【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!! 作:そとみち
AFOを潰して。
荼毘もトガヒミコも無力化して。あの場に現れたヴィラン全員を捕らえて。
セントラル病院の襲撃も未然に防いで。
あとは死柄木弔のみ。
全ての清算を果たすために俺はダイブセンサーで座標を確認した死柄木に向けてワープを発動。
その人がいる場所さえわかれば相手が誰だろうとある程度の距離はワープできるようになっている。
んでもってワープしたらちょうど必殺技ラッシュを叩き込まれてて無様晒してた死柄木くんとエンカウント。超ビビったわ。
「出てきた瞬間にとんでもねぇことになってたんだけど!! ビビったんだけど!!」
「幾野くんっ!!」
「イグジスト……ォォォォ!!!」
「お、だいぶボロボロになってんねぇ死柄木くぅん!! 元気してた? 安心しなよお前以外のヴィラン連合は全員やられてあとはお前だけだからよ!! みんながタルタロスで待ってるぜぇ!!」
体中ズタボロになってる死柄木が俺を睨んで叫んできたんでいつもの調子で煽り返してやった。なんや。俺の偽乳の感触で興奮したか?
周りを見てもみんな無事でピンピンしている。流石は俺のダチ達だ。
ビッグ3もいい感じに仕事していたのをダイブセンサーで見てたし。物間と相澤先生が個性を抹消し続けていればもう死柄木は敵ではない。
いっぱい個性貰ってイキってる何の訓練もしてない男に毎日訓練してた俺たちが負けるわけないだろ!
「殺すっ……お前だけは何としても殺すっ!! 絶対に殺してやるッ!!」
「はーいお薬出しておきますねー。お注射しましょうねー」
死柄木は俺の顔を見て豹変したかのように叫ぶが俺は華麗にスルー。
緑谷から、歴代継承者の菜奈さん経由で聞いたコイツの過去の話。
殻木も死柄木の過去についてオッドアイが尋問しており確認している。それも屋上で聞かせてもらった。
こいつも俺と同じで、過去に個性事故で家族を殺しちまっている。
うん……。
とりあえず個性破壊弾ぶち込むね……(真顔)。
想う所は多分にあるよ? なんでそっちに振り切れちゃったのって話とか。AFOに捕まらなければ……とか。
でも死柄木の過去の事情と、今ここでヴィランの首魁を倒して捕まえることに何の関係もない。
俺は自殺しようと思ったところで峰田が助けてくれてヒーローの道を歩み出した。んでこいつはAFOに唆されて闇落ちした。
AFOに出会っちまったことは心底同情するし、個性事故起こしちまった絶望は分かるつもりだけれど、それ以上にお前らがこれ以上被害広げるのがまずいので速攻無力化して捕まえます。
何かしら歯車が違えば俺とお前が逆だったのかもしれねぇけどさ。
今の俺はヒーローで、お前はヴィランだから。
お前を倒して平和な日常を取り戻すためにみんな頑張ってんだからここで欠片も情けなんかかけねぇわ。
話すことは捕まえてから話す。お前の個性を消して無害にしてからな。
「ぶすっとな♥」
「…………ッ!!」
死柄木の中に在る個性細胞の熱量を諸々無視して確認。
どうやら相当疲弊してるようで、無視を通すのに苦労はしなかった。これまでに緑谷たちがボッコボコにしてくれてたお陰かな。
自分の体を再生させる据え置きの超再生とか増殖とかはオリジナルじゃない個性破壊弾で消せるかは分からなかったけど……とりあえず手持ちの複製個性破壊弾五発全部と、
頭と胸と頸動脈と。全身に渡る様にぶすぶす遠慮なく注入していく。
「ガッ……ガアアアアアアッ!?!?」
「おおぅ!? 急に叫ぶなビビるわ! えっなに痛み感じてんのなんで!?」
「幾野くんっ!! 油断しないで!!」
注射が嫌いだったのか急に暴れ出す死柄木。
AFOに刺した時と反応が違う。……え、もしかしてこのお薬処方の量とか考慮する必要ありました!?
AFOよりいっぱい個性持ってたから勢いで個性破壊弾ぶち込みまくったけどアレだった!?
えっちょっと待って死なないよね!? 個性破壊して無害な住所不定無職の男性にしたいとは思ってるけど殺すつもりだけはないからね!?
