【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!!   作:そとみち

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19 最大の障害はチート個性による孤独なのでは?

 

 

『今年の第一種目はコレ!! 障害物競走!!』

 

 先程の選手宣誓で観客の脳を破壊し終えた俺はうーん、と艶めかしく背を伸ばしながらミッドナイト先生の競技説明を聞く。

 なるほどね、障害物競走か。

 勝ったわ。

 

「障害物競走……!」

「む、競走か! 悪くない……俺の個性が発揮できる場だ!」

「オイラ、飯田、緑谷あたりは障害の配置次第で良し悪しでるな。障害が多けりゃ多いほどオイラ有利だ」

「俺だけただのマラソン説」

 

 障害と言うが俺にとって障害などないに等しい。

 ただ4kmを駆け抜けるだけで済む。

 4kmなら10分強といったところか。

 少なくとも第一種目で脱落するということはないだろう。よっぽどヘマしなければ。

 

『コースさえ守れば何をしたって構わないわ! さあさあ位置につきまくりなさい!!』

 

 その声でスターティングゲート前にぞろぞろと人が集まっていく。

 集まるのはいいんだけどゲートの先がまず狭いな。ウォールハックも適宜使って罠とかないかも探してみているが、どう考えてもここで人が詰まるわ。俺以外は。

 

「幾野くん」

「ん、こんなタイミングでなんだ緑谷」

「ギリギリでごめん。でも僕も言っておきたくて……改めて、この二週間は訓練に誘ってくれてありがとう。付き合ってくれて……でも、いやだからこそ、僕も君に勝ちたい!」

「……はっ、いいぜ。俺も本気で行くからよ、かかってこいよ緑谷!」

「うん!」

 

 スタートの寸前、緑谷からも正面から正々堂々の勝負を挑まれた。

 全く人気者は辛いぜ。

 手加減などするつもりもなかったが、俺も頭の中でギアを切り替える。本気で行く。

 ヒーローに油断という言葉はないのだ。常に先へ、もっと先へ。プルスウルトラァ!

 

 

『────スターーーーーーーーーーート!!!』

 

 

 ミッドナイト先生のスタートの合図とともに、俺は駆けだした。

 

 

 


 

 

『さーて実況してくぜ! 解説アーユーレディ!? イレイザーヘッド!!』

『ああ』

『しかしさっきの選手宣誓はひどかったな!! 爆笑しちまったぜ俺は!』

『幾野はああいうことするヤツだ。己の性別と外見に自信があり過ぎる』

 

 マイク先生と相澤先生の実況解説が始まる中で、俺達生徒はスタートの直後、凄まじい混乱に襲われていた。

 

「スタートゲートが狭い……! つまりスタート地点(ここ)がもう……」

「最初のふるい───!」

 

 スタートダッシュを決めた轟が氷結で後続を全員凍り付けようとしている。

 なお俺は轟の隣を併走している。スタートの混乱を全部個性で潜り抜けてきたのでシンプルにダッシュ中だ。

 

「……幾野。お前だけはどうにもならねぇか」

「俺に気を配る暇ないと思うぜ?」

「らしいな」

 

 持久走テストでほぼ互角だった俺たちはほぼほぼ並んで走りながらも、後続をちらりと見やる。

 

「甘いわ轟さん!!」

「そう上手くいかせねえよ半分野郎! 男女野郎もなァ!!」

「おらぁイクノぉ!! 待ちやがれェェェ!!!」

 

 A組の全員が、使い慣れた個性を使ったり、または訓練で磨いた体術で見事に凍結を回避して混乱を抜け出していく。

 

「大したやつらだよマジで」

「ああ……だがクラス連中は当然として、思ったより避けられたな……」

「B組だってよくやってるからな。委員長と仲いいからたまに話聞くんだけど向こうもバッチバチだよ」

「そうなのか」

 

 馴れ合いではないが轟と言葉を交わしつつも俺たちは先頭をキープして第一関門に突入した。

 

『さあいきなり障害物だ!! まずは手始め……第一関門!! ロボ・インフェルノ!!

