【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!! 作:そとみち
『1位に与えられるPは……1000万!!!』
「……1000万?」
『上位の奴ほど狙われちゃう下克上サバイバルよ!!!』
ミッドナイト先生のその言葉でようやく視線が俺から緑谷に移動した。
それまではクラスの皆にやべーほど見られてたからな。まったく照れちゃうぜ。カメラ写りを気にして髪をふぁさっと靡かせる。
「幾野の髪ってマジで女子みたいな香りするから近くでそれやるのやめてくれる? 脳が混乱をきたすわ」
「ちんちん迷子か上鳴くん? もうウェイっちゃう?」
「ウェイってる時に絶対やるなよな!? 抱きしめちまいそうだからァ!!」
近くにいた上鳴をからかって遊びつつ、さて、しかし俺はどうしたもんかな。
ミッドナイト先生の説明を聞きながら俺は誰を仲間に選ぶか考えを巡らせる。
まずそもそも、この競技は必勝だ。
俺が騎手になりハチマキを付けた時点でそのハチマキは何があっても奪われない。
後は奪うだけだがそれだって敵の攻撃を無効化できるのでよっぽど速く逃げられなければ問題なく奪えるだろう。
そして俺は3位。俺のポイントだけでも相当なので、極論を言えば開始から動かなくても一位にはなれないだろうが勝ち抜けは出来るだろう。
つまり。
俺が選ぶ三人は、ほぼ決勝行きが確定するのだ。
『それじゃこれより15分!! チーム決めの交渉タイムスタートよ!!』
戦の前の戦が始まった。
「イクノぉぉぉ!!! オイラと組もうぜェェェェ!!!」
「幾野!! 俺と組もう!!」
「いや私と組もうよイクノ!! 多少胸に脚が当たっても許すから!!」
「センちゃんと組みたいよー!! 私本気出して全部脱ぐから!!」
「僕のビームなら遠距離からの攻撃もできるよ幾野クン☆」
「幾野。背の高い俺が背負えば視点が高くなり高所からの戦闘が容易だろう。一考の価値はあると思う」
クラスメイトがめっちゃ俺のまわりに集まってきた。
まぁそらそうよね。分かるよ。逆の立場ならそうするわ。
ここで雑に三人決めてしまってもいいのだが、しかし時間には余裕がある。
とりあえず俺はぜひ決勝で戦ってぶちのめして世間に無様を晒させたいという思いから峰田の首根っこをひっつかんで肩車する。
これで一人は決定。
「おおイクノ! 心の友よ……!!」
「決勝でぶつかったらお前は泣かす」
「地獄への超特急か!?」
「で……悪い、みんな。俺にめっちゃ期待してくれてるのは嬉しいんだけど、ちょっと色々考えさせて? 決勝に向けて他の組の個性とか考えとかも見てみたいしさ」
「えー、峰田だけずるーい!!」
「ゴメンね芦戸ちゃん。こいつは俺が拾ってやらないと誰も拾わなさそうだから」
「ひでェ言いぐさ!? オイラだって騎馬戦で相当便利だぞ!?」
「だから使い潰す」
「やっぱ地獄か!?」
「それにさ……これってチーム戦じゃん。やっぱそれぞれが自分の個性をばっちり発揮してアピールするべきだとも思うのよ。あえて言うけど俺と組んだら個性次第じゃただいるだけになるからね。個性を互いに活かせるような騎馬を組んでアピールするのも将来のためだと思う」
半分は建前、半分は本音でみんなの追及をかわすために言葉を紡ぐ。
時間も有限のため、その言葉でクラスの皆はしぶしぶそれぞれの騎馬を作るために色々と声を掛けに行ってくれた。
ごめんな。全員を選べないから俺も辛い。
「……で、どうするんだよイクノ。何か考えでもあるのか?」
「まぁね……実は何人か候補を見つけててさ。確認してみる」
俺は何人か目星をつけていた候補に声をかけるために歩き出す。
まず一人目。この騎馬戦で折角だから仲を深めたいと思っていた子だ。
「ねぇ、拳藤ちゃん、ちょっといい?」
「ん? 峰田と幾野じゃん。あれ、もしかして誘ってくれてる?」
「おー拳藤か! 拳藤ならオイラも大歓迎だぜ!!」
拳藤一佳。B組女子。
峰田が入試試験で梅雨ちゃんと一緒に助けた女子だ。その縁で峰田とアドレス交換するほどの仲になっていた。
入学してからは俺もB組に行って挨拶したし梅雨ちゃんも混ぜて昼飯を一緒したこともある。
