【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!!   作:そとみち

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170 イグジスト大勝利!! 希望の未来へレディ・ゴーッ!!

 

【side AFO】

 

 

 この瞬間を。

 この瞬間を、夢にまで見ていた。

 

「これまでお前が集めたあらゆる個性を無視してやるよ。逃がしもしねェ……ワープが俺にはあるしな」

 

 周囲に誰もいない状況。

 目の前には無敵の個性。

 僕が喉から手が出るほど求め続けていた個性の持ち主。

 

「……ッ……降参したらどうだ? 惨めに土下座して許しを請えば許してやらなくもないぜ?」

 

 ああ。

 この瞬間に備え続けてきた。

 この瞬間のためだけに生きてきたと言っても過言ではない。

 

「クソ……聞けよ話をこの馬鹿が! もしこの場を切り抜けたとしてもお前は終わりだ!! 死柄木も緑谷たちがすぐブッ潰すだろうしヴィラン連合も異能解放戦線も壊滅状態!! 今度こそテメーは死刑だろうぜ!!」

 

 ふふ。

 そんな顔して叫ぶなよ。興奮して来ちゃうじゃないか。

 

 ……備えて来たさ。

 君を()()()()()()()()()()()()で見つけた時には、僕は震えたものさ。

 

 通形家の個性の可能性については以前から目をつけていた。

 すり抜ける個性。使い勝手がよさそうな個性が生まれれば僕が貰い、文字通り無敵の存在になれるだろうと。

 その血筋は常にマークしていたのさ。

 通形ミリオはかなり惜しい個性だった。使い勝手の悪さがあった。鍛錬が必要で、そういうのは僕の奪う個性と相性が悪い。

 もっと広く使いやすい個性が生まれないかと思っていたところに─────君が来た。

 

 震えてしまった。

 相談窓口の事は覚えていないかな? 君はあの時、ずっと周りを無視していたもんね。

 あの相談窓口は僕が殻木に張らせた蜘蛛の糸、有能な個性を持つ社会落伍者候補を見つける窓口だったんだよ。

 君の事件のあらましと、君の個性を見て……そして、その個性の可能性に至ったんだ。

 あの時、まだ子供だった君はずっと個性を張り続けて、周りを無視して……()()()()()()()()()()()()()

 相談窓口に相談に来る者には潜在意識レベルで僕を崇拝するようになる個性をかけていた。効力は弱いが心に隙がある、救いを求める人であればそれにすがってしまうような弱い個性で周りには気付かれない。

 だが相談窓口に来るような人間ならそれにすがってしまうもので、そこから個性をいくつも貰ったり、シンパを増やしていたのさ。

 

 だが君だけはそんな個性すら無視していた。

 見つけたんだ。僕の希望を。

 僕は当時オールマイトから受けた傷が深かったため直接会いに行くことはできなかったが……いずれ動けるようになったときにいの一番にこの個性を狙っていた。

 OFAや新秩序と並んでマークしていたさ。

 

「……何とか言えよAFO!! 何が望みだ!!」

 

 だが、そんな君は……なんと自殺を考えてしまった。

 父親を自分から無視して殺してしまった罪の意識で、まさか自殺を考えてしまうとはね。

 周りにもっとぶつけてヴィランになっていてもよかっただろうに、己に責任を求めてしまったんだ。

 そして君はとある少年に助けられた。弱個性の、なんてことない少年が君の心を救ってしまったんだ。

 君は拠り所を得てしまった。

 

 ────その瞬間にピースは揃った。

 

 

「─────その手を…………峰田を離せ、AFO!!!」

「いやだね」

 

 

 僕の右腕には()()()が掴まれており。

 一瞬で頭を貫けるよう、黒槍で彼の全身を狙っていた。

 

 


 

 

 使い所のある個性なんて、世界にはいくらでも溢れている。

 僕が使った個性は『アポート』。泥ワープとはまた別で……指定した一つのモノしか手元に運べない。

 運べるものもせいぜい20kg程度の軽いもの。運べるサイズも成人を運べるほどじゃないさ。

 しかも一日に一回しか運べないという縛りもある。さらに指定したモノは一度指定したら自分の意志では解除できない。

 人間を運ぶなら泥ワープの方がよほど便利だ。変な方向に特化しすぎた、使い勝手の悪い個性だった。

 

 ただしこの個性には唯一の利点があった。

 運ぶ距離を問わない事さ。

 

