【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!!   作:そとみち

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128 年末特番ってみんな何見る?

 

 

【side 緑谷】

 

 

 今日は大晦日。

 僕たち雄英生は先日大掃除を終えて、終業式を迎えて……そして冬休みに入り、それぞれがインターン先に向かったりして……そして迎えた年末。

 寮に残る人もいたけど、プロヒーローの護衛付きで生徒は一日だけ自宅に戻れることになったんだ。

 僕は自宅が雄英から近いし、学校の先生が護衛についてくれて……今は母さんと一緒に、年末の時を過ごしていた。

 

「超パワーが暴走しそうになっちゃって……でもお茶子さんが助けてくれてね。その時に、その、大声で告白されて……それで今はお付き合いさせてもらってて……お母さん?」

「ウチの息子がものすごい青春してる……!!」

「お母さん!?」

 

 彼女が出来たことや、いろんな事件の解決に係わったこと……文化祭の事、クラスのみんなの事、幾野くんの事。

 たった4ヶ月の間にいろんなことがあり過ぎて、僕たちの話題は尽きなかった。

 エリちゃんに書いてもらった手紙も見せたり、洸汰くんたちと遊んでた時に撮った写真を見せたりしているうちにお母さんも泣いたり笑ったり……でも、少しはお母さんを安心させることができたかな。

 夏に……僕のことを雄英に通ってもいいと言ってくれたお母さん。これまでずっと、雄英に入学してからも心配ばかり掛けていたけれど。

 少しは、強くなったところを見せられたかな。

 

「うん……今の出久の顔を見てなんだか安心しちゃった。強くなったのね、出久」

「お母さん……うん、幾野くんやみんなのお陰でね。もう心配かけないように……もっと頑張るから」

「そうね。今なら言えるわ……頑張ってね、出久。母さんも応援してるから」

「うん!」

 

 涙が溢れそうになりつつも二人とも泣いちゃうと下の階の小池さん家が雨漏りしちゃうからぐっと我慢して、でもお母さんからも応援を貰えて……僕も嬉しくなった。

 恵まれてるな、僕は。

 でも、だからこそもっと強くならなくちゃ。明日からはエンデヴァー事務所でのインターンも始まるし、いっぱい学んでこないと!

 

「ごちそうさまでした。久しぶりに食べたお母さんのお蕎麦美味しかった!」

「はい。片付けはしっかりなさいね」

「大丈夫、寮でもちゃんとやってるよ。片付けないと幾野くんが五月蠅いんだ。掃除大好きでさ」

「あらそうなの? そういえば幾野くんと峰田くんは毎朝街の掃除してたんだっけ? 出久と一緒ね」

「うん。でも幾野くんと峰田くんは筋金入りの掃除好きだね」

「ふふ……あの子達らしいわ。そういえば幾野くんもご自宅に戻られたのかしら? 確か千葉の……叔父夫妻の所にお住まいされてるって以前話してたけれど」

「うん、多分。僕より先に今朝峰田くんと一緒に寮を出ていったし……今頃家族の時間を過ごしてるんじゃないかな」

 

 夕飯も食べ終えて食器を片付け、話は自然と幾野くんの事に。

 きっと幾野くんも峰田くんや通形先輩、天喰先輩たちと一緒に千葉に帰り、今頃は通形家でのんびり過ごしているはずだ。

 とても仲の良い家族だと聞いている。通形先輩を見てればそれはわかるな……幾野くんは僕以上にここ4ヶ月で色々やってたし、日本で一番バズった仮免ヒーローだし、九州の緊急ニュースにもバッチリ写ってたし。ご家族も御心配されていることだろう。

 ゆっくりできているといいな、なんて思いながら。食器を片付け終えて、時間つぶしにテレビの電源を付けたら。

 

『────今年の笑ってはいけない24時『ヒーロー事務所編』の主要メンバーが大公開!! なんと今年のメンバーはチームラーカーズのヒーロー3人と仮免ヒーローの二人ッッ!!!』

 

 思いっきりお茶を噴き出した。

 

 何してんのォ!?

