【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!! 作:そとみち
『────ほっといてよ!!』
『────ほっとけるわけないだろォォ!?』
夢を見ている。
微睡んだ脳裏によぎる、いつも見る夢。
『────死なせて!! 私は生きてても意味ないの!! 生きてても周りを不幸にするだけなの!!』
『────んなこと言われても見捨てられるかよォ!? いいから落ち着けってェェ!?』
『────お母さんだって……お父さんだって!! 私が殺したっ……私の個性が!! 私はもう誰にも迷惑をかけたくないの!! 死なせて!!』
『────ふざけんなァ!! 死んでいい命なんてあってたまるかよォ!? 絶対に死なせねぇからな!? オイラが絶対止めてやるよぉ!!』
夢を見ている。
死にたがっていた俺を、止めてくれた親友の夢。
『────生きてても意味がないの……何もしたくないの。なんで……なんで私を死なせてくれないの……』
『────意味なんて生きてるうちにいくらでも思い浮かぶモンだろ!! オイラだってハーレム作るまでは死ねねぇしよ! お前だって絶対いつか何かしたくなる!! それを見つけるまで死んじゃダメだ!! 上手く言えねぇけど!! 死ぬくらいの勇気があればなんだってできるだろォ!? だから死ぬのだけは駄目だってぇ!!』
『────やだよ……お母さんも、お父さんも、誰もいないの……一人で生きてくのはもう嫌……』
『────だったらよォ────────』
夢を、みていた。
微睡みが蕩けていく。
目覚めが近い。
─────ああ。
─────あの時の峰田、なんて言ってくれたんだっけ。
【side 幾野】
「……ん」
5分の休憩を終えて目を覚ます。
何か夢を見ていたような気もするけど思い出せない。
まぁちょっと微睡んだだけだしな。夢なんて見てる暇はない。
目覚めはスッキリ。疲労は無視していつでもマックスで動けるチートモードに入ってるのが今の俺です。
緑谷もビルの屋上にしゃがんで休憩を取っている所だ。
おにぎりも食って栄養補給。オールマイトが追い付いたらまた移動だな。
先日、洋館からデータを抜き、AFOが雄英襲撃を目論んでるという情報を得た後に、ヴィラン共に準備させる前に捕捉、拿捕するために俺と緑谷は全国を飛び回っていた。
あれから二日が経過し、俺のダイブセンサー上で捉えたダツゴクの数は脱走者の80%。
残り20%、上手く俺の索敵範囲から逃れたか、顔を変えてるか、もしくは北海道や九州など遠方に逃げているかは分からないが……逃がさない。今やダイブセンサーの索敵範囲は半径20kmまで伸びている。時間が経てばもっと行けるはずだ、もっと。
なお、今こうして休憩しているのは決して俺たちが疲れたからじゃない。
どうやらチームアップするヒーローたちが俺たちに追いつけていないようで、オールマイトから一旦合流して状況を共有する、という話を受けたためだ。
俺と緑谷でマッハに近い速度で街を飛び回り、半径20km以内のダツゴクの位置を捕捉していったが……捕まえるヒーローチームが回りきらなくなったらしい。
つってもな。だったら俺らが捕まえりゃいいだけだ。少し進行速度は遅くなるけど……今の俺と緑谷ならどんなヴィランだろうが速攻で無力化することができる。
もうちょっとなんだ。ダツゴクを確保しきって、AFOのケツに火をつける。
人々の平和を取り戻すまでもうちょっと。それまでは止まるわけにはいかない。
「……幾野くん。起きたんだ」
「んむ。おは緑谷。そっちは?」
「僕は大丈夫、動けるよ。もうすぐオールマイトが来る……けど、幾野くん。君はもう休んだ方がいい。前よりも個性の暴走が広がってるんじゃないの……?」
「調子がいいくらいですわよ? 索敵範囲も精度も広がってるし……確かに周りを自動で無視しちまうのは止まってないけどさ。まだお前には俺が見えてる……なら問題ないだろ」