 この個性で、僕はずっとアポート対象に峰田実を指定し続けていた。

 彼が個性による()()()の人間でよかったよ。ギリギリアポートで運べるサイズだった。

 幾野潜と一対一になった瞬間にいつでも僕の手に送れるようにしていたんだ。

 

 この絵をずっと描いていたよ。

 人質を取られる事態を考慮させたくないがために、これまで幾野潜に対して人質を取る様な作戦を実施しなかった。失敗は許されなかった。

 今回の青山優雅の話が罠である可能性も考慮していた。

 そうした場合、襲撃に参加させる弔たちが一網打尽にされる恐れもあったさ。

 でもすべては些事。この場面さえ描ければ最悪は弔がやられてしまっても僕が本体のままだっていい。

 弔が無事で向こうの僕がちゃんと目覚めたら向こうに『無視』を譲渡しても構わない。

 『無視』さえあればOFAだろうがどんな個性だろうが、歯牙にもかからないのだから。

 

「─────卑怯者ッッ!!!」

「卑怯者という言葉は敗者が最後に吐く言葉だよ。ヒーローが使っていい言葉ではないね」

 

 この瞬間まで勝ちを確信していたのだろう幾野潜の顔が驚愕に歪む。

 ああ……なんて嗜虐心を満たす顔なんだ。なるほど、世間が狂うのも分かるというもの。

 四半世紀は忘れていた感覚を思い出してしまう。これは性欲だ。

 この枯れ果てた肉体にもまだそんな感情が残っていたことに驚きだ。

 

 君たちヒーローが僕に対してどう出てくるか推測していた。

 イレイザーヘッドやファントムシーフによる抹消は考えられることだろう。だが弔は抹消をかけた上でも戦い続けることができる。

 僕に対しても抹消をしてくるだろうことは考えられた。勿論その場合でも、体内から放てるタイプの異形型個性による対策は考えていて……それで反撃をした場合にヒーローたちはどうする?

 僕に対して火力で真正面から戦えるのは緑谷出久のほか、せいぜいがエンデヴァーくらい。その二人は弔に回すだろう。タイマンでエンデヴァーが僕に勝てるとは思えないし、戦ったら僕が勝っただろう。巻き戻しの複製個性もあるから若返る事も出来たはず。

 

 となれば、戦力配分的に僕に対しては幾野潜があてられるはずだ。

 二人の英雄なんて動画を作ったことで、無意識にその絵をヒーロー側が考える。

 二人の英雄の内、一人は僕に、一人は弔に。

 そうなった場合に総力戦で攻めるべきは弔であり、であれば援護を受けやすい緑谷出久はそちらに。

 そして幾野潜はその個性の性質上、人質を取られることを何よりも嫌う。

 僕と一対一の状況を作る可能性がある。

 僕の場合はこのマスクが弱点であることは分かっているから、ワープしてマスクを壊してしまえば……と考えるだろう。

 

 その可能性が考えられた時点で、僕は青山優雅の罠かもしれない誘いに乗った。

 賭けではあった。

 だが、賭けは僕が勝った。

 

 拘束する鉄檻が僕の動きを逆に隠してくれた。

 ワープした瞬間に、檻の中で僕はアポートを発動。

 右手に峰田実の首根っこを掴んだ状態で、檻から解放された僕をワープゲートで追って来た幾野潜の、一言目の後の表情の変化はとても味わい深かった。

 何年物のワインでもあれほどの味わいは出せないさ。

 

 峰田実の首根っこを掴んでいた手を僅かに緩める。

 逃がすわけではない。喋れるようにするだけさ。

 

「……イッ……クノ、悪ィ……!! オイラの事は気にすんなァ……やれ……!!」

「峰田っ……お前を見捨てる事なんて出来るかよ!!」

「おやおや、麗しい友情だ。いや……友情以上の感情なのかな。フフ、どうする幾野くん? ワンチャンスに賭けてワープで僕に飛び込んできても面白いぞ? 僕の意識を落とすのが先か、峰田くんの頭を黒槍が貫くのが先か……勝てるかもしれないからね。峰田くんを見捨てれば君は世界の英雄になれる。躊躇うことはないんじゃないか?」

「クソ野郎が……!!」

「大切なのは態度だよ幾野くん。君が僕に対して敬意を示すのならば、君と僕は友達になれるんじゃないかな」

 