 幾野くんも峰田くんも何してんのぉ!? ラーカーズの3人も!?

 いや確かに年末特番生放送で今年も笑ってはいけないやるのは知ってたけどさ!? そういえば事前に誰がやるのか全然ニュースになってなくて特番中に公開されるって話だったけど!!

 普通に芸人さんたちがやるんじゃないのアレ!?

 

『もちろんスタジオに5人が来てくれています!! それぞれご挨拶お願いします!!』

『マウントレディが珍しく仕事を取ってきたと思ったらこれだ。随分と恥をかかさせてもらった……チームラーカーズ、エッジショットだ』

『開き直って年末のお茶の間に笑顔を届ける所存。チームラーカーズ、シンリンカムイだ』

『この話イグジストから持ってこられたんですけどぉ!? 私のせいじゃないわよ!? あ、チームラーカーズの紅一点、マウントレディです♥』

『懇意にしていたテレビ局の方からお声がけ頂いて即決で企画OKしました。センシティブヒーロー、イグジストです♥』

『イグジストの暴走を止めるために来てます。マスコットヒーロー、グレープジュースです』

『5人揃ってッ!!』

『『『『チームラーカーズッッ!!』』』』

『息ぴったりですねェ』

 

 母さんが白目をむきながらテレビの録画を開始した。

 僕のスマホでもクラスのグループラインですっごい通知が飛び交ってる。

 

 うん。

 今夜は伝説になるなぁ(諦め)。

 

 


 

 

【side VTR】

 

 

「安定の黒光りバス」

「毎年恒例の流れで行くともう笑っちゃいけないんスよね」

「事務所に行くのにバス使うのって初めてじゃない?」

「スタジオとして準備された事務所に行くのだろう」

「ふむ……罠の類は無し」

 

 イグジストたち5人はテレビ局が準備した黒光りバスに乗り込み、今回のロケ地であるヒーロー事務所に向かう事となった。

 この時点で視聴率は30%を超えており、どれほど今年の下半期でラーカーズが話題になっていたかは推して知るべきであろう。

 3バカトリオのM・I・G(岳山・幾野・峰田)が間違いなく笑いを提供してくれるという確信の他、普段はクール系で通しているエッジショットやシンリンカムイがどんなリアクションをしてくれるのか、大晦日のお茶の間はそんな期待に包まれていた。

 

 

 プー、と発車音が鳴ってバスが出発する。

 芸人が雑な案内でMCを務めながら、バスの横並びの座席に並んで座る一同。

 

「マウントレディ、マウントレディ。見てくださいよ窓の外。マウントレディのファンがいっぱいですよ」

「ほぇむ……って!! んもぉ!! 耐えてるんだから!! 仲間内で仕掛けてくるのやめなさいよ!!」

「罪深い」

 

 ぽんぽんとマウントレディの肩を叩いたイグジストが人差し指を突き立てており、そちらに振り向いたマウントレディのほっぺに指が突き刺さり怒るというじゃれあいなども見せながらも、しかしまだ全員初笑いには至っておらず。

 もちろんここからがテレビ局が仕掛けた各種罠が待ち構えている。

 果たして何が起きるのか─────

 

 プー………。

 

「ん。停留所に止まった」

「もう始まってるからね……誰が来るのかしら……」

 

 いつものネタである。乗車してくるメンバーにとんでもないものが紛れ込んでくる奴だ。

 まず乗り込んできたのは女子高生。勿論制服に扮装した女性スタッフである。

 ちらりとイグジスト達の方を見るが、そこでリアクションをしないあたり鍛えられている。

 

 次に乗り込んできたのもJK。どうやら通学途中のようだ。

 イグジストとグレープジュースがむっ! って感じの顔をしているところが切り取られた。

 学生ヒーローにのみ許されたリアクションである。

 

 そして次に乗り込んできたのがラビットヒーロー『ミルコ』。

 

「ブフッ!!」

「ンンッフ!!」

「はぁ!? ブハッ、えええ!?」

「っ……ふぅ……!」

「驚愕が(まさ)った」

 

 年齢とか諸々完全にスルーしてJK衣装に身を包み、しかし顔はタイガーバニーの覆面で隠していない素の顔のミルコがバスに乗ってきたのだ。

 

 デデーン!!