「…………心配だよ。一度切れないの? オート個性……僕が暴走した時もそうだったけど、一回個性を切ったら落ち着くこともあるし」
「
「……っ」
これは嘘じゃない。切ろうともしてないけど。
長年個性のスイッチをONにしすぎてて、OFFへの切り替えをちょっと忘れちまってるだけだ。
「いやまぁ……ダイブセンサーとずっと連動してるからな。調子落としたくもないし……大丈夫だって、ダツゴク捕まえてAFOの位置を把握できたらそん時は休むさ。俺一人だけ帰ったら麗日ちゃんに絶対俺が怒られるじゃん。帰るならお前も一緒だからな緑谷。麗日ちゃんに恨まれたくない」
「……どう帰っても僕も君も怒られると思うんだよね。やだなぁ……君は1人で済むけど僕は3人……いや4人……もしかするともっと多くの女子から恨まれるかも。ホントにヤダなぁ!」
「ハハハ。包容力の差ってやつかな!」
「ハーレムクソ野郎が何か言ってる…………ん。オールマイトが来たね」
「む」
俺が目を開けると、緑谷はまだ俺を見つけられていた。
何よりだ。緑谷がまだ俺のこと見えているなら問題ない。チームアップを継続できる。
もし緑谷すら俺が見えなくなったら……その時はどうすっかな。
俺一人で全国駆けまわったっていいかもな。
AFO捕まえて全部が終わってからなんか筆談とかで助けを求めれば何とかなるやろ。
「……ッ!! 緑谷少年!!」
「お疲れ様ですオールマイト。ヒーローのチームアップはどうですか?」
「間に合わなけりゃ俺たちでダツゴクも狩りながら進みますけどね。どんな調「まだ再編成が済んでない……!! 十分な成果を既に生んでいる! 80%以上のダツゴクを再捕縛できているのだ!! 一度休み、全快してから再びしっかりとチームを組んで動けばより精度は上がる!! ところで幾野少年は……」
「─────オールマイト!! もしかして……!?」
「ム……何!? もしや幾野少年は隣にいるのか!?」
「───────」
さて、そして合流したオールマイトだが……その時が来たか。
彼には見えてないんだ、俺の事が。
意識してるはずなのに無視しちまってる。俺の方で、オールマイトの注目を。
なんてこった。こうなっちまうと……。
「今なら元ナンバーワンにカンチョーしてもバレないのか」
「心が強すぎるよ幾野くん!?」
「なんだ!? 幾野少年は何と言ったんだ緑谷少年!?」
「オラァッ!!」
「グワーッ!?」
「
オールマイトにいくら悪戯してもバレねぇってことだよなぁ!?
ってなわけで千年殺し(突き刺さないレベル)をオールマイトに繰り出してみたけど全く俺の存在に気付かれることなく直撃してオールマイトが悶絶してた。面白。
緑谷がキレたけどまぁ……ええやろ。最近コイツキレやすくなったな。
いかんな、こいつも疲れてるのかもしれない。
「もー緑谷ったらスマイルスマイルー。サーにユーモアを忘れるなって言われただろー?」
「サーが見てたらブチキレるシーンだよコレ!?」
「お゛ぉぉ……!! くっ、見えてはいないが変わらないな幾野少年ンンン……!!」
「すんません。茶化す場面かなって」
「戻ろうよ……!! あとは僕だけでも大丈夫だから!! ヴィランの襲撃事件もかなり減ってる!! 先代たちも君を巻き込むなって言ってるよ……!!」
「嘘こけ。先代たちめっちゃいい人たちじゃん。お前も一緒に休めって言われてるんじゃねーか? 緑谷こそ休めよ。お前は俺と違って疲労を無視出来てねぇだろうが」
「っ……でも、君を一人にしておけない!!」
「ミートゥー。はい問答おしまい。……ってわけで行こうぜ緑谷。ヒーローたちが再編されるまで俺達で行かなきゃな。
「……幾野くん」
にへっと緑谷に笑いかける。
これに笑顔が返って来なかったら、俺は
んでオールマイトにパスして、後は俺だけで動き回りゃいい。
限界はないんだ。お前が雄英に戻って回復したらまた手伝ってもらえばいい。
でも緑谷もまた、少しでも早くAFOを捕まえるために……笑顔を返してくるんだ。
わかってた。ダチだもんな。
