【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!! 作:そとみち
────数分前────
【side ミッドナイト】
恐らく、蛇腔総合病院側で何かが起きた。
未来視をも超えるような何か。でないと、今の現状を説明できない。
「奴が町へ下りたら未曽有の大災害になる! 力じゃ止まらない……!!」
群訝山荘でヴィランたちを一網打尽とし、おおよそ気絶、無力化できたところで物間くんの個性が10分の限度を迎えた。
その頃には連合幹部メンバーもホークスやベストジーニストの活躍などもあって予知の通り問題なく捕縛できており、作戦は成功していたかに見えた。
しかしそこでギガントマキアが急に暴れ出した。
事前の情報では、このヴィランだけは一切動くことがないはずだった。
危険度は高いが、巨大化させなければ確保は可能。ベストジーニストがヤツのズボンの繊維を操作して捕縛しており、ヴィラン全体の確保が終わったら私が個性で眠らせる、そんな予定だった。
だがギガントマキアは急に目覚め、ベストジーニストの拘束を超えて立ち上がり……個性『巨大化』を発動。
マウントレディ以上に巨大化し、急に暴れ出したコイツへのプロヒーローの対処が遅れた。
……いや、力負けした。ベストジーニストが必死に周囲の繊維も使い縛り上げ、マウントレディは唯一その巨体に立ち向かえる体で抑えようとしたが投げ飛ばされ、走り出したのだ。
【待ったぞ主よ!!! 今!! 会いに行きます!!!】
その際に、捕えられていたヴィラン連合の幹部を背に乗せていたのを見た。
何人かは気絶させたままだが……荼毘やトガヒミコなど、危険度の高い連合の幹部は拘束を破っている。
物間くんの抹消も無くなった今、アイツらは私達プロヒーローで止めなければならない。
「ギガントマキアの暴走で他のヴィランを逃がさないように機動力のないヒーローは現場を確保!! 機動力がある者はギガントマキアを追って!! 止めるわ!!」
私も機動力の高いシンリンカムイの背に乗ってヤツを追う。
今再びマウントレディがギガントマキアを止めようと全速力で追いつき、その足にしがみついた。僅かでも速度が落ちれば私がギガントマキアの顔まで近づける。
そうしたら私の全てを使って眠り香の個性を……ッ!
「……連合っ!!」
「チッ、気付いてやがった。ま……それならそれで燃やすだけさ」
シンリンカムイがギガントマキアの顔に向けてウルシ鎖牢で飛び跳ねた瞬間に私も跳躍するが……ギガントマキアの背に乗っていた荼毘らヴィラン連合の個性による反撃に不意を突かれた。
もとより分の悪い賭けだったとはいえ、向こうも一度辛酸を舐めたからか油断が無くなっていた。
荼毘の広範囲の炎の中にコンプレスのコンクリが急に現れ、私の跳躍は止められてしまい墜落した。
ダメージが大きい。まだ意識はあるが……少なくとも、もう私は追えない。
肋骨が折れて内臓に突き刺さっている感触がある。長くはもたない。
「チッ……分倍河原さん持ってかれるのだけは阻止したけど、俺のパワーじゃこいつは止められない!! ジーニスト先輩は!?」
「厄介だ!! 衣服や木々の繊維で縛っても力で破られる!! 違法デニムにもほどがある……!!」
「く……やっぱ峰田くんに賭けるしかないか!?」
今、飛行するホークスとそれに肩を掴まれたベストジーニストが上空から追いかけ、山にある無限の木々の繊維をギガントマキアに絡みつけてマウントレディを縛り付けるようにし、連合の動きも封じようとしているが……旗色が悪いようだ。
そんな姿もすぐに見えなくなってしまう。私は取り残された。
あの二人なら止められるか……いや、楽観視はできない。私はあの化物の力を見てしまっている。
あっちの方角にいるのは、八百万さんたち学生メンバー。
「……ホント、不甲斐ない……」
山荘側の拘束から抜け出て来たのだろう、異能解放戦線のヴィランが私に向けて駆け寄ってくる音を耳にしながらも……私は自分の耳のインカムに手を伸ばす。
私の最期に、教え子たちに希望を託すために。
【side 八百万】
『聞こえるかしら、クリエティ!!』