そして可愛い。おっぱい。可愛い。天使。
「ああ、よかったら一緒にどうかなってさ。別にクラス一緒じゃなきゃダメってんでもないし、B組の話も聞きたいしな」
俺の個性についても軽く話したことがあるから拳藤ちゃんも俺と組むことのメリットは理解しているだろう。
持っている物まですり抜けることは知らないが、それにしたって便利な個性だ。さてはて。
「あー……悪い! 折角誘ってもらってなんだけどさ、今B組でA組に勝つぞ! って感じで団結してるんだ! そんな中で委員長である私がA組と組んじゃうと……ほら……ね? 声かけてもらったことは素直に嬉しいんだけど」
「マジか」
「そーいや前にA組来た時にいけ好かないスカしたやつが煽ってきてたなそういや」
「ああ、物間な? 悪い奴じゃないんだけどどうにもあいつA組に敵愾心バリバリでさ。それが感化しちゃってるんだ、悪い事でもないから私も止めなかったんだけど。そんなわけでゴメン、私はB組で組むよ」
「了解。無理強いはできないしな、それじゃそっちも頑張って。俺も始まったら本気で挑むよ」
「うん、サンキュ! でも幾野の本気は怖いなー、すり抜けてくるんだろ? 勝つために逃げちゃおっと」
残念ながらスカウトは失敗した。そういう事情があるならしゃーなしやな。委員長として責任感もある拳藤ちゃんいい子やで。
まぁB組の内情がちょろっと聞き出せたのでプラマイゼロってところか。
仕方ない。騎馬戦が始まったら物間とか言うやつは潰そう。
「また悪い顔してやがるコイツ」
「男にかける情けはねぇ」
それじゃあ二人目のスカウティングに行くか……と考えたところで、なんと向こうからこっちに声をかけてきた。
俺がスカウトしようと思ってた二人目、それは。
「……なぁ、さっきの障害走凄かったよなアンタら。見惚れちゃったよ、よかったら俺と組まない?」
普通科の、心操。
俺はコイツともぜひ話してみたかった。
「やだ見惚れちゃったなんて♥大胆♥」
「やめとけお前ェェ!? こいつと付き合うと性癖がっ─────」
「……ん? 峰田どした?」
「……!?」
俺が軽いジャブから入り峰田のツッコミが続く……のだが、そのツッコミが途中で途切れた。
なんだと頭を上げてみるとそこには
「……アンタ、なんで……」
「……あ、なるほどね? そっか、お前の個性って会話がトリガーで発動するタイプ? マジかよ最強じゃん」
「っ……最初から疑ってたのか?」
「ああ。さっきの障害物競走のスタート直後の氷への対処、お前だけ回避の仕方が明らかにおかしかった。他の生徒の上に持ち上げられて……行動を強制するのか操るのか、どっちかだと思ったんだ」
俺は驚いた表情の心操と、先ほどの競争の中で見た姿について話す。
轟と並んで走ってた時に振り返った際、ウォールハックで見た生徒達の中に明らかにこいつだけが回避の方法がおかしかったので印象深く覚えていた。
その後も周りに助けられながら走っていた。周りを操る力があるのか、とあたりをつけていた。
面白い能力持ってるし、縁を深めておいて損はないと思ったのだ。
「……俺の個性は『洗脳』。俺と会話することで相手を洗脳状態にできる……」
「おおマジか。そんな簡単な条件でいいのかよ強っ」
「その簡単な条件を満たしてるのにお前は何でかからねぇんだよ……!!」
「俺は個性も含めて何でも潜り抜けられるからな、オートで。無敵ってやつだ」
「は……? マジかよ、クソ強個性じゃねぇか……!」
なんだか恨みがましい感じの視線を向けてきた。
自分の個性にコンプレックスでもあるのか? こんなに便利で同人誌の竿役ナンバーワンを狙えそうな個性なのに。それ抜きでもめちゃくちゃ便利な力なのに。
「なぁ、ところで洗脳ってどう解くの? 峰田を解きたいんだけど」
「……簡単に教えると思うのか?」
「教えなかったら今ここでお前が個性の洗脳を使って性的に襲い掛かってきたって甘い声で叫び出す」
「狂ってんのかマジでやめろよ!? ……強い衝撃を与えると目が覚める」
「よし」
俺は心操に解き方を聞きだす。素直に教えないのは当然なのでジャブで牽制したら意外と素直だった。
しっかりツッコミもしてくれるしコイツ割と面白いやつかもしかして?
