【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!! 作:そとみち
【side ???】
空が僅かに茜色に変わる時間の、職員寮のロビー。
まだ職員室で教師が仕事をしているはずのこの時間に、二人の男性が疲れた顔をして話していた。
「死んだと思ってたはずのアイツが────」
「ヘドが出やがる────」
話題は先ほど二人の身に降りかかった、極めてセンシティブな内容で。
しかし当然にして誰もいないこの職員寮では、お互いに傷を舐めあうように愚痴をこぼし続けていて。
「……どうする。冬季の集中インターンの件といい公安は何か掴んでる」
「だろうな……」
「脳無の製造元、蛇腔総合病院。これから詳細な調査が入るだろうし、俺らはまだ動けない……が。製造元だと確定したら、おまえどうする」
「飛んでってカラオケ大会してやるよ……!! ハラワタが煮えくり返ってモツ煮だ! ……お前はどうする、相澤」
「俺は───俺も、お前と同じだ。罪を償わせる……!」
怒りが撒き散らされるような、怖い声。
私はそれを、ロビーの角の向こうで聞いちゃった。
ショータお兄さんと、マイクおじさんが何か、とても疲れた様子で帰ってきて。
いつもはもうちょっと遅い時間に戻ってくるのに。私は自分のお部屋の窓で二人の姿を見つけて、お出迎えしようとして。
でも、ロビーに着いた途端にお兄さんたちから溢れた言葉に、足が止まって。
そして、その話を聞いちゃった。
ショータお兄さんの、昔に死んじゃった、お友達。
年末に一度だけ写真を見せてもらった。ショータお兄さんが本当にお兄さんだったころ、マイクおじさんと一緒に写真に写っていた、白い髪のお兄さん。
あの人が、わるいヴィランの手で……前にテレビでちらりと見た、イグジストお姉さんが戦っていた……脳無、っていうのにされちゃったって、こと?
二人にとって、それはとてもきっと、つらいことで。
でも。
でも、その話を聞いて、私は思った。
─────
「……とりま俺ぁこれを校長に報告してくる。相澤、お前は休んでな」
「俺も……」
「いんだよ、A組も香山先パ……ミッドナイトが見てくれてる。もう授業も終わってんだろ。エリちゃん迎えに来る生徒と合流して放課後の訓練に参加しやがれ。テメーは力取り戻すのが先決だろ」
「………すまん。気を遣わせる」
「気にすんなァ。俺たち
マイクおじさんはショータお兄さんに気を遣って、ネズミ先生に報告にいってしまって。
ロビーに一人残されたショータお兄さんは……深く深く、ため息をついた。
顔を伏せて、とてもつらそうな顔をしていて。
……じっとしてられなかった。
「……ショータお兄さん!」
「っ!? ……エリちゃん……そうか、気が回ってなかった……」
ロビーに飛び出して行って、ショータお兄さんの胸に飛び込む。
私のその行動で、お兄さんもきっとわかったと思う。さっきの話を、私が聞いてしまっていたこと。
悪い子でごめんなさい。
でも、放っておけないの。
ショータお兄さんがつらそうな顔をしていると、私の胸がきゅーってするの。
「お兄さん……さっきの話……全部はよくわからなかったけれど。お友達が、変わっちゃったの……?」
「エリちゃん……いいんだ、君は気にしなくていい話だ」
「気にする!!」
「っ」
「お兄さんがつらそうなの、私やだ! 私、ショータお兄さんには笑っててほしい!」
「……エリちゃん、駄々こねないで……」
「や!」
きゅーっとする胸から、我慢できないで涙が零れちゃう。
ショータお兄さんが悲しいと、私も悲しいの。
私は貴方を助けたいの。
だから、私はぶんぶんと頭を振って、ソファに座ったショータお兄さんの横に立って……そのままぎゅうっ、とショータお兄さんの頭を両手で抱えた。
イグジストお姉さんが言ってた。
男の人は、女の人に頭を抱きしめられると、悩みなんて吹き飛んじゃうって。
それで、ショータお兄さんの悩みも吹き飛ばしてあげたくて。
────私も、女だから。
「私、もっと練習頑張るから! 力を使いこなせるようになるから……! だから、ショータお兄さんが辛いときは言って! 私、ショータお兄さんが辛い顔してるのいやなの!」
「……エリちゃん……俺は……」
抱きしめるショータお兄さんの頭に、より強く力を籠めて……私の想いを全て伝える。
ショータお兄さんはその言葉で、私の腕の力に抵抗せずに静かに涙を零し始めた。
その涙がなぜなのか、私にはわからない。悲しいから泣いてしまっているのか、それとも……私に心配されるのが嫌なのか。
でも、もう私は誓った。
私の力を肯定してくれたショータお兄さんのあの時の言葉で、私は救われたから。
私も貴方を救ってあげたい。
……絶対に、私は貴方の隣にいるから。
【side 幾野】
なり替わり授業も終わり、放課後のHRも飯田委員長がしっかり務めて、そして放課後。
