【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!!   作:そとみち

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14 頼むから俺を本気で怒らせるな

 

 

 

 俺は広場で戦う相澤先生の元に駆け寄っていく。

 ついさっき果たした野暮用で少し時間はたったが、未だ相澤先生は健在だ。

 

「相澤先生!! 加勢します!」

「幾野か!?」

「なに? 生徒が残ってた? 黒霧のヤツ……なに漏らしてんだよ。まぁいい……逃げられたのに健気に向かってきちゃって……女子か、オールマイトの人質にはできるかな?」

 

 俺の声に反応する相澤先生と手マン。

 手マンの方は俺にねっとりした目を向けてくるが変態に用はない。俺を女子生徒だと思い込んでる異常者め。

 今からお前は俺にボコられるんだよ。

 

「先生!! 俺の方から()()()には話しましたっ! あと()()()が個性使ってた!」

「は?」

「? ……っ、なるほど、上出来だ!」

 

 俺は先生に伝えるべき情報を敵側にわからないように言葉を選んで伝える。

 どうやら相澤先生にはしっかり伝わったらしい。

 俺が伝えた意図は二つ。

 

 一つはつい先ほど俺がやったこと。

 USJを一旦出て、少し離れたところで通話を試みたのだ。

 すると見事に圏外ではなくなり、スマホで電話が出来るようになったのだ。やはりこの施設内に電波を妨害する個性の持ち主がいたという事だろう。

 速攻で職員室に電話をかけて校長に簡潔に事情を説明した。オールマイトが既に向かってくれているとのこと。

 君も逃げろと言われたが、みんなを残して逃げられるもんかよ。YESと答えてから舞い戻ってきた。

 

 そしてもう一つは、通話してる最中に全力ダッシュする飯田を見つけたこと。

 向こうが全力疾走し過ぎて会話はできなかったが、スマホを振ってOKサインを見せることは出来たから、飯田にも意図は伝わっただろう。

 その上で飯田には走れと全力で叫んでやった。応援を呼ぶにも俺の報告では簡潔過ぎてもしかすれば初動が遅れるかもしれないし、飯田が伝えてくれればより迅速な対応になることは疑いようがない。

 二重に応援を呼べている。すぐに学園の先生たち、強力なヒーローが応援に駆けつけてくれるはずだ。

 

 だから。

 あとは、俺が一番得意とする時間稼ぎをするだけだ。

 

「幾野! お前は───」

「──17秒。動き回るからわかりづらいけど髪が下がる瞬間が──」

「先生から手を離せボケッ!!!」

 

 相澤先生が飛び込んできた手マンに肘でカウンターを入れた瞬間、俺に下がれとでも言おうとしたのだろう。

 でも俺はもう決めている。俺はどうやっても傷つかないのだから、少しでも加勢する。

 相澤先生に掴みかかろうとする手マンの顔面に、俺は右ヒザを叩き込んでやった。

 

 の、だが。

 

「へぇ……いい動きをするね。でもそれが君の脚を奪う原因になるんだ」

「くっ……!? だぁラッ!!」

「生徒はやらせんっ!!」

 

 手マンの掌でガードされたのだ。右ひざが手に掴まれるような形になっている。

 相澤先生がさらに拳で追撃を繰り出す。

 当然俺も拳で追撃を繰り出す。死ねボケ!

 

「……は? ガッ────っ!!」

「あれ? 普通に入った」

「っ…!」

 

 俺の拳と相澤先生の拳が共に手マンに炸裂した。

 何だ? 急に余裕を出したから何だと思ったが、もしかしてコイツ弱いのか?

 

「何でだよ……!? クソ、イレイザーヘッドに消されたか……!?」

「あ、なるほどねその発言で理解したわ手のひらで発動タイプの個性ね? 射程短っ。雑魚個性の見本じゃんウケるわ。うちのクラスにお前の上位互換いるんすけど!」

「てめぇ……!」

「幾野、油断するな。このまま畳みかけるぞ、厳しくなったら下がれ」

 

 別のヴィランが横やりを入れてきたのを相澤先生がいなしつつ、俺の事も今は戦線に混ぜて問題ないと判断したのか、継続戦闘を許してくれた。

 まぁ個性使えば俺は怪我はしないからな。不意打ちだろうが何だろうが俺に傷をつけられない。

 俺の方に向かってきた雑魚ヴィランの顎を的確に蹴りで打ち抜いて意識を飛ばしつつ、俺は改めて手マンに注意を払う。

 コイツ、掌に相当自信がある様だった。相澤先生の瞬きの間も通せるような技術もある。

 さっき俺の膝を掴んだときは油断していたが、こいつが相澤先生に飛びこんだらヤバイ。

 なんなら他のザコを相澤先生に任せて俺は手マンをボコせば───────

 

「……やるなぁ。ところでヒーロー────本命は俺じゃない」

 

 その言葉の、次の瞬間。

 相澤先生の体が宙に吹き飛んだ。

 