「ミッドナイト先生!! 聞こえています、状況も把握! 迎撃準備を始めています!!」
「ミッナイ先生からの通信だ!」
「みんな聞け!」
『力押しでは誰も止められない……眠らせたい……!! グレープジュースの個性で足止めして麻酔で眠らせるのよ……! 法律違反になっちゃうけど……』
「先生!? ……お声が!? 先生のご容体は!?」
『ホークスたちが追っている……ヒーローに麻酔を渡して……その場を離れなさい……!! 難しければすぐ避難を……!! あなたの判断に……ゆだね…………ます』
「先生? 先生!?」
『私はもう……間に合わない……ガハッ!!』
「────ッ!?」
ミッドナイト先生から私あてに突然入った通信に、その声色に驚いてしまいました。
明らかに内臓を負傷された力のない声。目の前に突撃してくるギガントマキアに対してわたくし達も迎撃、確保の準備を進めていたところに……麻酔で昏睡させる作戦が提案がされました。
敵の力を過小評価はいたしません。あの巨体、明らかにマウントレディを超える大きさ。
スピードを見ても異常な巨力。峰田さんをしても『もぎもぎネットでも破られるかもしれねェ』と評価されるほどの大型ヴィランに……対策は考えておりました。
あれ程の大型ヴィランが町に到達したときの被害を考えれば、法令順守を考えている場合ではありません。
だからこそわたくしもセンさんを呼び、100%相手を無力化できる手段を考えていたのです。
しかし、ミッドナイト先生から最期を託すような声がインカムに流れ、わたくしたちは作戦変更を余儀なくされました。
今の声を聴いて……飛び出してしまう人がいたのです。
「先生ッ!? 最後まで諦めんなッッ!!
「峰田さん!?」
『……ダメ!! 貴方が拘束して……こな、グハッ……!!』
「八百万ぅぅ!! インカムの場所分かるレーダー寄越せ!! 零してたまるかよォォ!!」
「────────」
峰田さんがミッドナイト先生の援護に向かう事を提案されました。
ああ、彼ならば言うでしょう。この山中ならば誰よりも……飯田さんよりも、ホークスよりも速く動ける貴方であれば。
センさんの親友である貴方が、命を取りこぼす選択肢を取るはずがないのです。
何を言っても止まるはずがない。
私は瞬時にヒーロー側が使うインカムの場所を読み取れるレーダーを作成し、峰田さんに渡しました。いつかの戦闘訓練を思い出します。
「ミッナイ先生助けたら合流する!! 障子は先生の位置インカムで教えろォ!! 跳峰田スクランブルッ!!」
「峰田!? ……行っちまった!!」
「……峰田、走りながら聞け。俺の索敵で探している………いた。先程までギガントマキアが通っていた道中に先生とそれを襲うヴィランがいる。お前から見て1時30分方向! かなり際どい、急げ……!!」
『絶対に間に合わせるッ!! そっちは任せたぜェェ!!』
峰田さんの速度ならば今のギガントマキアの数倍の速度で動くことも出来るはず。
ミッドナイト先生を助けるのは峰田さん
もぎもぎネットの投擲拘束なしでどれだけ止められるか……いえ、止めなければならないのです。
先程センさんから通信がありました。こちらに到着するまで、1分かからないとおっしゃってくれました。
飯田さんの速度を借りて飛んできている
「イグジストが来るまで……およそ1分!! 1分間ギガントマキアと背中に乗るヴィラン連合幹部を足止めします!! 皆さま準備を!!」
「おうよ!! いっつも幾野と峰田に頼りっぱなしで悪ぃけど……せめてそれくらいの働きはしねぇとな!!」
「アイツ無しで拘束してやって無駄足踏ませてやるくらいの気持ちでやってやるぜ!」
「連携は普段の訓練でやってる通りに。臨機応変に柔軟に行こう。無理だけはしないようにね」
「骨抜オマエの個性が今一番頼りになんだからな!? 頑張れよ!?」
「勿論。生涯で一番頑張るさ」
「麻酔の経口投与は効果が不透明です……確実な手段で麻酔は入れます!! 皆さまはこちらを!!」
あの巨体に麻酔を注入する隙はありません。経口投与も考えられますが背中に連合が乗っている以上一筋縄ではいきません。
私達には確実にギガントマキアを止める手段があるからこそ、今私達がやるべきは麻酔を行う事ではなく、全力でギガントマキア及びその背に乗るヴィラン連合の妨害と足止めを行う事。
