【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!!   作:そとみち

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149 お義父さん……あなたはクソだ

 

 轟炎司とネームプレートに書かれた病室の前についたが……病室前には看護師さんがいた。

 恐らくはマスコミ対策か、家族以外の面会を断るための見張りとして駐在しているのだろう。

 俺はその人に会釈をして、一呼吸おいてから病室の扉をノックする。

 

「……もしもーし。エンデヴァーいますか。イグジストです」

「……イグジストか。入ってくれ」

 

 中からエンデヴァーの声。俺は扉を開けて病室に入った。

 そこには……ベッドから身を起こしたエンデヴァーと、轟家の皆さま。

 冷さん、冬美さん、夏雄さん。そして焦凍が揃っていた。

 

「お邪魔します。……体調はどうですか。刑務所護衛の任でケガしたって聞きましたが」

「すこぶる快調だ。寝てなどいられん……君の方こそどうなんだ。山荘で急に倒れたと聞いたが……」

「幾野……」

「俺も大丈夫です。さっき目が覚めて検査した結果バッチリ無事。今日の午後には退院予定です」

 

 一先ずはお互い病人ということでお互いの体をいたわる。

 俺が寝てる間に刑務所防衛でケガしたと聞いてたが……重傷というほどでもなさそうだ。顔色も決して悪くはない。呼吸も正常。

 しかし部屋の空気は重い。その理由は分かっている。

 

「……荼毘の事。聞いてもいいですか」

「ああ。君だけは……俺たちのそばに居てくれた君だけは、聞く権利がある」

 

 荼毘。

 山荘で俺と荼毘が話した内容は、あの映像はエンデヴァーも焦凍も、みんなも見たことだろう。

 途中からMAD動画みたいになって謎のギャグ展開になってたアレで、さっきスマホで世間の評判を見れば荼毘くんの捨て身のギャグだったんじゃないかみたいな風潮になっていたけれど……だが、その中で言っていたんだ。

 アイツは轟家の長男、燈矢だと。

 自分でそう言っていた。そして映像の最初、エンデヴァーの過去……虐待に近い暗い過去があったことも言及していた。

 あの事実を知っている者は轟家と、俺たちA組だけだ。そこから情報が漏れるはずもなく……となれば、本当に本人の可能性がある。

 

「ついさっき……家族でも話していた。あれは本当に燈矢なのかと……それが俺の中でずっとモヤを巻き、冷静になれず……刑務所護衛でこのザマだ。不覚を取った」

「……どうなんですか。俺は……燈矢さんってのを見たことがないから。本当にあれは焦凍の兄さんなんですか」

「……髪の色は冷譲りの白一色だった。髪を染めているのかもしれん……生きていればあれくらいの背格好にはなっているかもしれない。夏雄に比べて細身なほうだったからな。目つきは……似てるとも、似ていないとも言い難い……最後にあいつが俺を見た眼は、恨みに染まった目だった……俺は、あいつになんて声をかけたらいいのか分からなかった……冷に強く当たってしまっていた……」

「私も……そうだったの。エスカレートしていくこの人が悍ましくて、子供たちにまで面影を見るようになって……心を病んだ……」

「……私は家族が壊れてるのを知りながら怖くて踏み込めなかった。上っ面を繕う事しか……」

「俺があの時親父をぶん殴ってでも燈矢兄と向かい合わせてやれてたら……って、今でも思う……」

「……俺は」

「ハイもういいかな!? この話おしまいにしていい!? 暗いんですけど!! 俺そう言うのマジで苦手だからね!! ハイハイ切り替え!! 切り替えましょうねエンデヴァーも!! 冷さんも!!」

「すまん」

「ごめんなさい幾野くん」

 

 轟家総出で過去の傷を舐めあって澱みまくり始めたので俺はキレた。

 違うの!! 過去をほじくり返して辛い思いを思い出してもらいたいわけじゃねぇの!!

 これからどうしていくかを教えてほしかったの!! あとあれが本人かどうかだけわかればよかったの!!

