【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!! 作:そとみち
「お米がうまい!」
お昼の時間になり、食堂に集まった俺たち。
麗日ちゃんが美味しそうに白米を食べている。わかりみ深い。ランチラッシュ先生の米最高よ。
「それにしても……幾野くんに得票数で負けるとはな。……ああいや、君の人望や能力は疑っていない。おかしな言動の内にある、周囲への配慮や時折零れる気遣い。”多”を牽引するというよりは、いつの間にかまわりを引っ張るような君ならば委員長としても活躍できるだろう」
「飯田くんのいう事、僕も分かるな。人を褒めたり気を配ったり、進んで声をかけてくれたりするもんね」
「これで下ネタがなければよかったのになぁ。中学でも口を開かなければ完璧って言われてたぜコイツ」
「下ネタはお前のせいでもあるんだぞ峰田」
結構気にしてくるなこの眼鏡。そして峰田よ中学時代の話は速やかにやめなさい。
思い出したくないことも多いんだ。入学したての頃とか。
「でも飯田くんも委員長やりたかったんじゃないの? メガネだし!」
「何気にざっくりいくよね麗日さん」
「ああ……俺も悩んでる。メガネ要素で飯田を副委員長にするか、三つ編みをさせた八百万ちゃんにするか……!」
「お前が三つ編み見たいだけじゃねぇのかイクノ」
「やりたいと相応しいかは別の話……僕は幾野くんの判断に任せるさ。付き合いは短いが、最終的には決して思慮の無い判断はしないだろう、君は」
俺が80%くらい本気で言った冗談に、ふっと笑って返してくる飯田。
何だコイツ。イケメン微笑みでそんなこと言ってー! 俺のポイント稼ごうとしているんじゃないでしょうね!
べ、別にそんなこと言われても嬉しくないんだからねっ! 90点! 暫定トップ!
「『僕』……!!」
「ちょっと思ってたけど飯田くんて……坊ちゃん!?」
「育ちの良さ漏れてるよな。オイラにはない品性」
「そう言われるのが嫌で一人称を変えてたんだが……」
話は変わり、飯田の家の話になる。へー。ヒーロー一家なんだ。すげー。
"ターボヒーロー"インゲニウム。聞いたことないけど緑谷が解説してくれた。それが飯田の兄さんなのか。
いいな、兄貴に憧れてるってのは。仲のいい家族なんだろうな。羨ましい。
そんな学生らしい談笑しながら昼食をとっていた、そんな時だ。
『ウウーーーーーーーーーーーーーー!!』
大音量の警報が食堂に木霊する。
「警報!?」
「何だ……!?」
俺、緑谷、飯田は咄嗟に立ち上がる。
麗日ちゃんは呑んでた味噌汁を噴き出しかけてしまった。峰田がそれにハンカチを差し出しているが……続くアナウンスは。
『セキュリティ3が突破されました』
『生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難してください』
飯田が周りにいた3年に確認したところ、校舎内に誰かが侵入してきた、という事らしい。
マジか。そんなことがあるのか……?
