【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!! 作:そとみち
「センちゃん見ててね! 頑張ってくるから!」
「ああ。鍛えた成果見せてもらうぜ透ちゃん」
第二試合に臨む前の透ちゃんがガッツポーズでふんす! と可愛くやる気を出してたのでぽんぽんと頭を撫でて激励する。
ラーカーズのインターンでスタメン候補の透ちゃんは結構な回数の現場に出ており、活躍もひとしお。甘えの部分はどんどん削れて、今や立派なラーカーズの戦力だ。
今回相手になるB組のメンバーはそれぞれ優秀な個性の持ち主だが……このメンバーならやってくれるだろう。
「……その、イクノさん。わたくしも頑張ってきますので……」
「ん、おお? うん、勿論八百万ちゃんも頑張ってな! 応援してるぜ!」
しかし透ちゃんの頭なでなでしてたら八百万ちゃんも同じように声をかけてきた。ので俺も応援してると伝えたのだが……そわそわしてなんかを待ってるような。
何やろ? と思ってたら透明になった透ちゃんが俺の脇腹をつついてくる。えっ何。どうすればいいの。
とりあえず八百万ちゃんがこちらに頭を向けてきているような気がしたので、透ちゃんと同じように撫でてほしいのかなと思ってなでりこなでりこしてみた。
「……! 絶対に負けませんわ!!」
「うおー!! やろうぜヤオモモ!!」
それで何だか八百万ちゃんもすごいやる気を出した。
……え? もしかして八百万ちゃん撫でられるの好きだった? 確かに普段からしっかりしてるからそういう機会に恵まれなかったのかもしれない。透ちゃんが撫でられてるの見て自分もしてほしいと思ったのか。
やだ可愛い。俺でよければいつでも撫でちゃお。
「罪深い」
「なんであいつあんなにクソボケなんだ」
「彼の生い立ちがそうさせてしまっているのだろうか」
「おいたわしや八百万……発目も……」
「葉隠が理解ある彼女でよかったなマジで」
「人を惹きつけすぎる癖に愛に気付かない悲しきモンスター」
「姉さんも押せば行けるか……?」
なんか遠くでA組男子がひそひそ話してる。なんや。ダイブセンサー起動してないからそんな遠くの音まで聞こえんぞ。
まぁええやろ。
さて、そんでもってお互いのチームが配置についた。
「それではガンバレ拳藤第2チーム!! START!!」
「偏向実況が始まったな」
「相澤先生が試合混ざるから実況がブラド先生だからな」
ブラド先生のB組寄りの実況も流れるが、俺のウォールハックによる視界は平等にA組もB組も映し出す。
特にA組。透明になってる俺の彼女の顔までばっちり映している。
「おお……!? あれが葉隠の素顔か!?」
「なんか文化祭でチラッと見えたって言ってたけどマジで可愛いな!?」
「顔がいい……そして顔がいい!!」
「クソッ幾野爆発しろォ!! あんな子とイチャイチャしやがってェ!!」
「ハハハ。やらんぞ」
透ちゃんの顔を初めて見るB組が俺に嫉妬の眼差しを向けてくるがノーダメージ。
惚れてまうやろ。分かる。俺も一目惚れしたからわかる。こんな子が全裸だったんだぜ……? 今は個性の透明化が広がったから俺と御揃いのスーツ着てるけどさ。
さて開幕だが……今回のチーム分けはお互いに索敵専門の個性がいない。
なので先にどちらがどちらを見つけるか……と言う話なのだが。
「拳藤のチームリーダーとしての素質が見えるな。作戦立案が迅速かつ丁寧だ」
「やりたいことがはっきりしてるチームだよな。黒色はこの地形が個性に合ってる……黒影完封できるし。小森もめっちゃ最初からキノコ生やし始めたな」
「ヤオモモもキノコパウダー警戒して速攻でアルコール生成してみんなに振りかけたねー。この辺は互いの個性分かってるからこその下準備かー」
「動ける拳藤ちゃんとどこでも便利な吹出の個性がどこまで刺さるかかな」
「ただA組は八百万と常闇がいるからな……どっちもかなりヤバいぞ」
それぞれが所感を零しながらまず準備を見た。
お互いのチームがまず全力で体にアルコール消毒してたのはちょっと面白かった。小森ちゃんの個性対策だな。ただ小森ちゃんも味方にはあまり胞子撒かないようにして相手にぶちまけるようにするだろうし、近づいた時の危険性は同じくらいか。
黒色はダークシャドウとの噛み合い◎。青山のレーザーが黒色対策に通じそうだけどそれもどこまで撃てるかっていう限界もある。
