【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!!   作:そとみち

168 / 177
168 時代は先行ワンキルデッキなんだわ

 

【side ヴィラン】

 

【side スピナー】

 

 

 ……いつからこうなったのだろう。

 

「ああああああ……! クソ……まだ疼く……ガァァァァ!!」

 

 日本の南方の離島にある俺たちヴィラン連合の隠れ家。

 そこにヴィラン連合の幹部メンバーとAFOが潜み隠れていた。

 

 脱獄してすぐに……俺たち全員がここにヘドロワープで集められた。

 そこからは蓄えていた資材で隠れ住む日々だ。

 随分と……俺達も減っちまった。

 寿司をつまみながら笑ってた日々は、いつの間にか遠い過去になって。

 

「…………ヒヒッ…………」

 

 荼毘の呆けた笑い声が漏れる。

 コイツは……異能解放戦線襲撃を受け、例の電波ジャックを流したが……そのジャックをさらにジャックされ、世界の道化にされた。

 こいつの怨念をすべて詰め込んだ魂の告発は、笑いものになった。

 脱獄し、あの映像がどうなったかを確認した荼毘は、ネットに流れていたその映像を見て呆けた顔をした後に……イッちまった。

 恐らくは、かなり精神の均衡を崩しちまってる。

 俺もしばらくは気遣う言葉をかけたりもしてみたがもう無駄だ。コイツは自分の世界に閉じこもった。

 

「……親父ィ…………ククッ……!」

 

 小声で呪詛を呟くだけ。

 余りにも痛々しいその様子に、しかし俺は何もできない。

 

 ……ここにトゥワイスかコンプレスでもいれば、気持ちを切り替えられるような明るい雰囲気で声でもかけたのかもしれない。

 アイツらはムードメーカーだった。特にトゥワイスは仲間想いで、自ら道化を演じるようなやつだった。

 だがあの二人はタルタロスに収監されず、結局脱獄騒動に乗れなかった。未だに他の刑務所に捕らえられているのだろう。

 奪還作戦もAFOに打診したが、聞く耳を持たれなかった。

 

「────────」

 

 そしてもう一人、トガヒミコ。

 こちらはトゥワイスが……分倍河原が捕まり、その後も暴れられず何も出来ずただ捕らえられ、脱獄してから……周りへの関心が薄れていった。

 元々マイペースな奴しかいないこの集団だったが、人数が減っていくたびにそれぞれがさらに周りを見なくなっていく。

 瓦解。

 そんな二文字が脳裏によぎる。

 

「……クッソ!! このIPも駄目だ……監視されてやがる! これ以上踏み込むと逆ハックされる……どうなってるんだ……どんな化物がネットの海にこんな監視を敷きやがった……クソッ、クソッ……!!」

 

 スケプティックがイラついたように机を叩く音が聞こえた。

 こいつはヴィラン連合というよりは異能解放戦線から合流したやつで……荼毘のジャック映像を流すのに活躍したハッキングのプロ、のはずだった。

 だが己を超えるハッカーにジャック映像をさらにジャックされ、その上でどうやら世界中のネットワークに俺たちの介入を察したら居場所を特定されるような監視ツールが仕込まれているらしい、と言っていた。

 俺たちヴィラン側から情報の発信ができない。単純な電話回線くらいしか使うことができない。

 その監視を掻い潜るために日々パソコンに向かい何やらやっているが……上手くいったためしはなかった。

 俺たちは何も出来ていない。ただ隠れているだけだ。

 その時間で、日本中のダツゴクが、ヴィランが捕まえられている。

 

 俺らの後ろ盾だった異能解放戦線で連絡が取れるのはもう僅か。

 ヴィラン連合はほぼ壊滅し、俺たちは離島で隠れるくらいしかできず。

 そしてそのヴィラン連合も、荼毘とトガが極めて不安定になっている。

 

 ……どうしてこうなったのか。

 

「殺すッ……殺す、殺してやる!! 憎い!! オールマイト!! 緑谷出久!! イグジスト!! こいつらを殺さない限りこの苛立ちは消えない……!!」

 

 そして先日アメリカから来日したスターアンドストライプを個性で感知し、迎撃に向かい殺害は果たしたものの個性の奪取に失敗した死柄木が……苛立ちに叫び、体内で傷ついた個性が馴染まずに血反吐を吐く。