先程のアナウンスにより、雪崩れ込むようにとんでもない人数が食堂に入ってくる。
「っ、こりゃやべぇ! 峰田っ!」
「おお、うおっ!? っと、悪いイクノ! 助かった!」
この人数はヤバイと、咄嗟に峰田の体を掴んで肩車に持ち上げる。
そして、その判断はどうやら正解だったらしい。
この人数の人混みに峰田が埋もれてしまえば、五歳児並みの身長しかないコイツの場合マジで踏みつぶされて大怪我しかねない。
「麗日ちゃん! 緑谷! 飯田! 大丈夫か!?」
「大丈夫とは言い難いー!」
「流石最高峰! 危機への対応が迅速だ!! だが…!」
「どわー!? はぐれるー!?」
どうにも大混乱の様相を成している。
そもそも厳重な警備を誇っている雄英に何が侵入してきたって言うんだ。くそ。
俺は個性『ウォールハック』を発動し、人垣の向こうの窓の外に視界を広げる。
「……あん!? 朝のマスコミじゃねぇか!?」
「んっ、マジだ! 外にマスコミが集まってる! あいつ等かよ侵入者って!?」
「何だと!? 何かと思えばただのマスコミ!?」
俺がウォールハックで見て、峰田が高い位置からの視点で間違いないことを確認した。
飯田もそれを聞いたようで、混乱を収めようと叫ぼうとしている。
「皆さん落ち着……あ痛!!!」
「飯田っ!? 大丈夫か!?」
「ああ……! 俺はまだ問題ない……が、切島くん! 上鳴くんも! くっ……!!」
「この混乱マジでやべーぞ! 下手するとケガ人が出る!」
「くっ、どうすりゃ…!」
俺の個性を使えば俺個人はいくらでも脱出できるが、この混乱を収めるには至らない。
峰田の個性も同じだろう。こんな中にもぎもぎを投げれば更なる混乱は必須。
どうする、どうすれば──────
「麗日くん!! 俺を……浮かせろ!!」
「へっ!? う、うん!」
俺が方法を模索していると、それよりも『速く』行動した男がいた。
飯田だ。
決意の眼差しを浮かべ、眼鏡すら弾け落ちるほどの速度で麗日ちゃんの個性を用いて浮き……空中を目立つように個性で加速。
みんなの視線が集中する非常口看板の上に突き刺さり、そして。
「皆さん……大丈ー夫!!! ただのマスコミです!! 何もパニックになることはありません!!」
大きな声で、短く、端的に、それでいて大胆に。
見事な一喝で混乱する生徒たちの注目を集め、パニックを収めることに成功したのだ。
─────すげえ。
「……はっ。決まりだ」
非常口の標識みたいなポーズで固まった飯田を見て、俺もまた決意を固めたのだった。
午後。
委員長以外の委員決めを行うホームルームにて。
「……えー、先ほど皆さんの投票により委員長になった俺ですが、悪いけど降りることにしました」
「「「何ィィィィ!?」」」
俺は教壇の前に立ち、両隣に飯田と八百万ちゃんを並べて一言目にそう伝えた。
何人からは疑問の叫びが上がるが、俺は続ける。
「ってか、元々俺は挙手してなかったように、委員長やりたいって気持ちじゃなかったってのがまず前提な。午前中の時は再投票の時間もなかったからとりあえずで受けたけど、よく考えてもやっぱ柄じゃねーわ、俺は」
「えー、センちゃん絶対しっかり委員長出来ると思うのにー」
「ありがと葉隠ちゃん。でも決めたんだ。俺より委員長に相応しいやつがいる。それが……飯田だ」
俺は右隣に立つ飯田を指さして、話を続ける。
「昼の騒動をこいつは一発で収めて見せた。見てた人もいるかもだけど……緊急時に咄嗟に適切な判断が、正しい行動ができてた。俺はこいつにこのクラスの委員長を務めてもらいたい」
「あ、いいんじゃね! 飯田の活躍俺も見てたよ! イクノでも別にいいとは思うけどさ!」
「あー、非常口の標識みてぇになってたよなー」
あの場にいた切島や上鳴、峰田や緑谷、麗日ちゃんも頷いている。
八百万ちゃんも騒動の話は聞いていたのだろう、彼女から反対はなかった。