─────お任せください。妨害は得意中の得意です。
「超強力な
「了解!! とりまぶん投げりゃいいわけだな!!」
「足元は先ほど峰田が張っていったもぎもぎネットに骨抜の柔化もある。脚を止めたら全員隙を見て投擲だ」
「俺と鉄哲はガス無効化して接敵できる!! 連合ぶん殴りに行くぞ鉄哲ッ!!」
「応ッッ!!」
切り札が到着するまでの一分間。
私達の全力をもって足止めして見せましょう。
【side 芦戸】
作戦はよかったと思うんだ。
ギガントマキアが骨抜の柔化した地面に脚を踏み入れて速度が落ちた。もぎもぎもくっついてる。
けど……もぎもぎの粘着力は変わらないけど、アレは変形しちゃうんだ。力が強すぎて、引っ張って伸びてるから動きを止めるまでには至れてない。
だからこそ私達はそのタイミングでそれぞれ催涙ガスの入った瓶を投げつけることで、ギガントマキアと連合のヴィランたちを行動不能にする作戦だった。
悪くはなかった。
後詰めのホークスやベストジーニストも追いついて、全力で遠くから嫌がらせが出来ていた。
けど、それでも。
【主よォォォ!!! これも試練かァァァ!!!】
ギガントマキアには効いてなかった。
アイツ、痛みも何も感じてない。痛みを感じてなけりゃ催涙も効くはずがない。
背中にいた連合は荼毘の炎が想像以上に広範囲に炎を撒いてたから、催涙ガスもヴィラン連合の敵たちにあまり届いていなかったみたい。せき込んで泣くくらいはしてるけど、まだ動けてる。
ホークスの羽根もベストジーニストの繊維もあの炎が燃やしちゃってる。荼毘がいなけりゃ……いや、そんなことを今は言ってる暇はない!
とにかく今は足止めをしなきゃ!!
「炎の壁が……!!」
私たちは一度ギガントマキアのくしゃみの暴風で吹き飛ばされて、相手との間に荼毘の炎の壁を張られたけど……炎なら私の『アシッドマン』で体に酸を纏えば耐えられる。
今ならヴィラン連合も油断してるはず。飛び込め!!
今行けるのは私だけ!! 行ける人がやらなきゃ!!
「くら────────えっ?」
ギガントマキアの顔面に向けて飛び込んだ私と、ギガントマキアの目が合った。
明らかに、私の顔を見ていた。
私の……肌の色を、見て?
【……あの時の女】
今の声は。
「あ」
思い出しちゃった。
私が中学生だった頃に、嘘をついて急いで逃げた、あの時のおっきな人。
明らかに敵意を籠めた瞳で見据えられて、身がすくんだ。
覚えてたんだ、向こうも。
……そりゃそうか。こんな目立つ目と肌の色してるんだもん。
覚えてる、よね。
【……邪魔だ、女ども】
狙われた。
怒りの眼差しに変わったギガントマキアが、不用意に飛び出した私にその手を振るってくる。
すっごい大きな手。スピードもやばいな。拳藤の大拳よりもおっきくない?でも意外と見た目に反して手のひらはぷにぷにしてそう。マウントレディが止めようとしてくれてるけど間に合わないかー。今から私の手にある催涙ガス瓶投げて何とかなる?わけないか。やっちゃった。せめて飛び出さずに地面走ってれば逃げられたかも。いやそれだったらむしろハエたたきみたいに押しつぶされた?ってか今更だけど目の前に飛び出さなけりゃよかったじゃんね。口にブチこむんだから狙いは適当に顔でよかったんだよ顔で。顔って言えばそういえば寮で幾野がおやつの時間に腰の細さでマウント取ってきたときに思わず顔面にケーキ投げた時は面白かったな。アイツ顔面で受け止めてから無視して勢い殺してケーキを落とさなくてさ。食べ物粗末にするなって言われたっけ。確かにそうだわ。ごめんね勢いで投げちゃったんだよあの時は。ってか女子にウエストサイズの茶化しをするお前の方が悪いだろっていうね。その辺葉隠もヤオモモも手綱握らないからなぁ。あれ、ってか私何考えてんの。なんでこんなどうでもいい事を考えて─────あ、そうか。
──────これ、走馬灯ってやつか。
一瞬後に迫る死。
それに備えるために時間が間延びされて、でも空中にいる私の体は動かなくて。
私を握りつぶすその手が掴みかかってきた、時に。
「────俺の後ろに!! 血は流れねえッッ!!」
