【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!!   作:そとみち

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162 A組の風紀終了のお知らせ

 

 

 雄英に戻ってきて、人々からの応援の声を受けて再び涙腺が決壊して。

 俺と緑谷は涙を零しながらも彼女たちに支えられつつ、歓迎を受けながら寮に戻る道を歩んでいた。

 

「出久……!! 幾野くんも……!! こんなにボロボロになって……!!」

「母さん……!!」

「引子さん……」

 

 人波をクラスのみんながはけさせてくれながらも、何人か……俺たちに関わりの深い人たちは直接会いに来てくれて。

 まず最初が引子さんだった。そういえば引子さんにはラインを送ったばっかりで返事もせずスマホ置いて飛び出しちまったからな。心配させてしまっただろう。

 ホントに飛び出した頃の俺焦ってたんだなって今にして思うわ。普通にクラスのみんなに行ってくるわって直接言って、緑谷も一緒に定期的に帰ってくりゃよかったのに。

 こうして人々の不安を拭えてたわけで完全に無駄ではなかったけど、それでもこの4日間マジで俺視野狭まりまくりだったわ。申し訳ない。

 

「幾野くんから連絡だけ来て、その後ずっと二人だけで飛び回ってたって聞いて……凄い心配したのよ!? 無茶をして……幾野くんも!!」

「すんません引子さん……俺、だいぶ焦っちまってて。連絡出来なくてすみませんでした」

「出久も……やっぱりお母さん、心配しちゃうよ……こんなにボロボロになるまで戦って……!! ぐすっ……!」

「ごめん、母さん……心配かけて、ごめん……!!」

「イズクぅぅ~~~!!!」

「あっちょっと待った引子さんちょっ、ここで二人で泣いたらマズいっす緑谷もあっ駄目だコレ!!」

 

 俺の事まで心配なさってくれていた引子さんに頭を下げて心から詫びる。自分がいろんな人から心配されているということにようやく思い至った愚かな男が俺です。

 緑谷も引子さんに抱きしめられて、やはり母親の顔を見ると安心するのだろうか……じわりと涙の本流が来たようで。

 で、止めたんだけど手遅れで。二人して号泣を始めてしまい、緑谷家に伝わる水操作の個性により周囲は水浸しになった。避難民の皆さまが驚いておられる。

 マニュアルさんか洸汰くん呼んで来て! 水操れる系の個性の人ー!!

 

「本当に……自分を追い詰めることにかけちゃどこまでも行くよな、センは」

「ミリオ兄さん……」

「心配したぞ、セン」

「本当に……!」

「叔父さん、叔母さん……!」

 

 しかし俺にも家族から声が掛かって。

 ヒーロースーツに身を包んだミリオ兄さんに、避難してきた叔父さんと叔母さんもだ。ミリオ兄さんの後ろには天喰先輩とねじれちゃんパイセンもいる。

 

「中学時代から……峰田くんに助けられてから、訓練する時もずっとそうだった。自分がやると決めたら真っすぐそれに突っ走り過ぎるんだ。俺たちもお前が暴走しすぎないように背中を見せてやってたところもあるよね」

「想いが深いんだ、お前は。俺もミリオも心配した……が、峰田が迎えに行くと聞いたからな。安心して任せられた。……よくやったな」

「……また泣きそう」

「センの泣き顔を見るのは初めてかもしれないな。……本当によく頑張った。けど、あまり心配させないでくれ」

「そうよ、セン。辛かったらいつだって戻ってきていいのだから」

「……ぐすっ」

 

 ミリオ兄さんに指摘されて、そういえば俺って昔からそうだったな、と改めて過去を振り返った。

 峰田と出会ったあの日、私が俺になった日の翌日から……峰田みたいなヒーローになろうと思ってがむしゃらに己を鍛えたけど、今にして思えば中学時代なのに相当無茶なことしてたようにも思う。