だからもうちっとだけ頑張ろうぜ。
「東日本のデカイ都市も大体回った。他にダツゴクがいそうなのは……」
「……オールマイト。次はどこに行けばいいですか」
「……南西の都市でヴィラン事件が起きている!! そっちに向かってくれ……!! 私にはもう止められないとわかっている!! だが無理だけはしないでくれ……!!」
「了解。無理っぽくなったらちゃんと言うんで大丈夫ですよ。聞こえてないだろうけど。うし、んじゃ行くぞ緑谷!」
「うん……すみませんオールマイト! 行きます!!」
「っ……!!」
オールマイトの次の指示を受けて、俺たちはその方角へブッ飛んでいった。
時速300キロ。半径20キロを索敵しながらの愚連隊である俺たちが、ダツゴクを全て見つけてやる。
ここから南西の方角か。確かにまだ見てない都市があったはずだ。
AFOがそこにいるといいな。いやよくねぇわ。街中にいたら被害広がるわ。死んでねぇかななんかいい感じに。
しかし南西の方か。
……雄英がある方角だな。
みんな元気にしてっかな。
待ってろよ、すぐ平和を取り戻してやるからさ。
みんながまた笑えるように。
安心して過ごせるように。
笑って過ごせるように。
─────俺が、みんなを助けるんだ。
【side ???】
「……来る。来た」
「……分かってるな」
「ああ」
【side 幾野】
「っ、ダツゴクの反応……まとまってやがる、数が多い!」
「どっちにいくつ!?」
「11時方向……18人。全員ダツゴクだ! 徒党組みやがったなアイツら……!!」
「情報出して!」
「出した。まだ捕まえてねぇ奴らばっかりだな当たり前だけど!!」
「……ディクテイターがいる。タルタロスに収監されてたダツゴクだ。今度こそ刺客かも」
「お、ようやく来やがったか? これまで刺客誰も来なかったもんな。いたのかもしれないけど全員サーチアンドデストロイしてたからダツゴクの誰とも話してねぇや。結局俺らに一撃入れられたのはナガンだけか」
「ディクテイターの個性『独裁』は周りの人を操るんだ。もしかするとそれでダツゴクを操ってるのかも」
「一心同体で来るってわけか。まぁ関係ねぇけどな」
俺の顔認識機能によるダツゴクセンサーが一気に赤い点をマップに生んだ。
18人。全員がそれぞれまだ捕まえてないダツゴクの顔をしている。
背の低い真ん中のアレがディクテイターか。その周囲に糸の様な物が結ばれていて、それぞれ17人全員がダツゴク。
ううむ。こう数が多いとちっと面倒だな。
ま、でも逆に全員ブチのめしていいから楽でもあるな。
これで人質でも取られていようもんならそっちを気にかける必要があった。まぁそれだって俺の存在は感知されないから俺が奇襲かけてダイブワイヤーの電撃で一撃で堕とせば何とでもなるけど。
「真正面から行くか? ねじるか?」
「開けた位置にいるから変に小手先はいらないでしょ。僕が出れば向こうは僕に集中する。その隙に幾野くんはワイヤー通せるだけ通して。スマッシュと黒鞭で前10人は一息でやる」
「了の解。後ろ5人くらいは任せろ。後は流れで潰そうぜ」
「うん」
軽く緑谷と打合せ。まぁコイツとのコンビネーションもこの4日で相当習熟してるしな。
何も言わなくてもダツゴクの10人や20人なら余裕よ。
そんな話をしているうちに見えてきた。
1キロ先……いた。18人。
全員がダツゴクの顔であることを再確認。よし、行くぞ。
「……フルカウル、60%……!!」
「潜り込むぜ!」
俺たちはそのダツゴクの一人、ディクテイターがこちらを向いたことを認識した瞬間に戦闘態勢に入る。
超スピードで接近する俺たちに遠距離攻撃できるような個性を持ってるダツゴクは無し。行ける。
そのまま俺たちは飛び込んでいって───────
「───グレープラッシュッ!!!」
どくんと。
心臓が口から飛び出そうなほどの驚愕が生まれた。
何故なら、目の前のダツゴク、ディクテイターが……無数のもぎもぎネットを俺たちに向けて投擲してきたのだ。
なんで。