 

 入試で出てきた0P敵ロボを含めたロボたちが大量にこちらに向いている。

 まぁ見えてたんだけど俺は。流石に轟も一度脚を止めて対策を考える。

 が、俺には全く関係ない。

 

「お先ぃ!!」

「ちっ……」

 

 そのまま足を止めず、個性を発動しながら敵ロボの群れに突っ込んでいった。

 

『あぁーん!? 1-A幾野!? ロボの群れにも全く速度を落とさず突っ込んでいくぜェ!? そして降りかかるロボの攻撃を次々とォ!? すり抜けていくゥゥーッッ!?!?』

『どんなものも潜り抜けるのがあいつの個性だ。……だがヴィランロボもまずアイツを狙ったせいで後続への攻撃が緩くなった、そこは失策とも言えるか』

『すげぇな!? 一抜けだ!! アレだなもうなんか……ズリィな!!』

 

 マイク先生の実況の通り、俺だけ今の所ただのマラソンだ。

 敵の攻撃なんざまったく関係ない、全部すり抜けていくだけだ。

 やりすぎ?

 バカ言え。俺の個性を万全に発揮できる場でやらなくていつやるのかって話よ。

 

 そう、それに。

 

『お、おおおおお!? トップもやべーがその後ろもやべーな!? 次々あのデカイのを突破してってるぞォ!? A組すげーな!?』

『他の科やB組も決して悪くはないが……立ち止まる時間が短い。各々が先日の経験を糧として迷いを打ち消している。ここ二週間は自主的に放課後集まって訓練もしてたしな』

『なるほどなァー!? おおっと1-A爆豪ほかそれぞれがクレバーに突破していくぜぇ!! 1-A峰田もとんでもねぇ機動性で一気にぶち抜いてきやがったァ!!』

 

 俺のクラスメイトは、そもそも俺よりも速いヤツが多いんだ。

 一度振り返る。まず轟、その後ろに峰田、爆豪、梅雨ちゃん、飯田ってところか。

 

「逃がさねぇ、幾野……!!」

「個性有りで走ればオイラの方が速いんだからなイクノォ!! 絶対テメェには負けねぇぞオイラ!!」

「俺の前を走るんじゃねぇクソがぁぁぁ!!!」

「ケロ……置いて行かれたくないわね」

「幾野くん……! 君を一人にさせるわけにはいかん!」

「あらやだ俺ったら大人気?」

 

 くっと笑みを零し、足を止めずにさらに走り抜ける。

 だが問題ない、次の関門でさらに差を広げればいいだけだ。

 さて次はどんな関門となっているのか──────

 

 

『第一関門チョロイってよ!! んじゃ第二はどうさ!? 落ちればアウト!! それが嫌なら這いずりな!! ザ・フォーーーーールッ!!!

 

 

 詰んだわ。

 

「俺への対策が整いすぎている……!!」

「はっはっは残念だったなイクノォォ!! お前はここで足止めだァァァ!!!」

「峰田ァ! お前も同じようなもんじゃねーか!! クソァ!!」

「大げさな綱渡りね」

 

 なんてことしやがる雄英。

 走れなけりゃ流石に俺は普通にこれを渡るしかない。

 ……いや……そうでもないか!?

 

 とりあえず一番にロープにたどり着き、普通に両腕を左右に伸ばしてほいほいとバランスをとって走って渡り始める。

 当然ながら体幹もしっかり鍛えているのでこれでバランスを崩すほどではない。スピードは出ないが。

 

「ちっ……流石に先に行かれちまうか、これじゃ」

 

 轟、爆豪ちゃんなんかは個性を有効活用してとっとと駆け抜けていくようだ。

 爆豪ちゃんあれ飛んでない? ズルくない?