拳藤ちゃんの作戦と、八百万ちゃんの作戦、どっちが上回るかって所だが……お。
「動いたな……まず常闇がダークシャドウ一気に伸ばして様子見兼アタックって所か」
「悪くない動きだが……黒色がいるのに安易に伸ばすか? 操られるぞ?」
「いや……仕掛けに行った。ダークシャドウの背中見てみ?」
「ん? ……おお!? 葉隠が乗ってるぞ!?」
「なんか日本昔話のOP思い出すなあののんびりした乗り方」
「幾野、ウォールハック越しには普通に乗ってるように見えるが……今葉隠はどんな状態なんだ?」
「全身透明になってる。音を立てなきゃB組にバレないだろうね」
「ヤバぁ」
初手の様子見でダークシャドウを伸ばしてきた……と思いつつ、実は透ちゃんがその背中に乗っているという二重の奇襲。
まずダークシャドウがあえて大声を出してB組に襲い掛かる……が、予想通り黒色がダークシャドウに潜り込んでコントロールを奪取。
そうすれば逆にたどって相手の位置を特定しに動くのが当然。この時点でB組は上手く初動をしのげたと思っているだろうが、実は透ちゃんが近くに降りている。
足音を立てない移動、着地はすっかりモノにしている透ちゃん。全身を透明にしているので影すら生まれない。服もぴっちりスーツだから衣擦れもせず、静かに裏側に回り込む。
キノコの胞子がアルコールを超えてキノコが生える前に……声を立てずに、小森ちゃんに襲い掛かった。
「おお!! 拳藤譲りのネックストーン!!」
「完全に虚を突いたな……一番厄介なやつを気絶させたか」
「追撃もしないですぐに距離を取った! すごい、徹底してる……索敵要員がいないからアレやられるとB組は厳しい! 本当にアサシンじみてるね!!」
「透ちゃんはワシが育てた」
小森ちゃんの首の裏にストンと手刀を叩き込んで根っこから意識を刈り取った。
近接戦闘でもガンヘッドマーシャルアーツを軸にした戦闘が出来るようになった透ちゃんだ。一撃で最も厄介な相手を気絶させた。
しかしそのままそこにいては拳藤ちゃんなら気配を読んで攻撃も出来るかもしれない。なので一度距離を置き、相手に『いつでも不意打ちがあり得る』という意識を植え付けた。
吹出が個性使って擬音でめっちゃ周囲を攻撃するが、ああいう全体攻撃に当たらないようにポジショニングするのは透明人間である透ちゃんの得意技。パイプの下に身を隠した。
「しかし気絶した小森ちゃんを運ぶのはキツいか。流石にそこは身長やパワーの問題があるな」
「運んじまうと位置がバレるしなー。でも拳藤も吹出も安易に起こしにはいけねーぞ」
「起こす動作をまた狙われるかもしれないもんね。気絶した小森さんを運んで引くか、黒色と合流するか……」
「ってか黒色は……うわマジ!?」
「エゲつねぇな!?」
さて先程ダークシャドウに潜った黒色だが、単騎で3人がいる所に突撃したのは透ちゃんと同じ。
ただアイツは黒い箇所であればいくらでも潜れる。影が多いこのフィールドなら縦横無尽に駆け抜けられるのだが……そこで八百万ちゃんがとんでもないもん作ってた。
スタングレネードだ。
しかも複数。青山と常闇がダークシャドウに溶け込んだ黒色の攻撃を受けた後、それを反撃代わりに投げつけていた。
「光で黒色を潜らせないように……って感じでもねぇな?」
「音だろうな。黒色は何かに潜ってても音は聞こえるからそれで攻撃しようというのだろう」
「残ってた3人はバッチリ耳栓してるね……スタングレネードに耳栓ありなら大抵の初動は受けられるね、確かに」
「光は眼を逸らせばいいもんな。……おお、黒色も相当急いで逃げたな!?」
「投げられたものがスタングレネードだと気付いて一瞬で脱出したな……良い判断」
「こうなると小森ちゃんやられちゃった分、A組が一歩有利っぽい?」
「いや……追った。黒色の撤退を追いかけるようにA組が3人とも詰めに行ったな」
黒色の撤退を逃さぬように3人が追いかける。
その際に八百万ちゃんがさらにアイテムを創造。作ったのは……サーモスコープか。あれなら黒色が潜ってる位置も分かるわな。
それを自分で装着した八百万ちゃんが黒色の位置を見ながら、耳に手を当ててなにか喋り始めた。
あの動作でA組のみんなはピンときただろう。
俺たちA組で全体行動する時に必ずやる癖がついてたアレだ。仮免試験でも使ったアレ。
