【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!!   作:そとみち

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112 神々のトライフォースは神ゲー

 

 

 小枝を踏み折って焚火の様な小気味よい音を鳴らしながら、俺たちは獣道を歩み進んでいた。

 

「もう嫌ぁこんな道……ねぇもしかして私たち遭難してません!?」

「本当にこの先に村なんてあるんですか……?」

 

 今日のチームアップミッションのメンバーは俺、マウントレディ、シンリンカムイのチームラーカーズに、緑谷と爆豪ちゃんが入った5人メンバーだ。

 村からの大きな依頼で人手が必要なのだが、ラーカーズだけで行ってしまうのも渋谷を手薄にしてしまうため、緑谷と爆豪ちゃんのセットでチームアップを依頼してスパッと解決して来ようと画策したわけだ。

 

「私がビッグな活躍を出来る場所なんですよね、先輩!?」

「うむ……」

 

 この依頼を主導で受けたシンリンカムイが曖昧な返事を返してるけど騙されてますよマウントレディ。

 俺は依頼内容を事前にしっかり確認している。村の人たちがヒーロー見たくて呼んだってのが大きいうえに、村に若手が少ないので植林作業などの仕事が待っているという話だ。

 まぁこういう生活支援もヒーローの仕事の一つだ。人々の平和な生活を守ってこそヒーローよ。

 

「今はここを通るしかない。先日の土砂崩れでメインの道がふさがれてしまってな……」

「俺がいてよかったっすね。ダイブセンサーのGPSでちゃんと位置確認できてるんで道は迷ってないですよ」

「ケッ……太陽の位置で方角は見えんだろうが。野暮なもん使いやがって」

「山の中だから元気だね爆豪ちゃん」

 

 村の場所は俺がしっかりダイブセンサーで把握している。

 携帯電話では電波障害が起きるレベルの山奥の村ではあるが、ダイブセンサーは衛星とかそういうあらゆる通話・電波環境とバリ3で繋がってるので地球上なら回線が絶たれることはない。って発目ちゃんが言ってた。

 その後もしばらく歩いて……そして、漸くお目当ての村に着いた。

 

「『神野ヶ淵村』……人口50人ほどの小さな集落だ。緑に囲まれた美しい村だ」

「ようやく到着ね。へぇ、景観はいいじゃない!」

「長旅だった……! ……うわぁ! 大きな木!」

「っ、ちょっ」

 

 村について、マウントレディと緑谷が村を見下ろしながら感想を零す。

 緑谷が言う方に目を向ければ近くに大きな木があって。立派ですげーやって俺も思うけど。

 でも緑谷が急に立ち止まったから村の方見ながら歩いてたマウントレディがぶつかりそうになってるじゃん。

 俺のマウントっぱいが背中に当たったら緑谷の息の根を止めるかと思って眺めていると。

 

「フンッ!!」

「ぶっ!! いきなり何するんだよかっちゃん!!」

「急に立ち止まんじゃねェ! マウントレディがぶつかりそうになっただろうが」

「あ……ごめんなさい!」

「大丈夫よ、こっちも前よく見てなくてゴメンね」

 

 爆豪ちゃんが俺より先に気を廻して緑谷を蹴飛ばして、マウントレディがぶつかりそうになるのを避けさせた。

 ヤダえらい。爆豪ちゃんがそんなに周りを見てるなんて……というのも、実はこれには理由がある。

 爆豪ちゃんはマウントレディに他のヒーローとは違う、彼なりの借りがあるのだ。

 唐突に回想シーン。

 

 

 

「じゃ、今日のチームアップミッションはよろしくね。緑谷くん、爆豪くん」

「はい!」

「ウス」

 

 マウントレディ事務所に俺たちが到着し、挨拶と今日のミッションの説明を受ける。

 シンリンカムイからしばらく歩くことだけ伝えられて現地に向かうか、という所で……爆豪ちゃんから急に切り出した。

 

「マウントレディ」

「ん、なーに?」

「……神野の件ス」

 

 神野。爆豪ちゃんがヴィラン連合に捕まって、AFOと相対し、オールマイトが撃退した例の事件。

 そういえばそこにマウントレディもシンリンカムイもいて……で、確かマウントレディが爆豪ちゃんを助けたんだっけ。書類上はそういう記録が残っていた。

 

「礼をまだ言ってねェ。……あん時は助けてもらって、有難うございました」

「!?!?」

 

 その時のお礼を言う機会がなかった爆豪ちゃんが、マウントレディに素直に頭を下げた。

 わぁお。爆豪ちゃんらしからぬ……いや、でも最近の爆豪ちゃんは仁義は通すようになったしな。口調は相変らずクソ下水だけど。その辺大切にする。

 その光景に緑谷が余りにも意外なものを見たようにフリーズしてしまった。気持ちはわからんでもない。

 