 

「フフ……私達サポート科にとっては己の発想・開発技術を企業にアピールする場なのでスフフフフ!!」

「オイ……峰田、アレ見ろ……!?」

「なっ……!?」

 

 俺の後ろで高速でロープを這いずる峰田に声をかけた。

 俺らが目にしたのはサポート科の女の子がワイヤーで飛び越えようとする姿。

 の、その胸元。

 

選ばれし者(大いなる乳)……!!」

「あれは強い……! 強いぞ……!? ワンチャンA組総ナメあるか……!?」

「ゴーグルに隠れた顔が気になり過ぎる……!」

 

 下らないことをくっちゃべりながらロープを渡る俺達。

 

「っし渡り切った。さて……」

 

 俺はロープを一本渡り切ったところで振り返る。

 峰田が俺の後ろを続いており、その後ろには他の組の生徒が次々渡り始めている。

 第一関門の初動で俺に敵ロボの注目を集めすぎてそのおこぼれで突破した感じかな、だいぶ多い。

 女子生徒の不在確認ヨシ。

 穴の下にちゃんと救助ネットが張られているの確認ヨシ。

 俺はしゃがみ込み、手を伸ばしてロープを()()()()()()

 

「あっオイ!? イクノてめェ!?」

 

 峰田は気付いて慌てて飛び跳ねて逃げようとしているが、他の生徒はなんだ? と首を傾げている。

 このロープは鋼鉄製。多少力を入れても揺らせないし、切る事もできるはずもない。妨害するのだって時間もかかってしまうだろう。

 だが俺の個性なら一瞬で終わる

 今掴んでいるこのロープは、『俺のもの』だ。

 

「俺の後ろをついてきたら……こうなるぜ!!」

「「「なあああああ!?」」」

 

 個性を発動。

 ロープが『潜り抜ける』ようになり、そこに捕まっていた数人が哀れにも自由落下していった。

 

『1-A幾野の後ろのロープが一気に全員落ちたァァァ!? なんだありゃシヴィーーッ!?』

『妨害も作戦の内。しかし峰田は咄嗟に飛びのいて他のロープに移動したな……』

『ちなみに落ちてもちゃんとネットが受け止めるぜ!! 上に戻る道もあるから失格じゃねぇ! レッツ再トライ!!』

 

「おいイクノぉ!? お前やるならやれって言えよォォォ!?」

「いやお前なら避けるかなって」

「本音は?」

「一番俺の個性知ってて厄介なんで叩き落したかった」

「クソがよォォォォ!!!」

 

 峰田は巻き込めなかったか、残念。

 やるだけなら一瞬なので今後ロープを渡るときは毎回これをやっていこう。

 

『どんどん進んでいくぜっ!! 先頭はここで1-A轟に代わる!! 難なくイチ抜けしてんぞ!!』

 

「うーん、やりよる」

 

 俺もロープをぽんぽんとテンポよく渡るが、轟の氷の個性で加速しながら渡るよりかは速度が落ちる。

 ってか空を飛んだ爆豪にも抜かれた。飯田もあれカッコ悪いがバランス感覚地味にすげーな!?

 少し後ろを振り返れば、A組のメンバーもそれぞれ結構いい位置にいる。まずいな。

 最終関門は俺に有利な内容であってくれ……!!

 

『さあそして早くも最終関門!! かくしてその実態は────一面地雷原!!! 怒りのアフガンだ!!!

 

 勝ったわ。

 

「っしゃ!! 俺に有利ィィィ!!」

「ああアアァァァ許せねぇよなァァァ!!!」

 

 ようやくロープ地帯を突破した俺に峰田がもぎもぎを投げつけて妨害しに来るが無駄である。

 すり抜けて早速全力疾走の体勢に入る俺。

 轟も流石にここじゃ速度は出せていないようだ。いや、むしろ爆豪ちゃんが追い付いて妨害しあってくれている。

 

「俺には地雷原なんざ関係ねぇーーー!! てめェ!! 宣戦布告する相手を間違えてんじゃねえよ!!」

「爆豪……!」

 

 いいよー爆豪ちゃん! もっとやっちゃってもっと!!

 ツンデレロリ巨乳とイケメンクールスカシとのカップリングありだよー!!