 幾野潜の声にも、峰田実の声にも嘘の色はない。

 嘘を見抜く個性で確かめたから間違いはない。二人とも、この状況に震えている。

 峰田実は己の命を捨てる覚悟を持ち、幾野潜は彼の命を捨てられない女々しさを抱えている。

 美しい。友を想う心が世界を終わらせるのだから。

 

 幾野潜から個性を奪う。

 そうすればもうこの二人も用済みだ。二人が何をしようとも無視をすればいいのだから。

 もちろん後腐れなく二人一緒に黄泉へ送ってあげるが、その前に楽しんでもいいかもしれないな。

 目の前で親友が黒槍に犯されたときにどんな顔を見せるのだろう。気になる所だ。

 

「っ……お、ね………」

「ん? 聞こえないよ幾野くん。悪いね、僕は耳が遠いんだ。こんな顔だからね」

「おねがい……お願いします!! 峰田を助けてください……!! 何でもしますから……!! どうか峰田だけは……!!」

「イクノ…………ッ!!」

 

 ああ、とてもよい判断だ。

 判断が早い人は有能だよ。時間を無駄にかけることは無能の証明だ。

 幾野潜が震える様に声を漏らし、その場で土下座まで見せて来た。

 峰田実の存在が最も大切なんだろうな。肩が震えている。

 ぞくぞくしてしまうね。君にそんな表情をさせる様な人間は僕が初めてなんだろうね。

 

「ああ、そんなに怖がらなくてもいいじゃないか幾野くん。君には僕の友達になってほしいだけなんだ……()()()()()()。仲直りの握手を。もちろん、どのように握手をするかは分かっているよね?」

「………………」

「イクノ、乗るなッ……グッ……駄目だ!! やめろォォォォ!!!」

 

 その言葉に涙を流す幾野潜が顔を上げ、立ち上がり……ゆっくりと、僕の方に近づいてきた。

 緊張の一瞬だ。まだ裏切られないとも分からない。最後の一瞬まで油断はしないようにしよう。

 峰田実につきつけている黒槍を見せつけるように動かして、一瞬で脳を貫ける状況にある事を再認識させる。

 それを見てビクッ! と震える幾野潜が、僕に向けて手を差し出してきた。

 

 

 さあ。

 世界を終わらせる握手をしよう。

 

 

「フフ……素直ないい子だ」

「………………」

「イクノォォォォォォ!!!」

 

 

 僕は差し出された幾野潜の手にそっと手を差し出し…………そして、お互いの手が触れた。

 個性を奪う。

 

 そして、次の瞬間に僕は。

 ()()()()()()()()()()

 

 

「────そうか。残念だよ幾野潜」

 

 

 彼が何かをする前に、僕は峰田実に向けて黒槍を突き刺した。

 

 

「ハイGG」

 

 

 峰田実の喉に突き刺さり、そして。

 

 

 

「─────あービビッたぁ!! マジで笑う所だったぞオイラぁ!!」

「はは、悪い悪い! ちょっとあんまりにもアホなこと言いだすから乗っちまったところあるよね」

「は?」

 

 

 

 


 

 

【side 幾野】

 

 

 どうしてヴィランは俺の腹筋を試そうとしてくるのだろう(困惑)。

 

 いや……なんだろ。荼毘と言いAFOといい、もしかして無敵の俺に対しての対策にギャグで攻めて来てるところあるのか?

 ありえねーじゃん。マジでなんつーか……何でも思い通りになるとでも思ってたんかコイツ。

 よく考えろよ。さっきの場面でもぶっちゃけ死柄木だけ飛ばしてお前はあのままあの場でボコッてもよかったのにここに飛ばした理由よく考えろよ。

 周囲に被害を与えたくないからに決まってんだろ。

 で、そんな俺がお前が何しそうかなんて考えてるに決まってんだろうがよ。

 

 ────────人質を取る。

 

 俺に勝つ手段はそれしかないだろ? そんなの俺が一番よくわかってんだよ。

 で、だからこそそれに対策するだろ。当然だろ。

 今の俺だからこそできる手段を全部打っておいたんだよ。

 

 俺と左手で握手したAFOが、右手に捉えていた峰田に黒い槍みてーな……緑谷の黒鞭にちょっと似てる報告に有った個性で喉のあたりを貫いてるけど、峰田はピンピンしている。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 命を脅かすレベルの重傷になりかねない攻撃はオートですり抜けるんだわ。個性も無駄なんだわ。