 それについてきてくれた峰田も、ミリオ兄さんも天喰先輩ももしかして俺が無理しすぎないように見守っててくれたのかもしれない。

 俺って自分の事になると急に周りが見えなくなるんだ。知らなかった。

 叔父さんと叔母さんもそんな俺を慰めてくれて、いつでも帰ってきていいといってくれて、やっぱり涙がこぼれてしまう。

 心配かけてごめんなさい。

 

「すごいよー幾野くん! 緑谷くんも頑張ったねー! 知ってる? もうダツゴクの95%は確保されてるんだよ! 知ってた? 知らなかった? ネット見てなかったでしょ!」

「え。初耳です」

「僕たちが捉えたダツゴクはまだ8割くらいだって聞きましたけど……」

 

 落ち着いたところでねじれちゃんパイセンが急に伝えてきた事実に俺と緑谷は驚きを返した。

 えっ。俺達まだ80%しか捕まえてなかったと思うんだけど。それだってチームアップしてるヒーローほぼ全員動員するくらいのそれで、余剰戦力なんてなかったと思うんだけど……。

 

「……波動の言う通りだ。お前ら二人が全国を飛び回っている間、この雄英周辺にいたダツゴクは雄英の教師陣、ヒーロー科生徒によるチームアップでかなりの数を捕らえていた」

「相澤先生……!!」

「……そっか。俺が前にこの辺り調査したときにダツゴクがいなかったのはそういうことですか……」

 

 続けて輪に混ざってきた相澤先生が説明を続けてくれる。

 先生の後ろにはエリちゃんも、あと一緒に洸汰くんも来ていた。プッシーキャッツも雄英に来てたのかな。

 で、聞くところによると俺たちで捕まえてた80%のほか、15%のダツゴクは各学園の周辺パトロールしてた生徒のみんなで捕まえてたらしい。

 確かに、全ての学園周辺を精密に回ったわけじゃなかったし……オールマイトから指示を受けて飛び回っていた地域は血狂いマスキュラー以外は学園の近くじゃなかった。そういうことだったのか。

 ……あれこれ普通にオールマイトが教えてくれてもよくね? あの人の報連相に問題があるのでは??

 

「お前ら二人にここまで負担をかける予定じゃなかった……緑谷のもとに幾野が飛び出して行った話を聞いた時には、並行して各学園の周辺は各学園の教師生徒でのパトロールする作戦だったんだ。学園側で手が回らないところをお前たちが調査し、各地のチームアップしたヒーローが対処する……というな。だがお前たちが無茶をしすぎた結果、予定の10倍は早くダツゴクを再逮捕できてしまった」

「真堂先輩たちがいたのもそういう事だったんだ……。……すみませんでした。僕、色々焦ってしまって……」

「俺も、余りにも自分が見えてませんでした。俺一人が辛いだけで周りを助けられるならなんて……自己犠牲っていや聞こえはいいけど、ただ投げやりになってただけで……みんなに心配させちまって……」

「…………夏合宿の後、寮に入る時に……俺が言ったことを覚えてるか」

 

 俺と緑谷は相澤先生に大変なご心配をかけてしまったことで頭を下げる。

 が、相澤先生はそんな俺たちに、優しい声色で諭してくれた。

 

「────()()()()()()。お前らにそこまで考えさせるほど、俺たち教師陣……いや、ヒーローたちが守れていなかったことの裏返しなんだ。お前たちに無理をさせてしまったのは、プロヒーローが成すべきことを成せていないからなんだ。だから緑谷、お前だけでOFAを抱え込むな。幾野も一人で守ろうとしなくていい……俺達プロヒーローも、全員が平和を取り戻すために動いている。お前たち二人だけじゃないんだ……よく無事に帰って来た」

「……っ……!」

「……泣きそう」

だが問題児二人にきっちり教育的指導はする」

「え」

「げ」

「緑谷出久、幾野潜!! お前ら二人はA組生徒、ひいては雄英全教師及び全生徒を心配させた罰として今日と明日は学内謹慎!! 学園施設外への外出を禁ずる!! ゆっくり休み体調を整え、これから始まる最終作戦に向けて英気を養え!! そして共に必ずAFO及びヴィラン連合を打倒し平和を取り戻せ!! これができなければ二人とも除籍だ!!」