 

『ここで先頭が変わったーーーー!! 喜べマスメディア!! お前ら好みの展開だああ!! 引っ張り合いながらも先頭二人がリードか……いや後ろを1-A幾野が猛追!! アイツには地雷も何も関係ねぇーーー!!!』

『際どいな……流石に幾野が迫ってくれば爆豪も轟も争いあう暇が無くなる。だが地雷原はあの二人には無視しきれるもんじゃない』

 

 この地雷原で完全にひっくり返った。

 俺はただ全力で駆け抜けるだけ。地面に埋まってる地雷もクソもない。

 一瞬遅れて後方で爆発しているがその衝撃を、音を俺は潜り抜けられるのだ。あとは油断せず走れば行ける……!!

 

「クソ! 男女ァ……!! てめェも俺が超えるべき壁だァ!!」

「幾野も来たか! こうなりゃ後続に道作っちまうが─────」

 

 俺が先頭争いに参戦することで二人も醜い争い合いを止めて俺に負けまいと個性で加速し始める。

 だがこっちは全力疾走の速度をキープできている。これならいい勝負に、と。

 そう、最終決戦の予感が走った瞬間に。

 

『KABOOOOOOOOOOOOM!!!』

 

『後方で大爆発ッッ!?!? 何だあの威力!? 偶然か故意か、A組緑谷が爆風で猛追ーーーーー!?!?』

 

 

 


 

【side 緑谷】

 

 

「対人地雷なんて深くても14cm~15cmくらいだこれですぐ掘り出せる…! よし……よし!!」

「何してんだ緑谷……」

 

 最終関門に至るまでに、僕は先日目覚めた個性の使い方【フルカウル】を使ってこなかった。

 あれはまだ、発動時間が長く持たない。

 最初から使い続けてたら途中でガス欠するってわかってたから。

 この判断は正解。第二関門なんかはフルカウルで跳ねても足場を踏み外したら落ちる様なところだったし。

 

(よし……借りるぞかっちゃん!)

 

 ここまで道具として持ってきた敵ロボの装甲板。

 今掘り出した対人地雷の山。

 準備は整った。

 

『先頭は爆豪・轟・幾野!! 最終関門を今抜けそうだが─────』

 

 今から僕は、三人に挑戦する。

 

「ワンフォーオール・フルカウルっ……大爆速ターボッ!!」

 

 全身に5%の力を張り巡らせたうえで、装甲板にサーファーのように乗る形で地雷を起爆。

 凄まじい爆発の勢いで、僕は先頭に向けてフルカウルを纏って吹っ飛んでいく。

 

「くっ!」

 

『A組緑谷!! 爆発で猛追────っつーか!!! 抜いたあああああ!!!!』

 

(やっぱ……勢いすごい!)

 

 爆風に乗った僕は先頭の3人を僅かに追い越すことに成功した。

 そして、ここからだ。

 着地の後の攻防も考えて、フルカウルを起動している。

 

「デクぁ!!! 俺の前を行くんじゃねえ!!!」

「後ろ気にしてる場合じゃねぇ……!!」

 

 僕の姿を見て、かっちゃんと轟くんが加速してくる。

 でも、この二人は─────僕の今の力を知らない!

 だから、本当に気を付けるべきは二人じゃない!

 

「緑谷ぁ! やるじゃねぇかよお前ぇッ!!!」

 

 全力疾走で飛び込んできて、こちらに腕を伸ばしてくる幾野くんだ。

 今がチャンス。一瞬でも前に出られた最初で最後のチャンス!

 掴んで離すな!!

 

「……やらせないっ!!!」

 

 もしここに幾野くんがいなければ装甲板を地面に強く叩きつけて、周囲の地雷を起爆してさらに加速して逃げてもよかっただろう。

 でもそれじゃあ幾野くんには通じない。ずっとこの競技が始まる時から考えてたんだ。

 幾野くんの弱点。

 

 無敵の防御力を持つけれど。

 攻撃力は、そこまで高くないって事!