さて、じゃあ峰田を起こそう。
肩車した状態の峰田の脚を少し浮かして、俺のうなじと峰田の股間の間隔を少し空ける。
そして両足を掴んで、思いっきりぐっと下に引っ張った。
リトルミネタに大ダメージ。
「ッッがああああああああああ!!!あがああああああああッッ!?!?」
「お、ホントだ起きた」
「鬼か?」
俺は峰田を覚醒させることに成功した。
目覚めた峰田が俺の頭にぽこぽこ殴り掛かってくるが個性を使ってノーダメージ。
「峰田聞いてくれよ。コイツの個性『洗脳』なんだって」
「は? んじゃオイラはそれにかかってたってことか?」
「……悪かったよ。俺には後がねぇんだ。手段を選ぶ余裕がなかった……」
「こいつ誘おう」
「大賛成」
「何でだよ!?」
俺と峰田の意見は一致し、こいつを誘うことに決めた。
何故か心操は驚いているが、こんな強個性のやつを他のチームに組ませてやると思うか?
他の騎馬隊全員に洗脳かけられて一致団結されたら俺もワンチャン負けるんだぞ?
「いや、お前の個性めっちゃスゲーじゃん。戦闘でも交渉でも、使い方次第であらゆる可能性があるし」
「対ヴィランに関しちゃほぼ初見殺しでいけるよな。羨ましいまであるわマジで。相手の騎馬操ってオイラの個性踏ませればそれで終わりだぞ? 勝つわ」
「っ……そんな事言われんの初めてだよ」
「あとエロいことに使えそうだよな!!!!」
「分かる……!! 洗脳だぞ洗脳!? オイラお前とはぜひ親友になりてェよ!!」
「そういうことは言われ慣れてるよ。大丈夫なのかよヒーロー科」
話をエロい方向に舵取ったらちょっと地雷踏んだらしくて機嫌が悪くなったのでちゃんとごめんと謝っておく。
「ごめんな、後でエロ本貸してやるから」
「反省してねぇだろ絶対」
「オイラもエロ本貸してやるから」
「エロ本が万能アイテムだと勘違いしてねーかお前ら!?」
おかしい……俺達にとって一番誠意のある対応をしたはずなのに……。
しかし心操はそれを受けて、はーーーーーっと大きなため息をつき、俺たちの案に乗ってくれた。
「……くだらねぇことで悩んでた俺が馬鹿らしくなってきた。わかったよ、乗るよ。結局のところ俺は勝って上に行かなきゃならねぇんだ。お前らに個性のネタも割れたし選択肢はねぇ。よろしく頼む」
「っし。よろしくな心操。俺は幾野だ」
「知ってるよ。選手宣誓で」
「オイラ峰田だ! イクノとは中学時代からダチやってる」
「すげぇなお前」
「オイラもそう思ってる」
「失礼がすぎる」
仲間が増えました。やったぜ。
新しい出会いが増えることは歓迎していきたいところあります。
だからちょっとだけ真面目に心操に本音を話してやろう。さっきどうにもトゲがあった部分を、少しでも解してやりたい。
「なぁ心操」
「なに?」
「俺の個性、見たろ? どこだって潜れる……あと透視も出来る。クソ便利な力だ」
「なんだ、自慢か?」
「
「……!」
俺は心操に、多分子供の頃に苦い経験があったのだろうそこに切り込んでいく。
わかるよ。
俺も同じようなこと、言われたことがあるからな。
「……盗み、覗き。いっくらだって悪いことを出来る力だ。いや、それは俺だけじゃねぇ。あっちの緑谷とか爆豪だって、物も命も力づくでいくらでも盗める力だ。個性ってのはそういうもんだ」
「……何が言いてえんだよ」
「
「…………俺には、お前が何を言いたいのかやっぱり分からねぇ」
「そうか? ま、俺も実は言いたいことがよくわかってねぇんだよな。でもさ、お前が今、上を目指してるのがなんか眩しくてな。プルスウルトラ、いいじゃねぇか。立派に雄英生してるぜお前。ヒーローとしてな」
隣に立つ心操の顔に、にっこりと心からの笑顔を見せる。
お前もきっと、それでもヒーローを目指した男だからこそ。俺はそれを認めてると伝えたかった。
「……なぁ峰田」
「おん」
「お前、よくこれと長く付き合えてるな……」
「オイラもそう思う」
おかしい。何故か心操が顔をそっぽ向けて俺と会話してくれなくなった。
なぜだ。峰田はまたやってるよコイツって雰囲気だし。なんで。久しぶりにシリアスったの駄目だった?