 確かに辛い想い出を相手に零すことで楽になるのは分かるよ! 俺も過去の話聞いてもらったしさ!! でも語り出すことで落ち込む方向に行っちゃうのはそれタダの自虐だからね!!

 

「ってわけで俺が知りたいのは2点! あれがマジで燈矢さんなのか!! んでエンデヴァーはどうするのか!! 辛い記憶なのはわかるけどそれは置いといて!! どうするんスか!!」

「君のその切り替えは……羨ましくなる。結論についても先ほどみんなで……家族で話して出した」

 

 さて空気を一旦切り替えたところで、エンデヴァーが強い眼差しで今後の考えを述べた。

 

「正直……映像と声だけではあれが燈矢なのかは分からない。声も潰れているからな。だからまず何をおいても、()()()()()()。それがヒーローである俺と焦凍の役目でもある。それを第一とする」

「どうするにせよ、アイツは人殺して社会を混乱の渦に叩き込んだヴィラン連合の幹部だ。俺ももしまたアイツと会ったら容赦しねえ。何言われてもまず捕まえる。幾野も頼むぞ」

「うむ。もしそこで情けかけるみたいなこと言いだしてたらブン殴る所だったのでそこは安心。任せな、3度目の首絞めしてやるよ。……で、捕まえてから。どうします」

「考えられる可能性として……まずヤツが燈矢を騙る別人だという可能性。その場合は騙ったことを一生後悔させてやる。許されない嘘だ」

「っすね。でもそれがもし───」

「──もし、荼毘が燈矢本人だったとする。その場合に考えらえる可能性は二つ。一つは脳無のように……報告にあったイレイザーヘッドの旧友のように、死体を弄繰り回して蘇生させられている可能性。この場合は……ヤツの名の通り、荼毘に付す。あいつを失った山火事の事件の時……あいつの遺体は残らなかった。必死に探したが顎の骨が一部見つかっただけで。死体をもし回収されていたならば可能性はある。改めて燈矢の骨を迎えて、墓に入れる」

「…………もし」

「もし、最後の可能性。あれが生き延びた燈矢本人であり、本人の意志で俺への恨みを元に凶行に及んでいたのなら────」

 

 エンデヴァーの、轟家の考えを頷きながら聞く。

 まずそもそもアレがフカシの可能性。一番可能性としてはデカいと思う。

 何故なら、生きてたなら生きてたって言えばいいからだ。普通に名乗り出て、家に戻り、その上でエンデヴァーに恨み言を言えばよかった。普通はそうするだろ。

 一応、冷さんや夏雄さんからこれまでにそれとなく耳にした話では、エンデヴァーの後を継ぐヒーローになるために己を追い込みすぎてしまったという話だった。心底から父親が嫌いであればそもそもヒーロー目指そうとは思わないだろう。

 であればなんで人殺しなんてしてヴィランになったかという話で。やっぱ燈矢さんじゃねぇんじゃねぇかな。

 

 でもやっぱり万が一本人だったとして、考えられる可能性が脳無や黒霧のように改造されているという可能性。

 これもめっちゃあり得る。そもそもあの切り貼りしたような肌なんか改造の証拠じゃないか?

 その場合は脳無と同様に荼毘に付すと、エンデヴァーがそう言い切った。脳無はあってはならない改造人間。それもありだろう。死体を改造されたとなれば、死を冒涜している。その選択に、俺は口を挟めない。

 

 そして、万が一だが。

 荼毘が本当に燈矢本人で、洗脳などもなしに彼の意志で殺戮をしてしまっていた場合。

 

「……燈矢をそうさせてしまったのは全て俺の責任だ。俺の執念が生み出した悲劇……だから、俺が責任を取る。刑務所で面会し、話をして……俺も共に罪を償う。刑が執行された後は世間に謝罪し、アイツが手にかけた、ヴィラン連合の被害者遺族に謝罪し……償うために一生を費やす。全ての責任は俺が背負う」

