【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!! 作:そとみち
その後の顛末。
一先ず山荘側……俺が増援に入った群訝山荘の戦いは、ヒーロー側の勝利。
ギガントマキアほか、ヴィラン連合の幹部は俺らの活躍で全員確保。
山荘側でもリ・デストロ本体のほか、脱出しようとしたヴィラン連合に置いてかれた気絶したままのトゥワイス、超常解放戦線の構成員を一人残らず確保した。
ギガントマキアの行進で一度拘束から脱出した数名のヴィランたちも峰田がミッドナイト先生を守った後に単騎で捕縛していて、取りこぼし無し。
同時に、この山荘と病院以外……全国に点在する支部及びシンパの制圧も無事成功した。
また、蛇腔総合病院への突入と同時に狙われていた公安本部への襲撃も無事に防げたらしい。
トゥワイスの二倍による分身体のリ・デストロが公安本部を狙う……という情報を俺がウォールハックの精査で掴み、対策にヒーローを何名も配置していた結果、ホークスがトゥワイスを深く気絶させるまで堪え切り、分身が溶けて死傷者はいなくて済んだと。
そして蛇腔総合病院側だが────
────
緑谷たちも、最後までかなり優勢だったとは報告で聞いた。
脳無も事前に滅ぼしたため、ヒーローたちが交互に攻め込むことで消耗戦を展開し……実際に死柄木もかなり疲労の色を見せていたという話で。
相澤先生の抹消も相変わらず効いており、体の再生以外は個性を何も使わせないように戦えており、そのまま押し切れる見込みだった。
だが……それを見ていた爆豪ちゃんから後で聞いた話によると、曰く『急に人が変わったようになった』と。
緑谷が黒鞭と、目覚めた第二第三の能力『浮遊』『危機感知』を使いながら接敵し、80%でブン殴って距離を離したところにエンデヴァーのプロミネンスバーンをブチかました後……人格が一変し、黒焦げになりながらも緑谷が頭を掴まれて。
速攻で爆豪ちゃんがオーバーフロウによる突撃からのストレイフパンツァーをぶっ放して緑谷との距離を取らせて、OFAを奪われることはなかったらしい。その後も緑谷が個性使えてたとも聞いた。
しかしその瞬間から死柄木が一転して全力で逃走。
腕を千切り捨て、なりふり構わずに満身創痍のままに脱兎のごとく逃走した。
もとより個性無しでもエンデヴァーの追撃を軽く振り切る速度が出せる身体で、そうしないためにも追い詰めて連携していったが、その結果の最終火力のプロミネンスバーンを堪えた直後の脱走という形に、ヒーローたちの反応が一手遅れた。
本気で逃げる死柄木に追いつけるスピードのヒーローがいなかったのだ。
しいて言うならばホークスと、あと飯田ならば追いつけただろうが……ホークスは山荘組で不在、そして飯田の脚は大変申し訳ないが、俺が使わせてもらってしまっていた。
ゼロシフトを放った反動が抜け切れていなかったのだ。レシプロターボを使えなかった。
結局、遠距離攻撃持ちのヒーローなども追いつけることはなく……死柄木弔は単騎で逃げ切った。
ここまでが襲撃作戦の結果となる。
そして作戦でのヒーロー側の被害。
蛇腔総合病院では、死柄木の覚醒の際に病院の崩壊に巻き込まれて殉職したヒーローはいなかった。ビルボート6位、シールドヒーロー『クラスト』が他のヒーローを救う為に崩壊に脚を巻き込まれたが……刹那の判断で己の盾で脚を切断。直後にリューキュウに救出されて命を存えた。
山荘側でも死亡者はなし。ギガントマキア覚醒の瞬間に数名のヒーローと、ギガントマキアを追う際に迎撃されたミッドナイトとシンリンカムイが重傷を負ったが、全て物間がコピーしたリカバリーガールの個性で治癒し、一命をとりとめた。
総合病院の崩壊後に避難民への人身損害は目立つものは無し。広範囲の建物が崩壊してしまったため物理的被害は甚大。
また、最後に流れた荼毘の謎の映像についてはヴィラン連合による悪ふざけと捉えられ、その時点で映像自体が何かを生むことはなかった。
ただ、エンデヴァーの長男だと述べていたことや、ホークスや俺について匂わせてた発言については後で何か言われるかもしれない。
さて、当然だが死柄木と交戦したヒーローの中には重軽傷者が多数いた。