「グッ、ギッ、ガッ、ハァッ……!!」
「こんな……耳元で喘ぎ声上げないでくれる!? 俺に欲情するのはギリ許すけどおさわりはNGよ!?」
「この局面に至っても幾野くんがそのままで安心するよ僕!!」
「アホがよ。最後まで気は抜くんじゃねェぞ……すんなり行く気がしねェ」
個性破壊弾を注入された死柄木は白目を剥いてビクビクと痙攣している……が、爆豪ちゃんの言う通り気は一切抜けない。
個性は徐々に破壊されてるようだが……しかし執念なのか、『抹消』でも消失できない体に備わった個性が悪さをしているのか、どうにも破壊に抗うような動きを見せている。
体内で力が失われてない。AFOの時と違う……あっちは大元の個性が破壊された途端に奪ってた個性も無くなって完全な無個性にできたんだけどな。
俺の個性を無視させるそれも加味しているのになんか勝手に動いてやがる。
殻木の、AFOの執念か。
悪意の塊になったコイツの体が消失を拒んでいる様だ。
そしてその時は唐突に来た。
抗っていてもいくつかの個性細胞は消失しており、時間をかければゼロになるか……と思われていたところで急に全身の熱量が高まった。
身体の中心に集まったかと思えば、それは唐突に膨れ上がり始めて。
「ッ距離取れ!! なんか爆発しそうだ!!」
「えっ!?」
「ンだァ!?」
そして死柄木の全身がこれまでもやっていたような増殖とは一線を画す速度で膨れ上がり始めたのだ。
即座に周囲にテレパシーを飛ばして全員に注意喚起。近づけば取り込まれるかもしれない。
これに抗えるのは俺とミリオ兄さんだけだ。雄英敷地内にいたみんなが一気に距離を取ったところで、死柄木の全身が肉塊のように膨れ上がり始めた。
キモッ!! キモいしグロッ!! どうしてラスボスってみんなこうやってグロい感じになるの!?
AFOもだけどお前らもうちょっと見た目に気を使えよ! ラスボスが最後肉の塊みたいになるのって100年以上前からゲームとかで使い古された演出じゃん! AKIRAは今でも名作だと思ってるよ!!
「個性破壊弾撃ち込んだのにどうなってやがる……!! くそ、ワイヤーで電気流しても増殖が止まらねぇ! かくなる上はこいつごと海の上にでも運ぶか!? 物間か白雲さんのワープゲートでなんとか……」
「待てセン!! 海に運んでそこで万が一超スピードで逃げ出されたらスターアンドストライプの焼き直しになるよね!! この雄英バリア内でケリをつけたい! 中まで潜り込んで本体とか叩けないかい!?」
「なんかもう脳ミソとか人間の体のパーツ大量にあってぐっちゃぐちゃになってんのよこの肉塊の中!! クソッ肉倉パイセンならこういうの詳しいかなぁ!? どこ狙えば止まるのかわかんね!!」
死柄木の体を中心として膨れ上がった肉の塊。
増殖する細胞の中には死柄木の本体のほかにもなんか謎の脳ミソとか心臓とか顔とかいっぱい生まれててもうキモくて直視するのもアレだ。
どうすんだこれマジで。
こういう場面で俺とミリオ兄さんの火力不足が露呈するんだよな。
結局俺らの技ってのは対人に特化した個性で。広範囲攻撃とかはミリオ兄さんが特に苦手とするもので。
こんだけでっかくなったら俺も物理的には何もできない。お手上げだ。
──────
簡単な話だ。
俺らができないなら、出来る仲間に頼ればいい。
「全力でぶっ放す!! あと頼むぞ!! 絶対零度・大氷海嘯ッ!!」
轟が赫灼熱拳『燐』から放たれる最終奥義をすべて死柄木の肉塊に叩き込み、30mは膨れ上がったその肉を完全に凍らせた。
恐らく中までキンキンに冷えているだろう。肉ということは有機物ということで、有機物ということは凍り付けば活動は停止する。
「ブッ飛ばすぞデクゥ!! 叩き込めェ!! カタストロフパンツァーッッ!!」
そして凍り付いた肉塊を、爆豪ちゃんの全砲門一斉射が吹き飛ばす。
直近直下の斜め下から打ち上げるように放たれたそれは、凍り付いた肉塊を緑谷に向けて浮かせることに成功した。
ねじれちゃんパイセンも波動の流れをコントロールして上手く肉塊が浮くようにアシストしてくれている。
そして、浮いた肉塊の下に瞬時に飛び込んだのは緑谷。
その体はかつて俺が見たことがある輝きに満ち溢れていた。
ああ……懐かしい。
あれはエリちゃんを背負っていた時に見せた光だ。
全身から、その瞳から緑の炎を噴出させるOFAの最終形態。