 

「……くっ、緑谷!」

「てめっ、デク……!!!」

「行かせねぇよ緑谷!!」

 

 まず着地寸前、装甲板をフルカウルのパワーで振り回してかっちゃんと轟くんに牽制。脚を止める。

 そして着地。

 その瞬間を狙って首根っこを掴みに来る幾野くんに対して、僕はあえて()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「っ、緑谷……!!」

 

 幾野くんの伸ばしてきた腕の間合いの内側へ、辿り着いた。

 幾野くんは抱きしめるように僕を再度掴みに来るが、フルカウルのスピードなら攻撃を回避することは可能。USJで脳無相手に見せたような力は彼は友人には使わない。

 瞬時にしゃがみ込んで、両腕も回避。これで幾野くんがまともなら僕に脚をひっかけて転ぶんだろうけど、流石にそんなことはなく僕を潜り抜けて走り抜けていく。

 でもこれでいい。一度幾野くんの背後に回れた。

 幾野くん自身も、かっちゃんと轟くんがいるからここで脚を止められない。蹴りを繰り出せない。一度抜いた僕を振り返れない。

 僕が今踏んだ地雷の起爆まであと数瞬。しゃがんで力を溜めた僕には充分すぎる猶予時間。

 

 だから、ここからは。

 フルカウルの真骨頂、全身のバネを使ったスピードで勝負!

 

『着地の瞬間に咄嗟の攻防!! 緑谷は何故か一瞬逆走してしゃがみ───って何だァそのジャンプはァーー!?!? 地雷起爆より速くッ!! バネ仕掛けのような速度でゴールに向けて飛び跳ねたァッ!! 3人の頭上を越えていくゥゥ!!』

『脚も無事か! あいつ、掴んだか……!!』

『さらにその勢いを殺さず側転!? バク転ッ!? ムーンサルトォォォ!?!? 序盤の展開から誰が予想できた!? 今綺麗な着地を決めて一番にスタジアムへ還ってきたその男─────』

 

 

『───緑谷出久の存在をッ!!!』

 

 


 

 

「やられた……!!」

 

 最後の緑谷の大逆転に俺はかーっと天を仰いだ。

 最終順位は3位。最後、爆豪ちゃんよりは前に出られたが轟には後塵を拝した。緑谷に掴みに行っちまったことで脚が止まったな。

 なんなら飛んできた緑谷を完全に無視して走ってれば轟よりも前には行けたかもしれん。

 フルカウルとは言えど着地の瞬間のロスはある。そこを狙って仕掛けに行っちまったのが敗因だ。

 ()()()()()ムーンサルトまできれいに決められればもう完敗だよ。

 

「緑谷……なんだあの動き……」

「デクにも……半分野郎にも男女野郎にも負けた……!! また……くそっ!! くそがっ……!!!」

 

 轟も爆豪ちゃんも随分と驚いた様子であった。

 まぁあの二人にとってはデクのフルカウル(真性包茎)*1は初めて見るだろうからな。

 俺だけはあの技のスピードが分かっていたが、分かってたからこそ注意しすぎたか。

 くそ、俺の個性マジでスピード不足だな。課題だ。

 

「へいへいイクノくぅん!! ねぇねぇどんな気持ち?? 自分が鍛えた相手に一位かっさらわれるのどんな気持ち????」

「くたばれ」

「辛辣の極み!?」

「ケロ、口が悪いわセンちゃん」

 

 声に振り返れば、梅雨ちゃんとその背中に張り付いた峰田が俺の方にやってきた。

 え、なにそれ。サンバガエルの真似? 峰田のもぎもぎで割とマジでサンバガエルなんだけど??

 

「へっへっへ、オイラは梅雨ちゃんと手を組んで最終地帯を抜けたのさ!! オイラ天才!!」

「私の舌先と手足にもぎもぎをくっつければ、外周の鉄条網でも刺さらずに移動が可能……峰田ちゃんにくっつく力を調整してもらいながら、地雷原の外枠の上を跳ねていったというわけ」

「あー、なるほどな……梅雨ちゃんの舌の長さなら2,3回伸ばして跳ねれば突破できるか」

「途中の緑谷の大爆発でバランス崩しさえしなければお前らにも追いついたんだけどなー」

 

 うわ頭いいなコイツら。

 梅雨ちゃんがもぎもぎ付きの舌を伸ばす。鉄条網にくっつける。勢いで前に飛ぶ。

 鉄条網の上に着地する際には両手両足にもぎもぎくっつけて刺さるの回避して、んで峰田がくっつき力を消して、それを繰り返したってわけか。

 普通に有効だ。少なくとも地雷原を飛び跳ねるよりずっといい。

 こいつ……天才か?