 

 これが出来るようになったのは、俺がA組のみんなに緑谷と一緒に助けてもらったとき。

 峰田が俺の原点にまたなってくれた時。

 みんなが俺の隣にいてくれることが分かった時に……俺の個性は完成した。

 

 身体を重ねた相手だけではない。

 触れていなければ効果が出ないなんて知らない。

 そんな限界は無視して……俺は、親しい相手ならば俺の無視を共有させられるようになった。

 

 AFOを呼び出すときに青山と緑谷の言葉に疑わせなかったのもコレね。

 青山のご両親は親しいって間柄じゃなかったから心操が洗脳して喋らせたけど、青山と緑谷には俺の個性通してた。

 だから嘘ついて演技してても見抜けなかった。そういう風に調整してる。

 

 今回の作戦ではA組のみんなには全員オート個性を共有しておいた。

 不意の一撃で倒れないようにしてあって。

 でもやっぱ俺のオート個性ほど完璧ではなくて、峰田がAFOに捕まえられたのを見た時はびっくりしたよね。

 まぁ間近にいるからすぐに個性を通し直して、良い感じに人質になる状態にしてもらって、AFOの油断を誘った。

 俺の演技で気持ちよくなったAFOは全く疑わずに俺の手を握ってくれました。

 

 はいGG。

 お前に触れることが俺の最終目標。

 この瞬間にお前は終わりです。

 

 峰田に悪意を持って触れたお前は何があっても赦さない。

 

「とりまこっち来いよ峰田。今度は俺が首根っこひっつかんでやるよ。あ、俺にしがみついてもいいよ♥」

「なぜか知らんけどAFOに捕まるよりもお前に捕まってる時の方が恐怖あるなオイラ」

「…………そこまでの関係だったとはね。だが君は抹消をもっていな「うーん。峰田のこの細い首筋……グレープジュースのヒーロースーツ……いいな……」

「勢いに任せて一線越えようとすんな??? オイラお前とは永遠に隣にいるだけだからな?? 梅雨ちゃんに悪いし葉隠と八百万と発目と冬美さんとマウントレディに殺されるからなオイラ?」

「お前は俺が死んでも守るから大丈夫」

「親友からの愛が重い!!」

 

 アホ(AFO)はスルーしながら和気あいあいと会話を続ける。

 こんな相手は初めてなんだろうな。困惑しかしてないのがマスク越しに伝わってくるわ。

 周りで楽しそうな会話がされてる時ってブッ壊す!! ってテンションにならないよね。それ狙ってるところあります。

 まぁそもそも何しても俺にも峰田にも無駄なんだけどな。

 

「──────放せ」

「俺に捕まれたら終わりだって義務教育で教えてもらわなかったん? この手は離さないよ、友達だろ? 腕でも何でも千切って逃げたらどうだいAFOくん」

「ッッ!!!」

 

 さて、ようやく準備が出来たので俺が改めて煽り返したらAFOはその煽りにマジで乗り、俺が掴んでる左手を、右腕でブチ切ろうと手刀を繰り出した。

 おお、今度は判断が早かったな。

 確かにな、これで左腕を切断できればそのまま俺から距離を取れるだろう。逃げられるかもしれない。

 ワープがあるから逃げられないんだけど。

 ってかそもそも──────

 

「なっ─────」

「友達って言ったろ? 相手がどれだけクソ野郎でも俺が掴んだらもう個性を通せるんだよ。これが念願の無敵の体だぜ? 腕が千切れなくてよかったねぇマイフレンド」

 

 既に俺がお前の体に個性を通している。

 お前の『左腕』に『右腕』を『無視』させた。手刀が見事に左腕にスカる。

 自傷行為も許さないよ。お前はチェスで言うチェックメイトにはまったのだ。

 

「……っ! ならば個性の重ね掛けで周囲の地形ごと……!!」

「無駄だっつッてんだろ」

「─────ッ!? なっ、にが……!?」

 

 続けてAFOが他の個性を噛み合わせて、神野で見せたようなマップ兵器を放とうとした。

 が……もう遅い。

 

 俺がお前の手を掴んでから数秒。

 その間に、俺は()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「何故……ッ、個性が使えない……!? 何故だ!? 何故!?」