「インカム作ってたのか……最初の時間で!!」
「ってことは黒色の位置を誰かに伝えたって事か? 誰に……ってああ、そうか葉隠か」
「拳藤と吹出が合流する前にカウンターで奇襲仕掛けようってのか。黒色はまだ葉隠がどこにいるか分かってないもんな」
「うん、味方のいる位置に撤退してるのに奇襲が来るとは思わないだろうね。でも黒に溶けてる黒色くんをどうやって仕留めるか……ハイチーズを使っても影はできちゃうし……」
「一つ忘れてるぜ緑谷。
「え? ……あ、そうか!!」
黒色がパイプの影を通っていく……そのパイプの上に透ちゃんが立ち、迎撃の構えだ。
拳藤ちゃんも吹出も小森ちゃんを抱えて前に出ていくが、透ちゃんの位置を察しきれない。完全に透明となった透ちゃんのアサシンクリードの始まりだ。
透ちゃんがしゃがんでパイプに手をついて……
透明伝達クリアリング。透ちゃんが自分の物だと認識したものは透明になる。
黒色が潜り込んでいたパイプの影は一瞬にして透明になり、黒色がそこからはじき出された。
これには黒色も驚いたようだ。光源の変化で影が動くなんてもんじゃない、いきなり無色透明になったんだからな。
「っ……行った! 葉隠が黒色掴んだぞ!!」
「普通の人なら服の黒とか本人の陰に隠れられるかもだけど……葉隠は透明だからそれもできねーな!?」
「上手い……!!」
「行けー透ちゃん!! ガンヘッドマーシャルアーツの神髄見せたれー!!」
「おお……ヴッ」
「ヒュッ」
「オゥ」
「スンッ」
「えぐい……」
パイプから落下する一瞬で透ちゃんが黒色を掴み、近接戦闘に持ち込んだ。
ガンヘッドマーシャルアーツを麗日ちゃんとの組手で磨き上げていた透ちゃんだ。相手が男子だろうが並大抵の動きでは彼女を捕えられない。
さらに言えば透ちゃんは完全に透明なのだ。どこから攻撃が来るかが見えない恐怖。
瞬く間に黒色が攻め立てられ、腹に一発、首に一発、そして
それを見ていた男子陣が内股になり苦い声を漏らす。俺もです。
「……あれがガンヘッドマーシャルアーツの神髄なん?」
「絶対違う!!!」
芦戸ちゃんのツッコミに麗日ちゃんが白目向いて否定してた。
うん……透ちゃんは技にオリジナリティ出してるから。
まぁ流石に潰したりはしてないやろ。男の子のソコが弱点でありとても大切な部位であることは透ちゃんもわかっとるやろうし。
ってか黒色の奴俺の彼女に股間触らせたとかふざけんなよマジでくたばれクソが(豹変)
はい。
一瞬で意識を落とされた小森ちゃんは拳藤ちゃんが気つけをして目が覚めたが、その代わり黒色が完璧にダウン。
ダークシャドウが今度こそ無力化した黒色を捕えて、一気に運んでカゴにぶち込んだ。
「これで4対3か」
「小森が回復したけどキノコはお互いに生えないようになってるし……B組キツいか?」
「いや、今の黒色の戦闘である程度の葉隠の位置もバレてる……吹出がやる!!」
「うおお!? あんなデカく擬音吐けるのかよ!?」
「戦場を分断した……!! 葉隠さんは避けたけど、これで八百万さんが孤立するような形に!?」
「やるな吹出……!!」
しかしこれだけ透ちゃんが動けばある程度のお互いの位置は理解できてしまう。
拳藤ちゃんの指示で吹出がとんでもないデカさと固さの擬音をぶっ放して、戦場を大きく二分割。
ブレインの八百万ちゃんを孤立させて……そっちに拳藤ちゃんが向かったようだ。
タイマンでまずは潰す構えか。確かに近づけば八百万ちゃんは分が悪いだろう。
その間に小森ちゃんも吹出も再度姿を隠す……が、いつの間にか常闇が既にサーモスコープを八百万ちゃんから受け取っていた。
それを青山にパスして……青山は遠距離からビームで狙いつつ、それで場所を察して常闇と透ちゃんで攻める構えか。吹出の擬音でどれだけA組の攻めを防げるかが勝負だな。
「拳藤が八百万潰しに行ったぞ!」
「近接戦闘なら拳藤に分があるよねェ!! まず厄介なリーダーを潰して……いやズルいなァあれ!?」
「……シンプルに最適解だな」
「まぁ……そうするよな普通」
さて一瞬で拳藤ちゃんが八百万ちゃんに接敵し、これは分の悪い勝負になるか……と思ってたところで。八百万ちゃんが創造で体からとんでもないものを生み出した。
生んだのは……
うん。近接戦闘が肉弾戦になる拳藤ちゃんからしたらアレどうしようもないやつだな??
