【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!!   作:そとみち

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挿絵表示をonにして読んでいただけるといいことあるかも。




 

 

 

【side 会見会場】

 

 

 死柄木の覚醒、タルタロス及び三か所の刑務所が陥落してから三日が経った。

 脱獄したヴィランたちによる強盗事件などが徐々に発生件数を増やしており、人々の不安は高まっていた。

 ヒーローに休む時間はなく。これまで以上にパトロールで街を歩くヒーローの数は増えていた。

 

 パニックにはまだ至っていない。

 けれども、人々はいつまでも我慢してはいられない。

 だからこそ、この会見に注目が集まった。

 

 みんながみんな、ヒーローを責めたいわけじゃなかった。

 超大規模ヴィラン集団を人的被害を極限まで抑えて一斉検挙したヒーローたちに希望を持っていた。

 

 だからこそ。

 

 

「────それでは、会見を始めます」

 

 

 人々は、その男たちの言葉を黙して待つ。

 

 


 

 

 エンデヴァー、ホークス、ベストジーニスト、そして公安委員長。

 この4人が会見会場に正装で現れ、全ての記者の視線、テレビ局のカメラを受け止めていた。

 脱獄したヴィラン……『ダツゴク』と呼称される存在から、どのように人々を守っていくのか。

 平和をどのように取り戻すのか、それを聞きたかった。

 

 不安だから、安心させてくれ。

 安心できる言葉を言ってくれ。

 間違いなど犯してないと言ってくれ。

 

 人々が縋り、祈る様に見守る会見で……エンデヴァーは記者に問われた荼毘との関係について、答えた。

 

 

「───現状、荼毘がかつて亡くした私の息子である燈矢と同一人物であるかの確証は取れていません」

 

『しかし! あの映像ではDNAが一致したとの話を荼毘がしていましたが!』

「DNAについてはあの映像で入ったマウントレディの発言の通り、ソースが一切ありません。私は九州で脳無に腹部をえぐられましたが、あの時現れた荼毘はイグジストの活躍で何もできずに撤退した。私の血液を回収できたとは思えない」

 

『イグジストが実は隠し子であったという話は!?』

「それこそあり得ません。私の第四子は彼の友人でもある轟焦凍であり、イグジストと私に血縁関係はありません。そこははっきりと否定させていただきます」

 

『無理矢理奥様を娶られ、子を産ませたなど家庭環境への発言もありましたが、真相はどうなのですか!!』

「私と妻は見合いによる結婚ですが、そこに強制するようなものはありませんでした。生まれた長男……燈矢に自分を超えるヒーローになってほしいと夢を託し、共に育てました。燈矢との最後の別れが喧嘩別れになっていたことも事実です。私を目指しヒーローになるために無茶な訓練をして己の身を顧みない息子を私は叱った。それに反発し家を飛び出た燈矢が……更なる無茶な訓練をしてしまい個性を暴走させて山火事を起こし、焼死しました。悔やみきれぬ過去であり、今もなお後悔が残ります。その事件で妻は心を病み、家族関係も悪化した……全ては私の至らなさによるものです。──────しかし、そのことを荼毘が言及した点については、公表している私の過去を遡れば想像できる部分かとは思います。ナンバーワンを目指していた当時、私が力に焦がれていたことも事実として存在しています。それを表すように、荼毘の映像の中には具体的な事情などの話は一切零れておらず表面的なものばかりでした。私への中傷を目的とするような」

 

 エンデヴァーの答え。

 荼毘が己の息子であることは不明だと。そこはあの映像を見ていた全員が分かっている通りで、信ぴょう性のない情報だけだったために荼毘の捏造と言われれば納得は容易であった。

 

 しかし……己の家庭環境についてエンデヴァーは核心をぼかした。

 本当は違う。エンデヴァーが燈矢を想い、家族を想い、焦凍を思っての教育であったことには間違いがないが、エンデヴァーは己の態度を余りにも顧みなかった。

 怒鳴りつけ、言う事を聞かせる古き教育だった。余裕のない男であった。

 

 だが、それを赤裸々にこの場で述べることで、人々が救われるのか。

 それもまた否。悪戯にヒーローへの信頼を削ることに他ならない。

 そのためにエンデヴァーは己を裏切り、家族を裏切り、人々の耳に響きの良い言葉を並べた。

 

 しかしこの事情をぼかすことについては、今でこそ関係を改善できた家族全員が了承していることでもあった。

 仮初の象徴(ナンバーワン)として、たとえ真実を闇に隠しても、人々の不安を拭うことを選んだ。

 

「現場はあの子の下顎部の骨しか見つからないほどの高熱に晒されており、生存は絶望だと警察の調査で言われていました。燈矢が生き延びているとは考え難く……荼毘の発言は、炎系個性を持つ赤の他人のヴィランの許されぬ嘘である可能性が最も高いと考えています」

 

『な、るほど……しかし、それでもあなたを名指ししてあのような意味不明な動画を流す理由が分かりません! エンデヴァーは今回の事態にどのように対応を考えておられますか!』

