【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!! 作:そとみち
【side
「痛ってぇ…」
郊外のカフェの一室に、黒霧の個性によりワープしてきた死柄木が横たわる。
両腕両脚をヒーロー『スナイプ』の個性で打ち抜かれ、重傷を負った状態だ。
「完敗だ……脳無もやられた。手下共は瞬殺だ……子どもも強かった……平和の象徴は健在だった……!」
微動だにせず、呟くように文句を垂れる死柄木。
「話が違うぞ『先生』……!」
『違わないよ』
そんな彼の言葉に、モニターから響く声が返事をする。
『ただ見通しが甘かったね』
『うむ、舐め過ぎたな。敵連合なんちうチープな団体名で良かったわい。…ところでワシと先生の共作の脳無は? 回収してないのか?』
「オールマイトによって吹き飛ばされました。正確な位置座標を把握できなければいくらワープとはいえ探せないのです。そのような時間は取れなかった」
『せっかくオールマイト並みのパワーにしたのに……まァ……仕方ないか……残念』
先程の戦闘でオールマイトがショック吸収を無効化し吹き飛ばした脳無を回収することが出来ず、手駒を失った。
しかしその事が大したそれでもないかのように、モニターの向こうの声は雑に返事が返ってくる。
「パワー……そうだ……」
そして黒霧の言葉に、死柄木が思いだしたように言葉を紡いだ。
「一人……脳無のパワーすら欠片も通じなかった女子がいたな…………」
『…………へぇ』
モニターからの返事は興味があるのかないのかわからない、無感情の声色。
「あいつ……すり抜けるような個性のくせに脳無の脚をぶっちぎってた……訳が分からないヤツだよ……あの邪魔がなければ生徒の一人や二人は殺せたかもしれない……ガキがっ……ガキ……!」
死柄木の声は怨恨に満ちた呪いのような深みを持っていた。
余りにも死に触れすぎた物だけが捩じり出せる呪怨。
『悔やんでも仕方ない! 今回だって決して無駄ではなかったはずだ。精鋭を集めよう! じっくり時間をかけて!』
『我々は自由に動けない! だから君のようなシンボルが必要なんだ死柄木弔! 次こそ君という恐怖を世に知らしめろ!』
ヴィランの暗躍は、ここから始まる。
翌日の早朝。
「昨日の夜シコったらめっちゃ濃いのいっぱい出た」
「朝の最初のセリフがそれかよお前ェェ!?」
俺は峰田と共に日課であるランニングを行っていた。
昨日はUSJで大きな事件があり、俺も峰田も相当疲労しただけあって今日は軽く流す程度のランニングだ。
「いやさぁ……なんか生命の危機に立たされたからかな? めっちゃ捗ってさぁ……いやぁ味わい深かったね……感動したぁ……」
「早朝とはいえ走りながらねっとり赤裸々にオナニー事情を話すんじゃねぇよバカがよぉ…!」
下らない話で峰田をからかえる。この上ない平和を満喫できているな、ヨシ!
まぁ昨日はあの後大変だった。
幸いにして生徒全員、殆どケガがなくて済んだ。一番大きな怪我が緑谷の中指の骨折だったかな。
それぞれがヴィランと対峙したと聞いたが、13号先生のいるところでは先生が身を挺して生徒をかばい、他の所では各々が迎撃したらしい。
上鳴が一瞬人質になりかけてヤバかったらしいが、スナイプ先生ほか雄英教師陣が早めに応援に来てくれたのも生徒の被害が少なかった要因の一つだろう。
やはり俺の判断が偉かった……! まず外部に連絡を試みた俺偉い……!!
その点は校長先生からも褒められたけど、最初に黒霧に突っ込んだことと逃げずに脳無相手に大立ち回りを演じたことはめっちゃ怒られた。
んにゃぴ……先生方が生徒を荒事に巻き込みたくない気持ちは分かるけど怒ることはないじゃんねぇ……。
「なので相澤先生にはいつか絶対ショタになってもらう。絶対にだ」
「担任の男性教諭にまで毒牙を向けるのかよお前はよぉ!?」
いやああいう雑なオッサンに限って子供の頃可愛かった説あると思います。
親御さんがお名前にショウタ君なんてつけるんだから美少年だったに決まってるだろ!
