【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!!   作:そとみち

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142 流石に公安委員長のおっぱいはストライクゾーン外かな……

 

 3月になった。

 期末までもう少し。俺たちA組も気づけばもう間もなく1年を迎え……進級まで秒読みとなり、春の気配を感じ始める今日この頃。

 俺はいつもと変わりない、平和な日常を過ごしていた────そう、過ごして()()

 

 それが過去形になったのは、多分この1枚の便せんを受け取ってからだ。

 この便せんが全ての始まりだった……と、思う。

 

「新しいチームアップミッションすか」

「ああ。……ただ、今回は俺もついていく」

「ん? 相澤先……イレイザーヘッドも同行ですか。珍しいですね」

 

 放課後、別室に呼び出されて相澤先生から受け取ったいつものTUMと書かれた封筒。

 チームアップの要請だ。制度が始まってから俺もそれなりに呼ばれているので全くもって珍しくないその手紙に、しかし何故か相澤先生の雰囲気がちょっと固い。

 ふむ。結構デカ目の依頼かな。

 ここ最近はアイドルショーに呼ばれたりするくらいでチームアップの頻度も少なめだったしな。その分インターンに出向しまくってたのだが……まぁ俺の力を必要とする依頼となれば大きなヤマもあるだろう。

 気を引き締め直して、俺は封筒を開く。

 

 中にある手紙を読めば……依頼は、公安から。

 

『敵拠点調査のご依頼』

 

 部外秘の記載のある用紙には、そんなミッションが書かれていた。

 

 


 

 

 翌日。

 俺は相澤先生と共に、普段以上に念入りに変装をして、相澤先生にも変装をさせて……周囲に気付かれぬように指定された集合場所に集まっていた。

 集まった場所はとある町の公民館の一室だ。

 なんでヒーローがこんなところに? と思われるかもしれないが……ここは公安の隠れた会合の場所らしい。

 なにせ5キロ以上離れた路地裏から地下を通って招集されている。よほどの密談が行われるようなところのようだ。

 

「めっちゃくちゃセキュリティ凄いすね。さっきからウォールハックで見てますが……そこかしこに監視カメラありますよ」

「あまり余計なことは喋るなよ」

「マスク付けてますしイレイザーにだけしか聞こえてないから大丈夫っす」

 

 お互いに変装の鉄板としてマスクをつけており、口元の動きは分からない。

 ただ余りにも閉塞感のある道を歩いてたため俺が沈黙に我慢できずに声を飛ばしただけだ。相澤先生もなんか雰囲気暗いし。いつでもニコニコ笑顔ですよ笑顔。

 俺一人なら適当に地下に潜ってから行けたんだけどなぁ。まぁこの辺はチームアップだししょうがない。

 さて公安に呼び出されたわけだけど、詳細な情報は会議室で説明があるらしい。

 他にも呼ばれてるヒーローいるのかな……などと考えながら、地下を通り抜け指定の部屋にお邪魔した。

 

 そこには。

 

「ちわー……おお! 久しぶりっすね、()()!」

「来たかイグジスト。年末企画ぶりだ……元気そうだな。イレイザーも久しく……そちらはあまり元気そうではないな」

「生徒が公安に呼び出されて気分がいい教師がいてたまるか」

「そう言うな。どうしても彼の力が必要だった……確実な勝利の為にどうしても、な」

 

 サーナイトアイやんけ!

 久しぶりですわ。純白のふんどしがまだ脳裏によぎるけど流石に部屋の空気を呼んで噴き出さなかった俺を褒めてもろて。

 で、あと前のビルボードチャートの時に挨拶してた公安の委員長のおばさまもいらっしゃる。そちらにも丁寧にごあいさつ。先日は大変ご迷惑をおかけしました。

 ……ふむ? しかし俺とサーを組み合わせてのチームアップって事か? なんで?

 言っちゃなんだけど個性の組み合わせがクソ悪いぞ? 俺がここにいる以上、サーの未来視の精度が下がっちまうわけで。うーん?