「しかもあのトゲ動いてんぞ」
「創造しきってないんだ……生み出す最中で止めてるからもし捕まれても新たにトゲを生やして突き刺せる! 発想の転換だ! 勝てないなら受ける……!!」
「遠距離攻撃か特殊攻撃がない相手には割と必殺だなアレ」
「ズルい」
「大きなものを創ろうとして隙生んでムダにカロリー消費してたヤオモモは最早影も形もない」
「訓練で近接戦闘勢の動き見てたのは対策考えるためだったのかな」
これには拳藤ちゃんもだいぶ困り顔。
巨大化させる拳でぶん殴ったら手が穴だらけ。それは流石に嫌だろう。
両手を大きくして包み込むにしても絶対痛い。ならどうするかってなり、拳藤ちゃんは周囲のパイプを巨大化させた手でもぎ取って、それを振り下ろして八百万ちゃんに殴りかかるが……結果はパイプの方に穴が開いた。
タングステンとかで作ってんのかなあのトゲ。アレはしんどい。まさかの防御形態に拳藤ちゃんも判断を迫られている。
ここで時間をかけて八百万ちゃんを潰すか、一度味方と合流するかだ。
だが、その時間が隙だった。
「……あ、ダークシャドウがまた透ちゃん抱えて伸びてってる」
「青山が相手二人の位置を見つけて遠距離からビームで牽制してるからその隙に味方を送り込もうってハラか」
「吹出の擬音もいい感じに牽制してるけど……音が出るから飛んでる常闇なら回避は難しくなさそうだな」
「常闇も飛行速度かなり上がってるもんなー。純粋な飛行の能力ならクラス1じゃね? 俺のライトニングボードでも追いつけないし」
「キノコも徐々に生えてるけど……まだ肺に入るほど胞子が撒き散らされてないかな? いけー!」
青山がサーモスコープで小森ちゃんと吹出の位置を確認して遠距離からビームで牽制。
小森ちゃんはキノコをずんずん生やしてるけど初動で一度気絶させられてたのが響いてキノコの胞子が撒き切れてない。
その隙をついて透ちゃんがダークシャドウに掴まって、吹出のデカ擬音を超えて八百万ちゃんの援護に回った。
見事な連携。インカムで八百万ちゃんが指示してたのかもしれないな。
「拳藤の武術と葉隠のインビジブルガンヘッドマーシャルアーツの対戦カード!! アツいな!!」
「葉隠ちゃんが後ろから回り込んで……っとぉ!? 拳藤ちゃん振り返りよったよ!? バレたん!?」
「気配で察したか!? 透明な葉隠だけど……拳デカくされると大雑把な攻撃でやられるな!?」
「危なっ……咄嗟に飛びのいて避けた!! けど拳藤の方が上か!?」
「いいぞやれ拳藤ォ!! 君なら二人とも完封できるさ!! その調子……八百万くんは手加減ってものを知らないのかなァ!?!?」
「えげつな……」
「シンプルにえげつない」
拳藤ちゃんの背後から透ちゃんが奇襲を仕掛けた……が流石そこは武道家の拳藤ちゃん。戦闘モードに入って気配で気付いたのか透明なはずの透ちゃんに感づいて振り返った。
で、大拳で掴みかかる様に突撃したが透ちゃんが見事な身のこなしで一度退避。距離を取って、しかし拳藤ちゃんがそれを追うために八百万ちゃんとの距離を離したところで……八百万ちゃんが新たに創造。
作ったのはハンドサイズのショットガンのような物で……しかし中身は流石に銃弾なはずもない。
かつては大艦巨砲主義で大砲を生成して興奮する性癖だったけどカロリーの無駄使いだと理解したようで、ソードオフの様なその銃から放たれたのは液体だ。
拡散するように拳藤ちゃんの背中に放たれたのは
催涙スプレーを巻き散らすように放たれたそれを、音で振り返ってしまった拳藤ちゃんが大拳でガードするが……それがいけなかった。