髪を伸ばしてるのも若かりし頃自分の見た目に自信があった名残と見たね! 俺は詳しいんだ。
「それにしてもまー相澤先生も13号先生も軽傷でよかったよ。いくらリカバリーガールがいるとはいえ、命の危険もあったからなぁ」
「まぁなー。無事にこうしてオイラとお前で気兼ねなく走れてるのが有難いこったよ」
最近見つけた河川敷公園を一周し終えて、俺と峰田は水分補給も兼ねて少し休憩する。
改めて思い返せば昨日は本当にとんでもない体験をしてしまった。
プロヒーローになればこれが日常となるのだろうか。プロってすげぇな。
「……ん。電話だ」
「お、こんな朝に? 誰だ?」
「あー……葉隠ちゃんだ」
「ハァ!? なんで!?」
スマホが鳴ったので確認してみれば葉隠ちゃんからの通話だった。
興奮し始める童貞少年を抑えながら俺は通話応答ボタンを押した。
『あ、出た! お、おはよーセンちゃん!』
「おはよ、葉隠ちゃん。どうしたの、こんな朝早く」
『あ、うん、えと、昨日の事が心配で、大丈夫だったかなーって……朝起きたらどうしても声聞きたくなって……』
「天使か? 葉隠ちゃんちょっと結婚しよ?」
「何話してんだよお前らよぉぉ……!!」
『え!? いきなり急すぎるよー!? いつものセンちゃんで逆にちょっと安心したよ!? ……あれ、峰田くんも近くにいるの?』
「あー、俺と峰田は毎朝ランニングしてんのよ」
急に俺の声が聞きたいとか言う殺し文句を述べてきて青少年の不健全なナニかを刺激してくる大天使ハガクレ=トール。
優しい子やん……。俺のこと心配してくれてたんやなって……。やはり天使……。
帰ってシャワー浴びてから葉隠ちゃんでシコります。
「一先ず俺は無事だよ、昨日も怪我ひとつないの見たでしょ?」
『うん、それはそうなんだけど……昨日の夜にラインで梅雨ちゃんに聞いたら、センちゃんすっっっっごい頑張って敵を引き付けてたって聞いて……なんか、心配でいてもたってもいられなくて……!』
「天使か? 葉隠ちゃんやっぱ結婚しよ?」
「天丼で求婚するやつ初めて見た」
『まだ早いよー! うん、でも元気そうでよかった! 大変だったみたいだし落ち込んでないかなって心配しちゃったから……』
「葉隠ちゃんの優しさがスゥーっと染み込んでメンタルも完治したから大丈夫。いやほんと、心配してもらっちゃって悪かったね」
『ううん、全然! こっちこそこんな朝早くから連絡しちゃってごめんね! そ、それじゃまた明日!』
「おお、また明日」
「完全に彼氏彼女の距離感じゃん……まだ入学して一か月も経ってねぇのに……」
「人徳かな」
「根拠のない自信が怖ぇよぉぉ……!!」
朝一から葉隠ちゃんとお話が出来て気分もホクホクですわ。
きっと今日はとってもいい日になるねミネ太郎!
「ペッ!」
「河川敷公園に唾を吐き捨てるな」
「どうせオイラなんて誰からも心配されてねぇんだよ……昨日だって誰からも連絡来なかったしよぉ……」
「泣くなって峰田。昨日は俺が連絡したじゃねぇか」
「クソ際どい自撮り送ってきたよなァ!? どんだけ鋼メンタルなんだよって驚愕したよオイラぁ!? あれのせいで萎びたわオイラのリトルミネタがァァ!!」
「今日の分欲しい?」
「話が通じない!」
「今ここで脱ごうか♥」
「殺さなきゃ……これ以上被害者を増やさないためにも今ここで……!!」
下らない話で峰田をからかって楽しい時を過ごしたのだった。
なお帰りのランニングの最中に峰田の方にも梅雨ちゃんから心配のラインが入って機嫌が直ったことを後述しておく。
その後普通にグルチャで昨日大変だったねトークで盛り上がったのもさらに記しておこう。
そして登校が再開した翌日。
「お早う」
「「「相澤先生復帰早ええええええ!!!!」」」
そこには無事な様子を見せる相澤先生の姿が!
脳無にぶん殴られて肋骨とか腕の骨とか折れてたって聞くけどだいぶすっかり治っていらっしゃる。
リカバリーガールすんげぇ。
「先生! 無事だったのですね!!」
「ああ……幾野が踏ん張ってくれたからな。教師として、ヒーローとしては情けなさの極みだが……改めて言葉にしておく。一昨日は助かった、幾野」
「いえ、俺にはあれくらいしか出来んので。先生が率先してみんなを守ってくれて、飯田委員長が助けを呼んでくれたからこそ無事に今日があるものと俺も……」
「だがお前が無茶をしたことは後で指導する」
「ひどい手のひら返し!?」
「まぁ俺の安否はどうでもいい……何よりまだ戦いは終わってねぇ」
持ち上げて堕とすのが好きなのかな相澤先生。サドってやつですか。
謙遜して答えたのに突き放された。やはりショタにするしかねぇな。俺は決意した。
「戦い?」
「まさか……」
「まだヴィランが───!?」
「───雄英体育祭が迫ってる!」
「「「クソ学校っぽいの来たあああ!!!」」」
次話からギアを一つあげていきます。
次回、「オラッ! 緑谷の性癖ダメになっちゃえ♥」
ご期待ください。