 

「よく来てくれました、イグジスト……まず貴方を巻き込むことになったことを謝らせて頂戴。まだ仮免である学生の貴方を……それでも、どうしても貴方の力が必要だったの」

「ん。全然気にしないでいいっすよ会長! どうしても気になるなら今度デートしてくれりゃチャラってことでどうです?」

「あら、素敵な誘い文句。オバさん照れちゃうわ」

「幾野」

「くっ、はは……流石のユーモアだ。やはりわかっているな君は」

 

 とりま空気が固かったんで会長相手にジャブをかましてみた。

 したら割と乗ってくるって言うね! うーんタヌキだなこの人。笑ってるけど腹の中では何考えてるかわからん感じだ。

 別に嫌いとかじゃないけど! あんまお近づきになりたくないタイプだな! 公安の闇を感じます!

 もっと何も考えずのんびり毎日を過ごしたいんですよ俺は。その辺ホークスのシンパです。

 楽しく毎日過ごしたいし、みんなもそうあってほしいわマジで。

 

 さて、しかし今日はチームアップミッションで呼ばれているのだ。

 ヒーローとしてミッションをしっかりとこなさないとね。

 俺は何すりゃいいんでしょ。

 

「今回のミッションですが……まず、今日聞いた話、行った調査は秘中の秘。誰にも漏らさぬようお願いします」

「うす。まぁどんなミッションでも基本的には守秘義務在りますし。箝口令ってことであれば了解です」

「重さがこれまでのミッションとも一線を画すものと思ってください。……ではまずこちらの資料に目を通して。イレイザーヘッドもご確認を」

「ん。分厚い資料」

「骨が折れるな……」

 

 会長から渡された紙の束。読み終わったらシュレッダーだって。徹底してんね。

 さて、そんじゃ速読スキルを発揮して読み込みますか。ぺらりとね。

 

 ……ぺらり。

 

 

 ─────ぺらり。

 

 

 

 

 

 

 ────────マジ?

 

 

「解放軍をヴィラン連合が乗っ取り、数が7万……? ……悪い冗談すか?」

「事実よ。ホークスが異能解放軍にスパイとして忍び込んでいる。そこからの情報と……イレイザーヘッドが黒霧から引き出した蛇腔総合病院という相手の本拠地の名前。その事前調査が終わり……本格的な敵拠点の調査のため、貴方を呼んだというわけよ」

「……そうか。学生のインターンを公安が奨励していたのはそういうことか……クソ」

 

 内容に震えてしまう。

 ヴィラン連合が例の泥花市の事件の首謀者で、実はやられてなどおらず、むしろ解放軍っていう組織を乗っ取っていたと。

 そして今は潜伏して力を溜めており、現在表に出ているヒーローの中にも向こうに与しているスパイがいると。

 で、ホークスが二重スパイしていて情報を引き出しつつ、その組織……【超常解放戦線】の決起を止めるために公安が調査していたらしい。

 続く相澤先生の怒りの色の籠った呟きに俺も一瞬で察することができた。

 俺たち学生がインターンで実務経験を積んでたのは……この作戦に備えるためだ。

 プロヒーローに万が一があった時、それを支援できるようにと。

 ……学徒動員じゃねぇんだからよ。

 

「私は未来視の個性を重要視され、以前より公安と組んで調査の協力を行っていた。君の力を使うにせよある程度の確証を得てからでなければ意味がない。以前の八斎會の時のようにな……そして蛇腔総合病院に潜入させた警察の情報から、病院内に関係者も用途を知らない立ち入り禁止の空間がある事を聞き取り、確信を得た。イグジスト、君には病院の詳細の調査と、もう一か所……ホークスが得た情報である定例会議が開かれる群訝山荘。まずここを詳細に調査してもらいたい。他にもいくつか敵拠点があるが、そこは既に他の感知系ヒーローに任せている」