「「────はい!!」」

 

 俺らへの配慮の行き届いたその処罰を俺も緑谷も受け入れた。

 俺たちは疲れた体と心を休め、そしてダツゴクをほぼ捕え終えても見つからないヴィランの首魁、AFO共を打倒するために。

 再びまた力になろう。今度はみんなと一緒に。

 

「イグジストお姉さん、デクさん……!! 本当に心配した!!」

「ん、エリちゃん……ごめんな、本当に。お姉さんおバカだったよ……」

「ごめん……洸汰くんも……」

「ホントだよ……!! ぐすっ……緑谷にーちゃんも、イクノにーちゃんも……! 死んだらどうするつもりだったんだよ……!!」

「エリも怒ってる!! デクさん、イグジストお姉さん、膝ついて!! しゃがんで!!」

「はい」

「ごめん」

 

 そして子供たち二人にめっちゃ泣かれながら怒られた。

 んんん。子供の涙は本当につらい。

 ごめんよ。みんなを守りたいと思っての事だったのに、みんなに心配されるようなことだっていうのが全然、俺も緑谷も分かってなかったんだ。こんな大人になっちゃだめだぞ二人とも。

 エリちゃんが涙目でぎゅーっとにらみつけてしゃがむ様に伝えてきたので、俺も緑谷もそれに大人しく従って。

 

「……おばか!! おばかーっ!!」

「痛い!!」

「ンッフ!」

 

 そこで渾身の平手打ちが緑谷と俺に見舞われた。

 ……が、これはただのビンタではない。その手に個性の光が宿っていたのだ。

 緑谷がそれで叩かれたのを見て、俺もオート個性を調整してエリちゃんの個性を無視しないようにして。

 バチーン!! とほっぺたがいい音を響かせたのち……俺たちの体は、ケガが全て治っていた。

 

 ビンタの一瞬で、エリちゃんが俺たちに個性を通したのだ。

 巻き戻る個性で体の怪我を治してくれた。凄まじい精度で調整が出来るようになっていた。

 まぁ俺も緑谷もケガ全部A組にやられたやつなんだけど。後でリカバリーガールに治してもらおうと思っていたけれど、その必要がなくなった。

 

「……ありがとうエリちゃん。ケガすっかり治ったよ」

「うん、助かった。ホントに……もう、心配かけないようにするから」

「ぐすっ……うわぁぁぁぁん……!!」

「にーちゃん……うわぁぁぁ……!!」

 

 お礼にぽんぽん、と二人の頭を撫でたところで、やっぱり号泣されてしまい。

 それでまた俺らの涙腺も刺激されて涙を流しつつ。それを見守ってたミリオ兄さんたちも泣いちゃって。

 

 その後もB組のみんなが駆けつけてくれたり、教師にも迎えられたりといろんな人から心配されていたという話を受けて。

 申し訳なさと温かみで俺と緑谷は随分と泣きはらしながら、ようやくA組寮まで帰って来た。

 

 


 

 

 で、A組寮の前でまた新たな人物と出会うことになった。

 

「…………めっちゃ怒ってる」

「そらそうよ」

「僕も怒られるんだろうな……」

 

 腰に手を当てて仁王立ちになり大いなる実りを強調させるように俺を見据える照準の入った瞳。

 明ちゃんだ。

 俺の彼女が明らかにおこですよ! ってな感じで俺の帰りを待っていた。

 なおその隣にはメリッサさんもパワーローダー先生もいます。みんなで迎えてくれて恐縮しすぎてしまいます。

 開幕土下座か。土下座で許してくれるだろうか。

 

「……待っていましたよ、センさん」

「ごめん」

「デクくんもおかえりなさい。随分と無茶したわね」

「……すみません、メリッサさん」

 

 とりあえず俺と緑谷は頭を下げて平謝りする。

 二人とも雄英の要塞化に多大なる貢献をしていたという話だが……しかしやはり心配はかけてしまっていただろう。

 明ちゃんなんて俺が出ていくことを事前に伝え、そのうち帰るよと言っておきながらメチャクチャ無茶したわけで。向ける顔がない。

 