俺はなぜか爆豪ちゃんと一緒に、エリちゃんを訓練に誘うために職員寮にやってきていた。
「ちわーっす。エリちゃんいますかー……って、相澤先生も。戻ってきてたんすね」
「ウッス」
「イグジストお姉さん、バクゴーお兄ちゃん。こんにちは!」
「幾野に爆豪か。珍しい組み合わせだな……すまんな、急な早退で迷惑かけた。授業はどうなった?」
「ミッドナイト先生の監督できっちりやりましたよ、問題も特になく。放課後訓練にエリちゃん呼びに来ましたけど……えっと、大丈夫っすか先生」
「ああ、大丈夫だ。俺のほうでエリちゃんは連れていくからお前らは先に向かっててくれ」
「了解っす。つっても俺らも開発室経由していくんでちょっと遅れますけどね。爆豪ちゃんがコス改造希望で」
「後で申請は出しとくッス。……よォジャリガキ、ちったァ成長したか?」
「む! ぶんぶん頑張る!」
「ハッ、今日は随分イキがいいじゃねェか」
恒例の放課後訓練だが、A組B組合同訓練の後あたりから、エリちゃんも参加するようになったのだ。
とはいえ肉体的な鍛錬は全然していない。体育館の隅の方で、自分の個性の使い方を覚えるためのトレーニングをやるようになっていた。
俺も相澤先生もそこで訓練してるから何かあっても止められるし、職員寮から全くでないのも人との交流が得られなくて健全な成長に悪いし……と言う事でA組の誰かや相澤先生がそれぞれ監督をしつつ、最近はトカゲの切れた尻尾を再生する訓練をしていた。
たまにそこにミリオ兄さん含む三年生BIG3が混ざったり、物間や心操が来たりして面倒を見ている。
みんなのアイドルエリちゃんだ。子供が見てるからほんわかするし、訓練に真剣にもなるし。癒し効果出ている。
けどなんか今日はエリちゃんがすごいやる気だぞ。これは更なる成長が期待できますね。
相澤先生の様子も……今見る限りでは落ち着いてるようかな。まぁ生徒には弱みは見せないだろうけど。目元がちょっと赤いのは見なかったことにしておきます。
後で何があったか聞いてみてもいいもんだろうか。や、でも教えちゃくれないか。必要な事だったら先生から教えてくれるだろうしな。
さて、そんなわけでエリちゃんを迎えに来てて、爆豪ちゃんを開発室に紹介して体育館に……とも思ったんだが、相澤先生の方で監督してくれるんならそれも不要になった。
んじゃ俺も開発室にちょっとお邪魔していきますかね。爆豪ちゃんと明ちゃんメリッサさんの噛み合いが不安だし。
「そんじゃ俺らはお先に。エリちゃん、また体育館でね」
「うん!」
エリちゃんと相澤先生に挨拶して、俺は爆豪ちゃんを連れて開発室に向かった。
「しっかし爆豪ちゃんのコスチューム改造ねぇ。どんなのにすんの?」
「冬休みの集中インターンで爆破の圧縮のコツ掴んで……逆に余剰火力が出るようになっちまった。それ有効に使いまわしつつオーバーフロウの発動も促せるようなモンにするつもりだ。案も出来てる」
「流石の分析力」
チンピラ歩きする爆豪ちゃんと並んで廊下を歩きつつ、どんな改造案にするのかを聞いてみた。
今日の授業が終わったころに声かけられてね。明ちゃん紹介してくれって言うから一緒してるわけです。
爆豪ちゃんだからコスチューム改造案もなんかすごい天才マンでバッチリ作り上げてそう。メリッサさんもいるだろうから今日中には開発終わりそうだな。
さて開発室についた。
「爆豪ちゃんは離れててね」
「ケッ。乳繰り合ってろ色ボケ共が」
「理解ある距離感助かる。もしもーし。幾野でーす」
声をかけて扉をノックノック。
爆発した。
で、いつもの如く爆発の反動で俺の胸に飛び込んでくる明ちゃん。
もちろん俺もいつも通り抱きしめるのだが……お付き合いするようになってからちょっとだけやることが増えた。
爆発の煙でお互いの姿が周りから隠れてる間に、明ちゃんからキスされるようになったのだ。
キス大好きだからな明ちゃん。俺もちゅっちゅと明ちゃんの唇を味わって、数秒の逢瀬を楽しむ。
「……ぷはっ! こんにちはセンさん!! 会えてうれしいです!!」
「今日も可愛いね明ちゃん。今日は開発の手伝いもだけど……ちょっとね、ダチがコスチューム改造希望で。見てくれる?」
「ムム! 了解です!! どうぞ中へ!!」
「どうなってんだコイツのまわりの風紀はよォ……」
そのまま明ちゃんと腕を組みつつ開発室へ入り、それを見てカラメルを口から吐き出しながら爆豪ちゃんが続いた。
中にはいつものメンバー。メリッサさんとパワーローダー先生だ。
「こんにちは、幾野くん。今日は爆豪くんも一緒ね!」
「よォ。爆豪がいるってのは珍しいね。ケケ……お前も足りないもん埋めに来たか」
「世話ンなる。俺のコスチュームの改造頼みてェ。案はこれだ」
「「「……おお!?」」」
爆豪ちゃんがテーブルの上に無造作に投げる改造案を明ちゃんもメリッサさんもパワーローダー先生も食い入るように確認した。
俺もそれを見るが……いや、寸法とか仕組みまでばっちり書き込んでやがんな?
