【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!!   作:そとみち

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146 ドクターKは義務教育だと思っている節があります

 

【一分前】

【side 幾野】

 

 

 ─────()()()()()()

 

 

「ッ……、くっ……!!」

 

 飯田のゼロシフトグランドライブによる加速を受けて、山荘にいるみんなの元へ秒速1キロ以上の速度で空をぶっ飛んでる最中に、それを感じてしまった。

 加速を落とさぬよう、高度も落とさぬよう……重力、空気抵抗、位置エネルギー、己の体への負担……諸々全てを無視しながらカッ飛んでいる中で、それは不意に来た。

 

 ()()()()()()()()

 

「……まっ、ず……!!」

 

 思えば、これほどの速度で移動するのは当然にして初めてだった。

 加速を受けて跳んだり、時には百ちゃんの作る大砲の砲弾として飛んだことだってあったけど。それでもせいぜい10キロかそこらの距離だ。

 ワープする距離は峰田相手にやった25キロが最長の距離で、それ以上は林間合宿の時の様な限界が来ることは分かっていた。

 そもそも、俺の個性の燃費が悪すぎる事は知っていた。

 ワープすることが俺の知る最も負担の大きな使い方で、それを使って80キロのこの距離は埋められないと思っての飯田にお願いしてのこの移動だったが……ここにきて新たな発見を得てしまった。

 

 移動する距離に応じて、俺の個性は消費されるのだ。

 

 ワープで30キロの距離を『無視』するのと、空気抵抗や重力などを無視して30キロぶっ飛んで『無視』するのでは、使う個性許容量はたいして変わらないようだ。

 くそ。訓練でもっと試しておけばよかった。

 つっても80キロも移動するような練習なんて普段から考えるはずもなく。この緊急時に、俺は俺の限界を感じてしまった。

 このままだと40キロも飛ばないうちに俺の個性許容量がパンクする。オート個性だけに使う分だけ残してまた胃に穴が開くかもしれない。

 ふざけんな。そんなマヌケになってたまるか。

 死柄木との戦いを緑谷たちに任せて、飯田のフルパワーも借りて、俺の女と学友たちを助けに行くってのに、その途中で限界を迎えましたなんて笑い話にもならない。

 もうすぐ迎えようとする限界を超える必要がある。

 

 だから、俺はとうとうその切り札を試すことにした。

 考える事だけはしていて……でも、どうしても試す気にならなかった、俺の個性の使い方を。

 俺が一人の人間として存在する(イグジスト)、その一線を越えそうで……怖くて使えなかった、それをする。

 

 ──────『個性』の『限界』を『無視』する。

 

 その行為に、謎の忌避感があった。

 限界が無くなれば個性も使い放題じゃないか、という意見もあるだろう。俺もそう思うし、実際訓練の中で誰かにそんなこと言われたこともある。

 けど、恐怖があった。

 限界がなく、なんでも無視する存在……何でもできるだろう。神にすらなれるかもしれない。

 

 だが、最早それは人間と言えるのか?

 そこに存在すると言っていいのか?

 そんな恐怖がどうしても拭えなくて。

 みんなの隣にいられなくなるような気がして、使えなかった。

 

 でも今はそんなこと言ってられない。

 みんなを助けるために、日本を助けるために。ここで俺は倒れることはできない。

 俺を待っている人たちがいるならば。

 

「みんな……!!」

 

 自分の限界が見えてきたところで、それを『無視』した。

 

 

 同時に、凄まじい違和感が俺を襲った。

 まるで、ここにいてはいけないような異物になったような違和感がして。

 

 そして、俺は己の限界を超えた。

 

 ダイブブースターの限界も無視し、加速に加速を重ねて飛ぶ。

 ギガントマキアまであと40キロ。いける。視界の限界も無視したから、みんなの状況も見えている。

 百ちゃんがいて。透ちゃんもいて。クラスのみんながいて、マウントレディがいて。

 そこで、怪物が……ギガントマキアが暴れてて。

 その光景を目にしたときに、俺のためらいはなくなった。

 

 絶対に助ける。

 みんなのもとにたどり着くあと僅かな時間をじれったく感じながらも、俺は高度を少しずつ調節。

 そして────────ようやく、到着した。

 

 

「っ、センさん!!」

「クリエティ!! 作戦通りに!!!」

 

