【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!!   作:そとみち

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119 世界の中心でアイを叫んだけもの

 

 

【side 緑谷】

 

 

 第五試合の準備に入る。個性の調子を確かめながら、少しだけついさっきのことを振り返る。

 先程、第四試合が終わって幾野くんをボコボコにし終えたかっちゃんと言葉を交わした。

 

『デク。俺ァ進んでんぞ』

『うん、すごかった!』

『テメーに負けねぇ速度でだ』

『超えるさ! 僕も!』

『ケッ。したらまた俺が超えてやらァ』

『負けない! 見ててよ!』

 

 かっちゃんと……いい、関係になれていると思う。

 今のかっちゃんは、ずっといじめられてた僕から見ても……とても成長している。

 口調こそ直らないけれど、ヒーローとして大切な何かをその胸にいっぱい持てているように感じるんだ。

 それは雄英に入学して……僕だけじゃない、クラスメイト達と交流したからこその変化だと思う。

 僕ももちろんみんなに影響を受けていて……その中心にいるのは、いつも幾野くんだ。

 

 先程の第四試合ではまぁ彼らしいポカをやってみんなの失笑を買ったけれども。

 らしいな、と苦笑を零してしまったけれども。

 でも、真剣な場で本気になった時、彼はきっと誰よりも……自分の原点(オリジン)を貫き通す。

 

 ───誰かの隣にいたい。

 

 その恩恵をみんなが受けている。僕やかっちゃん、轟くん、飯田くん……クラスのみんな。

 いや、それだけじゃない。B組も、物間くんも心操くんも……発目さんだって。相澤先生だってきっと。

 そんな、己の辛い過去を峰田くんと共に乗り越えて前を向いていられる彼を尊敬している。

 

 だから、幾野くんにも勝ちたい。

 そう思っている。

 

 A組の檻のまわりを飛び跳ねる立体機動でフルカウル25%の動きを確かめ、まったく不調がない事を確認して僕は一旦みんなの元に降りた。

 

「おー緑谷。どう? 何か個性が変かもーとか言ってたけど……」

「うん……大丈夫! 全然なんともないや、いつも通り!」

「よかったぜ。このチームパワータイプっつったらお前頼りだからよー」

「何言ってんの。僕よりも峰田くんの方が警戒されるでしょ、この地形なら」

「デクくん、峰田くん、あと相澤先生が相手からすると注意する3人になるんよね」

「どう動く。俺は指示の通りにしか動かんぞ」

 

 チームの5人……僕と峰田くん、麗日さんと芦戸さん、そして相澤先生でスタート前の打合せを行う。

 相手のチームは曲者揃い。

 洗脳が一撃必殺の心操くん、幾野くんの個性をコピーして5分間なら物理無効の物間くん。

 物のサイズを変えてしまうことで奇襲や運搬が出来る小大さんは柳さんと庄田くんとかみ合わせがいいと言えるだろう。コンビネーションを取られると厳しい。

 

「やっぱ危険度で言ったら物間と心操かにゃー? 特に物間。イクノ相手の対策が考えられるよねー」

「オイラがやるしかねーだろーな。5分間もぎもぎ投げ続けて牽制してイクノの個性使い切らせるってのが一つ」

「心操くん対策どーしよっか。喋る前になんかつける? もしくはあえて会話しないとか……」

「お互いの口元を見る形で対策しつつ、返事は出来る限り頷いて……かな。会話に会話で返さないくらいの注意が必要だと思う」

「三つまで個性使える物間も心操の洗脳をコピーしてる可能性大だよな。そこも注意しとくべ。緑谷、こういう場の戦力分配はお前得意だろ。どーする?」

「ん……そうだね」

 

 峰田くんに言われて僕は攻めの流れについて考える。

 お互いの個性や実力はある程度判断できていると言っていい……物間くん以外は。

 だからこそ一番注意するべきは物間くん。僕が相対すれば他の個性がよっぽどじゃなければ相手の攻撃は避け切る自信はある。

 峰田くんでも回避は問題ないだろう……ただ僕と峰田くんが一緒に動きすぎると麗日さんと芦戸さんが狙われるかもしれない。

 そこに相澤先生を配置するという手段もありだけど……相澤先生の動きを守りに回すのはもったいない。逃げるだけなら麗日さんの無重力で芦戸さん含めて空に逃げる手段もあるし、二人は1セットで動いてもらった方がいいかも。