「あら、あの時の事!? やだー! 逆にあんな大雑把な手段になっちゃってこっちこそ申し訳なかったわ! 頭上げてホラ! キャラじゃないわよ!?」

「アンタのアレがなけりゃ俺がオールマイトの足をさらに引っ張っちまう所だった。俺の力不足をフォローさせちまって……」

「もぅ、そこまで! ヒーローとして行動しただけなの!! もし貴方が今後ヒーロー活動をする中で同じように困ってる人がいたら助けてあげなさい。それでヨシ! ね?」

「……ッス。そうします」

 

 敬語まで出てる。えっマジか……爆豪ちゃんまさかのマウントレディ狙いか!?

 やらんぞ! マウントレディは俺たちのお姉さんなんだぞ! クソッ! 今回俺や緑谷と組むのに前のミッションの時みたいに文句が出なかったのはマウントレディに会えるからだったのか!?

 ……んなこたねぇか。爆豪ちゃんは緑谷一筋だもんな。

 ツンデレのツンが出てないってことはデレも出てこねぇわ安心したよ。

 まぁマウントレディもまっすぐお礼言われて喜んでるし関係が悪くなってるわけじゃないからこれはこれでいいか。

 

「変わった……変わっちゃったよかっちゃん……!!!」

「九州で聞いたようなセリフ」

 

 緑谷が爆豪ちゃん限界オタク拗らせて脳破壊されてた。ウケる。

 

 

 

 はい回想シーン終了。

 そんなわけで爆豪ちゃんがまさかのマウントレディに懐くというイベントを経ていたので、まぁそんな彼女が緑谷にぶつかりそうになればかばうわな。

 蹴飛ばされて木に顔面からキスした緑谷は残念だけど周りを見てないお前も悪い。マウントレディも悪いけど。

 俺のように常に周囲を索敵する癖をつけるのだ。ダイブセンサーのおかげ? 知らない。

 

「──────こらああああーーーー!!」

 

 そこで新たな登場人物。

 声を聞けば女の子。俺はそっちに振り向くと……なんか丸太を抱えた巫女服の女の子がこっちに走ってきてた。

 えっ? 丸太持ってるよ?

 この村まさか彼岸島だった??

 

「大事な神木に何してんだァーーー!! 成敗ッ!!」

「ボゴーッ!!」

「ハッ。ざまァ」

「お前もだーーーーー!!」

「フンっ」

「避けるなァーーー!?」

 

 丸太を振り回してるのは細腕の女の子。あれで丸太振り回せるってどんな力がその細腕に籠められてるんですかね*1。個性か?

 まず神木に直接キスした緑谷が成敗され、その後爆豪ちゃんも狙われたけど流石に回避した。

 うん、まぁね。最近爆豪ちゃん体から爆破まではできてないけど近接攻撃の回避行動についてはコツでも掴んだのかあり得ないくらい身のこなしヤバくなったからね。

 一歩も動かないのに丸太の連撃を回避し続けるという器用なことをし続けているのを俺とマウントレディとシンリンカムイで眺めていた。

 

「……止めましょ?」

「……うむ」

「巫女服が翻って腋がいい感じにチラチラしてるんでもうちょっと眺めてません?」

「今日も元気ね幾野くん」

 

 その後暴走した女の子を止めて、改めて俺たちのヒーロー活動が始まるのだった。

 

 


 

 

「なんだー、君らヒーローだったのか! 悪いヴィランかと思ってつい……」

「ケッ、誰がヴィランだ」

「ヴィランだとしても丸太を振り回して突撃してくるのはだいぶアグレッシブ。ところでキミ可愛いね。お名前は? 普段は何してるの? 彼氏いる? こういう質問初めて? 巫女になろうとした理由は?」

「やめなさい」

「幾野くんがアグレッシブすぎるよ文字通りの意味で」

 

 落ち着いた巫女の少女。見ればかなり可愛い系のお顔だ。ちっこくて胸はないけど……小動物っぽい可愛さがある。

 AVの冒頭インタビューのノリで質問を投げかけたらマウントレディにお尻をつねられて止められた。

 そういう文化に疎そうだからこの勢いで際どい質問まで答えてくれるかなと思ったんだが。

 

「私はこだま! 神木を守る巫女やってんだ!」

「個性社会の昨今に凄いお仕事されておられる」

「古き文化が残る村だ。ここは文化遺産・自然遺産として登録もされている」

「秘境ってやつね」

「みんなー!! ヒーローきたー!!」

 