「お父さん!! さっきはみんなで背負うって……!!」

「冬美。……全ては俺のせいなんだ。お前たち家族は被害者で……俺はお前たちだけは巻き込みたくないんだ。去年の11月ごろから今日にいたるまで……幾野くんが結んでくれた家族の時間。俺にはそれだけで十分だった。俺のような男には過ぎた時間だった……あとは償わせてくれ。償いのために俺は生きて……そして、お前たちには光の道を歩んでほしい。エンデヴァーの子としてではなく、一人の人間として……!」

「あなた……!」

「親父……!!」

 

 うん。

 なんか目の前でお涙頂戴のドラマみたいな展開になってる。

 ちょっとこの空気俺耐えられないです。

 なので。

 

「んー……ちょっと失礼。エンデヴァー」

「幾野」

「イグジスト、俺は「オラァッ!!」ごふっ!!」

「幾野」

「幾野くん! もっとやれ!! クソ親父殴ってくれ!!」

「いいわ、もっと殴ってちょうだい幾野くん」

「やっちゃって幾野くん!」

「ボッコボコにしていいぞ」

「言われずとも殴るわ!! とりあえず4発!! 冷さんの分!! 冬美さんの分!! 夏雄さんの分!! んでもって焦凍の分!!」

「なっ、ガハッ、なぜそんな、ゴホッ!!」

 

 とりあえずなんか雰囲気出して責任が云々言い出したエンデヴァーをぶん殴ることにした。

 このオヤジはホントにさぁ!! どんだけアンタ自分の評価低いんだよ!!

 家族のみんながもうみんなお互いの過去を反省して!! 手を取って!! 前を向いて歩きだしてんのに自分から手を離そうとするんじゃねぇの!!

 

「……荼毘が犯罪者だってのは分かるし! 俺も捕まえるし!! アイツのやったことは許されないんで捕まえたら多分死刑か終身刑でしょうけど!! それが全部アンタ一人の責任なわけねぇでしょうが!!」

「だ、だが……俺は……」

「アイツらの犯罪止められなかったヒーロー全員の責任もあるし!! こないだ逃しちゃった俺の責任もあるし!! 脱獄させちゃった刑務所の責任もあるし!! アイツをそそのかしたやつがいればソイツの責任もあるし!! ってかそもそもアイツが殺し始めたんだからアイツが悪い!! 仮にアレが本人だと仮定して、生き延びてたと仮定しても!! 燈矢さんがアンタを恨んで直接殺しに来たなら100歩譲って分かるけど!! 赤の他人を巻き込んだ時点でアイツが悪いんだわ!! 法律上は成人を迎えた者が犯罪を犯した場合は親に責任及ばねえんだわ!!」

「……幾野にそこまで言われると逆にスッキリするな」

「幾野くんは心の強ぇ奴なのか……?」

「幾野くん……」

「だからエンデヴァーが負うべき責任はまず!! まだ捕まってない荼毘の捕獲!! 続いてもし本人の意思によるものだったらそん時は社会的責任と道義的責任のもと被害者遺族への説明と、場合によっては謝罪!! その辺は家族みんなで考えながらね! 俺も手伝うからね!! んでもって……なによりも!! 今のこの社会の混乱を一日も早く解決し、元の平和を取り戻す事でしょうが!!」

「っ……!!」

「今はアンタがナンバーワンなんだ。みんながアンタの言葉を待ってる……弱気になんて絶対ならないでくださいよ。したらまたどこにいてもワープでぶっ飛んで来てブン殴りますからね」

 

 勢いで言いたいこと全部言ってやった。

 そもそも荼毘が操られて殺してても、自分の意志で人殺してても、それを選んだアイツの罪なんだよ。

 その原因の一部がエンデヴァーだとしても、それをエンデヴァーにぶつけずに人を殺した時点でなーんも同情する所ねぇわ。その歪みがエンデヴァーのせいだとしてもやっぱりそれは本人の責任だよ。

 

 ────だって焦凍がまっすぐ育ってんだから。

 