 で、僕が先行して牽制兼囮役、峰田くんがその間を繋いで相手を見つけたらもぎもぎネットで支援……相澤先生は奇襲役としてこの3人でアタッカーとしよう。

 麗日さんと芦戸さんは一歩引いた位置から、逆に相手側が僕たちに奇襲を仕掛けてないかを探ってもらいながら、見つけたら合図を出して迎撃してもらう役目をしてもらうと僕たちの後顧の憂いが無くなって助かるな。

 あと、出来れば相澤先生は心操くんを見つけたらそちらに対処してほしい。心操くんと相澤先生ならタイマンなら絶対に相澤先生が勝つからだ。その際は相澤先生は絶対に喋らないようにすれば洗脳を防げて、実力差で押し切ることができるはず……その時は心操くんの援護に他のB組のメンバーが行けないように僕たちが相澤先生のまわりを援護する形で……」

 

「全部喋ってたぞ」

「わかりやすくてよきよきよ。私と麗日は援護だねェ!」

「ええ配分と思うよ。私らも隙があればワイヤー移動からの無重力タッチで無力化狙ってくね!」

「俺は心操を優先的に捜索、奇襲しつつ、他にも隙があれば狙う。緑谷が先行して囮、峰田が間をつなぐ支援役。で、いいんだな」

「あ、はい! ひとまずそれで!!」

 

 どうやら全部声に出てたらしい。恥ずかしいな、いつもの癖が出てる。

 でも作戦はバッチリ伝わった。僕がオトリ。峰田くんが僕の後ろで遠距離支援、兼奇襲。

 芦戸さんと麗日さんは僕たちを後ろで確認して奇襲はないかチェック。

 相澤先生はそんな僕たちの全体を見ながら出来れば心操くんを止めてもらう事。

 あとは適宜調整。自分のやることをはっきりさせておけば心操くんの洗脳の狙いは落ちるだろう。

 そもそも声で返事をしないように心がければいい。一戦目の心操くんの働きを見てるからさらに注意を高めて。

 

「物間くんと接敵したら僕のエアフォースか峰田くんのもぎもぎで牽制しよう。5分稼げば個性が切れるはず」

「オーライ。特にオイラのもぎもぎネットなら回避はできねェしな。狙うぜ」

 

 作戦立案完了。同時にブラド先生のアナウンスが響く。

 

『第五試合! 本日最後だ!! 最後まで気を抜かずに頑張れよ!! START!!」

 

 試合が始まった。

 

 


 

 

 とにもかくにもまずは全員の位置を捕捉して有利に立ち回る事だ。

 会敵したら下手に会話せず、心操くんの洗脳にはかからず……物間くんの時間を使わせる。

 できれば心操くんは早い段階でノックダウンしておきたい。

 

 そのためにはまず僕が目立つことで標的になる!

 

「ふっ……!!」

 

 フルカウル15%。

 これだって峰田くんほどではないがこの地形なら相当速度を出せる。勿論飛び跳ね回るからこそ壁やパイプを蹴った時の音も出て……僕がまず目立つことだろう。

 峰田くんだとこれが銃撃の音かと聞き間違うほどの連続音となり、その姿を誰も認識ができなくなるけど……それを最初にやると万が一の物間くんの反撃が怖い。残り2つの個性も分かっていない状態ならパワーも放てる僕が囮になった方がいい。

 万が一僕がやられても峰田くんならみんなを守ってくれるだろう。幾野くんや僕、かっちゃんと違って……峰田くんの個性はとても優しい個性だ。

 時々感じる、峰田くんの心底の優しさ。幾野くんを助けた時からきっとそうなんだろう……下品な発言や女子への欲望とは別の奥の奥、彼の真の優しさがよく表れた個性だと思う。

 絶対に傷つけない。誰かを繋げる。そんな個性だ。

 大丈夫。僕は囮でいい。勿論やれる限りやるけれど、後ろには信頼できるメンバーがついている。

 

「…………!!」

 

