組まねぇしインターンでも心配しねぇよォ!! 文化祭のダンス本当に楽しかった!!」
「ケロっ……」
「USJでおっぱい柔らかかったのがずっと心に残ってて何回も思い出して使わせてもらったし!!」
「そういう所は言わなくていいわ」
「でも体も顔も心もホント好きでよォ! 天使だっていつも言ってたけどそんなにオイラの事想ってくれたなんて気づかなくてごめん!! でもオイラももっと梅雨ちゃんの事好きになりてェ!! これが返事だ!!」
「…………ケロ。……ホントね? 私がこうして掴んでるから、逃げるために言ってるわけじゃないわよね?」
「オイラが梅雨ちゃんに嘘ついたことないだろ? いっぱい抱きしめてェしエロいこともしてェし!! オイラの彼女になってくれ梅雨ちゃん!!」
「……ふふっ。そういう明け透けな所も好きよ。……嬉しい。大好きよ峰田ちゃん」
オイラだって当然好きに決まってんだろぉ!!
そりゃまぁ? かなり距離が近づいてるなって思ってたよ? 文化祭でも一緒に踊ったし、普段から声かけてくれるしよォ。チームアップミッションでも気にかけてくれてたし。
でもそれをオイラは弟に見せるお姉ちゃんの様な感情だと勘違いしててよ。がっついて嫌われるのも嫌だから気付いてないふりしてた。
くそ、ホントにイクノのこと言えねぇや。心配させて、泣かせて、女の子の方から告白させるなんて。
その代わりってんじゃねぇけど大切にするからな梅雨ちゃん!!
そして、感極まりオイラの頬から手を離して、膝をついてぎゅうっとオイラの体を抱きしめる梅雨ちゃん。
オイラもそれを抱きしめ返して、そして告白の後の流れと言ったらやっぱこれだよなぁ!
「梅雨ちゃん。目ェ閉じて」
「ケロ。…………ん……」
今度はオイラが梅雨ちゃんの頬に手を当てて。
梅雨ちゃんもそれに応じて、ぱちぱちと瞬きした後に、そっと瞳を伏せてくれた。
その後どうしたかって? 言わせんなよ。
流石にイクノとは違ぇからよ。誓いだけ果たしてからちゃんとA組に合流したさ。
手を繋いでったから完全に祝福ムードで迎えられちったけどね。テレるぜ。
【side 幾野】
夜遅くに寮に戻ってきて、疲れもあってそのまま部屋に戻り寝て、いつもの時間に目が覚めて。
峰田とロビーで合流して、いつもの早朝マラソンをしていた。
「そういやイクノ」
「ん?」
「オイラ梅雨ちゃんと付き合うことになった」
「……おーいイクノ? イクノー……だめだこりゃ」
「ねぇ、幾野がなんか意識消失してない? 心操に洗脳食らったみたいになってんじゃん」
「呆けているな……凡そ何があったかは察するが。峰田と蛙吹の関係に脳が破壊されたか」
「むー……! センちゃん、起きてー? 起きろー? ……ダメかぁ。彼女としての限界を感じる。くやしー!!」
「それほどイクノさんにとって衝撃的な知らせだったのでしょうね……いえ、お察ししますわ」
「ケロ。登校しても治らないわね」
「いい薬になるからそのままにしとこうぜ梅雨ちゃん」
「そうね、実ちゃん」
「お、早速下の名前で呼んどる! ええねー」
「お早う……幾野はどうした」
「朝から脳が破壊されています。今日はそっとしておいてください相澤先生」
「何があった……」
「オイラが後で説明するんで」
「わぁ!? 食堂でセンが遠くを見ながらご飯食べてるんだよね!? どうしたんだいこれ!?」
「完全に脳が破壊されてる……峰田、蛙吹さん。何があったんだ」
「不思議ー、普段は壊す側なのにねー不思議ー!」
「ケロ。これには訳があって……かくかくしかじかで…………」
「……おお!! 峰田くんとうとう彼女が出来たのかい!! アハハハハ、そりゃセンもこうなるか!! 峰田くん離れするいい機会かもね!!」
「オイラどうすりゃいいか分からんっス」
「放っておけ。たまにはいい薬だろう」
「……今日の幾野はどうなってんだ? 俺が洗脳かけた時みてぇになってるぞ」
「それがよ、オイラと梅雨ちゃんが……かくかくしかじかで……」
「…………なるほど。しかしお前らようやく付き合うことになったのか。おめでと。梅雨ちゃんは随分長い恋路だったな」
「ケロ、ありがとう心操ちゃん」
「お前も気付いてたのかよ心操。言ってくれよぉ!」
「言うわけねぇだろ梅雨ちゃんの面子壊すだろうが。ちゃんと避妊はしろよ」
「ケロ! 心操ちゃん!」
「いてっ! 悪い、冗談だ冗談!」
「イクノと違って節度は保つ男だぜオイラは……!!」
「どうだかな」
「夕飯の時間になっても治らねぇのか幾野」
「ケッ、訓練でも全然手ごたえがありゃしねェ。峰田ァ! ちゃんと治しとけやこのメタルスライム!!」
「まぁまぁ……今日一日くらい許してあげようよかっちゃん。幾野くんにもたまにはこういう目にあってもらおう」
「随分楽しそうだなデクてめェ」
「男子で一番イクノの被害に逢ってたの緑谷って言っても過言じゃないもんなー」
「まァ明日には治るだろ」
──────はっ。
おかしい。なぜか昨日一日の記憶がない。
普段通りの時間に目が覚めたけどスマホ見たらなんか一日経ってる。ナンデ!?
俺は謎の現象に首をひねりつつ、とはいえ普段の早朝マラソンのルーチンは変わらないのでロビーに降りた。
「お、おは峰田」
「おはイクノ。復活したか」
「昨日の記憶が飛んでるんだけど……なんか俺個性食らったかな」
「いやそんなことはねぇよ。とりあえず出発しようぜ」
いつもの峰田の顔を見て謎の安心を覚える俺。
よくわからんけどまぁいいかぁ!!
最近寒くなって来たけどまだまだ俺たちは元気だぜぇ!! マラソン開始ィィィ!!
「ところで改めて言うけどオイラ梅雨ちゃんと付き合うことになったから」
「───────────」
「天丼やめろ?」
その後なぜか一週間くらい記憶が飛び飛びだった。
……峰田、彼女出来たってよ。
次は峰田がワンちゃんになってた日の裏でセンちゃんたちが何してたかの話をやって、その後原作に戻ります。