「……とりあえずベイビーを全部出してください。メンテナンスしておきますので」

「デクくんも。両手両足のアイテムを外して。見せて」

「ハイ」

「はい」

 

 言われるとおりに俺たちは装備してたサポートアイテムを脱いで渡す。身に着けてるスーツ以外は全部渡して、パワーローダー先生が準備してた回収用の台車に乗せる。

 しかし俺たちが外したアイテムを見て二人も息を呑んだ。

 ……そうだよね。相当無茶な使い方をしていたからな俺も緑谷も。

 ダイブセンサーはともかく、ワイヤーもブースターも無視を通して限界超えて使ってたから相当摩耗させてしまっている。緑谷のグローブもアイアンソールもヴィランを殴り過ぎてボロッボロだ。

 

「─────センさん」

「はい」

 

 それを見た明ちゃんがつかつかつかと俺にめっちゃ近づいてきて見上げてくる。

 その瞳には涙が溜まってて。また俺は女の子を泣かせちまった。

 

「……私は!! 貴方にこんな無茶をしてほしくてベイビーを整備したわけじゃありません!!」

「っ……ごめん、明ちゃん。本当にごめん……」

「ダメです許しません!! 今日という今日は本気で怒りましたよ!! 口では分かってくれないようなので体に分からせます!!」

「アッハイ」

「今夜はA組の寮にお邪魔しますからね!! よろしいですね飯田くん!!」

「宣言されたぞ」

「どうする委員長」

「僕は今日に限り何も見てない事にする」

「メガネの曇りMAXな柔軟性を発揮した」

「有難うございます!! 覚悟しておいてくださいねセンさん!!」

「はい……」

 

 百ちゃんに続き明ちゃんからも搾り取る宣言をされてしまった。

 透ちゃんも絶対入ってくるだろうからな……俺は今夜死んでしまうのかもしれない。4日のオナ禁で彼女たちの本気に対抗できるだろうか。できないだろうな。

 

「……駄目?」

「ダメです」

「そう、残念」

 

 メリッサさんが何か麗日ちゃんと真剣を構えた武士(もののふ)の様な間合いで話してた。

 麗日ちゃんは独占欲強いからな。今夜か?

 

「……実はよぉ幾野。お前が飛び出してってから発目のやつも寂しさ紛らわせるために凄まじい勢いで開発してたんだけどなァ」

「パワーローダー先生……」

「それもお前がヤバそうなことになってるって情報耳にしてからというもの、まぁテンションがた落ちでこっちも作業効率下がりまくりの研究室爆発しまくりでなァ……かなり困ってたんだ。戻ってきてくれて助かったよ」

「……や、本当にご迷惑をおかけしました」

「発目の開発力がマジで今の雄英の命綱みてぇなところあるからさ。頼んだよ」

「はい」

 

 最近は明ちゃんのお父さんの様な雰囲気を出し始めているパワーローダー先生にも娘を頼むといわれてしまい俺は頷くしかなかった。

 教師でしたよね。それでいいのかパワーローダー先生。この人あんまそう言うの気にしなさそうなところある。

 まぁ食われるのは俺なんだけど(確信)。

 

 

 さて、そして3人とも一度分かれて、ようやっとこさ俺たちはA組寮にたどり着いた。

 ランチラッシュ先生が準備してくれていたというごちそうを腹いっぱい食べて。久しぶりのまともな料理にむせび泣いて。

 で、腹いっぱいになったら眠くなってきたのでお昼寝という名の夜に備える仮眠をとって。

 んで起きたらまた腹が減ったので夕飯もガッツリ食べて。

 

「……で、マウントレディとラブラバのほうで作ってた動画がこれな」

「なるほどね……避難した人たちが俺らに好意的だったのはこれのお陰か」

「OFAについても優しく解釈されてて……幾野くんの過去も知られるところになったけど……」

「俺の過去はこの事態になってなくてもぶっちゃけどっかのタイミングで世間に周知しないとなとは考えてたし。むしろ有難いまであるわ。後でマウントレディとラブラバにもお礼言ってこねーとな」