峰田のもぎもぎネットのように、ぶつかった瞬間にさらに拡散してしまったのだ。拳藤ちゃんの目に入った時点で効果を発揮し、思いっきり拳藤ちゃんがむせ始める。
なお透ちゃんは八百万ちゃんがそれを生成した時点で全力疾走で距離を取っていた。えらい。エグい。
「これは決まったか?」
「流石にな……あ、葉隠にガスマスク投げ渡した」
「終わりだ」
拳藤ちゃんがどうやってもむせるのを止められない中で、ガスマスクを装着した透ちゃんが再び接敵。
ブンブンと大きな拳を振り回して風で止めようとする拳藤ちゃんだけど流石に人が吹き飛ぶほどの風は生み出せない。
透ちゃんが大きく振り回した腕の隙を突いて背中に取りつき、ネックストーンで拳藤ちゃんを気絶させた。
……えっぐ。
「拳藤がやられた!! これで4対2だけど……いや、向こうも厳しいか!?」
「吹出も喉が枯れるとアレだからな……小森ちゃんのキノコもあるし。黒色がいなけりゃ常闇を止めるのは至難の業だ」
胞子に注意して接近しすぎずに遠距離から常闇がダークシャドウで小森ちゃんを攻め立て、それを守ろうと声を出す吹出には青山がビームで対処。
二人とも攻めに回れるA組に対してB組はどうしても吹出の声に頼らざるを得ず、分断したうえで逆に迎撃されてしまった拳藤ちゃんが復帰できない以上勝負は見えた。
最終的に小森ちゃんをダークシャドウが捕えて檻にブチこみ、吹出は高所にいる青山からのビームを避けるために横っ飛びしたところで……そのビームが急に屈折して吹出にブチ当たった。
透ちゃんだ。屈折集光ハイチーズの原理で青山のビームそのものを屈折させて吹出に狙いを向けてブチ当てた。
それで吹出もダウン。檻に入れられた二人と気絶した二人で……勝負は決着となった。
「第二セット!! 4対0でA組勝利!! だがB組の粘りも相当なものだったぞ!! 一つ違えば逆の結果になっていただろう!!」
ブラド先生がめっちゃ気落ちしながら決着のコールを宣言した。
「やりましたわ! 完封勝利です!」
「絆の勝利☆」
「策がハマったな。相手の個性が分かっているからこそ見事に詰め切れた」
「ふふーん!! 私大活躍ー!!」
吹出が結構な範囲を破壊したのでステージの移動も兼ねて若干のインターバル。
終わってから考えれば、小森ちゃんと黒色の個性を把握できてたのが勝利につながった感じだな。
この二人は一芸特化だから虚を突けばヤバいけど知られると対策される。
で、その対策に余りにも噛み合いが良すぎる八百万ちゃんと透ちゃんがいたのが運の尽きだった。多分八百万ちゃんがいなかったら小森ちゃんのキノコを止める術がなくて相当厳しい戦いを強いられただろう。範囲攻撃は基本的にズルい。
思えばB組って範囲攻撃多いよな。小森ちゃんもだけど塩崎ちゃんもそうだし。吹出も使い方次第で出来るし。
……ああいやA組も轟と上鳴がいたか。トントンってところか。
「二人とも頑張ってたねマジで。流石だよ」
「えへへー! もっと褒めてー!」
「イクノさんに褒めてもらえると誇らしいですわ」
相澤先生との検討会も終えて二人がやってきたので俺は心からの賞賛を送る。
うん、マジで二人ともめっちゃ動けてた。透ちゃんは奇襲術に磨きがかかりまくってたし、八百万ちゃんは自分の個性の活かし方を柔軟にできてたし。偉い。
なんか透ちゃんがめっちゃ頭を撫でてほしそうにしてるけど授業中だから一応今! あんまおっぴろげでいちゃつくと相澤先生の捕縛布飛んでくるから!!
ってか八百万ちゃんまでなんで撫でられたそうにしてるんですかね? ハマった?