 百ちゃんの隣に降り立った俺に、百ちゃんが驚愕と歓喜の表情を見せて……でもすぐに気を引き締めて、俺は作戦通り彼女からブツを受け取る。

 百ちゃんが創造していてくれたそれは、超濃度の麻酔溶液。

 オーバードーズなんざ知ったことかとばかりに5リットルはありそうな容器4本を重さを無視して受け取る。

 俺が持てばそれは重さもなく、ガラスが割れることもなく、必殺の切り札となる。

 

「絶対に眠らせる必要があります! 注入する場所は分かっておりますね!!」

「ああ! 今はアイツの体内も見えてる……行ってくる!!」

 

 語ることは必要最低限。

 今もマウントレディが投げ飛ばされるほどに暴れているギガントマキアを止めるために。

 俺は周囲の注目を『無視』し、気配を消してダイブワイヤーでギガントマキアに飛び込み、その体に潜り込んだ。

 

 


 

 

「もう大丈夫────俺が来た!!」

 

 数秒後、ギガントマキアに麻酔を終えてその背中から姿を現し、注意を引くために一度無視を切って立ち上がった。

 芦戸ちゃんは切島がカバーに入っており捕まらずに済んだ。切島も無事。

 マウントレディも立てないようだが意識はある。ホークスもベストジーニストも健在。

 荼毘が炎を操り空から攻めるホークスたちをけん制し、他のヴィラン連合の奴らも目が覚めている様だが……もう終わりだ。

 

「イグジストォ!! 何をしやがったてめェ!!」

「は? いつの間にかイケメンカスれ声になってんじゃん、生主でも始めたのかよ荼毘さんよ。眠らせただけだよ、俺の子守歌を随分気に入ったらしいぜマキアくんは」

 

 肺に穴開けたせいか、随分とかすれた声で荼毘が叫ぶが、もう事は成し終えた。

 ギガントマキアの体……これだけ大きな体だと、普通に口から麻酔を投下しても効かない恐れがある。百ちゃんはそれを危惧していた。

 だからこそ、まず体の動きができなくなるほど麻痺させ、その後に昏睡を狙った。

 

 ()()()()()と呼ばれる、脊髄を覆っている硬膜の外側に直接麻酔を注射する麻酔技術がある。

 これ一つで神経を通す体の動きの一切ができなくなる、即効性の高い麻酔方法だ。

 医療では強力な痛み止めとして行われるが、これを俺が体内から全力で硬膜外に麻酔液の原液をぶちまけて来てやった。

 脊髄に直接ぶち込んでるので凄まじい即効性を発揮する。どれだけ巨体でも、脊椎動物である以上体を動かす命令は脊髄の神経命令を通さなければならない。それを止めればギガントマキアといえども体を動かせない。

 喋ることもできないだろう。これで先ず動きを止めてやった。

 

 同時に、肺の中と血管の中にも麻酔薬をぶち込んできている。

 全身麻酔の要領だ。本来は呼吸器と点滴による麻酔となるが、コイツに呼吸器なんて付けられないので肺の中に直接麻酔液をぶち込んでいる。

 痛みを感じてないと百ちゃんから報告があったが、それでも呼吸はしてるだろ。してなくても粘膜に直接入れてるから吸収するだろ。

 血管に血液を通さないと人間は動けねぇ。お前が鉄哲でもねぇ限りはこれで堕ちる。堕ちたな。

 

「テメーらはこれで終わりだ。死柄木のほうもボッコボコにして来てやったからよ。大人しく捕まりなクソヴィラン共」

「ふざけないでください……!! 仁くんもやられて、なんで、貴方みたいな理不尽がなんでいるんですかっ!!」

「いやそのセリフはお前らが踏みにじって来た被害者の遺族がみんな感じてた事だから。悪い事したら捕まんだよ。義務教育で習うだろうが」

 

 トガヒミコが執念すら感じられそうなほどの泣きそうな顔でこちらを睨みつけてくる。

 けど情けなんてかけない。ここで一人でも逃せば何をするのかわからない。

 お前らが加害者である限り、俺はヒーローであり続ける。

 

 しかし人数は多い。一度にコイツらを捕まえるには俺の個性では一息ではできない……いや、いけるか。今は限界を無視してるんだ。何でもやれる。

 荼毘、トガヒミコ、スピナー、コンプレス、あと何故かいるスケプティックは……なんだ? こんな時に()()()()()()()()()()()()

 トゥワイスはいねぇな。アイツは逃げたのか……いや、山荘の方で捕らえられたままか。ダイブセンサーに登録してあるアイツのバイタルが向こうに表示されている。

 にしても全員、随分と服が破れてパンクな格好になってるな。ベストジーニストの個性のせいか。

 