 AFOは完全体になるまでの経過だと言っていたが……大丈夫なのか。

 お前はまだお前なのか。

 

「────大丈夫だ、上々だよ。『新秩序』は奪えなかったが最大の障壁の内一つは取り払えたとも言える。まさか()()も共にアメリカから飛び出してくるとは思わなかったが……()()は性格の面で戦いに関しては僕らの障壁になり得ない。ほっとけばいいさ、気楽に行こう! 一枚の青写真に固執するのはよくない事だ。せっかく準備をしてくれていたところ悪いがもうしばらくステイだ、みんな」

「……ヒッ……」

「………………」

 

 AFOがそんな様子の死柄木に子供をあやすように声をかけるが、返事はなかった。

 荼毘もトガも、AFOが何を言っているのかは理解しているのだが、反応を返さない。

 俺もAFOに対しては正直な所仲間意識がない。律儀に返事してやるほどの仲ではない。

 ……ここにトゥワイスとコンプレスがいれば、アイツらが上手く場を取り持ったのだろうか。

 俺にはできない。

 

「『新秩序』……そして幾野潜の『無視』、緑谷出久の『OFA』。この三つの内一つでいいのさ。一つでもこちらの力に出来ればそれは勝利と同じことだ……ヒーロー側の心を折り、圧倒的な力が手に入る。そのためのルートは一つじゃない。いくつものルートをあらかじめ作っておいたのさ」

「……どういう意味だ」

 

 しかし放っておくとAFOがただ語るだけになり、根幹の話がぼける可能性がある。先の言葉を促すセリフだけはかけておいた。

 この男とここ数日付き合って分かったことがある。

 この男は常に思わせぶりに大物ぶって話すが、話が遠回りで本筋がボケて言ってることが分からなくなることが多い。

 学のある者が聞けば語彙の多さに感嘆もするのだろうが、生憎ここにいるのはスケプティックを除いて全員義務教育未満のならず者。

 もっとシンプルに喋れよ。死柄木はいつもそうだったし、隣に黒霧がいたころはアイツは分かりやすくかみ砕いて説明してたぞ。

 

「簡単な事さ。死柄木の完全な肉体はお預けをくらい、緑谷出久と幾野潜は堅固な雄英に戻ってしまったが……僕は君たちと違って友達が多いんだ。スパイを仕込んである……中々使える友達でね。これまでの襲撃も彼の活躍あってこそさ。逆らえない楔も見事に突き刺してある」

「……スパイか。だがそれは向こうにバレたらこちらがまずくなるのではないか?」

()()()()()

 

 AFOの口から自信にあふれた声が返された。

 この自信はどこから生まれているのか。それほどに確証のある策なのか。そのスパイはそれほどに信じていいものなのか?

 わからない。腹が煮えくり返る思いではあるが、今俺たちが立たされているのは敗色濃厚の状況だ。

 それなのにこれだけの自信があるのがわからない。相手が寝返る可能性はないのか?

 俺たちが負け戦だと見限られる可能性は? 確信はあるのか?

 

 ……だが、俺にはそれを口にする勇気がなかった。

 

 思えば、俺はいつもそうだったかもしれない。

 この見た目で周りから差別されても、それに正面から反抗しなかった。逃げて、自分の殻に閉じこもって。

 勇気を出して己から行動したのは一度だけ……ステインの動画を見て、ヴィラン連合に合流した時だけだ。

 

 追い詰められたことで改めて己の醜悪さが見えてしまう。

 俺はただの事なかれ主義者なのか?

 AFOに対して思ったことを言えず、おかしくなっていく仲間を助けることもできない男なのか?