「……もっと早く俺を呼べって話ですよ。調査が早ければ早いほどクソヴィラン共が集まる前に潰せるでしょうに」

「貴方は目立つわ、学生ヒーローの中では特にね。不確かな情報で何度も呼ぶよりも、一回のミッション要請で全てを調べてもらった方が敵に感づかれない……という判断よ。すべての責任は私にあります」

「総合病院と山荘。この2か所が主な拠点のため、多数のヒーローで一斉に襲撃することで被害を最小に抑えて制圧……か。流れは分かったが……ハラワタの熱は冷めないな」

 

 かなり冷静になれないので、一つ深呼吸。

 サーの言うことも、会長さんの言うことも分かるさ。こうして会長がわざわざ顔を出してくれてるんだからそりゃあもう俺という鬼札(ジョーカー)を有効に使うために色々手を回した結果の今日だってことはわかる。それを分からないほどバカじゃないさ。

 でも気持ちは相澤先生と同じです。もっといい手はなかったのかと思っちまう。

 ……いや、ヴィラン連合が捕まってないのに呑気に日々を過ごしてたんだから俺は何も言えないけどさ。

 

「まぁいいや。とりあえず資料は全部読んで覚えました。とっとと仕事に入りましょう」

「あら……早いわね。あれだけの資料だったのに」

「会長。彼は速読を覚えているし、こういう事務仕事では極めて優秀だ。嘘は言っていない」

「まぁ。公安に欲しいくらいの人材ね」

「ヤですよ俺は、お茶の間を笑かしてみんなの隣にいるヒーローになるんですからね。仕事は手伝うけどヘッドハンティングはNGでお願いしますよ」

「分かっているわ。君を……君たち学生にまで万が一の可能性を背負わせてしまっていることは慚愧の念に堪えない。それでも平和を零すわけにはいかないの……力を貸してちょうだい」

 

 ばさりと資料を机に投げ出して、もんにょりとした表情で話す俺に、会長が頭を下げて来た。

 んもー。こういうの俺苦手なの! 悪いと思ってるなら頭下げなくていいから! 会長さんや公安にも事情がある事もわかってるから!

 だからとっとと調査して! とっとと作戦練って! とっとと解放戦線とやらをぶっ潰して平和を取り戻しましょうね!!

 

「丸裸にしてやりますよ。何ならそのまま突っ込んだっていい……って言ったら、サーが止めますよね。あん時と同じで」

「ああ。君が全ての責任を負うことはない。君の精密調査を元に、その後は私の『予知』を使う。確実な勝利の未来を視てからの作戦開始だ。もし最悪の未来を視た時には────()()()()()()。100%の成功率までもっていきたい」

「っ。……なるほど、そういう使い方がありましたか。ナイスアイディア。そんじゃ俺はまた呼び出される可能性もあるってことですね」

「なに、その場合は私が未来を視た作戦参加するヒーローを君のほうに向かわせるさ。エンデヴァーを筆頭に、ビルボードチャート上位のメンバーはこの作戦について君の調査が終わった時点で内容を周知する。誰とも交流を深めている君ならば疑われることもないだろう。君はこの調査が終われば普段通りの学生生活を過ごしているだけでいい。インターン先や授業などでそれが現れればそういうことだ」

「相変らず準備いいスね。流れは了解……そんじゃ、俺は今日の調査が終わったら箝口令で普通に日々を過ごして、赤紙が届くのを待ってればいいってわけですね。で、未来視の成功率を上げるためにも俺は襲撃部隊には参加しないと」

「理解が速くて助かるわ。……イレイザーヘッド、貴方の経緯も聞いています。貴方には蛇腔総合病院への襲撃作戦に加わってもらう予定なので、そのつもりで」

「……了解だ。プレゼントマイクもそっちに呼んでくれ。必ず力になる……罪は償わせる」

 

