【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!!   作:そとみち

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129 なんでここに○○が!?

 

【side 緑谷】

 

 魑魅魍魎の大晦日が明け、新しい年を迎えた。

 昨晩の笑ってはいけないは本当にひどかった。鍛えている僕でも腹筋が筋肉痛になるほどだ。また幾野くんたちがトレンド独占してた。

 きっと新年で一番客入りがいいのはドラッグストアだろうと思ってしまうほどに笑わせてもらったよ。

 年末年始から笑いを提供する幾野くんたちは流石としか言えないよ。

 うん。すごく彼らしい。

 

「風邪ひかないようにね」

「うん」

「またラインしてね!」

「うん!」

「インターン……頑張ってね!」

「うん! 行ってきます!」

 

 お母さんと挨拶して別れて、僕は新年早々からインターンに向かった。

 今日から新学期が始まるまではエンデヴァー事務所にインターンでお世話になるんだ。

 どんなことを学べるかな……いつだって僕の出来ることを、全力で!

 

 


 

 

「ようこそ、エンデヴァーの(もと)へ!」

 

 耐えられなかった。

 

「ブフーッ!!」

「……」

「似合ってねぇぞ証明写真(オヤジ)

「笑うな緑谷肩を震わせるな爆豪ツッコむな焦凍ォォ!! おのれ……やはりイグジストの頼みだったとはいえバラエティになど出るものではないな!!」

「幾野くんから話あったんですね……」

「新年初笑いがアンタの顔になる所だったわクソが」

「いいじゃねぇか。母さんも笑ってたぞ」

「……フン」

 

 集合場所で待っていたエンデヴァーが、僕に気を利かせてくれたのだろう、ぎこちない笑顔を浮かべて挨拶してくれたんだけど。

 その顔が昨日見た証明写真エンデヴァーに似てて駄目だった。失礼とは分かっていながらもさらに腹筋にダメージが入ってしまった。

 かっちゃんですら笑いをこらえてるんだからアレ見たんだ……格闘技の方見てるのかと思ったのに。マウントレディも出てたからかな。

 

 さて、インターンが今この瞬間から始まった。

 挨拶もそこそこに付近で事件が起きて、その衝撃音が響く前にエンデヴァーが突如現場に走り出す。

 学びたいなら後ろで見ていろ……と言われて止まれるほど僕たちだって何もできないわけじゃない。

 かっちゃんは精度と速度が爆増した爆速ターボで追いかけ、轟くんもエンデヴァーによく似た赫灼熱拳の使い方で追従するように加速。

 僕だって黒鞭をビルに放ってぐんっと引き寄せながらフルカウルを纏い、エンデヴァーと距離を空け過ぎないように追いかけて。

 

 そこで暴れてたガラス操作をするヴィランがエンデヴァーから逃げる先、路地裏に誘い込むような動作を見せた。

 それに気づいたエンデヴァーが、一瞬だけ僕たちの事を振り返る。

 

「……ッ!」

「挟み撃ちか待ち伏せだ」

「ビル向こう回んぞォ!!」

 

 その動作でエンデヴァーの意図は読めた。ガラス操作するヴィランだけならエンデヴァーが後れを取るはずもない、危ういのは誘い込まれた先で他のヴィランと連携されること。

 だったら僕たちがそっちに先回りして待ち伏せを警戒、対処。待ち伏せがなければ相手を挟み撃ちに出来る。

 一瞬で僕たちはそう判断して進路変更、エンデヴァーが出てきそうな路地裏の先……やっぱりいた。複数人のヴィランだ。

 やれる。僕たちは超スピードで吶喊し、その待ち伏せしてるヴィランを撃破しにかかって。

 

「────あれ!? ああ、インターンか!!」

「っホークス!?」

 

 僕たちの攻撃がヴィランに突き刺さると()()に、ホークスの剛翼が彼らを束縛した。

 エンデヴァーも主犯だろうガラス操作のヴィランを捕まえて。

 ……え。なんでここにホークスが?

 

 

 

 その後、事件は終息。ヴィランたちは警察に引き渡され、エンデヴァー事務所のサイドキックがそちらの対応に回った。

 ホークスに会うのも久しぶりなので僕とかっちゃんで挨拶しつつ……でもホークスも今はインターン中じゃなかったっけ?

 

「その、常闇くんは……? ホークス事務所でのインターン続行されてましたよね?」

「地元でサイドキックと仕事してもらってる。俺が立て込んじゃってて……悪いなァって思ってるよ」

「ケッ。フラフラ飛び回ってっからだろが」

「耳が痛いね」

「……で、何用だホークス。昨日のバラエティの話に来たなどと言えば羽根を焼くぞ!?」

「ンは! あーれは笑わせてもらいましたよ! イグジストくんも相変わらずで……つっても用事って程の事でもないんですよ。エンデヴァーさん、この本読みました?」

 

 そう言ってホークスがポケットから取り出したのは『異能解放戦線』という本だった。

 

「いやね! 知ってます? 最近エラい勢いで伸びてるんスよ。泥花市の市民抗戦でさらに注目されてて! 昔の手記ですが今を予見してるんです。『限られた者にのみ自由を与えればその皺寄せは与えられなかった者に行く』とかね。時間なければ俺マーカーひいといたんでそこだけでも! デストロが目指したのは究極あれですよ、自己責任で完結する社会! 時代に合ってる!」

「何を言ってる……」

「そうなればエンデヴァーさん、()()()()()()()()()()()!!」

「────────」

 

 どうやらホークス自身が気に入った本の紹介? に来たようだ……けど、ううん、なんだろう。

 それを語るホークスの顔がなんだか……違和感がある様な?