「イグジストくん!! 連携してこいつらを捕えるよ!!」

「だいぶ荼毘の火炎にやられたが木々の繊維は生きている……気絶させるぞ!!」

「了解!! 他のヒーローは巻き込まれないように下がって!! 狙われないように!!」

 

 空飛ぶホークスとベストジーニストから指示があり、俺も距離を無視した声でみんなに指示を出す。

 この場において下手な援軍は言っちゃ悪いけど足手まといになる可能性がある。広範囲攻撃する荼毘もいるしな。

 ここまでみんなが無事でいて足止めしてくれたことが何よりもえらい。頑張ってくれた。

 後は任せてくれ。俺が─────

 

 ───いや、俺達がケリをつける。

 

 

「───グレープラッシュ・アラウンドッ!!!」

 

「なっ、いつの間に!?」

「早ッ!? 広ッ!?」

「あれに触れたら終わりです!! 逃げ────この羽根邪魔っ!!」

「クソ共が……!!!」

 

 峰田が増援に来てくれていた。

 お前の速度ならこの中でも戦える。山の中で一番頼れる奴が来てくれたぜ。

 遠視で見ていた。ミッドナイト先生のもとに走り、見事にギリギリで助けていた俺の親友。

 本当に誇らしいよ。その後も後からやって来たヴィラン共を全部捕縛して……その上で、()()()()()()()()()()()()()()

 

 ミッドナイト先生や、そのほか傷ついたヒーローたちは……物間が全員何とかしてくれている。

 物間がコピーしていた個性は3つ。

 そのうち一つは俺の『無視』。

 もう一つは相澤先生の『抹消』。

 

 そして最後の一つは───リカバリーガールの『癒し』。

 

 無視と抹消を使い切ったのち、個性許容量を落ち着けて回復させてから、ヒーローの治療に回っていた。

 リカバリーガールの個性は個性許容量の消費が少ない。本人の治癒力を後押しするもので、回復は本人の体力に依るからだ。

 そのことをこれまでにも試して確かめていた物間は、3つ目の個性にそれを選んだ。

 前線で活躍するヒーローではなく、みんなを支援できるヒーローとして。最高の手段を選んだんだ。

 その結果で、今はミッドナイト先生も他のヒーローも命の危機を脱している。アイツも流石だよ。

 

 さぁ、ナンバー2とナンバー3、そして俺と峰田が揃った。

 お前ら勝てると思うなよ?

 

 


 

 

【side 荼毘】

 

 

 クソ共が。

 クソ共が……クソ共が。

 いつもいつも俺の邪魔ばかりしやがって。

 

「クッソ、荼毘がめんどくせぇ!! オイラのもぎもぎ燃やされる!!」

「ホークスの羽根も私の繊維も焼かれるか……!! イグジスト!!」

「任せろっ!!」

 

 糞みてぇな拘束タイプの個性を炎で焼き払って周りの奴らをかばうが……それも限界があった。

 足手まといとまではいわないが、イグジストがいる以上勝負は見えている。

 終わりだ。俺たちはここで捕まる。

 もうすでに俺以外はクソネットとジーニストの繊維に捕えられていた。俺だけなんとか燃やして逃げている。

 

 ────まぁ、それでも最終的に何とかなるんだけどな。死柄木さえやられなきゃどうせ何とでもなる。

 どうせコイツらは俺たちを殺せないんだ。ヒーローだから。

 いつだってヒーローってのは甘すぎる。考えも何もかも。

 俺たちを殺さなきゃ被害者は増え続けるってわかってるのに殺さない異常者だ。

 

「───ハッ、どっかで見たような光景だな荼毘さんよォ!!」

「ガッ……! テメェはいつもいつもバカの一つ覚えか……!!」

「ん? 前より余裕あるな……あ、なんか首に埋め込んでやがんな。呼吸器かなんかか? 喋れるのはそのせいか。大変だね、どうしたの?? ケガでもした??」

 

 九州の時みてぇにワープからの首絞めを仕掛けてきたイグジストに俺は捕らえられた。

 クソチート野郎がよ。お前みてぇなヤツがいるから人は希望なんて持っちまうんだ。

 お前がいなければ……もっと俺にとって平和な世界になっただろうに。

 

 ああ、でも大丈夫だ。

 ちゃんとお前も絶望させる準備はしてるからさ。

 

「黙れ。相変らず口が悪いな…………()()()

「ッ────────」

 