 

「君は100円ライターが点かなくなったらどうするかね? フフ……彼らが成功すれば嬉しい。ダメだったら『あぁダメだったか』と落胆し、次の道程に思いを馳せるだけだ。僕にとって彼は正しく使い捨ての道具でしかない……少しでも場を愉しませてくれれば万々歳さ」

 

 また雰囲気を出してAFOが何か言っているが、抽象的すぎてよくわからない。

 ただ俺に言えることは、AFOは絶対の勝利を確信するような作戦を思いついており、ヴィラン連合の他の誰もがそれに反対していないということで。

 であれば俺がここで口を開いて異を唱えるのは空気を読めない行動だろう。

 

 こんなクソの掃き溜めにいる俺でも、一つだけ誇れることがある。

 それは一つの決意をしていることだ。

 

「殺す……殺す……!! 絶対に殺してやるぞ幾野ォ……!!」

 

 死柄木弔。

 俺と共にゲームをしてくれたお前を、俺はまだ友だと思ってる。

 お前の望みのためになら、俺は俺の命を使おう。

 

 願わくば、AFOの作戦が功を成すことを信じて。

 そして、ヴィラン連合が勝利し、社会に混沌を齎せることを信じて。

 

 

 目の前の闇から逃げるように、俺は静かに目を閉じた。

 

 


 

 

【side ヒーロー】

 

【side 幾野】

 

 

「捕まえて来たぜ明ちゃん!!」

「よくやりましたセンさん!! さあ観念してください!!」

「どうして私が無理矢理連行されたのだ幾野少年ンンンン!!!」

『コンナアツカイサレタノハジメテデス』

 

 オールマイトの首根っこをひっ捕まえて特別開発室まで連れてきたのが俺です。

 片手にオールマイト、もう片手にオールマイトが俺と緑谷を追いかけてきたときに使ってた車であるエルクレスを重さとか体積とか諸々無視して持ってきています。

 エルクレスって喋れるんだな。AI搭載されてんのか。女性タイプだったりしないかな。

 女性AIってなんていうかロマンだよね……。戦いが全部終わったらしっかり話してみたい所です。

 

 ん? なんで急にオールマイトを連行してきたのかって?

 

「マイトおじさま、観念してください。パパと私で共同制作したエルクレス……()()()()()()()()ヒーローたちにサポートアイテムとして配るのよ。日数があまりないのだから余計な時間取らせないで!」

「ヤダー!! デイブが私に作ってくれたエルクレスが他の人に使われるのヤダー!!」

「子どもか」

「フムフム……流石はメリッサさんとそのお父様ですね!! 素晴らしい技術です!! 後でちゃんと元通りにしますからねまずはパーツレベルで分解です!!」

『アッアッアッ。アマリナカマデミナイデクダサイ。ハズカシイノ』

「エルクレスぅぅぅぅぅ!!!」

「NTRする側の気分味わってる」

「まぁ。横恋慕はいけませんよセンさん」

「する気はないから大丈夫だよ百ちゃん」

 

 はい。

 オールマイトのこのクソつよスーツ増産しようぜって話になりました。

 

 いや……俺と緑谷で走り回ってた時は全然オールマイトにコレ使わせることもなかったから知らなかったんだけどね。俺の装備の最終調整を明ちゃんにお願いしてる時にふと話を聞いてみたらこれクッソ強かったんよ。

 で、俺言ったの。『これもっと増やしてみんなで装備とかできねぇの?』って。

 したら明ちゃんとメリッサさんの瞳がキランと輝いて、今やマジで何でも創れる百ちゃんも呼んで、増産しようぜ!! って話になって。

 で、オールマイトの下へワープしてダイナミック誘拐してきたのが今の俺です。

 車を誘拐したのは俺も初めてですかね。

 スーツの本体であるアタッシュケースと拡張ユニットである車のエルクレス。

 この二つの設計図書いたメリッサさんと開発力∞になった明ちゃんと無限の創造の百ちゃんでめっちゃ複製することにしました。

 

「オールマイトの言うロマンもわかりますけどね。次の戦いはマジで総力戦でしょ。万が一にも負けたら社会が、世界が終わる。俺たちはあらゆる手段を使って勝たなきゃならない……そうでしょ」

「それはそうなのだが……ムム……」

「ムムじゃなくて。……もちろん全部を装備して十全に使えるのはオールマイトしかいませんよ。貴方の実戦経験があるからこそフルアーマー時の最大戦力は貴方しか扱えない。そこは俺も認めてます。A組全員の力を発揮できるようなアーマー……いやそういや俺の個性だけ再現されてなくない???」

