【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!! 作:そとみち
【side 幾野】
俺たちはレディ・ナガンを撃破して説得し味方にしたのち、彼女が緑谷を連れてくるようにAFOから指示を受けていた場所……灰掘森林の洋館、異形排斥主義集団のアジト跡に向かっていた。
メンバーは緑谷、俺、そしてエンデヴァー、ホークス、エッジショット、シンリンカムイだ。表に姿を現さないように、運送トラックに偽装した車両で向かっている。
ベストジーニストはこの作戦には参加しなかった。当人であるレディ・ナガンも同様だ。
その理由は簡単で。
「……
「幾野くん……本当に大丈夫なの?」
「余裕のよっちゃん。お前らにはまだ俺が見えてるだろ?」
「イグジスト、お前にだけは倒れられるわけにはいかん……はっきり言うが今この場で最も失ってはいけないものはナンバーワンの俺ではなく、OFAを持つ緑谷でもなく……イグジストだ。先ほども言ったが無理だけはするな! お前を失ったら俺は家族に顔向けができん……!!」
「急に激重感情零さないでくださいよエンデヴァー、まだまだ余裕ですって! ちょっと調子悪いだけですしそのうち治る感じあるんで!」
戦いの後、結局俺が意識を集中しても見えなかったレディ・ナガンに続いて、ベストジーニストも合流した時点で俺の存在を把握することができなくなっていた。
間違いなく個性の暴走が進んでいる。病室ではまだ、俺の方が意識してればベストジーニストに俺の姿は見えていたんだけどな。
まあでも他のメンバーにはまだ俺の姿が見えている。恐らくだが、俺と結んだ縁が強い相手であればあるほど……長い時間を共にした仲であればあるほど、俺の個性の暴走に抗えるのだろう。
しかしこれもいつまで保つもんかね。
しーらね。ま、そのうちいい感じになるだろ。
今は
「で、そーいやラーカーズのお二人もご一緒してますけど。マウントレディはどしたんスか? もしかしてまだギガントマキア戦でのダメージ抜けてない?」
「いや、マウントレディも回復はしている。後遺症などもないからそこは安心しろイグジスト」
「彼女は雄英のほうで別件の任務に当たっていてな。息災ではある……この調査が終わったらイグジストも雄英に戻って休め。まる2日ほぼ働きづめのはずだ。デクも……」
「や、トラックん中でさっきちょっと寝れましたし。限界も無視できてるんでまだまだ動けますよ。俺が戻るのは緑谷が雄英に戻るって決意をしたときです」
「僕に責任押し付けてくる!! ……いや、僕も本気で幾野くんが心配なんだけど……でも僕たちが戻って、みんなが……雄英に避難した人たちが万が一にも狙われるのが嫌なんです。僕もまだ動ける……幾野くんが本当にヤバくなったら僕が責任もって返しますから」
「いやそれ俺のセリフ。つまりまだどっちも降りるつもりはないってわけです。AFOが目の前にいるかもしれなくて、捕まえりゃ全部解決する可能性があるんだ。ここで退く択はないっす」
「……そうか。だが、本当に無理だけはしてくれるな」
「お前たちの力が強すぎるゆえに頼らざるを得ないのは渋々承知……それでもお前たちはまだ学生だ」
「だからこそできる限り早くこの事態解決しましょ。あと2日も走りまわりゃダツゴクも相当捕まえらえるっしょ。そしたらAFO共もケツに火が付きますよ」
「です、ね……AFOもたぶん、想像以上にヒーローたちが抗戦してるから焦ってると思います。はっきり言うのは失礼だけれど……レディ・ナガンに与えた個性だけで僕への刺客が成り立つと思っているなら力量を読めてない可能性もある。できれば今ここでケリをつけたい」
「…………迅速な解決しなきゃってのは俺も同意。けど逸るのは駄目だよ二人とも。急ぐのと焦るのは違うからね」
「うっす」
「はい」
そういやマウントレディどうしたんやろ……と思いラーカーズの二人に聞いてみたらちゃんと無事で、雄英の方を守ってくれているらしい。
よかった。マウントレディが雄英にいるなら安心だな。マウントレディがみんなを、そしてみんながマウントレディを守ってくれるだろう。両方に全幅の信頼がある。
で、そのついでにやっぱり俺らの事を心配する言葉をかけられるが……今はその優しさに甘える時じゃない。
甘えてたら負けるのだ。クラス対抗戦の時のやらかしを思い出せ。
今は甘えず、迅速かつ適切にヴィランを捕える時。
俺の能力は伸び続けている。この調子ならきっとAFOに、死柄木に手が届く。
