【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!! 作:そとみち
タイトル詐欺の権化みてぇなヴィラン。
轟家の夕食に御呼ばれし、俺はインターンついでに呼ばれてた緑谷と爆豪ちゃんと一緒に冬美さんの美味しい料理に舌鼓を打っていた。
「……で、俺がどうしてもエンデヴァーを企画に呼べないかってディレクターから相談受けて、エンデヴァーに話通したんですよ。OK貰えるかどうかやどういう風に笑いに使われるのかは勿論知らなかったから身構えてたんですけどね。あーの写真はズル過ぎでしょ!! あれだけで5回はケツはたかれましたからね!!」
「君の紹介だから仕方なくスタッフに言われたとおりに一枚写真を撮っただけだ」
「ククッ……思い出させないでくれよ幾野くん!! あれ俺マジでよじれるほど爆笑して呼吸困難になったからね!! 姉ちゃんに心配されるレベルだったよホント」
「みんなで思いっきり笑っちゃったよねぇ。お父さん微妙に写真写り悪いんだもん!」
「あはは……大変でしたねエンデヴァー」
「二度とあのテレビ局の仕事は受けん」
「そういうなよ親父。中々ウケたぞ」
「そうよ、あなた。いい変化じゃないの」
「む……」
「あの後しばらく腹筋とケツが痛かったなぁ……ん! このギョーザ美味! 冬美さんまた料理上手になりましたね! すげー好みの味!」
「ホント? 嬉しい! もっと食べてね! なるほど幾野くんの好みの味付けはこのタイプかぁ……」
うんうん。
俺がこの食卓を気まずいものにするわけがねぇんだよなぁ!!
元々関係も改善されてて、夏雄さんもエンデヴァーと積極的に話すほどじゃないけど場の空気を壊すような不機嫌さは見せていない。それを見せても俺が取りなすけどね。
冷さんもエンデヴァーとの関係は落ち着いてるようだし、エンデヴァーも家族を尊重する態度が取れてるし……うん。マジで関係改善されてるな。少しでも俺が力になれてたら嬉しいわ。
「最近ねーちゃん料理上手くなったよなぁ。変化あるとやっぱ成長すんだね」
「どれもめちゃくちゃ美味しいです! この竜田揚げも味がしっかり染み込んでるのに衣がザクザクで仕込みの丁寧さに舌が歓喜の」
「メシまでこまけぇ分析すんなボケデクぅ! てめーの喋りで麻婆の味が落ちるわ!」
「四川麻婆が爆豪くんの好物だって幾野くんから聞いてたから作ってみたんだけど、どう? 美味しい?」
「ン……ウメぇっす。後でレシピ教えてくれ」
「よかったー! レシピもバッチリ教えちゃう!」
「俺のラインに後で送ってくださいよ冬美さん。爆豪ちゃんに教えとくんで」
「うん!」
「……やはりお見合いを急ぐべきか……」
「あなた、今は自由恋愛の時代よ。変に介入せず二人に任せましょ。後押しするくらいでいいのよ……」
「幾野も姉さんのこと意識してねぇわけじゃねぇ……どっかで二人きりにすれば……」
ほら見て。今なんかエンデヴァーと冷さんと焦凍が顔を寄せ合ってひそひそ話なんてしてるし。
内容は聞こえないけど仲良さそうで何よりである。
それにホント料理がおいしいというか……なんだろう、舌に合うな今日の冬美さんのメシ。寒い時期だしみんな仕事で頑張ってきたところだしでハラも減ってたのでいっぱいお代わりさせてもらってしまった。
毎日食べたいくらいです。
「こんなに美味いと毎日食べたいくらいだなぁ」
「───────ッ」
「どうして幾野くんは素直に口に出してしまうんだろう」
「罪深ェ」
その後、焦凍の学校での話とか俺らのインターンの話、夏雄さんの大学の話などで盛り上がりながらきれいさっぱり食べ終えて食事は終了。
片付けは俺がバリバリやってもよかったんだけどみんなに手伝わせない方が悪いだろという焦凍の一言に確かにそれもそうだと思ってみんなで食器片づけた。
まぁ俺が7割くらい片付けちまったんだけどよ。掃除片付け大好物。
さて、しかし片付けの後にエンデヴァーは小瓶に料理を盛って部屋を出ていく。冷さんもだ。
あれは俺も知っている……亡くなられた燈矢さんの仏壇に供えているのだ。
流石に部外者である俺はまだ一度も仏壇ある部屋にはお伺いさせてもらってない。亡くなられた長男への想いは俺も計り知れるものではないし……エンデヴァーも冷さんもあまり触れてもらいたくないだろう。向こうから言い出したらでよかろ。
今は、今生きている轟家の皆さまがもっと仲良くなれるのを祈るのみである。
「姉ちゃん、俺先に帰るわ」
「えー? 折角幾野くんたちが来てくれてるのにー?」
「悪い、大学の冬休み明けレポート実は溜まっててさ。悪いね幾野くん、緑谷くんも爆豪くんも。焦凍の事これからもよろしくな」
「はい!」
「ケッ、コイツは俺の超える壁だ」
「とか言ってるけど俺が何とかしとくんで。また遊びましょうね夏雄さん!」
「はは、幾野くんなら安心して任せられるわ! んじゃな!」
食事後にエンデヴァーが俺たちを明日から始まる学校にジャンボハイヤーで送ってくれることになっていたのだが、その前に夏雄さんは一人暮らしの部屋に帰られることになった。
レポートが終わってないってことだけどどうせ彼女さんとイチャイチャしてたんでしょ年末年始ー。そう言うの分かるんだから!