「ぐふっ……!!!」

「先生ッ!?」

「対平和の象徴 改人『脳無』。個性を消せるなんて素敵な能力だけどなんてことはないね。圧倒的な力の前ではただの無個性だもの」

 

 いきなり現れた、全身が黒くて脳味噌が剥き出しになったヴィラン。

 異形型、なのか? 目にもとまらぬ速さで相澤先生を拳で殴り抜けやがった。

 ふざ、け、やがって。

 

「ああ……じゃあ次はそっちの女の子かな。君の個性はどんなものかな?」

 

 俺はその脳無とやらに飛び込んでいった。

 俺が突撃してきたことを察したらしく脳無の気持ち悪い顔がこちらを向く。

 直視したくないタイプだ、キモい顔晒しやがって。

 俺は全力で顔に向けて蹴りを放つ─────が。

 

「欠片も効いてねぇ……!!」

「────────」

 

 何もしゃべることなく、俺の命を刈り取るために脳無が腕を振るう。

 一瞬後に血まみれの肉片になることが予感される速度。

 それを俺は腹に受けて─────個性で潜り抜けた。

 

「……は? なんだそれ、効いてないのか?」

「こい、つっ……!!」

 

 その攻撃を潜り抜けて、俺は理解せざるを得なかった。

 こいつはヤバい。素の身体能力だけで生徒を全員殺せるほどの暴力の塊だ。

 少しでも俺が気を引きつけないと。

 オールマイトが、先生たちが来るまでの時間を稼がないと。

 

「オラッ!! どうした黒光り野郎! 下品な黒光りしやがって凌辱系同人誌からエントリーしたのか竿役ゥ! 俺は欠片もダメージ受けてねぇぞそんなもんかお前!?」

「─────」

「うわ……マジでどうなってんだよお前、全部すり抜けるじゃん。はー……チート個性かよマジやってらんねぇ……」

 

 口で煽りながら脳無の怒濤の攻撃をすり抜け続ける。

 時々こちらからも手を出すのだが、まったく効いている感じがない。

 剥き出しの脳味噌でも狙うか? いや、でもそれで殺しちまったら嫌だ。

 とにかく時間を稼げ。相澤先生はさっきのパンチで気を失っているし、俺がここで踏ん張らなきゃマジでヤバい。早く来てくれオールマイト!

 

「───死柄木弔」

「黒霧。13号はやったのか」

「13号は行動不能には出来たものの、生徒一名に逃げられました」

「は? はー……はぁー………黒霧お前……お前がワープゲートじゃなかったら粉々にしてたよ……」

 

 俺が脳無と大立ち回りを演じている間に、黒モヤ野郎が戻ってきて手マン、死柄木弔ってやつと話しだした。

 状況が悪くなる一方じゃねぇか! 先生たちはまだか!?

 

「流石に何十人ものプロ相手じゃかなわない。ゲームオーバーだ。あーあ……今回はゲームオーバーだ。帰ろっか」

 

 帰る。

 そうか、ようやく諦めてくれたか手マン!

 マジで判断が遅いよビンタされろこんちくしょうが。そもそもヒーローの集う学校にいきなり奇襲とかどんだけ考え無しなんだよお前。

 この俺の目の前にいる脳無とやらもちゃんと持ち帰ってくれるんだろうなマジで! 早く帰れや!

 

 ……なんて楽観的に考えることは一切できない。

 なにせこいつらはヴィランだ。帰り際にまだ倒れている相澤先生を狙うことだって考えられる。

 出来るか? 俺一人でこの脳無と、手マン野郎と、黒霧を止めることが。

 応援は……応援はまだか……!

 

「けどもその前に、平和の象徴としての矜持を───」

 

 その瞬間を俺は見た。

 死柄木の目が、水難ゾーンの方を向いたことを。

 そして、その視線の先に緑谷と、梅雨ちゃんと、峰田が息をひそめていたのを。

 見た。

 

「───へし折って────」

 

 

 やらせるか。

 

 

「───────!?」

「っ何だと!?」

「あ……?」

 

 俺は咄嗟に脳無の両脚に飛び込んで潜り込む。

 そして、()()()()()

 脳無の両脚を()()()()()()

 

 その光景を見ていた黒霧が叫び、その声で手マンの動きが一瞬止まった。

 十分な隙だ。俺はぶっ倒れる脳無を尻目に、()()()()を無理矢理抑えつけて立ち上がり、手マンと黒霧の方に飛び込み更なる追撃を仕掛ける。

 

 ───『奥の手』だ。

 俺が何か物に潜り込んでいるときに個性を解除すると、()()()()()()()()()()()()()

 物体の硬さもエネルギー保存則も関係なく、俺がいた場所が無になるのだ。それで脳無の両脚を千切り取った。

 

 ……()()()()()()()()

 でも、今はこれしかない。

 13号先生が言っていた、『簡単に人を殺せる力』。その最たるものだ。加減など利かない。

 