 来た。

 先行して縦横無尽に動き回っていたところで、柳さんのポルターガイストでドラム缶が複数飛んできた。

 今や彼女の個性も伸びてかなりの重さのモノを飛ばせるようになっている……けど、これくらいなら僕はいくらでも対処できる。エアフォースで迎撃した。

 飛んできた方向の先に相手がいるのか、それともそちらに注意を向けるための罠か……慎重に見極めようとしたところで。

 

「デクくん!! 後ろに物間くんが回り込んで─────チッ!!」

 

 麗日さんの声だった。

 彼女の声が反響して聞こえてきて……しかし、その声は途中で途切れ、その代わりに聞こえてくるカカカン、と小さく甲高い鋼鉄音。

 どこかで戦闘が始まったんだ。何か細いものがパイプに当たっているような、そんな音……これはきっと、捕縛布の音だ。

 となると相澤先生だ。きっと、心操くんが僕を洗脳しようと声をかけた瞬間に相澤先生が心操くんを見つけて、仕掛けてくれた。だからこそ声が途中で止まってしまったんだ。

 流石は相澤先生。イレイザーヘッドの神髄が活かせる地形ですもんね。任せます!

 

 でも心操くんの声が聞こえたってことは、間違いなく仕掛けるために周りに誰かが来ているということで。

 僕はそこで一度止まり、注意して周囲を見渡す……と、パイプの陰に一人、いた。

 

「あれ? 見つかっちゃったか……いいね、予想通りと言えるだろう。今ここで君に見つかるのが僕たちの策略だ……と言って君は信じるかな?」

 

 物間くん。

 一息で飛び込むには少しパイプが邪魔になる、そんな位置で物間くんがちょっと許されない感じの角度でこちらを見ていた。

 

「今回のA組チームは強い人がいっぱいいるからねェ……君に峰田くん、相澤先生もそうさ。当然警戒する。できれば一人ずつおびき出して倒したい。クレバーな人間はそう考える……その一方でクレバーな人間はこうも考える。まとめて倒してしまえばいい。なにせ僕はつい先ほどみんなの前で幾野くんから最強無敵の個性をコピーさせてもらったからねぇ。少なくとも守りは気にしなくていいわけだ」

 

 僕は周囲への警戒を散らさぬように慎重になりながらも、一息で物間くんに飛び込める位置に移動する。

 随分と煽ってくる。やはり洗脳をコピーしているのか。いや、そう思わせる罠かもしれない。

 峰田くんは……まだ来ないか。先ほどの心操くんの声にひっかかることは峰田くんならないと思うけど、後方の二人を守れる位置にいるのかもしれない。

 

「さてしかし僕の個性は君たちの知識で言えば5分しか使えないわけだ。『無視』と言えども僕は幾野くんほど使いこなせないからねぇ。5分間僕に物理攻撃を仕掛け続ければ使い切れるかも……と、思わせて実は進化しているかも? 僕だってそりゃあ個性伸ばし頑張ったからねぇ。もしかすると今ならウォールハックが使えるようになってるかもしれないよォ? そうなったら大変だぞ……!? ウォールハックの威力はA組が一番知ってるもんねェ! 既に君たちの位置はすべて把握されて芦戸さんや麗日さんが逆に奇襲を仕掛けられてるかもしれない! いやもしかするとそれも罠で僕は幾野くんの個性をストックしていないかも!? ハハハ、困ったな! どうする緑谷くん!」

 

 僕はその言葉を聞かずに……フルカウル20%の力を込めて物間くんに飛び込んだ。

 味方を奇襲されているかも、と思わせる嘘だ。引っかからないぞ。僕に味方のほうを見させてその視線で探るつもりだ。

 後ろには峰田くんもいるし、麗日さんも芦戸さんもそうそう奇襲に負けない。それに、奇襲があればそれこそ声を上げてくれるはず。

 

「仲間の方を見向きもしないなんて薄情だな! まったく……心操くんとさっきこんな話をしたよ」

 

 それにひっかからなかった僕に、物間くんが両手を突き合わせるように構えながら話題を変えて来た。

 何を言われても僕は返事をしない。接近して外さない位置から30……いや40%のエアフォースを叩き込む。回避させなければ無視の個性を使わせられる───

 

()()()()()()()()。彼の友人なら教えてよ、幾野くんのことさ! 僕は彼に勝ちたい……ああ、ハッキリ言うよ認めているさ彼のことは!! 心操くんもねェ!! だからこそ超えたいし勝ちたい!! そうだろう? だってのに何故君たちは彼が隣にいて平然としているんだい? まるで勝つことを諦めたみたいにさァ!!