やはり後で遊びに行かねばならんな。掃除もしてやろっと。
結構散らかってるんだよね夏雄さんの部屋って。轟家で抑圧されてたからだろうか。
「で、まぁそんじゃ話の続きですけどね冬美さん。B組との対抗戦で……ぶっちゃけると爆豪ちゃん以外はまぁみんな見事にやられちまいまして」
「んぐ。悔しいけどでも幾野くんのアレは油断の極みだったじゃん!?」
「えー? 幾野くんどんな風だったの? えっと、さっきの組み合わせだと爆豪くんと一緒のグループだったのよね?」
「ケッ!! こいつァ相手チームの蛇女が誘惑するために服脱ぎだしたの見て動揺して突撃ミスりやがったんだ!! 俺が速攻で他の3人ブッ殺したからよかったもののよォ!!」
「スタイルいい女子が相手にいてさ。幾野のやつ見事にハニトラに引っかかって動揺してた」
「あははははは! やだもー、幾野くん男子ねぇ!」
「いやありゃ取陰ちゃんがマジで身を張った見事な作戦だったって!! 少なくとも俺だけじゃなくて緑谷だって同じくらい動揺しただろアレやられたら!!」
「僕まで巻き込み事故やめてくれる!? いや動揺するかしないかで言ったら……するけど!! 観戦してて動揺したけども!!」
「うふふ……! 楽しそうねぇ、幾野くんがいる生活は」
俺らの学校生活の事を話して冬美さんを楽しませていると、そこにエンデヴァーがやってきた。
そろそろ俺らも学校まで送ってくれるんだって。もうそんな時間か。
「今日は本当にごちそうさまでした!」
「四川麻婆美味かったぜ」
「また遊びに来ますからね冬美さん! 冷さんも!」
「体に気を付けてね、お母さん。姉さんも」
「色々お話聞かせてくれてありがとね!」
「みなさん、また遊びに来てね」
冬美さんと冷さんにみんなでご挨拶して準備してもらったワゴンタイプのハイヤーに乗り込む。
これで冬休みも終わりかー。結局殆どインターンで終わっちまったな。年末年始はテレビ局の仕事だったし。
まぁええか。学校が始まったらまた時間が出来る。色々やろ!
そろそろまたえっちなことじゃなくてデートとかもしたいなー! 遊園地のチケットとかとって3人と遊びに行こうかな。峰田と梅雨ちゃん、緑谷と麗日ちゃんを誘ってもいいかもしれん。トリプルデート。
「幾野くんはラーカーズだが……他3人。貴様らには早く力をつけてもらう。今後はうちの事務所中心に週末に加えてコマをズラせるなら平日最低2日は働いてもらう」
「頻度増えんのか。……まぁでも幾野もそんな感じだよな」
「ラーカーズやらチームアップミッションやらで平日いないことも多いしね俺。授業は付いていけてるけど」
「僕は予習やらなきゃだなぁ……幾野くん英語あとで教えてくれる?」
「りょ」
「ケッ! 教科書見れば覚えれんだろうがァ!」
どうやらエンデヴァー事務所のインターンもこれから頻度を上げていくらしい。
これまで轟と爆豪ちゃんがインターン行くのは週末の休日のみだったりもしていたが……1月からは本格的に増えるとのこと。ラーカーズに行ってる俺よりも下手したら回数増えるかもな。
でもそれこそ3人にとっちゃむしろ望むところだろう。また強くなっちまうなぁこいつら。
まったく俺も追いつくのに必死だぜ。一回くらいは俺もエンデヴァー事務所でやってること見せてもらいてぇな。ラーカーズとの違いが参考に出来るかも。
「──────ん?」
しかし、そこで運転手さんがふと疑問の言葉を一言呟いた。
それで顔を上げて道路の正面を向けば、ヘッドライトの向こうにぼんやりと人影が。
─────即座にウォールハック発動。
ヴィランらしき男が一人。
そしてその傍に捕縛布の様な白い包帯が巻き付いている人間。
人質?