勝てるはずだ。とっととアイツらぶっ潰して平和な日常を取り戻して……そのあとでゆっくり俺の個性の事を考えればいい。
そうだ。のんびり近づく間にもやれることはある。
例えば俺の索敵範囲。これまでは半径5キロだったが、それでもレディ・ナガンには射程外から攻撃された。
これだって意識次第で伸ばせるはずだ。
今の俺に限界はないのだから──────
「───
「なに!? まだ洋館まで
「意識したらセンサー範囲広げられました。見えますね……洋館周辺に人が誰もいない。隠れても……いない。ハズレか? 洋館内ももぬけの殻……いや、玄関前のフロアにある机の上、何か映像媒体があるわ」
「……イグジスト、お前のダイブセンサーはここまで詳細に見れるものだったか?」
「成長期なんすよエッジショット」
「……幾野くん……」
意識して限界を超えてみたらダイブセンサーの範囲も広がった。ちょろいわ。
こいつは俺の個性と連動できるからな。マジで生命線。明ちゃんいつもありがとう。彼女の愛を感じますね。
で、伸ばした索敵で洋館を捉えて、先に周囲を調べるが……誰もいない。AFOも、その部下っぽいヤツすらもいない。
なんだよ罠かよ。いつレディ・ナガンがここに緑谷を連れてくるのか指定はしてなかったというからついてから合流するつもりだった……ってわけでもなさそうだ。センサーとか通話機器みたいなものも何もない。
しいて言うならテレビ台みたいな家具の上にある映像媒体。
と、あと……
「……洋館全体に爆弾が仕掛けられてる。人が来たら自動で映像が流れて、んで映像が終わったら爆弾が一気に起爆する仕組みみたいっすね。はいクソー!! あの野郎レディ・ナガンすら殺すつもりじゃねーか!!」
「オール・フォー・ワン……どこまでも汚い真似をして……!!」
「爆発するとなると連合の痕跡は吹き飛んでしまうだろうな……イグジスト、データをここから抜けるか」
「余裕っす。映像媒体の中にある映像データ抜いた。周囲の爆弾の製造番号とかも記録してます。紐解けば仕入先とかからAFOにたどり着けるかも。秘匿HN回線に記録保存しときますね。オールマイトのほうで見れるはず」
「イグジストの前では忍びも形無しだな。映像はここで再生できるか」
「できます。みんなでAFOのビデオレター見ましょうか。NTRビデオレターだったりして」
「ここでも茶化せるのかお前は」
「逞しいよイグジストくんは……」
とりまこの時点で洋館に行く必然性はなくなった。爆弾が仕掛けられてるところに行く必要ねぇよなぁ!?
後で爆弾解体班とか呼んで解体してもらお。俺が行ってもいいけどその暇ないし。何がどう仕掛けられてるのかはもう俺が全部スキャンしたし。タネが割れてりゃ余裕だろ。
さてそんじゃエッジショットが言う通り、ブッコ抜いたAFOの映像をここで見てみますかね。
ダイブセンサーで空中に映像を投影。録画されていた映像を再生する。
『───レディ・ナガンとの問答は楽しんでくれたかな? 緑谷出久』
「AFO……!!」
「憎たらしいツラしてるぜ。しかし……背景はやっぱ消されてるな。当然か」
「ナガンに緑谷が負けるとは思っていなかったか、この映像を録画していたということは……捨て駒か」
「トサカに来ますよ。先輩がこうも粗末に扱われてるとね」
「だが……イグジストへの言及はないか」
「まだ判断はできない……映像を見よう」
映像に現れるAFO。なんか物知り顔で余裕ぶっこいて拍手してるけど今のお前のどこに拍手できる余裕があるんだ? 真剣に分からん。
なんか一発逆転の奥の手でももってやがんのか……一先ず映像の続きを見る。
『これが起動したということはそういうことだ……予想するのが好きでね。君の様な人間ならあの手の人種は見捨てられないだろう?』
「……僕を怒らせようとしてるね。まぁ見捨てないのは当然だし、実際見捨てなかったんだけど」
「俺が爆弾個性無視させたからな。あの爆発をどっかで見られてたとしてもナガンが生きてるとは思わねーだろーなAFOも」
「ナガンの存在はある意味虚を突けているという事か」
「イグジストの無法を正しく認識できていないのかAFOは……」
どうやらAFOの中では緑谷にナガンがやられて、その上で自爆させたことで緑谷をキレさせるような算段があったのだろう。
だが緑谷の隣には俺がいた。ナガンは健在で、緑谷も今のAFOのセリフを聞いただけでキレることはなかった。まぁな。生きてるし。
ただまぁ手段は反吐が出るってやつだ。愉快犯なのがタチが悪い。
やっぱこいつだけは何があってもぶっ殺すべきだな。情けかける理由ないわ。