そんな。
まさか──────
「────ッ!? くぅっ!?」
「…………!!!」
その投擲を認識し、緑谷が全速力で横っ飛びして回避した。
このもぎもぎネットだけは、その恐ろしさを身に沁みて知っている緑谷だからこそ。
OFAの力があっても、一度体に巻き付いてしまえば抜け出すことのできない網だからこそ、反応は早かった。
俺はもともと避ける必要もなく、広がる網を無視するが……でも、もう俺も攻撃する気が失せていた。
そこには。
俺の、親友が。
「……ったく。ようやく見つけたぞテメぇら」
仰々しく着ていた服を、被っていたマスクをはがして……その下にいたのは峰田。
同時に、周りのダツゴクたちも全員が服を破り捨て、顔につけていたフェイスマスクをべりりとはがして。
「ミッナイ先生の変装授業受けといてよかったなマジで。こういう時に活きるんだな」
「慧眼と言えよう。もっとも……友を欺く為に使うとは思わなかったが」
「センちゃんの顔認識システムもバッチリ偽装できたね。ナイス創造だったよ百ちゃん」
「ええ。明さんにも顔認識システムの脆弱性……顔が一致すればセンサーに乗ってしまう事を聞いておりましたから」
「ケッ。ムダに出来る事増えやがってよ……バカ共が」
「デクくん、センくん……」
……峰田が。
透ちゃんが、百ちゃんが。
爆豪ちゃんが、轟が、麗日ちゃんが、梅雨ちゃんが、飯田が、切島が、瀬呂が、芦戸ちゃんが、耳郎ちゃんが、常闇が、障子が、青山が、尾白が、上鳴が、口田が。
A組のみんなが、そこにいて。
「……みんな、なんで……」
「心配だからだよ」
「……どうして」
「お前がそんな顔してるからだよ、イクノ」
注目の無視は切ってない……俺が意識している緑谷以外は、誰も俺を見つけられないはずなのに。
みんなが……緑谷と、俺を見ていて。
みんなの目が、まっすぐに俺を向いて────俺は。
「────────っ!!!」
【side 緑谷】
みんなが来てくれた。
「────────っ!!!」
でも、みんなと会って……幾野くんが地中に潜り込み、逃げてしまった。
どうして。なんで、みんなまだ君の事が見えているのに。
「っセンちゃん!?」
「幾野の奴逃げたぞ!?」
「なんで……」
「うろたえんなァァッ!!」
「っ……峰田さん……」
みんなに動揺が走る中で、でも、峰田くんだけは……ブレなかった。
まっすぐに目を向けていた。
彼だけは……そう、きっと。幾野くんの隣にいつだっていてくれるから。
「イクノの事はオイラに任せる、そういう約束だったよな……葉隠、八百万。言いたいことはあるだろーけど……今のアイツはオイラが連れ戻す。信じてくれ」
「…………うん」
「お願いいたします、峰田さん……!」
「ああ。
峰田くんが、隠れた幾野くんを追って飛び出していった。
それを目で追って……きっと峰田くんなら大丈夫だ。幾野くんを助けてくれる。
僕も本当に幾野くんが心配だった。
ならば急いでダツゴクを捕まえて、やれることをやり切った時点で一緒に雄英に戻ろうとしてたんだけど……みんなが来てくれたなら心配なくなった。
きっとみんなが幾野くんを助けてくれる。
「……ありがとう。幾野くんの個性の調子がおかしいのが分かってて、止められなくて……でもみんなが来てくれたから安心したよ。幾野くんの事はお願いね」
フードを被り直して、みんなに幾野くんの事を任せた。
たぶんオールマイトがみんなに連絡してくれたんだろう。よかった。これで心配することなく、AFOを探しに─────
「デクくん」
と、そこでお茶子さんから声をかけられた。
僕は峰田くんが跳んでいった方向をずっと見てたので目を合わせていない。
目を合わせるのが怖いわけじゃない。
普段よりもずっと低い声を出すお茶子さんが怖いわけじゃないんだ。誰に向けて言い訳してるんだろ僕。
「……なに、お茶子さん」
「別れる?」
「ン゛ン゛!!!」
……泣きそう。
いや、言われるかもとは思ってたけど。ごめんね僕が不甲斐なくて!!