いや……夏雄さん!?
なら。
「──────いい家に住んでるなァエンデヴァー!!!」
ヴィランが叫んだ言葉を、
俺の腕には夏雄さんの大きな体。
救出完了。
「っ幾野くん!?」
「ヴィラン!! アレは……!!」
「夏兄ぃ!?」
「
相手が一人、周囲に他のヴィランは見えず。
そして捕えられてるのが夏雄さんだと見てわかった瞬間に俺は夏雄さんに向けて距離を無視したワープを敢行。
一瞬にして夏雄さんのすぐそばに現れ、夏雄さんを縛る白い帯……どうやら道路上の白線を個性で動かしているもののようだが、それに触れた。
個性そのものではなく、個性で動かしてる白線ならばコイツの物じゃない。俺の物と認識。
白線を『無視させる』ことで、夏雄さんを救出した。
ここまでがハイヤーがヴィランにぶつかりそうになるまでの一瞬。
夏雄さんのエンデヴァー譲りのデカい体を肩に担いで、重さを無視して俺は一度大きく飛び跳ねてヴィランとの距離を取った。
「……ッハァ!? なんだお前!? エンデヴァーじゃないのか!?」
「俺を知らねぇとかモグリかよクソヴィラン!! 年末特番でお茶の間に笑いを提供したイグジストだよ!! お前こそ誰だよしましまゼブラ野郎!!」
「お前に用はない!! 俺はエンデヴァーに俺の死「「赫灼熱拳────」」
急に取り返された人質に驚いて、俺の方を向いたヴィランが驚愕の顔を浮かべる。
俺の事知らないなんてマジでモグリだなこいつ。服が囚人服っぽいから脱獄囚とかそんなか?
だがしかし俺の仕事は終わった。
あえてコイツと会話して、俺の方に注目させて隙を作った。その一瞬で十分だ。
俺の知るエンデヴァーと焦凍なら、このわずかな時間で十分。
「「ジェットバーンッッ!!」」
「ゲハァ────!?!?」
二人が息を合わせた赫灼熱拳で隙を見せたヴィランを焼却。
もちろん殺してない。エンデヴァーは勿論、轟もここ数日の密度の高いインターンで最高の見本を見続けて火力調節が出来るようになってたようで、叩きつける火炎の奔流で見事に気絶させたようだ。
緑谷と爆豪ちゃんもハイヤーから脱出しており、緑谷は運転手を黒鞭使いこなして無傷で救出。車も壊れないように黒鞭巻き付けて横転を防ぐ。
爆豪ちゃんも周囲に被害が出ないようにヴィランのまわりの白線を焼き切るという素晴らしい機転を見せていた。万が一の可能性まで考慮したカバー。流石。
俺が改めてウォールハックで周囲の……このまわりだけじゃない、周囲500mくらいを見渡して他に被害に遭ってるような人や建物はないか確認するも、どうやらそれもない様子。
夏雄さんだけを狙った犯行か。エンデヴァー云々って言ってたし恨みつらみのそれだろうか。
とはいえみんなの活躍もあり、このヴィランによる事件は被害ゼロで無事解決となった。
「夏雄……!! ケガは!?」
「ねェよ……拘束されただけだ。……幾野くんありがと、助かった」
「いえ、夏雄さんが無事でよかったっす。マジで」
轟が気絶させたヴィランを今度は氷漬けにして動けなくさせて拘束し、俺たちは現場の確保に回りながら警察の到着を待った。
俺も一度車に積んでたヒーロースーツのケースからダイブセンサーを取り出して着用し、警察へ連絡したり周囲の状況を確認したり。
で、そんな中でエンデヴァーが夏雄さんを純粋に心配して抱きしめてた。温かい親子愛だ。夏雄さんも決して嫌がりはせず……いや嫌がってんな。
加齢臭凄かったか??
「チッ……!! エンデヴァーよりも速く一番に飛び出しやがってクソが!!」
「ワープを使いこなし始めてから速効性も上がってるね幾野くん……回数に制限はあるけれども。やっぱりすごい……!!」
「俺らの目標は高ぇな。でもまずは夏兄が無事でよかった……二人もサンキュ」
「ケッ! 大したこともできてねェわ!」
「よかったよ本当に!」
3人に嫉妬の視線を受けるけど、俺が躊躇いなくワープで飛び出せたのはお前らが後詰めとして何より信頼できたからだからね?