最近は俺も明ちゃんの影響でこういう設計図にある程度理解が深まってるとはいえ、自分でここまでのモン作れるのはやっぱり爆豪ちゃん天才マンだわ。
「……汗腺から出るニトロの量がかなり増えたのね。圧縮も出来るようになって……それをコスチュームを通して背部機構にチャージ。面制圧重装機動ストレイフパンツァー……すごいわ!? よくこれほどのモノの設計図書けたわね爆豪くん!?」
「スーツ自体に更なる発汗向上機能を増設。体力消耗も激しくなるがそこは自前のスタミナと体力調整でカバーか。同時に全身の汗腺を拡大させるようなアンチラメラ構造を組み込むと。面白過ぎる発想だなこりゃ。ケケ……燃えてくるなこんなもん見せられると」
「フム、素材にはコンデニウムを利用……圧縮技術は
「好き……? NTRか……?」
「黙れボケ興味ねぇわ発明女なんざ」
「取り消せよ今の言葉……!!」
「黙れ死ね」
その設計図を見て三人とも興奮のるつぼに叩き込まれてしまった。
まぁ俺がちらりと見てもとんでもない複雑な機構を埋め込んでるとわかるからな。ヤベーよなんだこれ。どんな頭したら思いつくんだよこの機構。
天才マンがよ。明ちゃんは渡さねぇぞこの野郎! ハーレム野郎だけど俺の女には独占欲強いからな俺!!
「いいわね……ここの機構はもっとこうした方がスムーズにニトロ注入ができるんじゃない!? コスチューム全体にこのパイプを動作を邪魔しないように通してみない!?」
「……あー……だな。そこは任せらァ。アンタの腕は信頼してる」
「さらに背中から放つクラスターの数を倍にしてみませんか!? 雄英も一撃で吹き飛ばす火力にしましょうフフフフフ!!」
「明らかに過剰だろォが発明女ァ!! 一撃ブッパしたら倒れるわ俺が! 砲台の数は案の通りにしろォ!」
「一応火力武装にセーフティは組み込ませてもらうぞ爆豪。君の火力は個性由来だから違法にはならないけど普段からマックスで放つようだと攻撃のたびに汗の量を調整しなけりゃいけなくなるしね。段階的に調整できるロックをつけておこう」
「ッス。任せます」
「なんか俺凄い疎外感ある」
爆豪ちゃんが天才マンすぎてそれぞれが発案する改善内容に適切なコメントを返しながらも、3人の手で山のように設計図が書き上げられ積み重なっていく。
なんか……なんかすごいもん作られてない??
実際このコスチュームが完成したら爆豪ちゃんの火力が向上して攻撃範囲も調整出来てスロースターターも改善されてオーバーフロウまで再現できるようになる可能性あるんだろ??
緑谷勝てる? 大丈夫? 50%でも勝負になるかコレ???
轟もなんか新しい技覚えてそうだしよぉ……何だ最近のダチのインフレ具合は。置いてかれるぞ俺。
ンモー! 俺もなんかいい感じに進化したいわねー!!
「……これは徹夜ね。スゴいものが出来そうだわ……!!」
「サポート科BIG3の名に懸けて!! 明日には完成させて見せますよフフフフフ!! お楽しみにしていてくださいね爆豪くん!!」
「ダイブセンサーの時は三日完徹だったなァ」
「ア? なら俺の装備も5日くらい寝ずに作れや」
「いやそこは張り合う所じゃないでしょ爆豪ちゃん」
開発欲を刺激されまくった3人はこれから全力で開発に臨むようだ。
明日には出来るって。完成したらまた俺が試し打ちに使われるのね。俺の体フリー素材みたいなもんだから仕方ないね。
完成を楽しみにしておこうか。ダチが強くなるんだからいい事よ。
その後は開発に取り掛かった3人に挨拶だけして開発室を後にして、爆豪ちゃんと共に俺達も放課後訓練に合流した。
なんかエリちゃんの個性特訓の調子がめっちゃ良くて、昨日までできてなかったトカゲの尻尾の再生を一発で成功させてた。
みんな急にどしたん?? 成長期か???