【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!! 作:そとみち
【side 太平洋上 孤島】
「本部!! ヴィラン連合が拠点に利用していたと思われる施設を制圧した!! スケプティックと数名のヴィラン確保!! とっとと収容用のヘリ回せ!」
死柄木の下に白雲朧とプレゼントマイクが合流した時を同じくして、太平洋上の孤島で動きがあった。
AFOたちが隠れ家に使っていた孤島の洞窟内にヒーロー襲撃部隊が突入し、一瞬で拿捕したのである。
突入部隊には空を飛べるサポートアイテムを使って参加し、今本部に通信を入れたミルコと。
「なんか……盾にされたけど何とかなった! 怖かったぁ~……」
突入部隊の一番槍として洞窟に吶喊を命令され、泣き顔でそれに赴き、数名いたヴィランの攻撃をすべて捌いたスカイクロウラーがそこにはいた。
「なぁに言ってやがる。あのデクもバクゴーも認める近接戦闘のプロだろうがテメェ。実際にヴィランの攻撃を捌き切ってたのは見事の一言に尽きる!」
「え、あ、有難うございます。ミルコに褒められる日が来るなんてなぁ……」
「だがアイツらが言ってた通り攻撃はからっきしだな!!」
「んぐ!! そりゃそうですよ大した個性でもないし……」
洞窟という逃げ場のない場所での戦闘となり、急な襲撃に動揺したヴィランたちに、この二人の猛攻をしのぎ切ることはできなかった。
狭い場所なのにあらゆる攻撃を回避しながら迫るスカイクロウラーと、それこそ水を得た魚のように飛び回るミルコ。
戦闘力に乏しい者しか残っていなかったことも拍車をかけ、見事に制圧されていた。
なおこちらにミルコとスカイクロウラーが回されたのは実力を見られてのものだ。
広範囲の拘束力を持つ峰田はAFO接敵地点で万が一鋼鉄処女が不発した際に拘束するために配置され、その他火力や特殊能力に秀でたヒーローは死柄木戦の詰将棋に回されていた。
即時制圧が可能なミルコがまずこちらの部隊に指名され、その後にイレイザーヘッドなど過去を知るヒーローから推薦されてスカイクロウラーがこちらに回された。
その事実をしっかりと理解していたからこそ、死柄木との戦いの場にスカイクロウラーを回さなかった。
本質が後の先を取るしか能のない男は、その実、ヴィランを退治することを不得手としていた。
人を傷つけることを誰よりも恐れる男だった。
「向こうも時間がかかる見込みじゃねェ。ヘリが来るまで現場保存。PC関係のデータはこの後の余罪しょっぴくのに使うからなァ。おいスカイクロウラー、アンタパソコン得意か? そういうデータ抜けねぇか?」
「あ、いやごめんなさい全然そういうの得意じゃなくて。アメリカにいる時も全然さっぱり……」
「使えねー。イグジストだったら嬉々として情報引っこ抜いてたってのによ」
「あはは……あの子ならやりそうだなぁ」
手持無沙汰にしながらも、気を失わせたヴィランたちへの注意は切らずに、警察の到着を待った。
【side 雄英高校より10キロ地点】
ここに一人の元ヒーローが配置されていた。
その名はオールマイト。
骨と皮だけになったかつての平和の象徴が、全身にサポートアイテムを身に纏い、青空に眼差しを向けて、そこに飛ぶ要塞……雄英高校を見て想いを馳せていた。
この地点は、雄英高校と群訝山荘跡地を結ぶ直線上。
予定通りAFOをワープさせたのち、イグジストが作戦を遂行する前に万が一にも脱出され、雄英高校に向かって飛んでくる……そんな『未来視にない万が一の未来』が起きてしまったときの為に備えていた。
「……最近、考えるようになった事があるんだ。聞いてくれるかい」
だがそんな男を狙い続けていたヴィランがいた。
タルタロスを脱獄した後……早い時期に己の顎を削り落として顔を変え、イグジストの顔認識をすり抜け、息をひそめていた極悪ヴィラン─────ステインが、己の勘と嗅覚のみで、オールマイトがここにいることを推察した。
「……ハァ……貴様の戯言を聞くつもりはない、元平和の象徴……衰えた体を血肉の通わぬ機械に纏ったようなお前には……ハァ……」