 前に僕とかっちゃん、幾野くんとチームアップをしたときには見せなかった顔だ。この人はもっと、呑気な笑顔を浮かべながらスパッと物事を解決する、いい意味で楽観主義者のように感じられていたんだけれど。

 かっちゃんも少し訝し気にホークスを見てて……でもその本をエンデヴァーに少し無理矢理渡して、僕たちにもナンバー2の速度で布教用の本を渡してくれて。

 全国の知り合いやヒーローたちに薦めている、と言って飛び立っていってしまった。相変らずやることが早いや。

 

「なんか……変わったかな、ホークス。泥花市の事件とかで何かあったのかな……」

「……ムカつくなァ。さっきのヘラ鳥の顔」

「……そうだな」

「ケンカ売るなよ」

「違ぇわボケ」

 

 奇妙な違和感を抱えつつも、ホークスとの邂逅も終わり。

 一旦エンデヴァー事務所の本社ビルに移動することになった。

 

 


 

 

 事務所内で、エンデヴァー事務所にいる炎のサイドキッカーズにご挨拶させてもらった。

 有名なヒーローがいっぱいだ。特にバーニンさん。幾野くんがいつかあの胸と太ももに顔を埋めたいって言ってた人。

 確かに魅力的な太腿だけど流石にそろそろ葉隠さんと八百万さんと発目さんに怒られるべきだと思うよ僕。既に風紀が乱れてるのに。

 

「見ての通りここは大手! 今日から早速我々と同じように働いてもらうわけだけどサイドキックは30人以上!! つまりこれまで働いてた爆豪くんやショートくんはともかく!! 緑谷くんの活躍する場は!! なァアいっ!!」

「あ、僕ラーカーズで書類仕事や事務仕事も覚えさせてもらいましたので……できれば現場仕事やりたいですけど待機中の事務仕事も行けると思います」

「有能っ!!」

「緑谷は幾野と一緒にいる時間長かったからな」

「デクに細けェ説明は時間の無駄だ。とっとと仕事に取り掛かりましょうやバーニン。今日はヘラ鳥が変な顔してたからイラついてんだ」

「相変らずね爆豪くん!! じゃあまずは3人ともエンデヴァーの指示があるまで事務仕事よろしく!!」

「はい!!」

「ウス」

「はい」

 

 その後僕は事務仕事の流れもちゃんと教えてもらえた。

 ナンバーワンヒーロー事務所の規模の大きさやシステマチックな体制に驚いたりしながらも書類を片付けていると……エンデヴァーが部屋から出てきて、僕たち3人は今年からはエンデヴァーが集中して見てくれることになった。

 お忙しいだろうに、気を遣わせちゃったかな。でもこれをいい機会ととらえてしっかり成長しないと!

 

「緑谷は黒鞭の使い方の習熟……爆豪はさらなる力の凝縮によるオーバーフロウの再現。焦凍は赫灼の出力調整の更なる習熟……だったな。それらはすべて『経験』で磨く。山の如く積み上げろ。貴様ら3人の課題は『経験』で克服できる。この冬の間……俺よりも早くヴィランを退治してみせろ。一度とは言わん、貴様らならば幾度でもだ! 俺を踏み台にしようとするほどの気概を見せてみろ!!」

 

 エンデヴァーの指導方針は僕の望んだ形に。

 現場での実戦を重ねて経験を積み、その中で黒鞭を含んだOFAの力の全ての習熟を。

 

 こうして僕のエンデヴァー事務所でのインターンは幕を開けたのだった。

 

 


 

 

 インターンが始まって一週間がたった。

 エンデヴァー事務所には宿泊設備が完備されていて、僕らは炎のサイドキッカーズと寝食を共にしている。

 

「おはよー! どーだい進捗はぁ!!!」

「お早うございますバーニン! 夜番お疲れ様です!」

「朝からでけェ声だすな。相変らずテンションたけーなアンタ」

「いつもどーり!! どうよお二人さん、『エンデヴァーさんより早く撃退』の調子は……あ! いーやごめんね!? デリカシーがなかった!! わかってるよそんな簡単に行きっこないよね!!」

「ええ、まだ3回くらいしか先んじられてなくて」

「えっ」

「コツは見えてきた……幾野がいねェ分俺らだけで事件発生を察知する勘を掴む必要がある。初動が速けりゃ速いだけ有利だ。パトロール中も気を張り詰め過ぎず自然体で、かつ周囲全域に注意を払うような気の張り方……今日はそこ詰めんぞデク」

