【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!!   作:そとみち

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24 何気に鬼門となるメガネ委員長

 

 

 選手に与えられた控え室に入ると、俺の次の試合に出る飯田がそこにいた。

 

「ハズレか。発目ちゃんのほうがよかったな」

失礼だな君は!? それと何故まだチアガール服なんだ!?」

「服は趣味。……ってかそっちこそ、なんでそんなにサポートアイテム装備してんのよ」

「発目くんの心意気に打たれたのだ! 対等に戦いたい、だからこそこちらにもアイテムを、と渡されてな!」

 

 騙されてるよそれ絶対。

 でも俺にはそれを口に出さない優しさがあった。

 アイテムの装備を手伝ってやりつつ自分の試合までの時間を潰していると、飯田から話を振ってきた。

 

「しかし、幾野くんの個性の有用性はまさしくこの体育祭で世間に認められたろうな。俺も騎馬戦で君への警戒を怠っていなければ、勝利は出来なくともすべてのハチマキを取られるようなことはなかっただろう……悔しいよ」

「ん。まー……そうな。轟も同じようなこと後悔してたけど、レシプロバースト、だっけ? あれを使っちまったのは焦ったな。あれがあれば最後ワンチャン逃げられただろうし」

「ああ。やはり学ぶべきことはまだまだ多いと感じたよ。この後、俺が発目くんに勝てば次は君とだな」

「だな。一番警戒してる相手だぜ、飯田は」

 

 取らぬ狸の皮算用をしすぎてもあれだが、次に当たる相手の予想はしておいて損はない。

 俺が飯田と戦う時に一番気を付けるべきはコイツの脚だ。レシプロバースト使わなくても俺より速いからな。

 お互いにどうしてやろうかと作戦を練っている。ダチではあるがそこはお互い当然にして作戦は漏らさない。

 

「……この体育祭が始まる際に緑谷くんにも言ったんだがな」

「ん?」

「ここ最近の緑谷くんの成長は著しい。思わず目を見張ってしまうほどにな。だからこそ、『君に挑戦する』と宣言したのだ。僕は、緑谷くんと戦うまでは負けたくはない」

「……なるほど?」

「だが、その前に君がいる」

 

 ここで改めて飯田が俺の目を真正面から向いてきた。

 茶化す雰囲気ではないので俺も正面から見据える。

 

「君は……入学当初から不思議な男だった。女のように整った顔立ちであるかと思えば、余りにも下品な言動に僕はすさまじい衝撃を受けた」

「ひどくない?」

「だが、しばらく付き合う間に君のそんな発言の内にある優しさもわかってきた。君は言動はアレだがいい人だ。委員長に推してくれた感謝も忘れることはないだろう。USJでも……、……僕は色々と君に恩がある」

「…………」

「そして、君は強い。はっきりと僕は君にまだ及んでいないとわかってしまっている。でも、だからこそ君にも言いたい。僕は、君にも挑戦すると!!」

 

 前振りは長かったが、結局飯田も男だという事だろう。

 緑谷、轟に続いて飯田もまた、俺に勝ちたいのだ。

 まったくもー男子なんだから。

 

「前振りなげーわ。でも、ま……俺だって誰にも負ける気はねぇさ。特に今回の試合は俺にも負けの目があるからな。油断はしねぇ。俺はお前にも勝つ。轟にも緑谷にも勝って、俺が一位になる」

「ああ、選手宣誓で述べていた君の決意だな。いいとも、僕はそれを食い止めて見せよう」

「はっ、お手柔らかに頼むぜ委員長」

 

 いつものクソ真面目な雰囲気に苦笑を零して、俺は肩をすくめる。

 そうしているうちに第三試合の会場準備が整い、俺は試合会場へ向かっていった。

 

「じゃ、また後でな」

「ああ」

 

 


 

 