「つれないね。でもこうして攻めてこないところを見るに、まったく興味がないわけでもなさそうだ」
オールマイトの背後に立つステインは、オールマイトの言葉を否定する言葉を吐いた。
だがそれは感情の裏返し。本当に話を聞くつもりがないのならば後ろから不意打ちをすればいい。これまで襲撃した
「……今あそこで戦っているヒーローたちは。AFOがここに来ないように止めた少年は。みんな強くなった……それこそ、私の全盛期を超えるような強さだ。そんなヒーローが何人も生まれている」
「巫山戯るな……!! 象徴であったころの貴様よりも強い存在があるはずがない!! ハァ……唯一、貴様の力を継いだ男、緑谷出久がその権利を有するのみだ……!! アレですら当時の貴様にはまだ及ばぬ……ハァ……!! その全てが!!」
「どうかな。緑谷少年が本気を出せば当時の私よりも……そしてそんなパワーでも幾野少年は意にも介さないだろう。爆豪少年ならばいなしてカウンターを取る事も出来るだろうし、轟少年なら氷結させられるかも……飯田少年ならば速度で上回れるかもしれない。物間少年ならば個性の組み合わせで打破もできる。心操少年なら不意を突けば洗脳が通じるし……峰田少年ならば地形次第ではその誰もを捕らえるかもしれない……。……時代は変わったのだよステイン」
「戯言を……!!」
オールマイトが雄英を見る視線をそのままに、背中をステインに預けたままに零す言葉はものの見事にステインの神経を逆なでした。
己が崇拝するまでに至ったオールマイト本人の口から、自分よりも強いヒーローがいる、などと零すことに、彼の感情は耐えきれなかった。
手に持った日本刀が震えるように太陽光に煌く。
「……彼らが強くなっていく様を私は間近で見続けて来た。毎日彼らはお互いに競い合い、磨きあい、高めあった。お互いに負けまいと……天井知らずに強くなっていった。それは私の知らないヒーローの在り方だった。いや……私だけが知ることがなかった在り方だ。私は己の力を自分一人で磨き上げるだけだった」
「何を……ハァ……言っている……」
「象徴になるべく……自分の力を見せびらかし、他のヒーローの活躍の機会を奪った。私に追いつこうと、私を超えようというヒーローはエンデヴァーくらいだった。私は孤独だった。それが象徴の在り方だと呑み込んでいた。……だが、全てが終わってしまった今だからこそ、思ってしまうのだ。私が私だけですべてを解決するのではなく、他のヒーローとも積極的に連携して活躍していたら……どうなっていたのだろうかと」
「何を言っていると聞いている……!! オールマイト!! 貴様はヒーローという在り方そのものだ!! 滅私奉公の極み!! 貴様がしていたことが全てのヒーローの憧れになるような男が、最後まで守り抜いた男が今更何を言う!! 貴様が貴様の歩みを否定することだけは俺が許さん!!」
「否定はしないさ。私がやってきたことを否定すれば、その道中で捕らえたヴィラン、斃れた者たちに顔向けができない……ただ、そう。すこしだけ、彼らが羨ましくなったのかもな」
その言葉を最後にオールマイトは一度目を伏せ、振り返る様にステインに向かい合った。
雄英生徒達の、今のヒーローたちの在り方を……チームアップを中心としてお互いに協力し合いながら、競い合うように前に歩く彼らを見て、羨ましいと感じたことは事実。
しかしその礎となった自分が、己の象徴としての在り方までを否定はしない。自分がいたから今があり、今があるから明日を信じられる。
明日を笑えるそんな未来が、もう目の前にある。
「すまないな、話に付き合ってくれてありがとう。……どうかね、このまま投降してくれないか。ここで私と君が戦う理由はない……君はヴィラン連合に与しているわけではないだろう」
「その言葉が一番の侮辱だ。死柄木弔もAFOも何もかも関係がない……俺にとってはオールマイト、貴様こそが俺の命を燃やすに値する象徴としての存在だ……!! 立ち会えオールマイト!! ここで貴様の死に水を取る……!!」
「そうか。残念だ」
そしてオールマイトはヒーロー活動を始める。