 

 ───50%のスマッシュで行く。

 図星を突かれたような焦燥感を抱えて、僕はフルカウルを纏った右腕に力を溜めて物間くんを捕まえようとして───

 

 

 

 

「え」

 

 

 

 

 ─────黒い何かが、腕からあふれ出した。

 

 

 

 


 

 

【side 相澤】

 

 

「…………」

「くっ……!!」

 

 先ほど接敵した心操に対し、俺は躊躇いなく捕縛布を放ち体をからめとろうとした。

 放った捕縛布を捕縛布で受ける心操。コイツも随分とこれの使い方を覚えてきた。

 一か月も前ならこの攻撃は対処しきれなかっただろうが……インターンに出向するようになってから劇的に実力が伸びてきている。

 元々この武器がコイツの体に合っているものと見て薦めた捕縛布をここまでサマになる使い方をされれば、胸中に嬉しい物も湧き上がってくる。

 

 だが、まだ青い。

 

「先生……!! 奇襲されてるA組の生徒は見に行かなくていいんですか!!」

 

 洗脳を仕掛けようとして口数が減らない心操。勿論返事をすることはない。

 先程周囲を見渡したが、こいつの他にもう一人ヤバイ相手の物間は後方の2人のそばにいなかった。

 峰田もいつでもカバーできる位置にいるから、奇襲を仕掛けてくるのが柳、庄田、小大ならあの二人でも十分対処ができる。

 今はとにかく心操の動きを止めて先に檻にブチこむこと。それでA組の勝機はぐんと増える。

 

 だが、そうして心操に詰将棋をしかけてた、その時だ。

 

「────逃げて!!!」

「なっ!?」

「──────」

 

 緑谷の声で大きく、まるで時限爆弾の解除コードを間違えてしまったかのような焦燥感溢れる叫び声が聞こえて。

 そして同時に心操も俺の背後を見てなにか驚いたような顔をする。

 

 ……どっちだ。今のは心操のペルソナコードによる声か。それとも本物の緑谷の声か。

 返事はしないままに俺は一度振り返る……と、そこには緑谷が腕から黒く禍々しい何かをブチまけながら暴れてまわっている姿がチラリと見えた。

 

 ……なんだ、あれは。

 

「……先生、アレはなんかヤバい。いったん止めに行きましょう!」

「……」

 

 返事はできない。

 心操がこれを隙と見て俺に洗脳をかけようとしているかもしれないからだ。

 それに俺はこの試合では個性の『抹消』を封じている。それを突く作戦かも……と言うのがふと脳裏によぎってから。

 だが、万が一緑谷が入学当初のように暴走していたら、とも思ってしまう。

 ヤツの個性は今でこそ安定しているが、入学当初はとにかくじゃじゃ馬でよく体を壊してしまっていた。

 アレが起きていないとも限らない。だがそれを隙に心操が後ろから俺を狙うかも。

 

 一瞬だけ判断を求められて。

 そして、答えは余りにも簡単に出た。

 

「……一時休戦だ。緑谷を止めに行く!」

「はい!!」

 

 教師が生徒を信じなくてどうする。

 心操の目は試合中なのに、いや試合中だからこそ嘘偽りのない真実の色をしていた。それが読み取れる程度にはコイツとも付き合いが深くなっている。

 緑谷のアレが万が一にも他の生徒を傷つけるようなことがあってはならんし、緑谷自身の体も心配だ。

 俺はゴーグルを上げて十全に個性を発動できるようにして、心操との戦いで離れてしまった緑谷を再びこの視界に収めるために、二人で捕縛布を操作して飛び出した。

 

 


 

 

【side 幾野】

 

 

「おー、緑谷また新技かぁ」

 

 映像を見ていた切島から呑気な声が上がるが……俺と爆豪ちゃんだけは、緑谷のその様子を息を呑んで見つめていた。

 明らかにこれまでのOFAの力とは異質なその黒い鞭の様な力の発現。

 先程まで話していた内容が瞬時に脳裏によぎる。

 