「うん! ……あ、轟くんおはよう!」

「おはよ。昨日で俺もその感覚掴めるようになってきた。アレ大事にしていこうぜ……おはようございますバーニン」

「あっうんオハよーショートくん……うん? 今年の雄英一年生はバケモンか? 負けてらんねー!!」

 

 現代日本最高峰の現場で一週間が経過した。

 流石解決数一位を誇るエンデヴァー事務所。エンデヴァーの判断で今日はここをパトロールする必要がある、と決めた土地ではやはり事件が多く発生して。渋谷でラーカーズとパトロールしてた時よりも事件数は多いくらいだ。

 ただその分ラーカーズは渋谷の周囲のヒーロー事務所とも連携しているし、バラエティとかもやって笑顔を作る仕事もしてて。タイプの違いなんだろう。

 たぶん幾野くんや峰田くんはここの事務所の働き方だとあまり気分乗らないかも。バーニンしか有名な女性ヒーローいないし。

 

 ……でも、僕たち3人にとってはこの上ない経験を積める場だ。

 

「集中すれば出来ることを寝ながらでもできるようにしろ!! やると決めた時には既に行動し終わっていろ!!」

「っ……幾野くんの個性のこと思い出したよ!」

「寝てる時も発動させてんだったかアイツぁ……チッ、とっくに俺らのいる所は過ぎてるってかクソが!! 負けるかァッ!!」

「アイツにも……親父にも負けてらんねぇ。行くぞ!!」

 

 僕たちはひたすらエンデヴァーを追いかけた。

 次々発生する事件。現れるヴィラン。それら一つ一つに対処していくたびに、改善点と成長を感じられるような、そんなインターンを過ごして、そして。

 

「よし……! 次だ!! 行くぞ!!」

「はい!!」

「おお!!」

「ああ」

 

 僕たちは轟家に夕食に招待されたのだった。

 

「なんで」

 

 


 

 

「何でだァ!! 説明しろ轟ィ!!」

「姉さんが飯食べに来いって」

「何でだァ!!!」

「建物でかい……!」

 

 日中の仕事を終えて夕飯の時間になり、なぜか僕たちはエンデヴァーと共にハイヤーに乗って轟くんのご自宅にお伺いしていた。

 初めて見たけどやっぱりお家でっかいんだ。エンデヴァーのご実家だもんね。お金あるんだなぁ。

 前に幾野くんに誘われてエンデヴァーの奥さん……冷さんがまだご入院してる所に一度だけ轟くんの友達代表としてご面会はしたことあるんだけど、お元気されてるだろうか。

 今はご実家にいらっしゃるはずだ。ご挨拶もしないとね。

 

 僕たちは正門を過ぎ、玄関にお邪魔させてもらう。

 

「忙しい中お越しくださってありがとうございます! 初めまして、姉の冬美です!」

 

 前に保須市総合病院で幾野くんがその体を狙っていた轟くんのお姉さんがエプロン姿で迎えてくれた。メガネ美人さんだ。幾野くんが好きそう。

 

「おかえりなさい、あなた。皆さんもよくお越しくださいました。ごゆっくりなさってね」

 

 その横には一度ご面会させていただいた轟くんのお母さん、同じくエプロン姿の冷さんだ。前よりも血色がよくなったように見える。よかった。

 

おかえりなさいお義父さん♥ みんなもお帰り♥ お風呂にする? ご飯にする? そ・れ・と・も……私?♥」

 

 そして幾野くんがエプロン姿で迎えてくれた。

 キレそう。なんでここに幾野くんが。

 

「幾野……お前も来てたか」

「なんでテメェまでいやがんだ幾野ォ!!」

「いや冬美さんによかったらどう? って誘われてさ。ラーカーズのインターンもキリよかったんで午後に上がらせてもらって夏雄さんと一緒にお邪魔して料理手伝ってた」

「ふふ。幾野くんもありがとね。最近あまり会える機会がなかったから……嬉しい」

「誘ってんすか冬美さん……!!」

「ラーカーズのインターンに葉隠さんもいたよね?? 大丈夫なの幾野くん???」

「許可取った」

「罪深ェ」

「……見合いのけ」

「エンデヴァーは喋らないで!! まだ俺年末特番のアレ尾を引っ張って無条件で笑っちまいそうなんで!! ハイハイごはんにしましょうね!! 夏雄さん待ってますからね!! みんなも上がって!!」

「くすくす……そうね。どうぞ、皆さまもあがってください」

 

 幾野くんが出てくるとすぐに場が騒がしくなるんだ。

 本当にこれは人徳だなぁ。でも今エンデヴァーがお見合いとかなんか言ってなかった?? えっホントに幾野くん轟くんのお義兄さんになるつもり?? 性が乱れすぎてない??

 まぁもういいや。幾野くんらしくて何よりだよ。爆発しなよ。

 彼と付き合う時には細かいことは気にしちゃダメだって僕もよーーーーく知っている。

 冬美さんの料理は美味しいって聞いてるし、素直にご飯を楽しもう。

 

 

 

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