ヴィランを捕らえるという、当たり前の仕事を。
「私は今日一日、幾野少年と接触する予定はなかった。この戦いの決着を精度が高く見れるだろうという理由で、
「ハァ……下らん。
「いざ」
ヴィラン連合の、死柄木の、AFOとOFAの戦いとは何の関係もない。第三者同士の戦いが始まった。
勝ったのはどちらか。それは説明するまでもないだろう。
ただ結果がそこにはあって。
満足したかのように笑い斃れた男を、立った男が見下ろしていた。
【side 雄英高校 バリア内】
【side 緑谷】
「ホレひざし! 一発ブッぱなせ!!」
「おうよォ!! ラウドヴォイスッッ!!!」
「ギッ……!!」
変速のクールダウンも終わりそうな頃に、僕は改めて戦局を確認した。
個性を消された死柄木は雄英高校の電磁バリアにより外に脱出できない。
地面を壊そうとしてもそれも既に対策済み。開発ブロックでは発目さん、メリッサさん、八百万さんが超高速開発整備補修システムを発明し一任されており、地面の一部が砕けた時点で分離させ補充されるような仕組みが整っている。そこに3人もいる。
そして僕、かっちゃん、轟くんが近接中距離遠距離での攻撃で削り続ける。抹消は相澤先生と物間くんがかけ続けてくれている。
BIG3の先輩方の攻撃も合間に挟んで、死柄木に何もさせないまま削り続けていた。
飯田くんのレシプロターボゼロシフトは質量弾の一撃必殺。凍り付かせたときに叩き込んだことで、明らかにアレ以降の死柄木の動きが落ちた。
それでも一瞬たりとも油断はできない。崩壊が無くてもまだ体を超再生させるしパワーも据え置きだ。触れたらヤバいのは変わらない。
そして、そこに更なる増援が。
こうなる可能性はあるかもと聞いていた……黒霧のもとの体、白雲さんが復活してワープゲートを使って増援に来てくれたんだ。
エリちゃんが巻き戻したんだろう。相澤先生とセントラル病院に行っていたのはこういうことだったんだ。
マイク先生と一緒に相澤先生がスタンバってた浮遊外壁にとりついた白雲さんは、ワープゲートを介してマイク先生のヴォイスを届けて死柄木の動きを阻害したり、時にはワープゲート自体を上手くバリア内に生んで死柄木の体を封じたりしていた。
「黒霧を……返せ……」
「やなこった。俺の中に黒霧が見て感じて聞いたことは記憶としては残ってるけどさ……死柄木弔、アンタがかわいそうな境遇だってのはよーくわかる! わかるけどさ! やっぱ犯罪はよくねーことだ!! 悪い事なんだよ!! だから俺が止めてやる! このラウドクラウドがな!!」
「その声で喋るな……!!」
死柄木は黒霧に……彼なりの思い入れがあったのだろう。
さっき、彼が助けに来ることを期待して叫んだ瞬間も見ている。ヴィラン連合がヴィラン連合になる前……死柄木と黒霧がUSJに襲撃した瞬間から始まった彼らの活動。その最初の二人の仲は、僕が推し測れるものじゃない。
黒霧は遺体を弄って作られた存在だった。完成系の脳無の様な物なのかもしれない。モヤのような体と強い個性……なぜ殻木とAFOが脳無を作り黒霧の様な存在を増やさなかったのかはわからないけれど。
けど、そんな存在でも、失ったら哀しい気持ちがあるんだ。死柄木にも。
────なんでだ。
「死柄木弔!!」
「OFA……!!」
僕は個性のクールタイムを回復させ、死柄木に吶喊した。
僕のフルカウル90%の反射神経の速度と、かっちゃんのオーバーフロウによる『後の先』だけは、いつどのタイミングで仕掛けても死柄木に有利を取れる。
個性さえ使わせなければ超再生は怖くない。凄まじい力も速度も、今の僕たちなら捌ける。
「おまえが今黒霧を失って感じている想いを否定はしない! おまえは今悲しんでるんだ!!」
「何も失っていないお前がッ……分かった風な口を利くなァァ!!」
「そうだ、僕はまだ失ったことがない……お前の悲しみがどれほど深いのかを僕は分からない!! でも悲しんでるってことは分かる!! ……なのに!! 仲間を、親しい相手を失う事の悲しみを分かるのに、なんで周りの人を傷つけるんだ!」
「うるせぇ……うるせェうるせェうるせェ!!