 イグジスト、グレープジュース、マウントレディ、OUTー!!

 

「クッソやられた!! いきなりミルコ来るとは思わないじゃッンぁんっ♥」

「ぐえー!!!」

「グレープジュースはヒーローコスでケツ守ってるじゃな痛ッたぁい!!!」

 

 見事に笑ってしまった3人のケツにケツバットが叩き込まれる。

 イグジストとマウントレディの尻を叩かれるシーンは後日ネット民により切り取りが作られるのだがそれは来年の話。

 

 

 バスが出発した。

 

「ねぇねぇ、クラスの鈴木くん最近かっこよくねー?」

「マジー? 趣味悪~。ウチは田中クンかなー」

「ワタシは佐藤かなー。アイツのツノさー、イカしてない?」

「えー? でもミルコってホントモテるじゃなーい? 色んな男子狙ってるよ~?」

「変なのにモテたってしょうがないじゃ~ん」

「ブフッ」

「言うねぇ~! でも佐々木センセー多分ミルコ狙ってるよ~?」

「こないだテスト中ガン見してたもんねー!」

「えーヤダー!! あの先生キモいんだけどー! 生理的にムリー!!」   

「ブハッ!」 「ン゛ン゛ッ」

 

 バス車内でミルコが周りのJKに合わせて余りにもキャラが違う会話を繰り出す。

 残念なことにイグジストとマウントレディはその後2発ほど追加でケツバットが叩き込まれた。

 

 

 そして再び停留所に到着。

 JK集団とミルコが降りて行った。

 

「マジで初手ミルコはズルすぎでしょ」

「ツボると終わるから気ぃ付けましょ」

「金かかってる匂いがするわ。流石年末特番」

「まだ誰か乗ってくるのか……」

「覚悟の準備をしておかねばなるまい」

 

 続いて乗り込んできたのは……普通のサラリーマン。

 これは耐える。これで笑っていたら企画にならないからだ。

 

 再び乗り込んできたのもサラリーマン。次もサラリーマン。かなりの人数のようだ。

 この中に混ざってまたヒーローがくるのか……と5人が身構えて。

 

 そして最後に乗ってきたのはサー・ナイトアイ。

 

「素ッ!!!」

「この企画じゃなかったら多分ナチュラルに気づかなかったわ」

「絶対来ると思った」

「ン───ブフッ!!」

「シンリンカムイ……ツボだったか」

 

 ヒーロースーツの癖に全く違和感なくリーマン集団に混ざって、5人が座る席の前の手すりを掴んで直立した。

 

 デデーン!!

 シンリンカムイ、OUTー!!

 

「屈辱……ッ!!」

 

 パコーン! と木製打楽器の様ないい音を響かせてシンリンカムイの尻がファーストアタックを受けた。

 

 再びバスが出発。

 

「どう見てもサーの朝の通勤風景じゃないスか」

「がんばるパパさん」

「んふっ! ……ってこらーイグジスト!? グレープジュースも笑わせないで!?」

 

 デデーン!!

 マウントレディ、OUTー!!

 

「痛ァァァ!?!?」

 

 バスは走り続ける。

 かなりの人数が先ほどの停留所で乗り込んできたこともあり、車内は手すりを掴んで立つサラリーマンで一杯になった。

 サーナイトアイもぎゅうぎゅうの車内で苦しそうに揺られているが……そこでサーの隣のサラリーマンが疲れた顔を見せて、うつらうつらと船をこぎ始める。

 それに気づいたサーだが流石に声をかけるわけもなく、そのまま窓の外を見て直立不動。

 絶対に何かあると察する5人だがそういう企画でもあるためツッコめない。じりじりと焦れる時間が続く。

 