 

「仰る通り、もしかすれば同じ炎系個性としてナンバーワンである私を恨んでの凶行かもしれない。もしくは……万が一にも燈矢の遺体が回収され、脳無のように改造、洗脳された姿かもしれない。もしくは奇跡的に生き延びて……その上で、私への恨みを募らせ、無辜の人々に手をかけているのかもしれない。……ですが、それは最早ただの私個人の感傷による事情でしかない。()()()()()()()。あの男に、ヴィラン連合にどんな理由があろうとも、私のやることはただ一つ」

 

 

「───ヴィランを捕え、社会の平和を取り戻す」

 

 

「この未曽有の事態を解決するために、全てのヒーローや警察らと協力し、迅速な対応を進めます。この会見の場ではそれを述べに来ました。荼毘の発言の真意を確かめるのは、ヴィランを全て捕えて、元の平和が戻ってからでも遅くはない。まずは何よりも皆さまの、国民の平和を取り戻すために尽力をいたします。言うなれば……それが今、私に出来る償いです」

 

 言葉を述べ終えて、エンデヴァーが大きく頭を下げた。

 

 これを聞いていたすべての国民は、その姿に象徴の健在を感じ取った。

 既に社会が混乱する事態は起きており、平和は崩れてはいるが……最悪の事態には至っていない。

 ダツゴクがこれから起こすであろう事件も、ヴィラン連合の企みも、これから起きるであろう。

 社会全体に不安は広がって、ヒーローの存在が求められている。

 

 だからこそ、平和を取り戻すと断言したエンデヴァーに、人々は縋る事が出来た。

 怒りを飲み込んだ熱い眼差しに、不安を呑み込み、彼らヒーローに託す想いを重ねていった。

 

『……ホークスに質問です! 貴方も荼毘の映像で名前が挙がっておりましたが、関係は!? イグジストに強制わいせつを迫ったという話は本当ですか!?』

「いやアレを真に受けることあります? 確かにイグジストくんとは九州でチームアップもした仲ですし、ヒーローの先輩後輩として親しくはしていますが……彼に対してそういう方向の感情は欠片もないですって。イグジストくんとも事件後に話しましたけどお互いにめっちゃ困惑してましたからね。後でイグジストくんにこの件で話聞きに行ったりして蒸し返さないでくださいね? 彼が可哀想なんで。どうせ有名な名前だからって俺と彼の名前上げただけでしょ。下らない冗談に構う暇ありますか」

 

 続く会見で、ホークスも荼毘の映像の中で名前が挙がっていたため、木っ端記者から下らぬ質問が投げかけられた。

 これに対してホークスはいつものマイペースな態度を崩さずに対応した。服装は正装とはいえ、普段通りのホークスの態度を見て、人々はむしろ安心を覚える。この不敵さが彼のイメージでもあるからこそ。

 

「エンデヴァーの言う通りですよ。あんなヴィランの下らないウケ狙いの映像について話すよりも……今は社会の平和を取り戻すことです。そのために俺も尽力します。異能解放戦線に潜入工作までして万全を期したつもりで、それでも取り逃してしまった。その責任は、これからの俺の働きで少しでも償います。被害は既に出てしまって……でも、これ以上は許したくない。これまで以上に迅速に事を成すことを誓います」

 

 次いでホークスも、社会の平和を取り戻すのが先決であると意志表示をした。

 ナンバーワンとナンバーツーによる、はっきりとした表明。

 取り逃がしたヴィランを、ダツゴクを、一刻も早く捕らえて平和をつかみ取ると。

 人々が何よりも聞きたかった言葉を、この会見でハッキリと口にした。

 

「……私もお二人の考えに同意です。怪我も無事完治いたしました。私もすぐにヒーロー活動に戻り、ヴィランを捕まえる所存です」

『ベストジーニストの復帰につきましてはおめでとうございます。しかし、今は緊急事態宣言も出て社会は混乱の渦中にあります。不安を抱える人々のためにも……今後、具体的にどのようなヴィラン対策を行われるのかぜひご回答願います!!』

 

 会見の流れはエンデヴァー、ホークスらヒーローへの野次にも近い揚げ足を取るような質問ではなく、これからの社会を見据えたヒーローたちの活動に焦点が当てられて行った。

 これに応えたのが公安委員長だ。彼女はマイクを手に取り、今回の事態への謝罪を述べてから、今後の対策を説明した。

 

「脱獄したヴィランは関東以南から中部、近畿の地域に集中しています。北日本や西日本から応援のヒーローの手配を既に行っておりますが、ヴィラン事件がどれほど増えるかは現時点でハッキリと申し上げられません。だからこそ、出来る限りの手段を講じることにいたしました」

『それはどのような!?』

「まず第一に人々の安全。政府と相談の上、本日より雄英や士傑をはじめとした広大な敷地と十分なセキュリティを持つヒーロー科の学校を指定避難所として開いていただく運びとなりました」