「されんのはてめェだクソ手マン野郎がァ!!」
「ガハァ────!! クッソッ!! 何なんだよてめェはァァ……っ!!」
「ハッ!! 俺はオールマイトをも越えるヒーロー『大・爆・殺・神ダイナマイト』!! その名も『
「かっちゃん! 助かった!!」
僕がどうしても死柄木に聞きたかったこと……身内を想う心があるのに、なぜ周りも同じように悲しむのだと思えなかったのか。
周りを傷つけることに躊躇いはないのか。
そう、言葉を交わす前に……かっちゃんが僕の攻撃の隙を埋めるようにして、オーバーフロウによる至近距離のクラスターキャノンを叩き込み、死柄木の体はまた爆ぜた。
爆ぜた傍から再生させるが、その速度が戦い始めたころよりも落ちている。削れている証拠だ。
「デクゥ!! 余計な事くっちゃべってんじゃねェぞォ!! AFOも潰した!! 荼毘も吸血女も捕らえた!! 病院の方も無事に鎮圧したってさっき伝令あっただろォが!! ここで締めねェと俺らが無能の証明しちまうぞ!! 蛇腔総合病院の失態を繰り返すわけにゃいかねぇだろうがァ!!」
「っ……そう、だね!! まず捕える……話はそれから!!」
「気合入れろォ!!
かっちゃんの援護と檄を受けて、僕も改めて気を引き締めた。
そうだ。今ここで僕たちが死柄木に負けたら全ての意味がなくなる。今度こそ死柄木に対抗できる戦力が無くなってしまう。
また刑務所を襲撃されて今度こそ社会が崩壊して……なんて、絶対にさせちゃいけないんだ。
死柄木が、前にOFAに触れてきたときに助けを求めたように見えたのは事実で、助けたいとも思っている。
助けたいから、今ここで止めるんだ。
「
「
「チッ……!」
僕の煙幕とかっちゃんの閃光弾で死柄木の目を一瞬だけ隠す。
一瞬で十分。サーチで位置は把握されてるだろうけど、気を一瞬でも逸らせればそれはこの戦いにおいては特大の隙になる。そういう戦いを繰り広げている。
この一瞬の隙に合わせて遠距離攻撃組、轟くんや天喰先輩、波動先輩が息をそろえてそれぞれ遠距離攻撃で狙ってくれている。
僕たちも、間近のこの距離だからこそできる合体必殺技を。
以前使っていた
かっちゃんの肩口から死柄木を狙う面制圧重装機動ストレイフパンツァーの砲口の上に僕が背中から両手を置き、黒鞭を巻きつけて力を漏らさず放てるようにして狙いを定める。
ぐっと力を込めて片手の指4本ずつ計8本によるエアフォース。
それもただのエアフォースじゃない、発勁の力も込めたド級のエアフォースとストレイフパンツァーの同時発射だ。
つい一昨日に徹甲空掌弾をコーイチさんに見事に回避されてから、更なる速度と威力を求めてかっちゃんと急いで開発した必殺技。
出来立てほやほやだけど僕たちがタイミングを外すはずがない。どれだけかっちゃんと一緒に訓練してきたと思ってるんだ。
「「────
「大氷海嘯ッ!!」
「
「
僕たちの超高火力広範囲爆裂砲が、轟くんの氷の波が、波動先輩の両腕両脚から放つ極限の回転を伴う波動が、天喰先輩の最大出力の加粒子砲が死柄木に向かい放たれた。
煙幕の中で、それでも放たれた気配を察して回避しようとした死柄木に、しかし。
「──『ワープゲート』。避けられたのは再利用ってね」
「ガアアアァァァァッッ!?!?」
僕たちの砲撃はいくつかが直撃し、他の攻撃も身をよじる様に避けたが……ワープゲートが死柄木の周りにいくつも生まれて、撃ち漏らしを許さなかった。
回避されてゲートに呑まれた砲撃は死柄木のすぐそばから生まれて回避を許さない。
一度当てた砲撃すらも再利用して死柄木の体を焼き、凍らせ、貫いた。
再生が間に合わぬほどの総攻撃。
これで全く効いてなかったらさて次はどうするかというくらいの一斉放射だったけど、流石に効いたみたいだ。
畳みかける。
勝機は今だと僕たち全員が感じ取った。
その理由は簡単で。
爆風などが開けて死柄木の体が見えた時、そこに僕たちの答えがいたからだ。
今の死柄木すら貫く大砲火を浴びて、けろりとしている僕たちの希望。
「─────出てきた瞬間にとんでもねぇことになってたんだけど!! ビビったんだけど!!」
幾野くんが、とうとう最終決戦の場に合流した。