 ─────『暴走』。

 

 あれが正体不明の力の暴走であるならば……緑谷も、その周囲にいる峰田も、物間も心操も……みんながヤバい。

 その証拠に、今緑谷の体から黒いそれが溢れ出して、建物を破壊して……その一端が敵も味方もなく、峰田たちにも襲い掛かった。

 

「ッ!! 幾野ォ!!」

「分かってる……飛ぶッ!!」

 

 爆豪ちゃんの叫びに頷き、先程まで正座していた脚の痺れを『無視』して立ち上がって俺は緑谷に焦点を当てる。

 距離の無視によるワープを敢行して緑谷に取りつき、落ち着かせなければならない。

 相澤先生の抹消が一番最適な手段で、先生も異常事態に気が付いて緑谷に向かって捕縛布で移動しているが……先程まで心操と戦っていた位置が悪かった。緑谷が見える所に出るまでに多少時間がかかる。

 その間、せめてあの黒い何かの攻撃意志を俺に集中させられれば。被害を抑えられるかもしれない。

 最悪の場合は緑谷の意識を落とす。緑谷のためにも、アレの人的被害を出してはならないのだ。

 

 緑谷に意識を集中し、距離を無視する。

 しかし、その寸前に。

 

「……麗日ちゃん?」

 

 暴れまわる緑谷に、麗日ちゃんがワイヤーを放って決断的に飛び込み、その体を抱きしめたのが見えた。

 

 


 

 

【side 麗日】

 

 

 

 私の両親はいつも疲れた顔をしていて、それが辛かった。

 初めてヒーロー活動を目にしたとき、活動よりも周りの人々の表情に目が行った。

 

 人の喜ぶ顔が好きだった。

 だから、困ってる人を助けることは当たり前だった。

 

 その当たり前がいかに大変な事なのか……私は考えたことが無くて。

 でも、最近はそれを考えることが多くなった。

 余裕がなくて必死に助ける彼を、ずっと見てきたからだと思う。

 

 

 

 ヒーローが辛い時、誰がヒーローを守ってあげられるだろう。

 

 

 

 その答えを、今の私は知らなくて。

 でもきっと、センくんと峰田くんは知っている。

 

 

 

 

「────デクくんっ!!! 落ちつけ!!」

「止めっ……られ、ない!!」

 

 咄嗟に飛び込んだデクくんの体から溢れる黒い闇。

 デクくんの意志じゃない。私の体とデクくんの体を浮かせても……黒いそれが周囲と結びついて動かそうとしない。

 過去によくあった暴走とは違う。あれよりもなにか、とても恐ろしい物の様な。

 何とかせんと……何とか!!

 

 でも、私に何ができる?

 デクくんに、何をしてあげられるの?

 

 軽くパニックになりながら。一瞬だけ周囲を見渡す。

 心操くん。いない。彼がいたら洗脳をかけてもらって止められるかもしれないのに。

 物間くんが退避行動をとっている。期待できない。洗脳の個性を持ってるかも。持ってなかったら?

 相澤先生。いない。抹消してもらうのが一番。試合中だからしてくれない? 早く来て。

 峰田くん。さっきの攻撃から三奈ちゃんを守ってる。もぎもぎネットも黒いのが止めちゃうかも。

 他……センくんがワープしてきた。

 

 センくんならなんとかしてくれる?    

                         厳しい? 

  他に手は          デクくん

    守るのに向いてない  隣にいたい   違う

   ラーカーズで鍛えてるセンくんなら      人任せ?   私が

そういえば最初の戦闘訓練でも    痛い      

    暴走      助けたい     そんな事考えてる場合じゃ

 デクくん       止めたい         相澤先生遅い!

   はやく       なんとか      センくん     違う    私が

   なんで?  助けたい     ラーカーズ

               デクくんを                  なんで?         

           いつも心配で        梅雨ちゃん 

 メリッサさん                   婚期

あなたを                     どうしてこんな時に

  葉隠ちゃんなら    センくん?   峰田くんなら?

 今そんな事考えてる場合じゃ     デクくん!!   助けたいの

        私じゃダメ?           もう

  なんて言えば            デクくん         デクくん

      デクくん     デクくん     私の気持ち

 デクくん!               私は

                 デクくん!!