目立つ負傷者は緑谷、爆豪。イレイザーヘッドも狙われて怪我をしていた。
山荘側では学生ヒーローがギガントマキアを正面から止める際に風圧や荼毘の炎などでそれなりに怪我。
ただしそれぞれが後遺症が残りそうな怪我はなかったと聞いている。
そして、俺は。
「───っ、おいイクノ!? おい!?」
「センさん!? しっかりしてください!?」
「イグジストくん……!? 大丈夫か!?」
「くっ、緊張の糸が切れたか!? ファントムシーフを呼べ! まだ治癒系個性が使えるなら……」
ギガントマキアと荼毘との戦いが終わり、ヴィラン連合の全員が拘束されるのを見届けた時点で……限界を『無視』していた反動が来て、意識を失った。
「────……知らない天井だ」
目が覚めて一言目。
そう呟けるだけの元気があったことに感謝しつつ、俺はベッドから身を起こす。
前回は血反吐を吐いたが、今回は胃の痛みは無し。
点滴針とかも腕に刺さってる。この辺はオート個性の調整が出来るようになった成果だな。
治療行為に準ずる部分は無視しないように強く意識してから気を失った、様な気がする。
だから多分それだろう。
さて、体を起こしてあたりを見渡せば、そこは予想通り病院の個室で。
そして、
「────────。……透ちゃん」
「えっ……あ!? え!? センちゃん起きたの!? 身体はだいじょーぶ!?」
「たぶん。ちょっと重いけど変な痛みとかはないよ。……で、ここどこ? あの後どうなった……? みんなは? 事態は?」
「う、うん!! ここはセントラル病院でA組のみんなは無事だけど!! まず先生と看護師さん呼んでくるから!! 待ってて!! 看護師さーん!!」
「いやナースコール押してから飛び出してってもよかったんやで」
声をかけて、俺の姿を見つけてくれた透ちゃんが驚いた様子で俺の顔を見てから、果物ナイフを置いて慌てて部屋を飛び出して行ってしまった。
あわてんぼさんだな。そんなところも可愛い。すき。
ふっと笑顔交じりのため息を零してからナースコールを自分で押して……そして俺自身の体の検査をされつつも、俺はその後起きた話を見舞いに来てくれてたクラスのみんなから聞き出した。
作戦自体はその日のうちに公安より公表され、異能解放戦線の制圧という面目で、世間にも受け入れられていた。
ただしその後に大問題が発生。逃走した死柄木がその日の夜にタルタロスを襲撃。タルタロスに収監されていたド級の犯罪者どもを脱走させた。
その中にはその日のうちに連行されていたヴィラン連合のメンバーも数人混ざっていたらしい。八斎會の時と同じだ。捕まえはしたものの、捕まったそばから脱獄しやがるアイツら。
ギガントマキアは運送に時間がかかったということでタルタロス襲撃の時にはおらず、アイツは脱走してないという話だが……しかし、凶悪犯罪者が野に放たれてしまった。
さらにはその犯罪者の中にいたAFOが、そいつらを引き連れてタルタロス以外の刑務所も並行して襲撃。受刑者をとにかく野に放ちやがったと。
もちろん、ヒーロー側もこれに抵抗した。
怪我が浅くまだ動けたエンデヴァーやホークス、ベストジーニストを中心としたトップ3のメンバーがこれの迎撃に当たり、タルタロスは間に合わなかったものの、他の刑務所の襲撃は迅速に対応したが……しかし大規模作戦の後の奇襲にどうしてもヒーロー側の人員が足りなかった。
襲撃された7か所の刑務所のうち、ヴィランを制圧しきれなかった3か所から受刑者が放たれてしまったということだ。
これが一晩での出来事。その後、AFOと死柄木は姿をくらませている。
「今は公安と政府が緊急事態宣言を出してよ……学校もなんもかも、生活に必須のライフライン以外は止まっちまってる。自粛の極みみてーな感じだ」
「プロヒーローにはパトロールを増やして受刑者が暴れるのを止めるように指示が出てるけど、まだ潜伏してるのか大きな事件は起きてねぇ。強盗事件がいくつかあったくらい」
「脱獄して翌日ですからね……ですがこれから増えていくでしょう。私達も呼ばれるかもしれませんわ」
「社会が変わっちまった。死柄木一人を逃したせいで……」
「…………そうか」
もんにょりとした顔でみんなが教えてくれた現状に頷いた。