 悲しい過去を持ってる奴なんていっぱいいる。

 虐待に近い境遇の焦凍や、両親を殺した俺。無個性だった緑谷や、差別された障子……他にもきっといくらでも。

 でも、それでもヒーローになることはできる。人の為になれる奴らだっているんだ。

 

 だから今この時点でエンデヴァーが勝手に気分出して贖罪を考える必要はない。

 っつかよく考えたらマジでそんなこと考えてる場合じゃない。

 今はナンバーワンヒーローとして、アンタが社会に自分が健在だと伝えなきゃならない。

 平和の象徴として動かなきゃならないんだ。

 

「……イグジスト。俺は休む暇も、贖罪する暇もないという事か」

「そーゆー事っす。アンタが目指したナンバーワンの立場からまだ逃がさないっすよ。逃げるなら全部解決してから。そん時改めて家族みんなで話し合えばいいんすよ。俺も何も考えず話聞き始めたところありますけど、今日の俺の結論はこれっす」

「お前何も考えてなかったのか……」

「ノリと勢いでぶつかってから考えるから俺は」

「……ふふっ、幾野くんらしいね!」

「流石だぜホント。……親父、ここまで言われて立ち上がらなきゃ嘘だぞ」

「あなた。……幾野くんの言う通りよ。今この社会において……私たち家族の事情なんて二の次。今はあなたが立つときよ」

「…………ああ。もやもやした悩みが晴れた。そうだ……今はヒーローとして、この社会の危機を救う時だ。そのために俺は働こう……それが全ての贖罪になると信じる」

「まだ贖罪推しなんすか」

「親父は過去に拘るから……このくらいにしといてやってくれ幾野」

「まぁ許したろ!! んじゃ話したかったことはおしまい!!」

 

 なんか……なんかノリで結論が出たけどまぁふさぎ込みすぎる方向に行かなかったからよしとしたろ!!

 あれ、俺何を聞きに来てたんだっけ? 荼毘が本当に燈矢さんなのかどうか聞きに来てたような……まぁいいか。ぶっちゃけどうでもいい。

 いやよくはないけど、でもそもそも確定もしてない今考えるべきことじゃねーわってのは分かった。

 今は俺も、エンデヴァーも、焦凍も……ヒーローとして社会の平和を守るために何ができるか考える時なのだ。

 特にエンデヴァーは、その言葉を社会が待っている。ナンバーワンヒーローがどのように再起するかを待っているんだ。

 ヴィラン共が脱獄して溢れた社会を、救わなければならない。

 

「……イグジスト。最後に一つだけいいか」

「なんスか」

「俺のやるべきことは分かった。その上で……改めて家族を頼みたい。焦凍に夏雄、冷、そして冬美を……これからもよろしく頼む」

「ん。そんなお願いならいっくらでもですわ! 任せてください、俺だって皆さんの隣にいたいんですから。またみんなでご飯食べましょ!」

「……ああ。安心した」

「お父さん! もう……うん、でも……頼りにしてるね、幾野くん。末永く

「ええもちろん……冬美さん最後なんか言いました?」

「んー? なんでもないよ?」

「隙を見せたわね幾野くん」

「言質とられたな」

「全部終わったら義兄さんって呼ぶからな」

 

 しかし最後に、エンデヴァーが己の立場から万が一を考えたのか、俺に家族を頼むという話を言ってきて。

 まぁもちろんそこはOKで、俺だってみんなと一緒にいたいわけで即答したけど。でも俺はアンタだって守りたいんですからね? 自暴自棄にはならんでくださいよ??

 あとなんか冬美さんもみんなも急に小声でアイサインで会話し始めるのやめてくださる?? 轟家だけに伝わるアイサインは俺には読み取れないんですけど???