『避難所の設営!! それはどれほどの人数を収容できるのですか!?』

「勿論、学校のみではなくヒーローを常駐できるセキュリティのある建物等も含まれますが……現時点で展開する施設で少なくとも500万人以上からの避難スペースを確保できる見込みです。無論、これだけでは全く足りない。避難所への避難が難しい方もいらっしゃるでしょう。そのためにもヒーローたちの巡回範囲を広げます」

『しかし脱獄したヴィランたちが徒党を組むようなことが考えられるかと!! ヒーローは守り切れると言えるのですか!?』

「仰る通りです。ヒーローが一人だけではヴィランにやられてしまうかもしれない。それでは意味がない。そのため……対策として、ヒーローたちは基本的にチームアップによる活動を行う見込みです。チームアップは公安を通して順次指示、管理を行います。先ほどの避難所の指定は、チームアップにより手が回り切らない範囲の人々を守るための手段とお考え下さい」

『避難所への入居の条件などはあるのですか!? ヴィランが紛れ込む様な事はないのでしょうか!?』

「この後すぐに公安ホームページ、並びにニュース等でも周知いたしますが、基本的に避難所の利用につきまして条件はありません。勿論悪意を持ったヴィランでないことが前提にございます。そこを確認する手段も準備されています」

『ヒーローのチームアップはどのような組み合わせで……』

「それを公表するとヴィランが情報を得てしまうので……」

『学生ヒーローや仮免ヒーローの扱いは……』

「基本的に避難所周囲のパトロールに協力いただく予定を……」

『ヴィラン連合への反撃はいつ頃に……』

「調査を進める中で検討を……」

『緊急事態宣言下における人々の活動について……』

「政府と連携して周知を……」

『いつ頃まで避難所生活を続けなければ……』

「脱獄したヴィランの再確保とヴィラン連合の拿捕が済み次第を見込んで……」

 

 公安委員長の発表に記者たちは騒めき、それを見ていた人々らも驚きを得て……そして、その内容に大きな反発はなかった。

 一度だけ、場を掻きまわしたいだけの悪意ある記者が頓珍漢な質問を投げかけたが、それはエンデヴァーが一睨みで押し黙らせ……その後は極めて円滑に、有意義な質疑応答が進められた。

 守るために尽力するヒーローたちに、守られるための情報を得る記者たちの、想いはいつしか一つになっていた。

 

 ヒーローたちは、今こそ立ち上がり、社会の平和を取り戻すために団結する。

 人々は、不安も焦燥も、すべてをヒーローたちに託す。

 

 守るために。

 守られるために。

 

「ヒーロー飽和社会と呼ばれるようになってから、初めての緊急事態宣言発令となった」

「今、全てのヒーローが問われている。その意志を。想いを。平和を取り戻す為に全てのヒーローがこの事態の終息に向けて動いていく」

「だからこそ───────」

 

 

「───()()()を見ていてくれ」

 

 

 エンデヴァーの宣言のもと、全てのヒーローが一丸となり悪意に呑まれまいと奮起した。

 この緊急事態宣言下にある社会で、日本という国は初めて想いを一つにした。

 

 

 

 だが、最後に。

 先程筋違いの質問をした記者が、意趣返しの様な底意地の悪さで、エンデヴァーに質問を投げた。

 

 

『先日の異能解放戦線襲撃作戦の中で、ヴィランの首魁である死柄木が「ワン・フォー・オール」と呟いていたとのことです。これについては何かご存じでしょうか。あのスーパーヴィラン「オール・フォー・ワン」と何か関係があるのでしょうか』

 

 

「───わかりません。死柄木がオール・フォー・ワンと関係を持っていたことは確実ですが、ワン・フォー・オールという単語には現在も心当たりはなく。今後の調査でそこも調べていきたいと考えています」

 

 

 エンデヴァーは、OFAについて聞かれ、わからないと答えた。

 

 

 

 ───緑谷とオールマイトに余計な詮索が向かないように。

 

 

 


 

 

【side ハイツアライアンス A組寮】

 

 

 

 

 

「───みんな、大変だ! ドアに手紙が……!!」

 

 

 

「峰田……それ、()()()()()()()()()

 

 

 

「違ぇんだよ!! ()()()()()()()()()()()()!! この手紙挟まってたのオイラだけか!?」

 

 

 

「……ねぇ。()()()()()()?」

 

 

 

「なに? ……オイ、まさかアイツ!?」

 

 

 

「─────バッカ野郎……ッッ!!!」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 辛い道を厭わないものをヒーローと呼ぶのなら。

 

 

 彼らが辛い時には────

 

 

 

 

 

 

 ───────()()

 

 

 

 

 

 


 

 

──── 第 150 話 ────

 

 


 

 

 

 

 

 

「でっけーヴィラン」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我が世の春ってツラしてんなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

──── 終 章  開 幕 ────

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いなくならないでね」

 

「君こそね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





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