「出来るわけないですね!!」

「出来るわけないでしょう」

「はい。デスヨネー……ま、でも一部のパーツをサポートアイテムとして装備させるだけでも相当な戦力増強になります。遠距離武器として轟や青山や峰田のパーツ持たせるだけで相当な火力になるし……俺らA組には己の個性をさらに増強させるようなアイテムを装備させりゃ特化型になるでしょ。躊躇う理由ありますか」

「ンーーーーンンンン…………言うことは分かるがぁ……!!!」

「デイブさんの事愛してるからってグダグダ言わないでくださいよンモー」

「そういう感情ではないぞ幾野少年ンンンン!!!」

 

 まぁオールマイトが何と言おうと明ちゃんとメリッサさんの開発欲は止められねぇんだけどな。

 見てよもういくつかアイテムが複製されて……いや待って既にダース単位で複製されてない?

 まだ5分経ってないよね? 俺とオールマイトが話してた間に作ったん??

 開発モンスターと設計モンスターと創造モンスターが集まるとこういうことになるんだなぁ(白目)。

 

 ……ま、つってもこれを装備するのは主に守備陣、後衛の守りを固める一般ヒーローって所だけどな。

 もちろん作戦の主となる俺や緑谷、A組B組メンバーやトップヒーローたちにも本人が有用だと思ったアイテムは使ってもらうけど……緑谷なんかは下手にアイテム使っても耐久力が足りなくなるしな。

 ここで作られてるサポートアイテムの技術の粋を詰め込んだメリッサさん作成のガントレットとアイアンソールが緑谷の武器だ。それだけで十分すぎる。

 あくまで万が一にも負ける可能性を0にするための一助だと思ってほしい。

 雑魚戦専用装備と言ってもいいかもね。死柄木やAFOを相手にするにはサポートアイテムだけじゃ限界があるし。

 

「よし。んじゃ増産の監督はあとは百ちゃんに任せるね。いい感じの所でブレーキかけてあげて」

「はい。私の創造が限界に近くなったら一度止めることにしましょう。コンデニウムの生成は中々カロリーを使うもので」

「無理しないでね。……ちなみに今だと百ちゃんどれくらいコンデニウム作れるの?」

「ダイブセンサー3つ分くらいは行けますわ」

「国3つ分かぁ」

 

 俺の彼女たちが人間を辞めはじめている。

 コンデニウムって超希少な素材だったはずだよな……? またこの子貨幣経済壊そうとしてる。

 今作ってるアイテムの管理、破棄は適切に行わないといけないなぁ。パワーローダー先生にその辺は後で投げておこう。うんうん。

 

 さて、そして彼女たちの開発を見届けて、俺は五月蠅くなりそうなオールマイトの腕を引っ張って開発室を後にした。

 

 


 

 

 作戦まであと数日。

 根津校長が立てた全面戦争の作戦に、俺も結構意見を述べて、キーマンからそれぞれ懸念点なども考慮されて、んで最終的に相手に何もさせないで終わらせるのがベストって所に落ち着いて、AFOと死柄木の対処だけに集中することになって。

 まぁ、どんな作戦が展開されるのかはその時まで秘中の秘だ。こればかりは作戦参加するメンバー以外に万が一にも漏れるわけにはいかない。

 

 で、勿論の事俺もかなり重要な役割を果たすことになっている。

 その練習なども色々やりながら……ちょっと息抜きに、雄英が見渡せる建物の屋上で人々が暮らす敷地内を眺めていた。

 

「…………」

 

 見下ろす施設には、市民たちが避難して来ていて……その中には俺にかかわりのある人たちがいっぱいいて。

 この人たちが過ごす社会を平和なものにするために、今度こそ俺はみんなと力を合わせて、みんなの力を信じて、この事件を解決する。

 終わらせたい。AFOに人生を狂わされる青山の様な被害者を、もう一人も出したくない。

 

 勝つ。

 

 ……と俺の中の決意をさらに固めてシリアス面してたところで、屋上に誰かが来た。

 オート個性が感知。誰が来たかを察知させる。有事になってから基本的にヒーロースーツ着てるから俺のまわりに誰が来てもそれを俺は察知できる。敵意がないから詳しくまでは見ないけど。

 

 さて、誰が来たと思う?