もっと頑張って、AFOを捕まえられてたらこんなこと言われなくて済んだのかなぁ!? 幾野くんと一緒に結構頑張ってたんだけど!!
「……その。本当に申し訳ないとは思ってるんだけれど」
「こっち向いて」
「はい」
お茶子さんの圧に負けて僕はみんなの方に再び目を合わせる。
峰田くんを抜いて17人。
みんなの目が如実に物語っている。
めっちゃキレてる。
「……心配だったよ。手紙もみんなで読んだ……あんな手紙で納得してもらえると思われとったのが寂しかった」
「……ごめん。でも、僕はAFOに狙われてるから……AFOを捕まえるまでみんなと一緒にいられないんだ。それに僕は大丈夫。これまでも幾野くんが助けてくれたから……本当に、大丈夫なんだ。まだ疲れてもいないから」
「そいつァよかった!! さっすがOFA継承者様だぜェ!!」
僕は事実を話す。
みんなに黙って出たことは申し訳ないとは本当に想ってる。
でも、みんなを巻き込みたくなかったんだ。それも本心で。
そして、幾野くんと一緒に行動していた時、実際に幾野くんは僕の体調を見てくれていたから……一人でいるよりもずっと体力も温存できてたんだ。
だから大丈夫だ、と伝えたんだけれど。そこでかっちゃんがいつものように、いやいつも以上にわざとらしく煽ってきて。
「───ンでテメェは今、笑えt」
「ちょっと爆豪くんは黙っとってくれる?」
「……おぅ」
「!?」
え!? なんか謎のパワーバランスが生まれてる!?
お茶子さんの雰囲気は確かに阿修羅みたいだけど!? アシュラカ=オチャコになっちゃってるけど!?
かっちゃんがお茶子さんの言葉に従うなんて。何があったの。
変わっちゃったよかっちゃん……!!
「……はじめはね、呑み込んだ。オールマイトやエンデヴァーから、正式なチームアップとして動いてるって情報聞いたから。センくんもおって、ヒーローたちのチームアップでの支援もあるから……センくんが一緒におれば大丈夫かなって思っとった」
「……」
「でも、その後から報告がおかしくなった。センくんの個性の暴走が止まらないって。エンデヴァーもホークスも、ラーカーズの二人も……オールマイトが二人を止めても、止まらなくなったって」
「……一刻も早くAFOを捕まえなきゃ……平和にならないから。AFOにOFAが、幾野くんの個性が狙われる限り、僕たちは雄英に戻れない……」
「そこなんよ。───────舐めとんの?」
「ひぃ」
ドスの利いた声でお茶子さんが言うものだから無条件の反射で体が震えてしまった。
コワイ。僕の彼女が怖いです。
「……デクくんの言いたいことを纏めるね。デクくんが継承したOFAやセンくんの無視がAFOと死柄木たちに狙われてる。そうやね?」
「あ、はい……」
「で、私達を巻き込みたくない。無敵のセンくんはともかくとして……デクくんならAFOたちと戦えるから、私達を巻き込みたくなくて一人でやろうとしている」
「……うん」
「つまり私達がデクくんより強ければデクくんたちが一人で動く必要ないよね?」
「!?!?」
えっ。
予想外の結論が出てきて僕は困惑してしまった。
お茶子さん!? 僕がいない間に何があったの!?