「うん。僕も行くよ」

 

 で、避難民の皆さんが俺たちに優しかった理由の動画を峰田に見せてもらって。

 そこには緑谷のOFAが継承された過去と、俺の過去について……優しい解釈で、英雄譚のように見る人を涙させるような作りになっていて。

 こんだけいいものを見せられたら俺も何も言うことはないです。元から過去についてはそこまで気にしてない、って話もしてたし。俺にとっては終わってしまった話である。

 OFAの件についてもAFOや死柄木がいつそれを騙り出すかわからない状況で、向こうから悪意を籠めて情報出されるよりは100倍マシだからな。オールマイトの取材映像とかも入ってたから織り込み済みなのだろう。

 緑谷もその映像の内容には納得していた。隠し通せる状況でもなくなってるしな。

 有難いの一言だ。俺らの事を想ってくれるマウントレディはやっぱり優しいお方です。頼れるお姉さん。好き。

 

 


 

 

 はい。

 ではお風呂の時間になります。

 

「緑谷お前、匂いはしてなかったけどやっぱ結構汚れてんな!!」

「んぐ。ウォッシュの泡で消毒はしてたけど……しっかり洗う暇はなかったから。幾野くんにその辺も管理してもらってたんだ」

「お疲れさんなマジで。背中流してやるよ」

「いいよ、心配かけちゃったのは僕たちだし……悪いよ!」

「いいっていいって!! 遠慮すんなー!」

 

 身体を洗ってる緑谷だがやっぱり風呂入れない生活を4日も続けてたら汚れはたまってたらしい。

 で、そんな緑谷の背中をA組のみんながかわるがわる流している。

 隣にいる俺は完全スルーされてんだけど????

 

ねぇねぇ俺の背中も流してくれない♥?」

「口を閉じたまえ」

「たとえ無事に戻ってきたとしても風呂場において幾野に人権はない」

「俺らの意識に入り込もうとするんじゃねぇ」

「ひどい」

 

 俺の背中も流してもらおうと思って口を開いたが駄目でした。

 駄目かー。やっぱ駄目か。お風呂場で俺は基本的にみんなの平穏を守るために背景と同一化を強要されてたからな。寂しい。

 まぁ背中流してもらうほどそもそも俺の体汚れてないしな。でも髪はしっかりあっためてコンディショニングはしておこう。

 

「まァ今日くらいはオイラが背中流してやるよ」

「峰田……!!」

 

 しかしその中でも唯一俺の体に耐性のある峰田が初めて俺の背中を流してくれました。

 泣きそうなほど嬉しい。髪も洗っていいよ。峰田になら俺の髪触ってもらってもいいから。

 ほら。触れよ。

 

「扱いがわかんねェから髪は自分でやれ」

「はい」

 

 とおねだりしてみたけど駄目でした。

 女の髪の扱いはちゃんと覚えておかないと駄目だぞ。お前の彼女だって長髪で髪のお手入れ大変なんだからさ。あとで二人きりの時に教えてあげよ♥

 

「……なんか、ようやくいつもどおりが戻って来たって感じだな」

「世間的にはまだこれからなんだけどな」

「AFOとヴィラン連合。これを捕らえて俺達の真の意味での日常を取り戻そう……そのために、今日はゆっくりと休もう、皆」

「うん……!!」

「ケッ。デクも幾野も戻ってきてんだ……やれねェ事はもう俺らにはねェ。とっととシメんぞ」

「言うようになったじゃねぇか爆豪!!」

「謝罪を経て子どもは大人になるんだな」

「どこ視点だよ」

 

 A組のやつらと落ち着いた風呂に入る。

 これまで当たり前にそうしてきたはずの日常が、随分といとおしく感じられた。

 

 

 

 はい。

 

「じゃあ私達は先に」

「失礼いたしますわ」

「音は立てませんので」

 

 風呂上がりに彼女たちにドナドナされて行くのが今の俺です。

 明日の朝日を迎えられるだろうか(白目)。

 

 

 


 

 

【side 瀬呂】

 

 