 

「……すみませーん。いい感じにまとまったところでその話に俺らも混ぜてもらっていいですかね?」

「失礼する。途中から声が部屋の外に漏れていた。ナンバーワン、今の社会の現状は貴方だけが背負うべきものではない……私達も共に考え、共に背負わせていただきたい」

「ホークス……ベストジーニスト……」

「ナンバーツーとナンバースリーまで来た」

「イグジスト、先の戦いでは助けられた。成程、爆豪の言う通りデニムが似合いそうな男だな」

「爆豪ちゃんからなんて聞いてたのか後で詳しく聞かせてくださいね。まぁ……とりま俺は話したいことも話し終えたんで。いったん失礼します」

 

 おおよその話が済んだところでホークスとベストジーニストが病室に入って来た。

 話す内容からすれば、今後の……記者会見に向けた打合せと言ったところか。

 この3人がヒーローのトップ3だ。ここに公安委員長も混ぜて、今後のヒーローたちの動きを社会に周知する……っていう流れか。そんなところになりそうだ。

 

 そうなれば俺は邪魔だな。

 轟家は荼毘の件もあるし話が絡むかもしれないけど、俺は一人の学生ヒーロー。

 まぁ俺の知名度とかそう言うの使いたいって話があれば応じるが……基本的にはここから先はプロヒーローの領分。

 御暇して次は緑谷の見舞いに行きますかね。

 

 

 そうして騒がしくなった病室内を出ていくときに、すれ違いざまにホークスに一声かけられた。

 

「……ねぇイグジストくん」

「何スか」

「さっき、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。なに、声が漏れるの警戒して個性使ってた?」

「─────ま、そんな感じです」

 

 にへっと笑顔を返して、俺は病室を後にした。

 

 


 

 

 その後、緑谷の病室前に行くと。

 

「お。爆豪ちゃん」

「幾野か……無事なンか」

「ああ、問題なく。そっちは?」

「チッ、ピンッピンしてるわ。入院するまでもねェ……まだ起きねェバカとは違ってよ」

「緑谷はまだ寝てんのか……中は?」

「今はオールマイトが二人きりにしてくれとよ。バカが……どーせ例の件だ。麗日や飯田が来たけど追っ払った。デクのおばさんは今日の夕方ごろ来るっつぅ話だ」

「……それまでに俺ら退院予定じゃね?」

「ああ。クソがよ」

 

 爆豪ちゃんが待合の椅子に座ってたので声かける。

 こいつも怪我は小さくて済んだらしい。何よりであるが……その顔はまぁキレる寸前って感じだな。

 ま、そりゃそうか……死柄木を逃がしちまって、緑谷も倒れちまって。

 俺とも約束した、何とかするってのをできなかったんだ。そこは爆豪ちゃん一人の責任じゃないけれど。

 

 爆豪ちゃんの隣に座り、改めて死柄木との戦いの状況などを聞きながら……緑谷の目覚めを待つ。

 もっとも、それはOFAの話がどうしても絡むことだ。ここでひそひそ話するにも無理がある。

 だから俺は力を使う。進化した俺の個性を。

 

「今、周囲の空気に音の伝播を無視させた。俺たちの会話は周りに聞こえない」

「また出来ること増えやがって。チッ……OFA。クソ手マン野郎が今一番に狙ってるのはデクだ。そこははっきりしてる」

「だよな。退院したらみんなで守らねぇと」

「…………ケッ。デクだけじゃねェ……てめェも狙われてんだろうが」

「考えないようにしてたんだから言わないでくれる? どーすっかな……絶対俺相手だと人質って作戦が考えられるよな」

「AFOが脱獄した以上、アイツが近くにこなけりゃ泥ワープの範囲外だ。あとは雄英のセキュリティ期待するっきゃねェ。テメェの身内も雄英に呼ばれてんだろ今頃」

「……え? 雄英に? いや叔父さんたちもそりゃ気になるけど。何故?」

「聞いてねーのか。雄英が狙われる可能性のある地域の避難所になる見込みだっつー話だ。俺ら学生の親にも声かかってる。オフクロがそんな事零してた」

「そーなん? なるほど……根津校長が考えそうなところだな。まぁでもそれなら助かるな……ミリオ兄さんも心配してただろうし」

「雄英の他、多分だが士傑とかでけェ学校は避難所になって……その間に脱獄したヴィラン共をヒーローが殲滅確保って所だろうな。予想されんのは」

「流石爆豪ちゃん」

「少し考えりゃ分かる事だろボケ」

 