じゃあいつもの俺に戻りますよぉ。んにゃぴ……。
「じゃあ次は発目ちゃんだなサポート科の! このチームには今おっぱいが圧倒的に足りない!!」
「ああ!! 女子が足りない……!! うわ! 見ろイクノ!! 発目ちゃん今ゴーグル外してる超可愛い!!」
「俺組む相手間違えたかな」
「いや……何ィ!? 緑谷のヤツが既に組んでるだと!? これが一位の力なのか……!! アイツポイントで女を買ったぞ!!」
「クソ緑谷ァァァ!! 麗日とも組んでるじゃねぇかうらやましい!! 心操!! 今こそ出番だ!! お前の個性で発目ちゃんをオイラ達のチームにぃぃぃ!!」
「最低だよお前ら」
心操が個性を使ってくれなかったので俺たちは最後に狙っていた発目ちゃんを誘うことはできなくなってしまった。
くそ……意外と緑谷のやつ手が速いな。俺よりも早くダブルハーレムを完成させるとは……!
ってか発目ちゃんはまだ推定だけど麗日ちゃんはマジで結構入れ込んでるよな。優しみの化身が既にお前を向いてるのに緑谷の奴め。
最早容赦せん。1000万Pは俺が取る。
「残り時間も少ねぇぞ。俺との話に時間取っちまったのは悪かったが……もう一人、どうすんだ幾野」
「まだペアが決まってない相手から誰か選ぶしかねぇな」
「……あ、梅雨ちゃんがまだ残ってねぇか!?」
「マジかマジだ! よっしゃ勝ち確!! 梅雨ちゃーん!! 俺達と組まねぇか!?」
最後の一人を選ぶ時間は無くなり慌ててあたりを見渡すとまだ梅雨ちゃんが残ってくれていた。
えっ逆になんで? この騎馬戦で梅雨ちゃんめっちゃ強力じゃない? 誰も誘わなかったんか?
「ケロ。ようやく声をかけてくれたわね」
「え、もしかして待っててくれた感じ? 何かゴメンね!? 新しい出会いを求めてたところがあって俺……!」
「いいのよ、センちゃんはそういうコミュ強なところがいいところなのだから」
「梅雨ちゃんの力なら絶対誘われると思うんだけどな……」
「峰田ちゃん、一応何人かは声をかけてくれたの。けれど……そうね、センちゃんと峰田ちゃんがなんだか長話してたから、最終的に人数が足りなくなりそうだと思って待ってたわ」
「天使か?」
「梅雨ちゃんがオイラにとっての天使なのは確定的に明らか」
「テレるわ」
何て優しい子なんだ梅雨ちゃん。
確かに最初にめっちゃ誘われていた当初とは違い、一度断っちまっていたのもあって結構ギリギリだった。
3人チームでもまぁ負けないんだけど、そこを心配して待っていてくれていた梅雨ちゃんが余りにも友達想いすぎる。
峰田に微笑みかける梅雨ちゃんのその笑顔がまぶしすぎてなんか浄化されそう。
「……で、こちらの人は?」
「ああ、普通科の心操。『洗脳』の個性を持っててさ、組んでもらったってわけ」
「心操だ。よろしく……ええと」
「蛙吹梅雨よ。梅雨ちゃんって呼んで、心操ちゃん」
「……A組は一気に距離詰めてくるな? まぁいい……よろしくな梅雨ちゃん」
「ケロ。個性が『洗脳』……この二人が見逃すはずないわね、そんな個性だと」
「A組の共通認識なのかよそこは。お前らの心労を心配するよ逆に」
「貴方も大変だったわね心操ちゃん」
「ホントだよ」
梅雨ちゃんと心操もすぐに仲良くなったみたいだ。よかったな!
その後、残り少ない開始時間までの間に、簡単に作戦を練ることにした。
『さァ上げてけ鬨の声!! 血で血を洗う雄英の合戦が今!! 狼煙を上げる!!!』
「うっし……峰田ァ!!」
「おう!」
「心操!!」
「ああ」
「梅雨ちゃん!!」
「ケロ」
「行くぜェっ!!」
『3!! 2!! 1!! START!!!』
騎馬戦が幕を開けた。