私を、助けに来てくれた。
【side ミッドナイト】
「ゴホッ……!!」
「ちっ……粘りやがる」
「ほっといても死ぬだろもうコイツ。追おうぜマキアを」
「バカ、ヒーロー共のしつこさは知ってるだろうが。ゴキブリと同じだ。きっちり息の根止めるまで油断するな」
ボロボロの体に襲い掛かるヴィランの攻撃を、片腕を犠牲にして何とか回避した。
口からねばついた血の塊を吐き出して……それでも、私は自分の命を長らえていた。
死なないためなら腕だろうが何だろうが犠牲にして……生きる。
死ねない。
さっき、私の教え子たちから……死ぬなと言われたから。
さっきは興奮してて私も冷静じゃなかったのよ。
私は死んではいけない。
生き延びなければならない。
私が死んだら……それが一番、生徒達が悲しむことになる。
そのことにようやく思い至ったから。
だから、どれだけ生き汚くとも、私は足掻いて見せる。
生き延びて見せる。
「ハッ……ハァ……この体、好きにして、いいわよ……だから殺さないで、お願い! お願いします!」
「んー? ハハハハ!! コイツ命乞いまでしやがったぜ!!」
「オイオイこれがヒーローの姿かぁ? 恥はねぇのかよ年増が!!」
「乗るなよ。コイツのタイツ破くと眠り香が撒かれるぞ。いいからとっとと殺せ。俺たちは崇高な使命で動いているんだからな」
命乞いだってしてやるわ。
この会話で稼げた数秒で、私の命が長らえる可能性があるならば。
私もスーツを破いて、クラス対抗戦の時の取陰さんのように……色仕掛けも試みたかったけど、もう腕に力が入らない。破けるほどの力を籠められなかった。
でもまだ生きている。体に力は入らなくても、口は回る。
粘れ。もう少しでいい、最後まで粘れ。
「……ゴホッ……しゃぶって、あげるから……殺さないで……」
「まだ言ってるぜこのババァ」
「最低のヒーローだな。こんなのが教師やってんじゃあ雄英も地に落ちたってもんだ」
「最期の言葉がそれか。惨めだな」
出来るのは……ここまで、か。
ヴィランが手にモヤの様な力を溜め始めた。先ほど、右腕を犠牲にしてその攻撃を防いだが……左腕は既に骨が折れており動かせない。
逃げるにしても脚に力も入らず。出来ることは尽きてしまった。
だから後は信じる。
私が、私達が育てた
貴方たちが最高のヒーローでいてくれるならば、きっと。
山の中なら誰よりも速く動ける貴方なら、きっと。
「それじゃああばよ、何も出来なかった哀れなヒーンなァッッ!?!?」
「なッ───んだこの
「体が!? クソッ……!?」
───────ほら、来てくれた。
「待たせました!! もう大丈夫ッス────オイラが来たッ!!」
【side マウントレディ】
「ゲーッホ!! ゲホッ、止まりなさい!! 止まりなさいこのデカブツ!! 止まれっつってんのよちくしょうがぁぁああ!!!」
ギガントマキアの首をひっつかんで何とか止めようと粘る。
私よりも大きくて、パワーは数倍。超再生の個性に、多分痛覚もこいつにはない。
最悪のヴィラン。荼毘や死柄木以上の凶悪なヴィランだ。
コイツは必ずここで止めなければならない。
なぜって、分かってしまうからだ。
コイツが本気で街中で暴れた時の被害が、
積み木で出来たミニチュアの街を、大人が長靴を履いて暴れまわる様なもの。
日本史上最大の被害が出てしまう。
それが誰よりも分かる私だからこそ────唯一、体のサイズで負けていない私が、コイツを止めなきゃならない。
「がぁぁ……!! 止まれ!! 止まれって言ってんのよ!!!」
先程、雄英の子たちが投げた瓶から巻き散らされた催涙ガスが目に染みて痛むが、私のサイズだってこの程度なのだ。荼毘の炎で繊細に焼かれてしまっているのだろう。
巨人を舐めてはいけない。私でこの程度なのだから、ギガントマキアにはなおの事効いているはずがない。
でも、雄英のヒヨッ子さん達……みんなが私の下で一度は働いたことのある生徒たちだ。この子たちの瞳には絶望は浮かんでいなかった。
深く付き合ってたからわかる。この子たちは間違いなく何か策を持っている。
だったら私はそれに全てを賭ける。
貴方たちを信じられる。
私が今できることをやる!!