『僕は強制してないぜ? 彼女の意志だ! つまずいちまった人間がヴィランと呼ばれるのさ! 『個性』だなんだと個人主義を謳っていても結局は管理社会。合わない個は排斥するだけ。例外はないよ……民主主義でも社会主義でも根っこは同じだ。社会以前の問題。群生生命の原則だよ』
「なんか物知り顔で偉そうなこと言ってますけど人殺しのクズ野郎が何言ってんだろって感じスね。福祉制度調べた事なさそう」
「くだらん……管理社会に排他されるような犯罪をしている側が言っても何も響かん」
「コイツの言葉に重さがないですよね」
「ヴィランの首魁に社会の仕組みの教義を説かれてもな」
「負け犬の遠吠え」
「みなさんなんか荒んでません!? いやAFOの言葉に同意はできませんけど……! 無個性でも生きられる社会ではありますけど……!!」
続けてAFOがなんか急に社会の在り方について説き始めた。
人殺しのクズ野郎に何を言われても響かないんですがそれは。
なんだろう……この言葉を冷静じゃない時に聞いたらそうなのかな……そうなのかも……ってなっちまうのかな。でも俺ら今すこぶる冷静だからな。洋館じゃないしここ。
分からん。コイツマジで何がしたいんだ。
『緑谷、君の選んだ道は茨だぜ。戦うたびに心がすり減り、終わりは来ない』
「なんだAFOの奴塩崎ちゃん狙ってんのか? 塩崎ちゃんは心操狙ってるからお前には靡かないぞ?」
「塩崎さんの事じゃないと思うよ!? ってかなんか……僕の事をしたり顔でいばらの道とか言ってるけど別に心はすり減ってないし何で勝手に決めつけてくるんだAFOは。まだ会ったこともないのに」
「死柄木が何か伝えたという可能性は考えられるな。一方通行の映像だからふわっとしたことしか言えなかったか」
「煽りスキルが足りてないようですね。物間を見習えよ物間を。緑谷キレさせるならアイツが一番上手だぞ」
「君がトップ独走だよ」
そして緑谷をあおるような言葉を並べるけど、なんかふわっとした内容で緑谷にも俺たちにも全然響かなかった。
物間と共に磨いたスルー力が成果出してるな。
こいつがこの映像で何を言っても結局ただのビデオレターだしな。俺らと会って話をしてもいない人殺しクソ野郎に何言われてもな。
こいつあれか? 自分がラスボスっぽい立場にあるからこう……RPGとかによくある匂わせセリフを多用するタイプか?
いいからもっとしっかりした内容を伝えろよ。具体的にこれからお前がどうするかとかをよ。ヒントくれよヒント。
『獄中でね……ずっと考えていた。OFAを継ぐ君の事と、そして……幾野くんのことを』
「お。俺の名前が出てきた」
「……死柄木も君に固執してた。やっぱり狙われてるんだ……」
「イグジストへの執着……OFAよりは強くはないが、この個性を逃す手はないだろうな、相手にとってみれば」
「フン……だがイグジストは無敵だ。それもわかっている以上、人質作戦が何よりも考えられる。だからこそイグジストと親しい仲の人間は全員雄英で匿っている。何をするつもりだAFO……」
「雄英の防衛性能は全く問題ない……ってオールマイトが言ってましたけど。そこは信じていいんですよね?」
「ああ。日本であそこよりも厳重な警備があるところはない。タルタロスを超える防衛機構となっている」
「I・アイランドの構造を知るメリッサ嬢の知識と、エクスマキナの開発で日に日に要塞となっている」
「怖」
「信頼できすぎる……!」
話の流れで雄英の防衛について聞いてみたがなんとまぁメリッサさんと明ちゃんが防衛機構をバリバリ共同開発してるのでとんでもない要塞に変貌しているって話だ。
それなら心配いらないだろうな。なにせ世界が誇る天才の二人が組んでるんだ。天災だろうと防ぎきるだろう。
『フフ……僕の興味は最早オールマイトにはない。力を継いだ緑谷くん、そして無敵の力を持つ幾野くん……次は君たちだ!! 雄英に向けて全てのヴィランを差し向けてあげるよ!! キミたちはどうするだろうね!?』
「────────」
しかし、最後に。
AFOがとんでもないことを。
とんでもなく───アホなことを言い出した。
「────えっ。雄英ってもしかしてこれまでに襲撃とか受けてます?」
「……いや。周辺のパトロールはしているがヴィラン事件はほぼ発生していない。当然襲撃などもゼロだ。その前にパトロールが捕えている」
「……です、よね? ちょっとビビりましたよ僕。前に幾野くんと雄英周りを調べた時にもダツゴクはいませんでしたし……一斉にワープとか考えてるのかな……」
「いや、ワープで潜ってきても対処できる設備が考えられている。そういったことも起きていないし、起きても即座に対処が可能なはずだ」