「今の所A組優勢だけどこの先は分からないね……曲者が多いよ」
「こっちのセリフ。インターンの経験値出てんなぁ……読みあいで一歩負けてる感じあるわ」
「初戦は心操がヤバすぎたな改めて思うと」
「どーも。次はこうはいかないだろうけどな」
「八百万がいなかったらもうちょっと頑張れたノコ……今日の私はダメキノコ」
「肺攻めは時間がかかるから……し、仕方ない。俺がもっと葉隠を警戒すべき、だった……」
「いやー……完全に透明で足音まで消されるとマジでヤバいね葉隠! こんななら手刀教えるんじゃなかったなー!」
「んふー! 足音は歩法もあるけど足裏のアイテムがいい仕事してるんだ! 発目ちゃん開発の吸音素材!」
インターバルではクラスの垣根を超えてそれぞれが戦略検討。
今のところはA組に分があるが……B組だって決して何も出来ずに負けてるわけじゃない。それぞれ持ち味は出している。
俺が戦う4戦目はかなりA組に分があるだろうが、続く5戦目は向こうに物間と心操がいる。そりゃ全勝を狙いたいって気持ちもあるけどどこでB組が差してくるかわからない。油断はできないだろう。
「当たり前だけどみんな個性だけじゃなくて体も鍛えてるよね……個性の使い方も夏ごろよりも随分伸びてるや……メモメモ」
「書くなあデクくん。大丈夫、デクくんもすっごい成長しとるさ!」
「だといいなぁ」
「謙遜の塊かよ。まぁオイラとイクノにゃ及ばんけどな」
「アンタら二人に及んだらそりゃ最強なんよね」
5戦目のチーム、緑谷と麗日ちゃんと峰田と芦戸ちゃんが仲良く話してた。緑谷はホントよく見てるよなぁ。アイツのノートってホント参考になるんだわ。この演習が終わったらまた読ませてもらうか。
と、そんな様子を見てたところで急になんかオールマイトが緑谷を呼び出してた。
んん? 麗日ちゃんに嫉妬かな? 学生の恋路を邪魔しちゃダメですよオールマイト。野暮なんだからー!
「……幾野」
「ん。爆豪ちゃん」
したら俺の方にも急に爆豪ちゃんが声かけて来た。小声だったので何かあるなと思い俺も声を小さくする。
「このタイミングでオールマイトが急にデク呼び出す理由ねェだろ。多分アレ絡みだ」
「……あー、かもな? そういやなんか今朝の緑谷の様子おかしかったかも」
「行くぞ」
「おぅ」
確かに。これまでの演習でもそんな急に呼び出したりとかしてないもんなオールマイト。
その話だったらコトだ……っていうかマジでそんな隅っこに行ったからって秘密話出来ると思ってるあの二人が能天気すぎる。
耳郎ちゃんを筆頭に口田、障子、塩崎ちゃん、宍田と索敵系個性の所有者いっぱいおるんやぞ。聞かれたらどうするねん。
そして近づいてみれば完全にアレ絡みの話じゃん。違和感がどうとか言ってるし。
何? 緑谷のOFA何かあったん?
「オイ!」
「わ!! びっくりした! かっちゃんに幾野くん……」
「いやこんな人前でヒソヒソ話とかどんだけ注目されたいんスか」
「てめーら人に守秘義務強要しといてバンバンコソコソしてんじゃねェぞ」
「ムム」
「ムムではなくて」
俺も爆豪ちゃんも何しとるねん!! と二人を怒る。
この二人が当事者なのに一番油断というか……雑だよな。どこか抜けてるところがそっくりだ。
ンモー! ママは緑谷が心配ですよ!!
「……何かあったんか、ワンフォーオール」
「……それが─────」
そして爆豪ちゃんの質問に緑谷が今朝あったことを話した。
なんか部屋の中で暴発したんだって。オイオイオイ。後で掃除しに行かなきゃ。
ってか暴発するようなもんだったのか? 寝てる時に暴発って……。
……ああ成程。
溜まってたのか。
「定期的にシコろうな。俺の自撮り送ろっか♥?」
「オート個性解除しよ? ね? 1秒でいいから。30%で許してあげるから」
「ごめん」
「ボケがよ」
茶化したらめっちゃキレられた。最近緑谷も沸点低くなったよな。爆豪ちゃんの影響かな。
その後爆豪ちゃんからも気遣いという名の挑発が緑谷に送られ、緑谷もそれを受け止めて笑顔を作り、オールマイトが嫉妬してた。
闇の三角関係。
今ここ男しかいないんですがそれは(察し)