「と、まりなさい……ぃぃぃぃいい!!!」
ギガントマキアの背中に張り付いて全力のチョークスリーパー。幾野くんのように、人体の急所を責める。
男の背中に引っ付くなんてこれが初めてで、背中の突起が腹に突き刺さって随分と痛い。最低の初体験だ。
でも止めなきゃならない。
マウントレディという名前を思い出せ。
ここで止められなかったら、何のために巨人ヒーローしてるのよ!!
【……邪魔だ、女ども】
「ギッ……!!」
でも、そんな私の全力もまるで意に介さないで、ギガントマキアが腕を伸ばして私の頭をわしづかみにしてきた。
捕まれて、まるで赤子の手をひねるように振り払われる。
首が折れないように私はその動きに逆らえなかった。
背中から振り落とされてブン投げられて、凄まじい衝撃が私を襲った。
「ぐっ……ああああ……!!!」
まだだ。
立て。立ってアイツを止めないと。
一度ギガントマキアが立ち上がり、体勢を整えている。ここから全力疾走する構えだ。
恐らくはここに来るまでにコイツは本気で個性を使っていない。報告によればいくつもの個性が移植されてる。本気で暴れられれば止められなくなる。
今止めないと今度こそ追いつけない。
でも、学生たちは炎の壁とさっきのくしゃみによる風圧でみんな距離がある。切島くんが芦戸さんを助けたけれど、地中に埋め込まれて脱出に時間がかかっている。
ホークスとベストジーニストは背中にいたヴィラン連合に警戒されて荼毘の炎で牽制を受けている。どちらの個性も火に弱い。攻め切れていない。
峰田くんは……いない。体が小さいから吹き飛ばされた? 無事? あの子の力が……もぎもぎネットがあれば、もしかすれば止められたかもしれないのに。
動け。
動け、私の脚!!
立って止めろ!! 私しか止められるヒーローがいないのよ!!
「ぐ、う、ううう~~~!!!」
渾身の力を振り絞って態勢を整えて、でも、私の脚は答えてくれない。
先程投げられたダメージが強すぎる。体が大きいからこそ叩きつけられた時のダメージが大きい。
涙すら、零れてしまった。
今なのよ。
今、私がやらなきゃ、ヒーロー社会が終わってしまうの。
私がやらないと。
でも、足が動かない。
力が入らない。
私は……駄目なの?
一番大切なときに、何もできない女なの?
「────助けて」
思わず弱音が零れてしまう。
誰か。
誰か、助けて────────
【───────…………………】
「……何!? おいマキア!?」
「え、ちょっと!? なんで倒れるんですか!?」
「何してんだこのデカブツはァ……?」
奇跡は、不意に起きた。
目の前で立ち上がり、まったくのダメージが見当たらなかったギガントマキアが……急に遠い目になり、気を失った。
全身の力が抜けて、その場に倒れ込む。
異常な光景。
何が起きたのか、それを確かめるために涙を拭って目を凝らして─────
「─────もう大丈夫」
倒れたギガントマキアの背に立つ、見慣れた
「───────俺が来た!!」