すっごいもんにょりだ。俺が倒れてなければ……いや、俺一人でもどうしようもなかったか。タルタロスが破られたのがマジで痛すぎるな。
死柄木もかなり追い詰めて、満身創痍の状態にはなっていたと飯田と轟が教えてくれたけど……超回復のチートのせいか、それとも個性が使えるようになるとそれほどヤバいということなのだろうか。タルタロスすら突破されちまうような力だとそれを止められるヒーローはいねぇな。
マジでヤバいなアイツ。
くそ、なんでアイツ目覚めたんだよ。未来視じゃこんなことにはなってなかったのに。
「……で、緑谷と爆豪は?」
「爆豪はまだベッドだけどもう目が覚めてる。リカバリーガールの治癒もしてもらったしな。リカバリーガールと物間がセットでまぁ忙しそうに全国の病院を走り回ってるよ」
「問題は緑谷だ。アイツも体は治してもらったんだけど……まだ意識が目覚めねぇんだ」
「っ……マジか」
「今はオールマイト先生が病室についてくれてる。お母さんも呼んでるってよ」
そして今回の襲撃で怪我を負った緑谷と爆豪……このうち緑谷はまだ目が覚めてないという話で。
身体が治れば普通はすぐ目が覚めるもんだけどそうじゃないと。んでオールマイトがついてるってなると……OFA絡みだろうな。
後で様子を見に行こう。
さらに俺は気になっていたところを確認する。
「ヒーローたちは? マウントレディは……エンデヴァーやホークスたちは無事なのか?」
「マウントレディは大丈夫! あの後物間くんが治癒したうえで別の病院に運ばれて、元気してるって! さっき私もラインで話したよ!! ラーカーズの二人も無事!!」
「そっか! よかった……!」
「エンデヴァーは刑務所襲撃を防衛する任務でめっちゃ無茶して、一人で一か所の刑務所脱獄を防いでヴィラン捕まえたらしいんだけど、その時ケガして一旦ここセントラル病院に入院してる」
「轟がそっち見舞いに行ってる。ご家族も来られてたぜ」
「ホークスとかベストジーニストは無事で、公安と連携して各地のヒーローと打ち合わせてるとか……」
「無茶するな相変らずあの人たち。……先生たちは?」
「……相澤先生とかセメントス先生とかは無事だったんだけど……」
「……ミッドナイト先生が障害残っちまったって。骨盤骨折があって……物間の治癒で一命はとりとめたけど、下半身不随になるかもってよ」
「マジか。……でもまぁ、生きてるならまだ……だな」
「ああ。僕の兄のように下半身不随になってもサポートアイテムもある。決して悲観することではない。峰田くんが見事に繋いだ命だ」
「飯田が言うと重みが違うな」
それぞれのヒーローの状況も確認した。
被害は大きい。決して楽観はできない……蛇腔総合病院のほうではクラストの他、数名の重傷者もいるということで。
クラストは崩壊に巻き込まれないように己の盾で脚をぶった斬った。みんなを助けるために、無辜の市民を守るために最後までヒーローの脱出を支援したクラストは文字通りの盾だったのだろう。
脚の切断。エリちゃんの個性なら……とも思うが、今の時点でエリちゃんはヒーローでもなんでもない。そこは相澤先生の判断になるだろうか。
しかし、まだ最悪の状況にはなっていない。だからこそ俺達は前を向いて進まなきゃならないんだ。
その後、色々気になっていたことをみんなから聞いてから、俺はベッドから身を起こして降りた。
「センちゃん!? もう立てるの!? 身体は……!」
「大丈夫。違和感ないし……みんなから大体気になってたことは聞けたから。……ちょっとエンデヴァーの所行ってくる。荼毘の事、聞いてこないと」
「ん。そういや幾野は轟んちよく遊びに行ってたもんな」
「荼毘のあの謎の放送ジャック……下らないおふざけのような内容だったが、しかし確かにエンデヴァーと君の名前が出ていた。……了解だ。だが話が終わったらしっかり休みたまえ」
「俺らもみんなを見舞ったら寮で待ってるからよ。……無理すんなよ」
「ああ」
俺はもう一つ確かめなければならないことがある。
荼毘……轟燈矢だと名乗ったアイツを、エンデヴァーが……轟家がどう捉え、どうしようとしているのか。
それを聞く権利が……いや、義務が俺にはある。
轟家の関係を修復し、荼毘を撃退した俺にだけは。