「個性が使えない理由を100文字以内で答えよ。配点100点」

「クソ問題じゃねーか」

 

 これが出来るようになったのはお前のお陰だよAFO。

 お前が刺客として送って来たレディ・ナガンとの戦いが、俺をこの発想に至らせた。

 

 他人がそもそも生まれ持った個性は俺も無視させられないさ。

 でも、お前の個性は『個性を奪い譲渡する個性』だ。それ以外は全部、お前以外の誰かからかつて奪ったモノ。

 つまり厳密にはお前の個性ではない。

 ってことは、俺のモノだって認識できるという事。

 

 練習には事欠かなかった。

 レディ・ナガンを呼び出してそのドスケベ年増ボディに何度も腕を埋めて、エアウォークやホークアイを無視させる練習を積めた。腕を埋めるたびに「んっ……」って艶かしく喘いでてエロかった。

 また、長期間与えられ続けていた個性を持っていた青山に対してもこの練習を積ませてもらっていた。

 青山の個性はやっぱり長い事自分の体に付与されていたものでコツをつかむのに時間がかかったが、アイツは俺との訓練を進んで受けてくれた。己の個性を喪失する可能性があっても躊躇いなく協力を申し出てくれたんだ。

 あと物間のコピーとか……まぁ俺のまわりに自分以外の個性を使える人が多かったお陰で、練習には事欠かなかったさ。

 

 んでもって手を掴んでからが本番だったんだけど、あっさりコイツの中の個性を無視させることができている。

 拍子抜けするくらい簡単に無視させられた。

 多分だけどお前、奪った個性全員からスト起こされるくらい恨まれてるぜ。

 俺が無視させようとしたら全然抵抗なかったもんね。個性に意志が宿るのは緑谷のOFAで知ってるけど、お前が奪った個性全部がお前を否定していたよ。

 

 狼狽えるAFOの頭のマスクを諸々無視して取り外した。

 金玉見てぇなツラが俺の目の前に現れる。相変らず顔キモいなこいつ。そんなんじゃ社会に顔向けできないよ。

 同時に再びAFOの全身に個性を通して、キメてきたスーツやら服やらなにやら全部引っぺがしてやる。

 万が一を考えてのそれだ。個性使えなくてもサポートアイテムとかもし持っててそれで一発逆転なんて考えたくないしね。着てる物持ってる物含めてぜーんぶ遠くに投げ捨てた。

 

 さあ、AFOが丸裸になった。

 

「…………」

「峰田、とりあえず」

「おう。グレープラッシュ!!」

 

 すべての持ち物を奪われ、個性を無視させられ、『個性を奪い譲渡する個性』だけになったAFOに峰田がもぎもぎネットを何重にも巻き付けて身動きを取れなくさせた。

 これでもうコイツは何もできない。

 ただしそれは俺が掴んでいる限り、だ。

 手を離した時点でコイツの無視させている個性が使えるようになっちまい、逃げられる可能性もある。

 

 だから最後の一手を。

 

「さてAFO。これからお前にコイツを打ち込みます」

「何を……」

「あ、目が見えてねェんだよな確か? 分かる? コレが何か」

「……─────!!! ま、さか」

「お、よかった分かったか。うん、そう。()()()()()です」

「オリジナルか!? 現存していたのか……!?」

 

 俺は俺の体内……ダイブセンサーの中にずっとしまっておいた切り札を取り出した。

 それはエリちゃんの細胞を使った個性破壊弾。

 かつて俺が八斎會事件の時に打ち込まれた弾丸で……しかし、その時俺が受け止めた弾丸は俺が無視を通すことで無効化し、()()()()()()()()()()()()()()

 あの時咄嗟に敵の手に再び渡らせてもアレだと思って一度体内にしまって、その後は相澤先生ショタ化事件があって寮に帰るまで存在を忘れてたんだけど、寮に帰ってから未使用の弾丸が一個あったわって思い出して。

 

 ……え? ずっと隠し持ってたのかって?

 んなわけねぇだろ! ちゃんと警察に提出したわその後!!

 悪いことはしないの! マジで忘れてただけなの!