 

『ようやく終了ね! それじゃあ結果をごらんなさい!!』

 

 障害物競走が終わり順位が表示される。

 A組は全員突破。B組も全員いるな……で、普通科から一人、サポート科のさっきのぼいんちゃんがギリ入ってる。

 

『そして次からいよいよ本番!! 第二種目はこれよ!! 【騎馬戦】!!!』

 

「騎馬戦!?」

「騎馬戦……!?」

「えっ、ハチマキの奪い合いだよね!?」

 

 A組全員の視線が俺の方に向いた。

 騎馬戦かー。

 ふむ。

 頭に巻いたハチマキを奪い合う競技ですよね???

 自分のものを取られないようにしながら、他の人のものを奪う競技ですよね?????

 

 

 勝ったわ。

 

 

*1
名付けの際に「なるほど真性包茎ね?」って言ったら緑谷にマジでキレられた。




緑谷の最後のヘビーアームズしぐさは幾野が訓練中に「これできる? ねぇねぇ緑谷これできる??」と見本見せながら煽って来たのでフルカウルの制御がてら覚えたトリッキーな移動法という脳内設定です。
爆豪と轟はびっくりして攻撃しそびれました。



以下、感想欄で生まれた閑話の紹介。
筆者の癖で感想欄で閑話が生まれる事があります。
本編とは直接関係ない、原作で言うすまっしゅ! 時空だと思ってください。





 ここはヴィラン連合のアジト。
 今日は先日襲撃した雄英高校の体育祭が開催されるということもあり、死柄木と黒霧はテレビで中継を眺めていた。
 いつものようにカウンターでグラスを磨いている黒霧に、グラスを傾けて気だるげに喉を潤す死柄木が、テレビの向こうで選手宣誓で壇上に上がった生徒の姿を見る。

「あ、あれこないだの女じゃん……首席だったのかよ……頭も顔もいいのかよ、ずるいなぁ……」
「成程、察しがいいのも納得ですね。私の個性の事もすぐに察した。優秀な金の卵というわけですか」
「ちっ……クソチート個性持ちだもんなぁ……いいよなぁ」

 ねっとりとした悪意を口から零す死柄木と、冷静な口調でテレビを見る黒霧。
 二人とも本気で映像に集中しているわけでもない。まだ競技も始まっていないので、半分は野次馬根性のような、まぁ気だるげな気分で画面を眺めていた。

「ブハッ。あの女、声作ってるじゃん。ウケる……」
「女性であれば見麗しくありたいということでしょうね。あの外見ではヒーローになれば人気も出ることでしょう」
「ぐっちゃぐちゃにしてやりたいよなぁ、そういう明るい将来を……マジでさ……」

 以前USJで聞いた、芯のあるハスキーボイスとは打って変わって甘い女声で続く選手宣誓に苦笑を零す死柄木と、表情は見えないがトーンを崩さずグラスを磨く黒霧。
 しかし、そんな気だるい二人の雰囲気は最後の一言でひどいことになった。

あと、最後に一つだけあのインタビュー映像で勘違いされていることがあったので、訂正させていただきますね♥』

「ハァ? 勘違い……?」
「例のネットでバズっているインタビュー動画ですね。何があったのか……」

えー……ごほん』

『俺は男なのでちんちんあります』

「ブホッ!!!!! ッゴホ!! ゲェホッッ!!! ゲホッ、ゲホッ!!!」
(グラスが手から落ちて割れる音)


 意外と、ヴィラン連合と雄英生は仲良くやれるのかも知れない。
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