 初めて、この男の驚いた顔が見えた。

 目をかっぴらいて……クク、図星を突かれたからってそんなアホみたいな顔するなよ。興奮してくるだろ。

 

「おい、どうした? 首を絞める力が抜けてるぜ? 何で俺が知ってるんだって顔だな? お前は俺の事を知らないのによ」

「いや首は締めてるけど。でもちょっと面白くなってきたから話聞いてやるよ、どうせお前は終わりだし。なんでそのこと知ってやがる? どっから聞いた?」

「教えると思うのか?」

「そうか。あばよ」

 

 ッ……コイツ、マジで話聞きだそうとしないで首を絞め始めてきやがった。

 バカが。俺が情報零しそうだからさっきは手を緩めただけだってのか。

 自分の過去に思う所がねェのかコイツは。

 なんて薄情なヤツなんだ。親を殺すようなやつはやっぱり違うな。

 俺なんて、親に殺されたって言うのによ。

 

「ゲヒ……!! 聞けバァカ!! お前の過去は調べたさ!! 気持ちは分かるぜ親殺し!! 俺も今からそうしようと思ってるところだからよぉ!! やり方教えてくれよ先輩!!」

「は? テンション急に上がるじゃん怖。やっぱ堕とすか」

「そう言うなよ!! 楽しんでくれよイグジスト!! 俺が頑張って考えたショーがこれから始まるからよぉ!! 日本のテレビ局の電波とネットをジャックしてんのさ!! ついさっきスケプティックがノートPC弄ってたよな? それでちょうど全国生中継だよ!! 俺の過去の話から、ホークスの過去!! お前の過去!! 全部俺が世間に教えてやってんだ!! エンデヴァーは俺の親父なのさ!! 俺は死んだことになってる長男、轟燈矢だ!! 轟家に取り入っていたお前なら知ってるよなァ!?」

「─────は?」

「ハハハハハ!! いけねぇ楽しくなっちまった!! お父さんの立派な過去を全部世間にぶちまけてやったんだよ!! 最愛のパパのカッコいい所を紹介してやってよぉ!! お前も世間にもっと知ってもらえてうれしいだろうイグジスト!! 笑おうぜぇ!?」

 

 おかしくなっちまって笑いが零れちまっていた。

 ああ、本当は向こうにいる親父と焦凍に合流したときに喋りたかったんだけどなぁ。でもコイツらが邪魔してくるからさぁ。

 仕方ねぇんでスケプティックに頼んですぐに電波に流してもらったのさ。

 関係ねぇ。これから先、日本は混沌に陥る。その時こそ親父が、ナンバーワンが責められるとき。

 俺の映像を聞いた奴らが、これまで期待していたエンデヴァーに、ホークスに、イグジストを疑い責めるんだ。

 九州の借りを返したって所だよなァ!!

 ああ楽しみだな!! 早く見たいぜ親父の顔を!! ホークスのツラを!! このイグジストが女みてぇに泣き喚く顔を!!

 首を絞められてる情けねぇ状況だってのに笑いが止まらねェよ!! アハハハハ!!

 

「…………」

 

 首を絞める手の力が強まり、同時にイグジストが空中に映像を投影した。

 ああ、それこそまさしく俺が今流している中継映像だろう。

 ちょうど放送が始まったばかり。

 周りのヒーローどもも俺の言葉に、その映像に食い入るように眺めていた。

 

 ハハハ。

 気持ちよくなってきた……あ、いやこれ脳内麻薬か。

 イグジストの奴、結局隙は見せなかった。俺の首を絞める手は緩めなかった。

 

 まァいいさ。映像はもう止められない。

 次に起きるのは刑務所か、刑務所から脱獄したあとか……その時にまた笑うとしよう。

 

 くたばりやがれ、ヒーロー共。

 

 





左右LR様よりファンアートを頂いたので紹介させていただきます!

①水着を披露するセンちゃんと個性無視通してもらった透ちゃん

【挿絵表示】

プール回の時のイラストを描いてもらいました。
センちゃんにも彼女を自慢したいという気持ちがあって無視の個性を通してお披露目しちゃうそんなワンシーンなんやろなって。
はた目には百合だが造花なんだよなぁ。こんな際どい水着でちんちんついてるってマ? 各方面に失礼だよね。
この頃はまだヤオモモがハーレム入りしてなかったからわたくしも一緒に飲みたいですわって顔で見てたと思いますね。
ファンアート心より感謝申し上げます。有難うございました!
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