「フルカウル────100%ッッ!!」
力の全てを解き放つ。
個性の熱量が見える俺には
全ての個性が励起し力へと変わり、変速は5速にギアが入っている。
死柄木の中に残るAFOの力を、憎しみと悪意の塊を討つのはここだと。
想いを継ぎ託されてきたOFAの、個性が生まれてからの史上最強の力がここに解き放たれた。
「行くぞ死柄木───君の中の怨念を討つ!! そして君の手を僕は取りたい!! やあああああああああッッ!!」
緑谷による猛ラッシュが死柄木を打ち上げるように叩き込まれていく。
オーバードーズ治崎にやったものよりも数十倍の速さ、重さで無限の拳が天空に向けて放たれ、その巨大な肉の塊を持ち上げていく。
それは一瞬のうちに雄英を覆う電磁バリアにたどり着き、電撃の壁に何度も肉塊を叩きつけ────次第にバリアにヒビが入り始める。
やべ、砕ける。でもこの攻撃が間違いなく最後だ。恐らくはどこまでも殴りながら登り抜けていくだろう。
今の緑谷の勢いはそれほどのものだ。なら俺は最後まで俺が出来ることを。
「─────
「分かってるさ。先ほどイレイザーヘッドに触れて時間は回復させてる……最後の瞬間まで抹消し続けろと言うんだろ? まったく君はいつも人遣いが荒いねェ」
「理解が早くて助かるぜ」
バリアの外、これまで死柄木を抹消し続けていた物間を最後の瞬間まで見届けさせる。
時間制限さえ考えなければ相澤先生の抹消よりもコイツの方が便利だ。なにせ俺の『無視』のお陰でまばたきも影響なく遮蔽物も距離も関係なくずっと見てられる。万が一の反撃でも俺とコイツは無視できるし。
物間の腕を取り重さを無視して運ぶ。ダイブブースターでカッ飛んで……緑谷のラッシュで今にも砕けそうなバリアの上に位置取りして。
「緑谷!! 俺たちが見てる─────全力でブッ放せ!!」
「サンキュ、幾野くん……!!」
距離を無視したテレパシーで俺と物間がずっと死柄木の個性を封じ続けることを緑谷に伝えた途端に、緑谷の体から噴き出る炎が更なる輝きを増した。
それは次第に白く色を変え、純白の光となって……そしてとうとう、雄英バリアすら突き破り、空へ向けて殴りあがっていく。
音すら置き去りにするほどの超々高速のラッシュ。死柄木の肉体の再生の限度を超えた正義の拳の奔流に、凍り付き焦げ付いた肉塊が徐々に呑み込まれて行く。
とてつもない質量を殴り上げているというのにその上昇速度はマッハを超えていくようで……俺も物間を抱えながらダイブブースターをフル稼働させて付いていく。限界を無視したうえで更に限界を超えて、青空へ緑谷を追って飛び立っていく。
深い深い無限の青。
太陽と雲しかない上空で……俺は、そこで起きた全てを見届けた。
「死柄木弔……君にかけられたAFOの呪いを解く!!」
「僕が……僕たちが!! ワンフォーオールが、オールフォーワンを討つッ!!」
「だからこれで─────終わりだッ!!」
光り輝く緑谷からまるで涙のように零れる光の粒子が、一際輝きを放ったように見えて。
「ONE for ALL Requiem SMASHッッ!!!」
全ての力を込めて振り上げた緑谷の拳に、7つの光が纏うように寄り添い、輝く様なエネルギーの奔流となって宇宙へ向けて放たれた。
少し離れた位置にいる俺と物間がお互いに全力で無視してようやく衝撃を受け流せるほどのエネルギーは、死柄木弔から生まれていた肉塊と、その中に在る全ての個性を浄化するように溶かし、そのままエネルギーの奔流の中で宇宙へと吹き飛ばしていった。
そこに俺は、幻影を見た。
「─────っ」
「……誰に言っても信じないだろうね」
物間の呟きからして、多分俺と同じものを見たようだ。
見知らぬ男たちと、その中に一人エロいコスチュームのお姉さんもいて……多分アレが、OFAの歴代継承者たちなんだろう。その人たちが緑谷が放ったエネルギーの奔流と共に歩む様に、空高く飛び上がって行って。
でも、緑谷に振り返るその幻影の継承者たちの顔はみな微笑んでいて。
……そして、莫大なエネルギーが宇宙に放逐されていって。
その後に残ったのは、全てを放ち終えた緑谷と……肉塊が解け吹き飛んだ後にポツンと残されていた黒い髪の少年がいた。
えっ。
えっ誰!? アレ誰ー!? 死柄木なのかアレ!? でも死柄木って髪の毛白かったよな!? しかもなんかちっさ! ガキみたいな身体になっとる!!