 

 で、もちろん警察の方も重要資料としてこの一個の弾丸をずっと保管しておいたということで。

 他の弾丸はヴィラン連合に警察の護送車が襲撃されたときに持ってかれちまったからな。唯一現存する弾がこれだけで、下手に分解調査も出来ないから完全保管の状態だったと。

 これにエリちゃんの血肉が使われている呪われた武器であることは承知の上で、ただこの弾丸の能力は個性社会にかなりの波紋を広げるモノであることは間違いなくて。

 警察……っていうか政府と公安の方では個性を消す効力のある薬が作れればそれを重大な個性犯罪犯したヴィランとか持ってるだけで体に害のある個性の人向けの対策として用いるような話も出てるっぽい。ラブラバがそんな情報をハッキングして集めてた。

 

 そして今回の件。

 これほどの事件を犯して世界の敵になりかねないAFOと死柄木にはこれ使っていいんじゃね? って俺が作戦室で提案して、めちゃくちゃ協議された結果、使用することになったのだ。

 絶対に他人にこの弾丸を渡さないように俺が体内に保管することになった。

 蛇腔総合病院で殻木が作ってた複製の個性破壊弾はその場で万が一にも使われないように全部ミリオ兄さんが叩き壊したけど、殻木から個性破壊弾の作り方の情報は聞き出した。オッドアイが。

 で、聞き出した情報はI・アイランドにいるデイブに共有されて……既にいくつか複製弾も開発されている。それも今俺が持ってる。

 

 この弾丸が禁忌の存在であることは理解している。

 出自からして呪いの産物。エリちゃんの体を切り刻んだ末のクソ治崎の暗い欲望の塊で。

 ……でも、どんなものだって使いようだ。個性と同じ。

 簡単に人を殺せる個性でも、使い方次第では多くの人々を助けられるんだ。

 特に今回は世界最悪のヴィランが二人。使用を躊躇いたくはなかった。

 

 もちろんの事、エリちゃんにも俺と相澤先生からこれを使用する事の承諾を得る話を丁寧に説明している。

 説明を受けた上で、エリちゃんからも平和の為にヴィランの力を封じるためならば、俺ならば使い方を間違えないだろうから使っていいと了解を取っている。

 その信頼に応えたい。

 

 ってなわけでこれをクソAFOにブチこみます。

 この一発はオリジナルの弾丸だからな。完全に個性を壊すらしいじゃん。

 いくつもの個性を持ってる状態のAFOならもしかするとスターアンドストライプが新秩序で壊し切れなかったように耐えられる可能性があるけど、今俺が掴んでるのは自分の個性しか持たないただの老害。

 これを打ち込むことでお前を無個性にします。

 

「……やめろ。やめたまえ。僕は、僕の個性は決して私利私欲の為だけに使っていたわけじゃないんだ」

「やめないが」

「落ち着いてよく考えろ! 僕が救ってきた人々もいる……! 異形型個性のそれを奪い、人の姿になれたことで感謝した人も! 無個性に悩んでいたものに個性を与えて感謝されたこともある!! 今後はそのように個性を使うことを誓ってもいい!!」

「何か言ってる」

「負け犬の遠吠え」

「大局を見てくれ!! 僕の中にある数多の個性も無くなってしまうぞ!! 僕が死刑にならなかったのは僕の中にある個性が本人へ返せなくなってしまうからだ……!! 君がそれを僕に打ち込んだら、僕がこれまでやむなく個性を貰って来た人々へ個性を返せなくなってしまう!! 君の手で多くの人の希望を潰すつもりか!?」

「男のお喋りはみっともないぜ」

「やめろ……!! 今までの、僕がしてきたことが全て……全て!! こんな、あり得ない!! OFAでもオールマイトでもない貴様のような矮小なガキが……ッ!!」

「もう刺していいと思う?」

「いいと思う」

 

 AFOがそのヤバさに気付いて命乞いをし始めたけど忘れんなって。

 俺は他人の感情も無視できるんだからよ。

 お前がどれだけ気持ちを込めて俺に話してきても俺は完全スルーだよ。スルースキル鍛えてましたから。

 

 どんな終わり方でもいいんだよ。

 お前が終われば社会は平和になるんだから、俺はそれを躊躇わない。

 

「………ひっ」

「ひ?」

 

 AFOの首筋に個性破壊弾を押し当てて、注射器のような形になってる其れの針を刺したところでAFOの口から悲鳴のようなものが漏れて。

 そして、最後に。

 

「──────卑怯者……」

「ウケる」

 

 震え声で敗者が最後に吐く言葉を零したAFOの首筋に液体を注入した。

 

 

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