もしここに俺一人で臨んだら、夏雄さんを救出するまではできるかもしれないけどその後が詰められない。夏雄さんを守りながら戦う技が俺にはないからだ。守りに向かない個性。
俺の個性は、俺一人でいる時じゃなくて……周りに誰かがいる時にこそ輝く。奇襲に向いた個性だからこそ、その奇襲の後に詰めてこられる仲間が必要なんだ。
こっちこそ助かったぜ。みんなバッチリ成長しやがってまったくよ。
さて、その後は警察も到着。
エンディングとかいうかっけぇヴィランネームのヴィランは無事警察に連行されて、事情聴取などを受けた。
ブースト薬を使って個性を強化してたらしい。まぁそもそも個性使わせることもなく倒したけどね。
奇襲が主な攻撃手段となる俺としては一番いいヴィランの撃退方法は個性使わせる前に潰すことだと思ってる。
変に相手に力振るわせる必要ないよね。不意打ちして一撃で終わりが理想よ。
「いやー……もちろん映像とかでは見てたんだけど幾野くんのヒーロー活動って俺間近で初めて見たよ! すげぇな、何が起きたのか全然分からなかった!」
「ふふん。やるときはやる男ですので」
「焦凍も……二人も一瞬で車から出てきて助けてくれてさ。すげぇや……ありがとなホント! えっと、ヒーロー名……デクくんと、爆豪くんはヒーロー名どんなだっけ?」
「あン?」
「バクゴーだよね? 暫定で……」
「……違ぇ」
「え!?」
「お、爆豪ちゃんヒーロー名決めたんか! どんなん?」
「言わねーよテメーらにはまだ教えねぇわ!」
「俺はいいか?」
「テメーも駄目だ轟!! 先に教えるやついんだよ!!」
「マジかよ誰よ爆豪ちゃん? そんな好きになっちゃった人いたのかよ!?」
「黙れカス」
「この私がいるっていうのに!! 浮気!? 浮気なのね爆豪ちゃんったら!? 許さない……誰よその女!!」
「だあああ!! うるせェぞ幾野ォォ!!」
「幾野くんのいつものが始まっちゃった」
「峰田も葉隠もいねぇぞ。どうする」
「面白そうだな君たちの寮生活……」
夏雄さんに感謝の言葉を頂いて、俺らも事件解決し普段通りの雰囲気に戻って。
その後は夏雄さんは独り暮らしの部屋に戻るのは今日は危険ということで一度実家に戻り、俺たちはエンデヴァーが手配してくれた車に送られて雄英高校に戻ったのだった。
【after 轟家】
「襲われたぁ!?」
「大丈夫だったの夏くん!?」
「うん……幾野くんに助けてもらったよ。焦凍たちや親父にもさ」
自宅にとんぼ返りした夏雄とエンデヴァーから事件のあらましを聞き、驚愕する冬美と冷。
聞けばエンデヴァーが過去に捕えたヴィランの私怨による犯行だったとも聞き……今後は轟家の全員が注意する必要があると判断された。
「しばらくは夏雄と冬美の通勤通学には護衛をつける。夏雄……済まないがしばらくはここから大学に通ってくれないか」
「ちっ……分かってるよ。俺も狙われるのはごめんだしな」
「……すまない」
「謝んな。親父が悪いことしたわけじゃねぇだろ……仕方ねぇよ」
その後エンデヴァーからの発案で、二人の身の回りを護衛するヒーローを事務所から手配し、同時に夏雄はしばらく独り暮らしではなく実家からの通学になる事となった。
これを呑み込めるくらいには大人になっていた夏雄は、心底からの納得ではなくとも、家族と共に暮らすことに了承した。
図らずも、再び家族が共に過ごすことになったのだ。
「……で、いきなりそのヴィランに拘束されてさ、人質になっちまって……でもすげぇんだよ。幾野くんが一瞬で俺のそばに現れて、巻き付いてた帯がまるで何もないようにずるっとすり抜けて……俺の体抱えて軽々と飛ぶんだよ! ホント、映像で見た以上にカッコよかったな……焦凍も親父と一緒に一瞬で飛んできて、二人でヴィランを一撃で仕留めてさ……」
「やだ……幾野くんすごいぃー……!! 駄目、聞いてるだけでドキドキする!」
「……ふふ、冬美もいつの間にか女になったわね。……焦凍から聞いたんだけれど。幾野くんの彼女さん、幾野くんに他の女の人が増えてもいいって言ってるらしいわよ? 既に何人も彼女がいるとか……」
「えっ……ホント? 私まだチャンスある?」
「夏の頃に幾野くんと会って最初のセリフが彼女いっぱいいそうですね、だったっけ。自分がやってんじゃん幾野くん。マジで……いやもう流石としか言えねぇわ。いいよ姉ちゃん、幾野くんに貰われちゃえよ」
「~~~~!! ……その、次に幾野くんが来てくれた時は……お泊りしてもらって……」
「もう俺も何も言わん……冬美のしたいようにしろ。応援する」
「うん!!」
その後の話の流れで轟家に幾野が完全にロックオンされたのだが、幸か不幸かそのことを当事者が知るよしもなかった。