エリちゃんの個性を食らったとかそういう感じなのか!? つか本体どこいったんだよ!? アレが本体ってことでいいのか!?
わかんね!! とにかく謎のショタが急にポップしたわ!!
正直何が起きてるのかはわからん。
が、なんかいい感じに終わった気がする。そういう事にしよう。
なので俺が今やることはシンプルだ。
落下してる二人を助ける。ヒーローだからな。
「とりま物間はぽいっちょっと」
「ここで手を離されるとは思わなかったよねェ!? 僕はまだ重力無視できないんだから場合によっては殺人罪だよ訴えられる覚悟の準備をしておきなよ幾野くぅぅぅぅん…………」
二人を抱えるのに両腕を空けなければいけないのでまず物間を投棄した。
確かに俺みたいに重力無視はできないようだけどまぁワープゲートもあるし地面に突き刺さる時に無視広げてればいいしあいつなら何とかするやろ。ほら今ワープゲート開いたし。厚い信頼。
さて、そしてすべての力を放ち終えて脱力してる緑谷をまずキャッチ。
意識は……まだあるな。バイタルはグリーン。疲労が色濃いようだけど……ってか、おい。
ちょっと待て。
「緑谷、お前……!」
「……幾野くん。あの子も、助けてあげて……」
「いやそりゃもちろん助けるけどさ。でもお前、個性が……」
「うん……分かってる。OFAの全てを、AFOの執念を弾け飛ばすために使ったから……
「いや残ってるけど」
「残ってるの!?」
残ってるよ。個性サーチで個性細胞の熱量見たけど、ちゃんとお前の胸の中心に一つ残ってる。
俺がびっくりしたのはこれまで緑谷の中にあった8つの光の内、7つが無くなっちまってた事の驚きだ。一つは残ってる。
その一つは……多分、さっき幻影として見えた歴代継承者7人の中にいなかった人だ。
「多分……
「そ、っか……。それなら、よかった……のかな?」
「それはお前がこれから決める事だろさ。……さて、んじゃもう一人も」
緑谷を腰に抱えて、問題のもう一人……謎のショタを助けるためにそちらに飛んで近づく。
こっちは完全に意識失ってるっぽいな。死柄木が縮んだ姿なのか、取り込んでた誰かが出て来たのか……わかんねぇけど。ほっとくのだけはあり得ない。
近づいて。一応事前に個性細胞、個性の有無についても確認するが……うん。
「──────」
「……お前が死柄木なのか誰なのかはわからねぇけどさ。でも、OFAがお前だけ残した意味を俺たちは知りたい。目が覚めたら色々話そうぜ」
「君の……名前を、教えてほしい」
俺の腰に抱えられた緑谷が、その少年に手を伸ばす。
少年は勿論意識を取り戻してはいないが……確かにその子の手を緑谷が掴んで。俺もそれを抱きかかえるようにもう片手に掴んで。
そして3人でゆっくりと落ちていく。みんなが待つ地上に向けて。
「……終わったな」
「……うん」
緑谷が雲まで吹き飛ばしたから辺り一面は透き通るような青空になっている。
ゆっくり降りていく、その先に……俺達のヒーローアカデミアがあって。
そして、そこには。
「イクノー!! おつかれさんなー!!」
「ケッ、ようやく戻ってきたかよ……デク」
「デクくん!! お帰りー!!」
「センちゃーん!!」
「センさん!! おかえりなさいませ!!」
「緑谷少年、幾野少年!! 無事に帰って来たな!!」
「緑谷くん!!」「幾野!」「セン!」「緑谷ー!!」「イクノー!」「緑谷ぁ!!」「幾野くん!」「イグジスト!!」「デクくんも!!」
みんなが、俺達の帰りを待ってくれていた。
AFOもヴィラン連合幹部もすべて確保。
AFOの個性は全て破壊、追放。
侵略してきたヴィラン全員確保。
超常解放戦線襲撃から続く一連のヴィラン事件は、ヒーロー側の勝利で幕を閉じた。
(余談)
ちょっと前のトガちゃんのあたりを若干訂正しました。タイトルも変更。
みんなの感想読んだり落ち着いてから自分で読み返してみたりしてたら書いてる側もなんか勢い任せすぎたな……センちゃんここまで語る必要あったかな……ってなったので核心は変えずに表現柔らかくしてみたつもり。許せサスケ。