 しかし、そこでバスが急カーブでブレーキ。

 大きく揺れた車内で、サーの隣でうとうとしていた人がよろけてしまい……慌てて姿勢を正そうと腕を咄嗟に伸ばす。

 伸ばした先はサーのスーツで。

 しっかりと白スーツを握りしめたサラリーマンは、しかしそのまま転倒してしまい────

 

 

 ────サー・ナイトアイのスーツが一気に破れてふんどし一丁の姿となった。

 

 

「ブァハハハハハ!!! あははははは!!」

「アハハハハ!! ゲホッ!!」

「んひっ、あはははぁー!!!」

「ンンッフ!! ブハッ!!」

「ブフッ!!」

 

 デデーン!!

 全員、OUTー!!

 

「いや体張り過ぎでしょサー!? いひゃんっ♥」

「勝てるわけないでしょこんなの!? ずりィっすよいっでェェェ!!!」

「んぎゃああああああ!!」

「随分と体を張る……グッ!!」

「してやられた……ッッ!!」

 

 5人のケツに見事にバットが振るわれて。

 そしてバスはその後も様々な笑いを提供しながら、ヒーロー事務所に到着したのだった。

 

 


 

 

 ヒーロー事務所内。

 設定はどうやら5人はこのヒーロー事務所のサイドキックのようで、事務所を構えるヒーローへの挨拶から始まった。

 ヒーロー『江戸島平七』を名乗る虎*1が、例の服で例のポーズで例のセリフをぶちまけ、イグジストとグレープジュースがやられた。

 顔見知りで攻めてくるのはずるいと叫んでいたが、学生ヒーローの癖にそこまで顔が広いのは君たちくらいのものである。

 

 そして講話が終わり、一同は事務所の仕事場へ案内された。

 それぞれ指定のデスクに座り……休憩時間が与えられた。

 いわゆる引き出しのターンである。

 

「すげェよこの企画……どんだけ有名どころ呼んでんすかマジで」

「ミルコのJK服が見れたからオイラの中ではまだプラスまである。あ、お茶淹れますよ」

「お願いね……既にだいぶ疲れたわ私」

「マウントレディとイグジストは随分叩かれていたな」

「気軽に引き受けるものではないなやはり……」

 

 みんなそれぞれ一息ついて椅子に座り、用意されているお菓子類などをつまんでいく。

 グレープジュースが5人分のお茶を入れるために用意されていたティーパックとカップを準備し、お湯の入ったポットの注ぎボタンを押した。

 

 \────ソースどこよソース!?/ 「うおおおッ!?」

 

 次の瞬間、ポットから鳴り響くマウントレディの録音音声。

 ソースCMで世間的に有名になった名台詞が室内に流れて。

 

「ブハッ!!」

「は? ……アハハハハ!! ……は?」

「……小物にまで仕込んでいるのか」

「恐ろしい」

「オイラ素でビビりましたよ!! いきなり喋り出しやがってこのポットォォ!!」

 

 デデーン!!

 イグジスト、マウントレディ、OUTー!!

 

 二人が急な音声に笑ってしまった。

 が、グレープジュースとしては自分がびっくりしたことで二人しか被害に遭わなかったのが許せなかったのか、いつもの真顔で部屋を見渡してから。

 

 \────ソースどこよソース!?/ 

 

「ブフッ!」

「クッ……っふ! 二度はやめろグレープジュース!! 何故押した!!」

「いやオイラはただみんなにお茶淹れようとしただけなんで」

「それはずるいってぇ!!」

「ヤバ、私の声なのにツボりそう……!! もう押さないでよグレープジュース!!」

 

 \────ソースどこよソース!?

 

「「「「あはははははは!!」」」」

 

 デデーン!!

 イグジスト、マウントレディ、シンリンカムイ、エッジショット、OUTー!!