『ステージを乾かして次の対決!! 今大会の台風の目!! キレイなハナだがこいつは男子だ早く着替えろ幾野潜!! バーサス!! スパーキングキリングボーイ上鳴電気!!』

 

「よぉ上鳴……ちゃんと溜めて来たか?」

「おォよ。手加減もクソもねぇ、ばっちり溜まってっからよ」

「オナ禁何日目?」

「お前どこまでも平常運転だな!?」

 

『─────START!!!』

 

 俺と上鳴の試合が始まった。

 速攻を決めに行かず、俺はまず上鳴の出方を伺う。

 とはいえ、おおよそこいつがやりそうなことは分かってっけどな。

 

「俺あんま頭よくないからさ、どうやって自分の力を発揮するかなんて控室じゃ思いつかなかったんだよ」

「おん?」

「けどさ、控室にいた子が解決してくれた」

「え、発目ちゃんか? えっ何??? ナンパした????」

「違ぇよ!? ちょっとかわいかったからコナかけたら全然ダメだったけど!! そうじゃなくてアレを見な!!」

 

 俺が上鳴が指さした方向を見ると、そこにはなんか数字が計測されるような表示板がある機械が鎮座していた。

 何だあれ。

 

「何あれ!? ミッドナイト先生ー!! アレ何ー!?」

「アレは上鳴くんの電撃の威力を計測するだけの機械よ!! 試合には直接影響ないから持ち込みOKにしたわ!!」

「成程発目ちゃんに準備してもらったわけね!! 遠くの電気量測れるってすごいね!?」

「だろ? 今から俺は俺の出来る全力で電気をぶっ放す……!! それにお前がもし耐えられなかったら俺の勝ち!! 耐えられても俺の電気の凄さを視認させられるってわけだぜ……!!」

 

 バチッ、と上鳴の体に紫電が走る。

 それは緑谷の纏うフルカウルのそれではない。そんな比ではない。

 純粋な雷撃の暴力。

 

「だから俺の全力……受け止めてみろや幾野ォ!! いっくぜぇ!!! 無差別放電130万ボルトッッ!!!!

「自分でボルト数公言しちゃってるぞお前!?」

 

 その瞬間、試合場内に落雷が落ちたかのような爆音と衝撃が生まれた。

 電撃の塊が試合場を覆いつくし、地面を焦がす。とんでもねぇ威力だ。

 余りの光量にミッドナイト先生も眩しそうに顔に手を当てている。

 

 ああ、だが。

 それでも、俺の個性には通じない。

 

『すっさまじい威力だァ!! これほどの電撃を放てたのか上鳴ィ!? サングラスつけててよかったァァ!! さっき置いてた機械はとんでもない数値をはじき出してやがるゥゥーーッッ!? 落雷並だァ!!』

『───っだがッッ!!』

『それでも幾野には全く効いてないぜこんちくしょオーーーーーーッッ!!!』

 

 放電が終わった後に、俺は無傷でそこに立っていた。

 電気の一切を潜り抜けた俺は、静電気で髪が逆立つこともなく、ピンピンした状態でその場に立っていた。

 先程の雷撃の威力の大きさと、それでも一切傷ついていない俺の姿に、観客席から大きなどよめきが生まれている。

 その声の中には上鳴の放電力を讃える声も多い。

 頑張ったんじゃねぇか、上鳴。

 

「……確かに見せてもらったぜ、お前の本気」

「ウェ、ウェ~イ……」

「お前、いいヒーローになれるよっ!」

 

 終わりだ。

 俺はウェイ状態になった上鳴に駆け寄って胴を抱え上げ、弱弱しく抵抗するのを無視してそのまま場外まで運んでぽーい、と投げ捨てた。

 

「決着っっ!!! 二回戦進出は幾野くんっ!!」

 

 ミッドナイト先生の審判が下り、俺は一回戦を突破した。

 

 


 

 

 俺はウェイった上鳴を保健室に放り込んできて観客席に戻ってきた。

 峰田を見つけてその隣に座る。

 試合場を見ればまだ飯田と発目ちゃんが戦っている様だ。

 

「ん、まだ飯田達やってんのか」

「おう。さっきからネットショッピングみたいなノリで色んなアイテム紹介になってら」

「何やってんだよ飯田」

 

 実況もハッキングされてるし。

 アイテム解説付きの鬼ごっこみたいな感じになってんじゃん……え、マジ?