 二人だけの会話になり、今後の話を少しだけした。

 明らかに死柄木に狙われてるのは緑谷のOFA。これはオールマイトも把握していることだろう。

 ……もう隠すのは難しいのかもしれないな。オールマイトが出てきたらそこも少し相談しておきたいが……今日話せるかどうか。

 んでもって爆豪ちゃんから、俺の個性も狙われていることを諭される。

 それもわかってる。死柄木も直接俺に言ってたし。狙われない理由がないからな、この個性は。

 ただし緑谷と違って俺の個性は無敵だ。オート個性さえ発動しておけば奪われることはないし。俺に接敵したら逆に撃退してやるくらいの気概はある。

 けどなぁ。そうなった時にヴィランが考えそうなこともわかる。

 人質を取られたら終わりだ。俺を困らせるならその手段が一番で。

 もしかすればこの瞬間にもクラスの誰かが、家族の誰かが襲われている可能性がある……そう思うだけで心の底から震えてしまう。

 黒霧が確保されていたので今までは敵にワープする手段はなかった。しいていうなら総合病院にいた泥ワープ使うチビ脳無くらいで、前に荼毘が逃げたのはその個性を使ったからなのだろうが……その脳無はミリオ兄さんが殺っている。

 だから問題はAFOのみ。しかしAFOが何の策もなく安易に飛び込んでくるだろうか……いや、悩んでてもどうにもならない。

 万が一そうなったときに俺がどうするべきか、それは考えておこう。

 

 で、爆豪ちゃんから聞いた話だと今後は雄英が避難所になり、肉親や関係者から、その後は恐らく一般市民の避難が進むだろうということで。

 それは有難い事だ。前に明ちゃんに学校の警備施設について聞いたところめちゃんこ重厚な守りになってたから、アレがあればワープ以外は実質無力化できると考えてもいい。

 あの中に大切な人たちは避難してもらって、クラスのみんなが戻ってきたところでヒーローたちの指示に従って動くか……いや。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()

 

 ────だったら、俺から攻め込んで潰しちまえば────

 

 

「───ん。また会ったね幾野くん」

「……ホークス。まぁそりゃ。オールマイトが見舞ってるしまだ緑谷起きてないんで会えてないですけどね」

「爆豪、君が友人の見舞いを待つとは……変わったな」

「ケッ。……デクになんか用かよアンタら」

「まぁね。オールマイトともちょっと話がしたくて……」

 

 少し思考が暴走しかけたところで、轟家との話し合いを終えたホークスとベストジーニストが今度は緑谷の病室にやって来た。

 なんやろ。……いや、OFAの話か。

 あの戦いでインカムの記録にOFAの名前は残っているし、緑谷が狙われたという記録も残っている。

 その辺をエンデヴァーとも話して、どうするか……ってところか。

 

 一瞬だけ、爆豪ちゃんと目を合わせる。

 その一瞬で意志は通じる。

 俺たちは───

 

「……行くぞ幾野」

「ん。なんか大人の話になりそうなんで、俺たちはこれで」

「ごめんね、気を使わせて。緑谷くんの目が覚めたら君たちが心配してたってこと伝えておくよ」

「俺らだけじゃなくて、A組みんなが心配してたって伝えてやってください」

「俺ァデクの心配なんかしてねェわボケが!!」

「やはり変わらんか爆豪」

 

 ───オールマイトに任せることにした。

 

 ここで俺たちがOFAについて口を滑らせて、後で緑谷やオールマイトの為にならなかったら申し訳ない。

 箝口令を守る。緑谷とオールマイトがOFAの当事者であるから、意思決定は俺たちにはない。

 そう思い席を外す。

 

 その後俺たちは、まだ見舞いに行ってない相澤先生の所に行き、無事を確認したうえで退院の時間になり病院を後にした。

 俺たち学生は指示があるまで寮で待機だってさ。

 

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