「飯田を委員長、八百万ちゃんを副委員長。男女でバランスもいいし、勿論最初に俺が掲げた一か月後の不信任決議だってみんなの希望があればやるさ。けど、飯田なら問題ないって俺は信じられるよ。だから……頼むぜ、飯田」
「────幾野委員長の指名ならば仕方あるまい!! 不肖飯田、これより委員長をしっかりと務めさせてもらう!!」
「任せたぜ非常口!!」
「非常口飯田! しっかりやれよー!」
これで決まりだ。
俺は委員長の責から逃れて、なるべくしてなる人間が委員長になった。A組ももうちょっとまとまりができるだろう。
「オイラのマニフェストを継ぐ者がいなくなっちまったじゃねぇかぁぁぁぁ……!」
「峰田は諦めろ。スカート見たけりゃ俺が履いてやるから」
「お前じゃ意味がねぇんだよぉ……!!」
翌日の午後。
「今日のヒーロー基礎学だが……俺とオールマイト、そしてもう一人の三人体制で見ることになった」
「ハーイ! なにするんですか!?」
「災害水難何でもござれ──
相澤先生が今日の授業内容を説明する。
どうやら救助訓練ってことは、戦闘力よりかは判断力、迅速な対応を求められそうだな。
俺の個性が全く使えないってことはないだろうが、活躍できるかは場所次第か。
水場とかだとどうにもならんし俺。水や空気に潜ることはできるけど。
結局のところ潜った後の移動は脚の裏側を潜ってない判定にして普通に走るか腕で体持ち上げるかしかないからな。
柔らかい程度ならまだしも液体や気体は潜っても動けない。空中浮遊を目指して訓練してた時期もあったけどダメでした。
「コスチューム自由か……幾野くん、君はどうするのだ?」
「着ていくさ。腰のポーチとか胸のあたりに道具入れてるしな」
「あの胸は道具入れだったのか!?」
前の席の飯田にそう答えた。
俺のコスチュームは全身ぴっちりスーツではあるが、胸元や腰のベルトにつけたポーチに色んな道具を入れてある。
救助用の医療キットも入ってるし、ウォールハックで遠くを見る時に使う望遠鏡とかも入ってるしな。着て損はない。
そうして、それぞれが着替えてから移動のためのバスの前に集まる。
「ん。デクくん体操服だ。コスチュームは?」
「戦闘訓練でぼろぼろになっちゃったから……」
「あー……そうだよな。もしかして捨てちゃうのか?」
「ううん、修復をサポート会社がしてくれるらしくてね、それ待ち」
「そか。お母さんの手作りだもんな、しっかり直ってくるといいな」
「うん! 実は追加の装備とかも考えてるんだ」
麗日ちゃんが気付いた緑谷のコスチュームに俺も言葉を挟む。
もしやぼろぼろになって捨てたのか……とも思ったがちゃんと修復できるらしい。何よりだ。
「バスの席順をスムーズにいくよう番号順に二列で並ぼう!!」
早速飯田がフルスロットル委員長面している。ありがてぇ。アイツを委員長にしてよかった。
まぁ対面式の座席だったんで無駄だったんだけど。
俺は緑谷の右隣りに座る。前の方の席だ。
「私思ったことを何でも言っちゃうの緑谷ちゃん」
「あ!? ハイ!? 蛙吹さん!」
「梅雨ちゃんと呼んで。───あなたの個性、オールマイトに似てる」
梅雨ちゃんのその意見を横で耳に挟む。
緑谷の個性か。今のところ見てるのは指だけでボールを遠投したのと凄まじい威力のアッパーだが、アッパーの方は確かにオールマイトに似てるかもな。
しかし緑谷は一撃一撃でケガするからな。切島も言うように、似て非なるアレだ。
だがそれは今のところである。もしあのパワーを怪我無く使いこなせるようになったら、マジでオールマイトの再来になれるかもしれない。
相澤先生が緑谷を買ってるような面があるのはそういう事なのかもな。一番伸びしろがあるのが今の所緑谷だ。
「増強型のシンプルな個性はいいな! 派手で出来ることが多い! 俺の『硬化』は対人じゃ強えけどいかんせん地味なんだよなー」