 正当防衛だ。

 今、間違いなくこいつは俺の親友と友人たちを殺そうとした。

 このクソヴィランが。

 腕や足の一本や二本、千切られても文句は言わねぇよな。

 

「馬鹿な!? ショック吸収を持つ脳無の脚を千切るなど……!?」

「お前……お前! 何なんだよお前は!?」

「お前らこそふざけたこと言ってんじゃねぇぞヴィランッ!!」

 

 勢いのままに飛び込んでいったが、黒霧の開くゲートが間一髪で間に合ってしまい、距離を取られる。

 俺の腕を振るった攻撃は空振りし、その代わりに峰田たちの傍に手マンがワープしたのが見えた。

 ヤバイ、間に合わない。相澤先生はまだ気を失っている。

 

「峰田ァ!! 手に気をつけろォ!!」

「っ梅雨ちゃん!!」

「ケロ……!」

 

 咄嗟に叫ぶ。

 叫びで察した峰田がもぎもぎを手マンの掌に挟み込んだ。

 ナイスだ。それでアイツの個性は使えなくなるはず……だったのだが。

 もぎもぎがまるで塵になるかのように消えていった。どうなってんだ。あれがアイツの個性だってのか。

 クソ、これじゃ梅雨ちゃんが───────!!

 

 

「────────もう大丈夫」

 

 

 その瞬間。

 俺たちの悪夢の終わりを告げる声が。

 ヴィランたちの悪夢の始まりを告げる鐘の音が。

 USJに鳴り響いた。

 

 

「────────私が来た」

 

 

 ナンバーワンヒーロー、オールマイトがやってきたのだ。

 

 


 

 

 そこからは早かった。

 

 オールマイトが凄まじい速度で峰田たちを救出。

 続いて、俺が千切った脚を超再生で回復させた、一番危険度の高い脳無の相手はオールマイトが担当。

 俺も再び手マンと黒霧に向かおうとしたところで、飯田が引き連れてきた教師陣が集結。

 木っ端ヴィランも片っ端からぶっ倒してって一転攻勢となったあたりで、黒霧が手マンを連れてワープで逃走。

 残った脳無をオールマイトが仕留めて、この事件は一先ずの落ち着きを見せた。

 

「……イクノ、お前……使()()()()()()のか……? 大丈夫なのかよぉ……!」

「峰田……。……いや、大丈夫だ。……ありがとな」

「御礼なんて言うんじゃねぇよぉ……! オイラ、お前がヤバイってわかってても飛び出せなかったんだよぉぉ……!!」

 

 神経が削り取られるような時間を終えてへたり込んでいる俺に峰田が泣きながら謝ってきたが、俺はコイツの気持ちを知っている。

 わかってるよ。お前の事なんて。

 決して、敵にビビって出てこなかったんじゃないんだって。

 

「……怪我した緑谷と梅雨ちゃんもいた。あそこで峰田が飛び込んできちまったら、二人にも危険が及ぶって考えてたんだろ? 実際正しかったさ。俺やお前の個性は守るのに向いてない……あそこでお前たちが出てきたらもっとひどいことになってた」

「でも、でもよぉ……!」

「その上で、お前は何かあれば咄嗟に動けるようにもぎもぎを準備してくれてたんだ。じゃないと手マンの奇襲を防げてねぇし……それがあったから、オールマイトが間に合った。お前はよくやったよ、峰田」

「それでもイクノ! ()()()()()()()が……!!」

「大丈夫だ」

 

 ぽん、と峰田の頭に手を乗せる。

 俺が座っててこいつが立ってるのに身長差の都合で問題なく頭に手が伸ばせるの面白いな。

 ……なんて考える余裕も出てきたんだから、随分と俺も成長したもんだ。

 

「……誰かを助けるためなら、大丈夫だってわかったんだ。俺にとっても大きな成長だぜ。だから……過去の事はもう少し蓋をしておこう。俺は、大丈夫だからさ」

「お前ってやつはよぉ……!!」

 

 ぼろぼろと涙を零し始める峰田に、俺は苦笑を零した。

 本当に、お前はいいやつだよ。

 そんな俺たちを気遣うようにクラスメイト達が心配した顔で駆けつけてくるのを、俺は疲労の残る笑顔で迎えるのだった。

 





※原作との相違点1
相澤先生が脳無の腹パンで気絶。
ただし崩壊は食らってないので腕は無事。
幾野くんがハードモードになりました。
相澤先生は幾野の個性と実力を把握しているので、ここで幾野に戦うなというよりは手伝ってもらい早急に制圧して他の生徒を助けに行く方が合理的だと判断しました。幾野が無敵の個性だからこそ。

相違点2
幾野が学校に電話できたことで教師たちの初動が加速。
オールマイトにほぼ続く形で増援に来られました。
オールマイトも時間を全部使わなくて済んだし緑谷くんも両脚ベキらなくて済みました。
上鳴くんも無事救出。ウェイにはなってた。


次から話のテンション元に戻るのでご安心ください。
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