で、しかしそこでかっちゃんが我慢しきれなくなったのか、お茶子さんにくいっと顎傾けるボディランゲージをして喋る了解を取る。お茶子さんも頷いていた。
……僕の彼女と何親しそうにしてんのかっちゃん。
「……デクよぉ」
「かっちゃん……」
「テメーが何言っても止まらねぇのはとっくに俺らも承知してんだよ。だが幾野は違ェ。アイツはまだ心が幼いんだ……テメェも分かってんだろ。
「っ……で、も」
「でももクソもねェ!! いいかァデクぅ……俺ら全員テメーらにキレてんだよ!! なぁ~~にがOFAだ!! 『無視』だ!! ンなもん、
「!!」
「俺らA組に与えられた校長からのチームアップミッションはシンプルだぜ!! 『デクとイグジストを雄英に連れ戻す』!! テメぇらが納得する形でなぁ!! 麗日の言う通りだぜ!! テメェが無駄な
僕は……幾野くんが戻れば、一人でもやるつもりだった。
でも、それを見事に見透かされていて。お茶子さんにも、かっちゃんにも、みんなにも。
だから、みんながその答えを選んだ。
僕を止めるために、力で抑えるのではなく。
僕が雄英にいられない理由をなくすために、力を見せることにしたんだ。
……それをされたら、弱い。
ずるいよ。
僕の理屈が根っこから否定される。
OFAより、僕よりみんなが強いなら、弱い僕が一人でふらふらしてる方が危険だということになる。
僕がみんなを守るんじゃなくて、僕がみんなに守られるべきって話になる。
……みんなは、僕を止めようとしているんじゃない。
僕が止まる様に、みんなが力を示すと。
そう、34の瞳が頑なに語っていた。
「…………みんなを、守りたいんだ……!!」
応えなきゃいけない。
疲労がたまっているというほどじゃない、80%まで引き出せて、歴代継承者の力も使える僕に。
みんなの力が通じるということを……本気で、確かめなければいけない。
そう感じたから、僕は拳を構える。
「君に全く同じ言葉を返そう、緑谷くん!!」
「俺たちがお前を守る。必ずな」
「センくんは峰田くんが必ずなんとかしてくれる……私たちは!!」
「いくぞテメェら!!
いつもやってる模擬戦のように。
僕たちは夜明けが近づく市街地で、本気でぶつかり合うことになった。
※描写しきれなかった補足
緑谷とセンちゃんが出て行った後のA組寮では、主に麗日葉隠八百万がOFAの力を知ってて黙ってた爆豪ちゃんに修羅の面で圧をかけてました。
爆豪ちゃんは恋する女子の阿修羅の圧にちょっと勝てませんでした。
本作ではまだ社会が崩壊するほどのアレじゃなかったのでA組生徒達も雄英周辺のダツゴクの探索、確保の仕事をチームアップしてやってました。
以前に雄英周りにダツゴクいないなーってセンちゃんが言ってたのはこのせい。
その辺をオールマイトたちが報告する前に飛び出して行っちゃうのでセンちゃん達は知りませんでした。オールマイトも報告しませんでした。報連相の欠如。
で、麗日が言っていた通り、二人の様子はちゃんとオールマイトから校長に、校長からA組に報告という形でA組も把握してました。
有力ヒーローの全面支援付きのチームアップでの仕事ということで最初はA組もギリ呑み込んでましたが、センちゃんの個性がヤバくなり、その上緑谷も戻ろうとしてないのでとうとうキレて校長に直談判して捕まえに行くことになりました。
雄英周りで自分達で捕まえてたダツゴクのフェイスマスクや服をヤオモモが創造し、それを着て変装してます。センちゃんはダツゴク顔認識を中心で見てたから近づくまで気付かなかった。
麗日葉隠八百万がものっすごい不機嫌だったので寮内の空気が若干ギスっており、その不満も込みでA組全員キレてます。ウケる。