 

んんっ♥」

「ギャー!!」

「グフッ……!」

「ぬん……!!」

 

 グレープジュースの連続プッシュによりそれ以外の4人がケツバットの嵐に巻き込まれてしまった。

 その後もお茶を入れるたびにソースボイスが流れて、思い出したように笑ってしまう地獄が繰り広げられるのだった。

 

 

 

 さて、しばらくして笑いの波も引いてきたところで。

 

「……そろそろ開けます? 引き出し」

「やるか」

「いつまでも眼を逸らしてるわけにはいかないものね……」

「仕方ない。これも求められたヒーローの役割ならば」

「恐怖しかないがな……」

 

 一同はとうとう問題の引き出しに手をかけることにした。

 絶対にここにネタが仕込まれているのだ。そういう企画番組である以上、ここをノータッチで許されるはずもない。

 人々の期待に応えるヒーローであるならば開けるしかないのだ。

 

 順番をジャンケンで決めて、一番手はイグジストから行くことになった。

 

「何が入ってるのかめっちゃウォールハックで見てぇ……」

「企画説明の時にウォールハックNGって言われたもんなイグジスト」

 

 意を決してイグジストが自分の座る席の引き出しに手をかける。

 ふぅー、と一度深呼吸をしてから、イグジストが引き出しを開けて、そこには。

 

「ぶはははははははは!!! アッハハハハハハハハハ!!!」

「え!? ふふっ、何よ急にどうしたの!?」

「今笑ったぞマウントレディ」

「指摘しなくてよかったわよね先輩!?」

 

 デデーン!!

 イグジスト、マウントレディ、OUTー!!

 

ふぅんっ♥」

「いだぁーーーい!!」

 

 イグジスト、まさかの大爆笑。

 それにつられて笑ってしまったマウントレディは災難であったが、しかし中には何があったのか。

 

「いやこんなのガード不可じゃん。ふざけんなよ○○TVよぉ……」

 

 イグジストが引き出しの中からソレを取り出し、机の上に置いた。

 出てきたのは──────

 

 ──────エンデヴァーの証明写真。

 

「「「「ぶはははは!!!」」」」

「でしょ!? 絶対笑うでしょこんな、フフっ、こんなの!! ……ックソァ!!!」

 

 エンデヴァーが面接にでも使う風にぎこちない笑顔で撮影した顔のアップの写真がそこにはあった。

 スーツまで着用している。防御不可の一撃であった。

 

 デデーン!!

 全員、OUTー!!

 

ひぃんっ♥」

「がああああ!!」

「おんぎゃーーー!!!」

「クッ……不覚!!」

「変わったなナンバーワンヒーロォォッッ!!!」

 

 余りにも破壊力の高すぎたイグジストの引き出しが終了した。

 

 

 次の順番はグレープジュース。

 

「いや……オイラは多分そういうの求められてないから」

「どういうのだよ」

「私達を見るんじゃないわよグレープジュース」

 

 先程の笑撃により腰が引けたポーズで引き出しに手をかけるグレープジュース。

 その格好もまた随分と滑稽でイグジストが笑いをこらえている、

 さて、グレープジュースが意を決して引き出しを勢いよく開けて。

 

「────────」

 

 閉じた。

 

「ブハッ!! ……ッノーリアクションで閉じんなよお前マジでさぁ!!」

「スマン」

「くっ…………ふぅゥゥー……!」

「……ッスゥー……ふぅ。頼むから仲の良いコントを見せつけないでくれ」

「自爆はやめろ」

 

 デデーン!!

 イグジスト、OUTー!!

 

きゃっ♥」

 

 勢いよく開き、そのまま真顔で引き出しを閉じたグレープジュースがツボったイグジストがやられてしまった。

 この企画の第二の刃。同士討ちが発動したのだ。

 仲のいいメンバーであればあるほどこの刃は深く突き刺さる。

 企画を通してマウントレディとイグジストとグレープジュースでよくお互いに殺しあってしまっていた。

 

「ってか……マジで何があったんだよ引き出しの中」

「まぁ見てくれる?」

 