「分かるー。俺の『潜行』もぶっちゃけると自分の身を守る事にかけちゃ無敵だけど、誰かを守ったり迅速に行動したりってなると弱いんだよな、課題だわ」
「僕は二人ともすごくかっこいいと思うよ! プロにも十分通用する個性だよ」
「プロなー……しかしやっぱりヒーローも人気商売みてぇなとこあるぜ!?」
「俺は顔で人気出るからその辺は何とでもなりそう」
「ケロ、センちゃんの自信が凄いわ。否定できないけど」
「僕のネビルレーザーにも負けない輝きだよね、幾野くんのお顔☆」
「青山はお腹壊しちゃうのはヨクナイね!」
話が盛り上がってきた。
バスの中……密室に高校生が20人……盛り上がらないはずもなく……。
「派手で強えっつったらやっぱり轟と爆豪だな」
「無敵って意味での強さなら幾野のもやべーけどな」
「ケッ」
「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気出なさそう」
「んだとコラ出すわ!!」
「ホラ」
「この付き合いの浅さで既にクソを下水で煮込んだような性格と認識されるってすげぇよ」
「てめぇのボキャブラリーは何だコラ殺すぞ!!」
「性格で言えば幾野の急にアクセル踏み込むエロ男子っぷりも大概だけどな。見た目に反して」
「男の性欲にブレーキはついてねぇんだよ。なぁ峰田?」
「オイラまで巻き込み事故やめてくれる?」
「低俗な会話ですこと!」
「あっはっは、でもこういうの好きだ私」
次から次へと話が流れていったところで、最後に相澤先生の一喝でみんな黙り込むのであった。
到着した。
USJかよ。
「あらゆる事故や災害を想定し僕が作った演習場です。その名も……
USJだったわ。
13号先生の説明に思わず脳内で突っ込んでしまう。
授業では初めて見たな13号先生。宇宙服のようなコスチュームに身を包んでいる身長の高い先生だ。
だが……俺には
試しにウォールハックで意識して服を透かして見てみる。
普通の服だと体に密着するから透かして見るのは難しいのだが宇宙服くらい着ぶくれしてれば逆に中まで見れるのだ。
したらマジでドスケベボディがそこにあって驚いたよね。インナー着てるから裸までは見なかったけどお顔がお耽美……。
「えー始める前にお小言を一つ二つ…三つ……四つ……」
次々増える13号先生のお小言、それをしっかりと聞き届ける。
とてもまじめなお話だ。
「……しかし、
────────。
「……この授業では心機一転! 人命の為に個性をどう活用するかを学んでいきましょう! 君達の力は人を傷つけるためにあるのではない、救けるためにあるのだと心得て帰ってくださいな」
……
簡単に人を殺せる力、か。個性ってそういうもんだよな。
目を逸らしたい現実だが、事実だ。それを背負って俺はヒーローを目指してるんだからな。
うし、やる気出てきた! 一番の成績取ってやるぜ!
「以上! ご清聴ありがとうございました」
「ステキー!」
「ブラボー!! ブラーボー!!」
「心もお顔も綺麗ですよ13号先生ー!!」
思わず拍手と共に俺も誉め言葉を返してしまった。
お顔も、と言った時点でえっっっって顔で13号先生がこっち向いてきた。なんや。本心やぞ。
「そんじゃあまずは─────」
相澤先生が授業についての説明を始める────刹那。
闇が、USJの広場に広がって。
「一塊になって動くな!!!」
「え、何だアリャ!? また入試ん時みたいなもう始まってんぞパターン?」
「動くな!! あれは───
日常が壊れる音がした。
クラネスハインド様よりファンアートを頂いたので紹介させていただきます!
①バニーコス&チアコスセンちゃん
【挿絵表示】
バニーガールを着たセンちゃんとチアコスで応援するセンちゃんを描いていただきました。
腰から下がマジでただのメスだよコレ! ドスケベ! ドスケベだよセンちゃん!
作中でこの姿になることが絶対ある(確信)
ファンアート心より感謝申し上げます。有難うございました!