 風呂を上がって、幾野がバスタオルで髪のケアしてたところでイクノガールズに連れていかれてた。

 ハーレムクソ野郎であることは間違いないんだけど……なんでだろうな。今の幾野だけはなんか哀れに感じるわ。死ぬなよ。

 

 さてそうして落ち着いた時間がやってきた夜なんだけどな。

 この日はまだまだ続きがあったんだ。

 

「─────」

「ってうわぁ!? 無重力っ……おっ、茶子さん!? えっ何!? なんですか!?」

 

 幾野たちが連れていかれたのを見届けたすぐ後に、麗日がガンギマリの顔で緑谷の体をひょいっと持ち上げた。

 マリオUSAで見たなあんなの。上でじたばたしてる緑谷がヘイホーみてぇだ。

 そのまま無言で緑谷を運んでエレベーターに向かっていく麗日。アレは説教だけって雰囲気じゃねェな。そうか。お前らもか。

 避妊はしとけな。

 

「…………ケロ」

「…………うし。オイラももう寝るわ。お疲れなみんな」

 

 そして二組目がエレベーターに消えていった後に、意味深な視線を梅雨ちゃんと峰田が交わしていた。

 お前らもなんだな。

 まぁ……今日の峰田は頑張ってた。

 多分アイツじゃねぇと幾野の確保は無理だっただろうな。

 今日にいたるまで、きっと幾野の事を一番想っていたのも峰田だろう。一番信じ続けていたのも。

 その労をねぎらうって所かね。いいよ。もう慣れたよA組も。

 

「……先寝るわ。また明日ねみんな」

「………………! お、俺も先に寝るかな!! んじゃな!!」

 

 またエレベーターに消えていった梅雨ちゃんと峰田の姿を見送ったのち、耳郎も足取り早く部屋に戻って行って。

 で、少ししたら上鳴がスマホ取り出して、画面見てなんか眼をかっぴらいてて……いやモロバレにもほどがあるだろ。

 挙動不審な動きで上鳴もエレベーターへ。さっきから飯田の眼鏡にヒビが入りまくってるぜ。

 

 さて、この時点に至るまでに葉隠、八百万(+発目)、麗日、梅雨ちゃん、耳郎と女子6人の内5人が己の男を引き連れて部屋に戻って行っちまった。

 共有スペースに残ってんのは芦戸一人。思わず全員の視線がそっちに向く。

 

「……だー!! こっちみんなぁ!! わかったよもー女は度胸!! 一人だけ置いてかれてたまるかってんだぁー!!」

「っ、はぁ!? 何で俺の首掴むんだよ芦戸!? オイこら引っ張るな……力強ェ!? ダンベルの筋トレの成果かこれ!?」

「やかましー!! 大人しく部屋来いってのォ!! 恥もかき捨てだわ抵抗すんな好きだよ切島こないだ助けられてちょろい女だよ私はオラ来い!!」

「はっ……あぁ!? ちょっと待て!? 待てって!? 今!? このタイミング!? いや俺もお前の事はアレだけど違くて!! お前は俺のヒーローであって原点であって……」

「問答無用ォ!! みんなオヤス!!」

 

 置いてけぼりにされるのをよしとしなかった芦戸が暴走し、切島の首根っこをひっつかんでエレベーターまで運んでいった。

 ……まぁ二人とも明らかにお互いの事意識してたしな。切島がクソボケだったし芦戸もサバサバしてたけどとうとう一歩踏み込んだか。

 後は部屋でどこまでいくかだな。でも切島も女に恥かかせるタイプじゃねぇし据え膳はちゃんと食べるかな。食べろよ? これで芦戸だけ告白ミスったらまたA組の空気最悪になるぞ?

 

 

 ふぅ。

 嵐の様な風紀の乱れはようやく去り、そして残るは彼女レスな男子9人。

 

「……さて、僕たちも寝るとしようか」

「そうだな」

「明日も早いからな」

「5時な」

「ちゃんと起きねーとな」

 

 俺たちは一様にため息をついて見なかったふりをして、それぞれ自室に戻ったのだった。

 

 

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