 こういうシチュって基本的にアレじゃん。最終決戦前のイベントスチルじゃん。

 峰田が一番熱いよな。またアイツと屋上から平和を誓い合う感じだと思うじゃん。

 もしくは透ちゃんだと思った? さっき他の彼女二人と話したもんね。ここで透ちゃんと想いを誓い合いながらキスなんてしたら勝利確定演出入るよ。先読みボキューンだったよね。

 緑谷でもいいよな。今回の件でもうアイツとはマジの親友になった。峰田と同じくらい緑谷も大切に思ってる。アイツのためにでも俺は死んでもいい。

 爆豪ちゃんもありかな。轟だっていいし……A組だったら誰でも熱いな。相澤先生でもよかった。エリちゃんでも心があったまったよな。

 

 違うんだよなぁ。

 

「……フム。夕暮れ時の黄昏に深紅の髪が随分と溶け込んでいる……まさに聖なる光と漆黒の闇を孕む貴公にお似合いの光景だなイグジスト」

「なんでアンタが来ちゃったんスか」

 

 意外ッ!!

 それはオッドアイッッ!!*1

 

「チェンジで」

「ククク……遠慮するなイグジスト! 貴公が高みに存在するのを地平線の彼方より遠くまみえた故にその影を辿った! 貴公の闇に堕ちし姿……イグジスト・ノワール!! 見事な物であったぞクハハハ!!」

「俺A組に帰るんで」

「まぁ待て……いやほんと待ってください。話したいことがありまして」

「はぁ」

 

 マジで切れそうになってA組ワープしようとしたところで、芝居がかったセリフを辞めて頭を下げてきたので俺は仕方なく話を聞いてやることにした。

 ……つってもまぁ、別に今はもう俺もこの人に敵意とかがあるわけじゃないんだ。

 何でこの人がここにいるのかって言ったら、俺と少しでもかかわったことのある人は全員雄英に呼ばれてたから……という理由とはまた別で。

 

 この人は、雄英に避難してきた人々の中にAFOのスパイがいないかを見てくれていたのだ。

 

 オッドアイの個性『無意識解放(アウト・オブ・リミッター)』。

 触れた者の知られたくない事や過去を曝け出すえげつない能力だが……俺が会ったころよりも個性を伸ばしていたようで、触れなくても睨むだけでその効果を出せるようになっていたとのことで。

 なので避難所に入居してくる人をオッドアイが見て、やましい事を考えていないかをチェックしていたらしい。

 24時間ほぼフル稼働だったんだってさ。物間が時折コピーして10分間の休憩は取っていたらしいけど、避難者が多かった最初の二日間はマジで完徹だったらしい。

 これが素晴らしいのは、相手にそれを察されない事。同時にオッドアイ自身のヒーローとしての知名度が緑谷も知らないくらい低かったことも功を成して、スパイをきちんととらえられていたとのことだ。

 何人かは監視をつけて泳がせており、暴れる目論見だったヴィランはその場で確保していると。青山のご両親の心の内の葛藤も見事に看破し、同時に青山も自分からAFOの件を言い出したことで、ご両親もある意味では泳がされていたことになる。狙われぬようヒーローの護衛兼監視をつけていたと。

 

 ……そこまで頑張ってたって聞いちゃあ、過去の事は俺も水に流すさ。

 マジで立派です。アンタもしっかりとプロヒーローだった。

 

「……改めて謝罪をさせてほしい。かつて出会ったときに、私が君に対して極めて侮蔑的な行動をとってしまったこと……心より申し訳なく思う。すまなかった」

「────。……頭上げてくださいよ。そんな元々怒ってなかったっすし」

「いや、これは君への心底からの謝意のほかに……感謝の気持ちでもあるのだ。君の過去をサイドキックから教えられて……私は己のこれまでの言動を心から恥じた。その結果成長し……そして、ヒーローとは何かを考えることができた。()()()()()()()()()。……その感謝を、受け取ってほしい」

「すみません俺男に興味ないんで……」

「そういう意味は欠片もないので安心してほしい」

 