 サーが俺が調査した後の見込みも説明してくれた。

 なるほどね。その病院と山荘の配置とかを詳細に確認した後は未来視で未来を予知。最悪の未来が見えてしまったら俺を未来視にあえて映すことで100%の未来を破棄し、作戦を変えて再び未来視……とやることで確実な未来を視る。

 その結果を元に襲撃作戦をするってことは、襲撃に俺は混ざれないってことだ。俺の奇襲力が減るのは痛いだろうが……それでも未来視で勝利が見えていれば関係ない。そもそも調査した時点で後はいくらでもプロヒーローの個性のかみ合わせで王手が打てるだろう。

 悪くない作戦だ。そこはサーを信頼して任せることとした。

 

 で、相澤先生が今零した事情については……俺もこの資料を読んだので理解している。

 相澤先生の亡くなられた旧友。マイク先生とも同級生で、以前に写真を見せてもらった……白雲朧の遺体が改造されて黒霧にされていたという事実。

 年明けに急に早退してたのはこれだったのだろう。先生たちとしたらそりゃブチキレてもおかしくない所業だ。今は若返った身体だが……既に体力はプロヒーロー・イレイザーヘッドだったころのそれまで取り戻している。1月からそっち、死ぬほど鍛錬してたからな。マイク先生も。

 不安はない。先生の個性も間違いなく輝くだろう。脳無相手にも通じるしなこの人の目は。効かないのは俺だけよ。

 

 ってかあの頃から情報分かってたのかよ遅いよ……とはまぁ言わないけど。バレないように調査してたんだろうし。

 俺という鬼札が切られたことで調査も作戦立案も一気に進むだろう。俺も死ぬ気で調査しねぇとな。冗談じゃなく社会全体の平和が掛かっている。

 

「では早速移動してちょうだい。イレイザーヘッド、サーナイトアイ。彼に付き添いをお願いします」

「そこなんすけど。前のデカい調査の時はデカいおっぱいがあったんで心が落ち着いたところがあるんですよね。いい感じに甘やかしてくれる女性ヒーローとか呼べませんか?」

「幾野」

「変わらないな君は」

「ええ……噂通りなのねイグジスト……。……そうねぇ、近隣にいるヒーローで解放戦線側に寝返っていない確証があって呼べる女性ヒーローは……リューキュウかしら」

「呼んでください」

「幾野」

「本当に変わらないな君は」

 

 そんなわけで調査に支障が出ないようにリューキュウも突如呼び出してもらって、事情と状況を説明して俺のママになってもらった。

 嘘でしょこんな理由で呼ばれたの……って感じの呆れ顔で見られたけど変装して調査に出かけたら割と甘えさせてくれたので助かる。おっぱい。

 

 ま、とはいえ調査はガチのガチ。

 蛇腔総合病院と群訝山荘、それぞれ気付かれないように俺は地下から近くまで潜り込み、ダイブセンサーとウォールハックの合わせ技で丸裸にしてやった。

 中はまぁヘドが出そうなクソ煮込み状態だったが、これだけの規模だと俺一人が突撃してもどうにもならないのも分かってしまった。

 八斎會の時と同じだね。あの時よりも冷静になれていた俺はとにかく細部まで情報を精査して。

 そして持ち帰った情報を公安に渡して、チームアップミッションはいったん終了となった。

 次に呼ばれるのがいつになるかはわからないが、その時が決戦の時だ。

 

 

 

 

「……んっ……なんか今日のセンちゃん、甘えんぼさん……あ、っ……」

 

 久しぶりに心の底から疲れたので、その日の夜はいつもよりも透ちゃんに甘えさせてもらった。

 たいていの悩みは透ちゃんのおっぱいに包まれてれば吹き飛んでしまう。

 その日は珍しく、そのまま透ちゃんと一緒のベッドで眠って朝を迎えた。

 

 

 

 そして、変わらぬ日常を少しだけ過ごし。

 時は流れて3月下旬。

 

 

 とうとうその日はやって来た。

 

 

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