 

 

 

 

 

 

 

「─────デクくん、大好き!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 言っちゃった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

【side 幾野】

 

 

 ────止まった。

 

 俺が距離の無視によるワープで緑谷の前に来て、遠目に心操と相澤先生も向かってきたのを見て……ぴったり張り付いてる麗日ちゃんが、パニック気味に泣きそうな顔でこっちを見て。

 で、俺もすぐに緑谷に取りついて、麗日ちゃんを一旦離させて俺に攻撃を集中させてから相澤先生に距離無視テレパシーではよ抹消してくれ!! って叫ぼうとしてたところで。

 

 なんか麗日ちゃんがめっちゃ告白してた。

 

 えっ。超ロマンティック。

 で、その声で完全に一同フリーズ。

 俺もフリーズ。緑谷もフリーズ。緑谷から溢れてた黒いのもフリーズ。

 『あっなんかゴメン空気読めてなかったさー……戻るさー……』って感じでしゅるるん、と緑谷の腕に黒いのが吸い込まれて行った。

 

 そして残るはなんかワープしてきただけの俺と、未だに告白のダメージが抜けておらず白目向いてる緑谷と、徐々に顔が真っ赤になっていく麗日ちゃんで。

 

 ……えっ。俺どうすればいいの。

 

「…………」

「…………」

「…………」

 

 一先ず緑谷の肩に手を置いて俺も重力無視。

 二人とも麗日ちゃんの無重力の状態だったところに俺という軽いものが触れたことで3人でじわりと落下。

 ぽん、と床に脚をつけて……顔が俺の髪より真っ赤になった麗日ちゃんと、麗日ちゃんの顔を見ながら放心状態の緑谷がいて。

 

 うん。

 とりあえず思ったことを口に出すか。

 

「……緑谷。返事してやれ」

「────あっ、うん、はい。…………えっと、僕も、麗日さんの事、好き、です………」

「……あっ、はい……」

 

 少なくとも間違いなく麗日ちゃんは緑谷に告白したので、緑谷からも返事をしてやらないとな。男として。

 なので俺が肩から手を離して促したところ、緑谷も気を取り戻し、そして顔を真っ赤に染めながらも告白に想いを返した。

 やったな。両想いだ。

 

「おめでとう」

 

 俺は拍手をする。

 告白が成功してカップルが出来たわけだからな。祝福してやらないと。

 

「おめでとう」

 

 物間がノってきた。アイツもにやにや笑いながら拍手してる。

 

「おめでとう……?」

「おめでとう」

「ん」

 

 近くにいた庄田、柳ちゃん、小大ちゃんも拍手し始めた。

 

「おめでと緑谷」

「やだもー激熱! おめでとー!!」

 

 峰田と芦戸ちゃんも拍手に混ざる。

 

「……まァ、なんだ。おめでとう」

「おめでと。A組は恋仲多いな」

 

 相澤先生も心操も到着して拍手し始めた。

 

「おめでとー!!」

「おめでたいな」

「んん……おめでと」

「ケッ!!」

「おめでとう!」

「おめでとう☆」

「おめでとう!」

「おめでとう緑谷少年」

「Congratulations!」

「奉祝」

「おめでとう……!」っっっ ←汗の表現

「おめでとうございますわ」

「おめでとー! やったね麗日ちゃん!!」

「ケロ、おめでとう。ようやくね」

「おめでとな!!」

「おめでとう」

「ふむ、素直に祝福だ!!」

「おめでとう!!」

「青い……青いわ!! 最高のおめでとうよ!」

「めでてぇ!」

<おめでとう> ←吹出

「おめでとー」

「いや……まァおめでとう」

「よくわからんがおめでとう」

「めでてぇなぁ!!」

「おめでとノコ」

「おめでとう」

「おめでとうございますぞ!」

「おめでと」

「まぁ……おめでと」

「おめでとー!!」

「おめでとうございます」

「おめっと」

「おめでと!」

「おめでとう」

 

 その場にいる全員から拍手が送られて。

 そして、世界の中心にいる二人は、顔を真っ赤にしながら照れるように微笑んで、想いを一つにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんだこれ。

 

 

 

 

 

 

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