 イグジストの問いにグレープジュースが引き出しをそのまま取り外して中を見せようと動かす。

 実を言うと中に何も入っていなかったのだ。空っぽであることを証明しようとしてグレープジュースが引き出しをガタガタ弄るのだが、しかし中々取り外せない。

 身長が低いので腕の高さが足りず、真剣に困っているようで。

 そのシュールな時間もお互いの緊張を高める一因にもなり、そして。

 

「ん、中々これ────オゲーッ!!」

 

 勢いよく引き出しがすっぽ抜けて、グレープジュースが引き出しを掴んだまま見事に後ろにこてんとひっくり返った。

 

「っブァーハハハハ!!」

「ブフッ……!! ……グレープジュースあんたねェ!!!」

「ククッ!! それはズルいだろう!! それは!! 何やってる!!」

「ンー……ンンッ……ブフッ!!」

 

 三人が思わず笑ってしまい、堪えたエッジショットも最終的には堪え切れず噴き出してしまった。

 

 デデーン!!

 イグジスト、マウントレディ、シンリンカムイ、エッジショット、OUTー!!

 

「クソがよぉ……にゃんっ♥」

「ン゛ン゛ーーー!!」

「フンッ!」

「クッ……!」

 

 第三の刃、天然ボケである。

 笑ってはいけないという空気の中で天然でボケをかますことで予想外の笑いを内部から繰り出され、周りのメンバーが笑ってしまうのだ。

 存分にバラエティを堪能していた。視聴率はこの時点で紅白に勝利しておりTV局は大盛り上がりとなっていた。

 

 

「……じゃあ次は私ね?」

「頼んますよマジでマウントレディ」

「こう、すっと引き出し引いて、モノ取り出してくれりゃいいんで」

「そろそろ映像媒体でも出てきそうだな」

「ビデオレターか……鉄板だな」

 

 さて続いてはマウントレディの引き出しの番だ。

 既に学生二人により笑いの渦に叩き込まれている5人が一度呼吸を落ち着けたところで、改めてマウントレディの引き出しを攻略する。

 変にしゃべらず、何が入っているかをただ出せばいい。

 それをわかっているが、それができないのがこの番組である。

 

「行くわね……」

 

 マウントレディが引き出しに手をかけて……開けた。

 

「────────」

 

 一瞬真顔。

 そんなマウントレディが引き出しに手を入れ、中の物を机の上に出す。

 引き出しの中には──────

 

 

 

 ─────中濃ソース。

 

 

「「「「アハハハハハハハハハハ!!!」」」」

 

 男子が全滅した。

 

 デデーン!!

 イグジスト、グレープジュース、シンリンカムイ、エッジショット、OUTー!!

 

「CM強すぎでしょこのソースがよぉ!! い゛ぃーっ♥」

「でもこのソース実際美味しいぐわーッ!!」

「完全に持ちネタになったな゛ッ!!」

「理解のあるディレクターすぎるッッ……!」

 

 余りにも神の一手であった。

 マウントレディが真顔で机の上に中濃ソースを差し出してきて笑わないものだけが彼女に石を投げてもいい。

 

「もう完全に私ソースの女って認識になってるじゃない!? ちょっとー!! 日○食品さん!?」

「企業名はまずいッスよマウントレディ」

「多分CM流れてると思うから今更だと思うぜオイラ」

 

 闇の引き出しバトルはこの後も続き……シンリンカムイが映像ディスク、エッジショットが再びエンデヴァーの肖像画を引き当てて爆笑してしまっていたり。

 映像ディスクを再生してみればギャングオルカによるムキムキブートキャンプ映像が流れてマウントレディがツボに入り。

 

 その後も普通の会話で自爆したり、ヒーロー活動に出かける中で色んなヒーローがそこかしこで笑わせに来たり。

 最後には大型ヴィランとマウントレディの一騎打ちという設定で割としっかりしたヒーローもののドラマチックなバトルなども流れて。

 締めはいつもの大爆発シーンで番組が終わって。いつの間にか年は越していて。

 

 

 笑顔に包まれた大晦日を人々は過ごしたのだった。

 

 

*1
プッシーキャッツの暴担当のあの人






これ以上は長くなりすぎるからカットだ!
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