「……雄英に一斉に襲撃をするというAFOの言い分だったが……これは録画映像だろう。過去に撮られたものだとすれば、ダツゴクがこれほどのペースで捕らえられているのを知らない時期に撮影したか?」
「あー。まぁここ二日で全体の4割くらいは確保してますもんね。襲撃予定だった奴らはもしかして捕まえてたって言うオチ?」
「あり得るな。捕らえたダツゴクの中には雄英を襲おうとしていたと証言している者もいた。予定はいつだったかは分からないし、無論気は抜けない……雄英の守りをより固める必要はあるが……そもそもダツゴクが凄まじい勢いで捕えられている。この動きはアイツにも予想外だったのだろう」
「…………ダッサ!!」
「なんかAFOに勝てる気がしてきたよ僕」
まぁな。この映像を撮影したのが、どんなに遡ってもレディ・ナガンに指示を出して、各刑務所の脱獄事件を起こした後だろうし。その頃にはまだ俺も病院で寝てたから俺がここまで動き回るとはAFOも思ってなかったのかも。
でも翌日には俺も緑谷も動き出して、そしてそこから2日が経過した今日の時点でダツゴクの40%は既に確保済み。俺が有能すぎましたね。
で、それを知らずにビデオレターを作成して仕込んでおいたって話で。
ええ。
恥っずかし。
この映像録画取っといて後でAFOの目の前で再生してやろ。
「……とりまこれで映像は終わりです。最後の指さし決めポーズの後に爆弾が爆発する感じでタイミング狙ってたんでしょうね」
「茶番だ」
「……パッと映像見る限りじゃAFOに繋がる情報は無し。無駄足の捨て駒だったか……手がかりゼロは痛いですね」
「でも、やるべきことははっきりしました」
映像が終わり、何の手掛かりもなかった事には落胆を覚えるが……しかし、AFOの最後の言葉により、俺と緑谷がやることはハッキリした。
万が一にも雄英が狙われるというならば……俺たちは、それを守る。
みんなに危機が及ばないように……これまで以上に迅速に、広範囲に。
「ダツゴクを捕える。俺が捕捉できる範囲も倍に増えた……慣れりゃもっと増やせます。今までは雄英の西側を回ってたからこっからは東側だ。一気に行くぞ緑谷」
「うん。……幾野くんに無理してほしくないけど、休んでられない。急ごう、みんなに被害が向く前に……僕たちで確保する。エンデヴァー達はオールマイトとも連携して、更なるヒーローのチームアップをお願いします。これまでの倍以上の範囲のダツゴクを捕捉する。多人数集まってる危険なグループは僕たちで行動不能にしながら飛び回りますので。あと雄英の警備も増員をお願いします……みんなを守ってください」
「待て……!! AFOがデクの力とイグジストの存在を意識しきれていないのは確実だ!! お前たちは一度休め!! 作戦をその間に練る!! 雄英は万全の守りを敷いているんだ、心配はない!!」
「そんな暇ないでしょ。一日も早く平和を取り戻す、そのためにヒーローはいるんだから」
俺は走行中のトラックのバックドアを、鍵を無視して開ける。
外から風が入り、トラックのコンテナ内に吹きすさぶ。
俺の髪と緑谷のマフラーがそれに遊ぶが、曇り空はもう明るくなっている。朝が来たのだ。
トラックで走る間にお互いに一時間は眠れた。行ける。
こっから三日……いや、二日で残るダツゴクを全部捕捉してやる。
日本中を飛び回ったっていい。その間にAFOや死柄木がみつかりゃ御の字。どっちも目立つ動きがないということは本調子ではないという事。
今しかないんだ。時間をかけることは向こうに余裕を持たせることにつながる。
「
「
「待って! 緑谷くん、幾野くん……!!」
「イグジスト!!」
大丈夫。
俺たちの後ろに、ヒーローたちが付いてきてくれているのもわかっているから。
雄英を守ってくれる心強い味方がいるから、俺たちは突っ走れる。
─────俺たちの
俺と緑谷は共にトラックを飛び出して、全速力でまだ調査していない町へ放たれて行った。
【side Zwitter】
───音もなく現れるんだって
───色んな個性を持ってるって聞いたわ
───ヤバいな、
───超スピードで助けてくれるらしいよ
───噂じゃ近くを通るたびに
───ボロボロのスーツでとてもヒーローには見えないって
───そもそも速すぎて姿が見えてないんだよ
───ってか知ってる? 実際見た人のつぶやき見た?
───見た。なんか黒い影がそのヒーローのそばにいつもいるんだろ?
───お、出たその話
───ね。カッコいいよなぁ……
──────