 思わず茶化しちゃったけど、言われた内容は極めて真剣なものだった。

 俺の茶化しにくすっと笑うオッドアイ。コイツ顔だけはマジでいいよな。バカじゃなければ人気も出ただろうに。

 でもバカじゃなかったらいろんな人の隠したい過去とか暴け出してメンタル無事で済んでるはずもねぇしな。やっぱバカでよかったわ。

 ……ま、バカなりに反省して成長できたってんなら俺も言うことないわ。今後もいい関係でいようぜオッドアイ。

 

「……話したい事のうち一つはこれで終わりだ。私は戦闘向きの個性ではないから最終作戦には参加できない……せいぜいその前の、作戦に参加するヒーローがAFOのシンパでないかを確認した程度だな」

「それもお疲れさんでしたね。まぁ俺も今や嘘はわかるようになったから俺でもよかったんすけど。人を疑うの俺は苦手ですから……負担減らしてもらってどもっすわ」

「フム。……そしてもう一つ、君の耳には入れておかねばならないことがあった。私も相当悩んだ……個人の事情でもあるし、悪意ではない人の心根を覗く際にそれを赤裸々に語ることは我が矜持にも反することだ。だが……イグジスト。貴公には聞く義務がある」

「そこまで。んじゃ聞きますよ……俺に言ったこととか誰にも言わんでくださいよ。俺もオフレコにしますんで」

「無論だとも。……周囲に誰も?」

「空間に無視を通しました。今の俺達の声は耳郎ちゃんでも聞けないし、障子でも見ることはできないっす」

「恐ろしき力よ。では─────」

 

 そして屋上でオッドアイから情報提供を受ける。

 それを聞いて俺は……驚愕し、重ねてオッドアイが俺にだけそれを伝えてくれたことを感謝した。

 

 マジかよ。

 俺のやる事また増えちゃったじゃん!!

 

 ま、やるけど。

 俺ってば欲張りだからね。ハッピーエンドしか興味ねぇんだわ。

 俺のダチを、仲間を、ヒーローを一人も零したくはないんだわ。

 

「……大いなる力には大いなる責任が伴う。この言葉の意味を、最近はよく考えるようになった……イグジスト。伝えた身で、不甲斐ない大人からの言葉で申し訳ないが……死ぬなよ。私は貴公がこの社会の最後の希望だと考えている」

「勝手に最後にせんでください。終わらせねぇっすわ。完封勝利でGGにするんでしょ俺たちは」

「フ、そうだな。……邪魔をした。存分に夕闇を眺め黄昏れるといい!! クハハハハハハ!!!」

「めっちゃ今俺がやってることが恥ずかしくなってきたんですけどぉ!!」

 

 最後に元の調子に戻り高笑いしながら屋上を後にするオッドアイに俺は感謝を込めてバーカ!! と叫んで見送った。

 

 ……俺だけじゃない、俺と緑谷だけじゃない。俺たちA組だけじゃない、俺ら雄英だけじゃない。

 トップヒーローだけでもない……今、全てのヒーローが戦っている。

 いや、この避難所に避難してる人……避難してなくても、緊急事態宣言下で静かにヒーローの勝利を願ってる人たちすべてが、平和な未来を求めて戦ってるんだ。

 

 みんなの願いを、みんなで叶えるために。

 

 

「─────必ず」

 

 

 落ちていく夕日に手のひらを掲げ、つかみ取る様に虚空を握りしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………お、マジでイクノのやつ中二病発症してる。オッドアイの言った通りだな」

「わ! ホントだー! ねぇねぇセンちゃんもっかい! もっかいやって今の!!」

「ブフッ……いやいやごめん、そういう時期は誰にでもあるよね……常闇くんだっているんだし。うん、みんなには言わないよ幾野くん」

「クソがよォ!! センサーに映らなかったんだけどどーゆーことだよお前らぁ!?」

「発目たちが作ってたサポートアイテムの効果試してたんだわ。イクノのセンサー抜けるんじゃ本物だな」

「私は自前だけどね。センサーに映らない女、インビジブルガール!! 集中して無視しないと見れないでしょー!」

「オート個性は自分に害が加えられる可能性があるモノじゃないと発動しない……気を張れば見つけられただろうけどね。ふふっ、してやったりだ」

「忘れてェ!」

 

 

 ンモー! しまらないわねー!!

 

 

*1
102話で緑谷と常闇と一緒に行ったチームアップミッション先の中二病ヒーロー。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。