 こだまちゃんに俺達も自己紹介をしてからこだまちゃんが村の皆さまをお呼びした。

 すると突然ワイワイと集まってくる村の方々。すごい。休日とはいえこんなにみんな集まってくるんか。

 

「すげェや! 本物のヒーローだと!」

「テレビの中でしかいないと思ってたべ!」

「都会のヒーローはめんこいなぁ!」

ふふっ、めんこいですってマウントレディ照れちゃいますね♥」

「ネット通じてない村だからって後で性別ばらして脳を揺らすためのフラグ立てるのやめなさい??」

「よくこんな山奥まで!」

「おお……すごい歓迎されてる……!」

「いやぁ、ヒーローとは無縁の村だから珍しくてね!」

「ここ30年は犯罪なんて起きてねぇなぁ」

 

 村の人々と交流を始める。

 ここ30年犯罪起きてないのに明らかに10代のこだまちゃんが俺たちをヴィランと認定して丸太を振るってきた……ってコト!?

 あれかな。テレビの向こうのヒーローの活躍に憧れてヴィラン退治なんてしてみたくなったのかなこだまちゃん。思い込み激しくて可愛いなこの子。

 

「ヒーローが必要ないほど治安がいいんですね」

「なんで私達呼ばれたのかしら。もしかして撮影とか!?」

「まぁ事前にマウントレディに説明すると来るの渋りそうだったんであえて詳細を伝えなかった所はあります」

「うむ」

「なんで私には説明しないで幾野くんには説明してるんですか先輩!?」

 

 ではさっそく仕事を始めよう。

 俺はマウントレディに仕事の道具を差し出す。

 「?」って顔で俺の持っている物を見ているがこれはただのシャベルです。初見か?

 

「『みんなで植林して村を守ろう!!』ってのが今回のミッションです。去年大きな土砂崩れ災害が起きたので植林して地盤を固めてるんスよ」

「私のビッグな活躍は!?」

 

 何言ってんですか。マウントレディがこれほど平和に輝く仕事ないでしょうよ。

 確かに取材も記者もキタコレ族もいないけど渋谷で巨大化するよりよっぽど健全で平和だ。

 期待してますよマウントレディのビッグな植林活動。俺もマウントレディに植林したい。

 

「マウントレディの巨大化の個性を使えば資材の運搬が効率化されるだろう」

「重機代わりですか!? んもー!! もうヤケクソ!!」

 

 でっかくなったマウントレディが資材運搬などを担当。

 シンリンカムイは腕を伸ばせるので細かな作業。緑谷はパワーと小回りが利くのでシャベル片手に植林活動の手伝い。

 爆豪ちゃんは爆破で速攻で穴を開けてすさまじい速さで苗木を植えていた。こんな時でも天才マン。

 

「おお!? すごいなキミ! もうこんなに植えとる!」

「すごいねかっちゃん……!」

「ただの作業だろうが。マウントレディがキバってんだ……俺もキッチリ植え殺すわ」

「バクゴーが意外な所からやる気出してる」

 

 単純作業だから「この俺に対するミッションのくせにヌルすぎるんだよ」とか言い出しそうなモンだったけど恩人であるマウントレディも働いてることで爆豪ちゃんも手を抜かずにバッチリ作業してくれている。

 なんか……さらにあざとくなったなコイツ……。

 ヤンキー子猫理論みたいなもんか。普段の言動がクソ下水だからこそ真面目にヒーローすることで人気が出るみたいな。強いなコイツ。

 

「た……大変だーーー!! 誰か奴を捕まえてくれーーーー!!」

「!! ヴィラン!?」

「ヴィランか!? どこだァ!!」

「森の奥へ……!」

「っしゃア! 今────」

「待てバクゴー、俺が行く。あれニワトリが逃げてるだけだわ。ゼルダの伝説やりたけりゃ譲るけど」

「とっとと捕まえてこいやイグジストォ!!」

 

 途中で村人が思わせぶりな叫び声で助けを呼んで、俺もすぐにダイブセンサーを起動してウォールハックで索敵する。

 爆豪ちゃんがヴィランと見て飛び出そうとしたけどただのニワトリだったので俺が捕まえに行くことになりました。

 ダイブワイヤーでニワトリ捕まえてるとフックショットでニワトリ捕まえるリンクみたいな気持ちになるな。ちょっと楽しかった。

 

 まぁそんな感じで久しぶりにのんびり平和な雰囲気で、村の作業をお手伝いしたのだった。

 

 

*1
自分の腕見てもろて。





ちょっと長くなったので二分割。
チームアップミッションは1話完結の物語にみっちり詰まってるから中々一万字に収まらぬ。ぐぬぬ。
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