 

「え、最初からずっとこんな感じ?」

「そうだよ?」

「発目ちゃんヤバくない?」

 

 マジで?

 いくらアイテムの補助があるとはいえ相手はあの飯田だぞ? A組で一番速い男だ。

 その攻撃を10分いなし続けてるってマジ??

 え、強くない??

 俺は真剣なまなざしで試合場を見守った。

 

「……発目ちゃんの動きがいい」

「あ、それはオイラも思った」

「胸が揺れてて眼福」

心から同意(それな)次オイラの試合だけど見逃せなさ過ぎて離れられん」

 

 いいもん見れたな!!!!!!

 

 なお試合は10分の時間制限ギリギリまで発目ちゃんがアイテムアピールに使い切り、なんと自ら降参する形で飯田の勝利となったのだった。

 飯田。俺に勝つ前にまずちゃんと発目ちゃんに勝ちなさい。

 

 

 そして次、峰田と芦戸ちゃんの試合。

 

「先手必勝ォォォ!!!」

「うわガチでやってきたー!? そういうキャラだっけ峰田!?」

「勝ってカッコいい姿を魅せるんだよオイラはァァァ!!!」

 

 芦戸ちゃんは酸を体にまとわりつかせてもぎもぎを防御しようと画策していたが、峰田がそれを読んで先手を仕掛けた。

 跳峰田で場内を飛び跳ね回り芦戸ちゃんの視線を切ったところで至近距離からのグレープラッシュ。

 酸の防御があるとはいえこれに驚いた芦戸ちゃんが防御姿勢を取ったところで峰田が突っ込んで脚を崩す。

 そのまま再度跳峰田で勢いをつけて飛び込んで体ごと芦戸ちゃんを押し出した。

 普通は転がる程度だったのだが芦戸ちゃんが最初に体に纏っていた酸が潤滑剤となり、カーリングの要領でそのまま場外まで滑って行ってしまい、決着となった。

 ううん。俺のアドバイスが芦戸ちゃんの視野を逆に狭めることになっちまったかな。反省。

 

「オイラ最強ォォォ!!」

「くっそー、普通にやられた! 普通にやられすぎて逆に驚いたよ!」

「オイラがいつでもおっぱいを狙っていると思うなよ……!?」

「急にイクノみたいな事言うじゃん峰田。どったの?」

「イクノが普段ひどすぎてそのストッパーになってるオイラの女子評価が思いのほか高かった件」

 

 試合後に健闘を称える握手も交わして試合は終了した。

 

 

 次、常闇VS八百万ちゃん。

 

「相手を動かしてカロリー消費させて疲れさせるんだ常闇ィ!! 揺らせ!! 八百万ちゃんはもっと個性使えるように脱げーっ!! 今からでもチア服になれーっ!!」

「最低だぞ幾野」

「最低ですわイクノさん!?」

 

 試合前にヤジ飛ばしたら怒られた。

 試合内容はさっきの峰田のように常闇が速攻を仕掛けて八百万ちゃんが準備したものを使わせずに押し切って勝利。

 

 

 次、切島VS梅雨ちゃん。

 

「動きは速ぇけど、俺に対する有効打が打てねぇな梅雨ちゃん!!」

「ケロ……相性が悪いわ」

 

 梅雨ちゃんが機動性を活かしてヒット&アウェイで仕掛けたのだが、いかんせん『硬化』の個性を持つ切島に有効打を与えられない。

 一瞬の隙を突いて梅雨ちゃんの舌を掴み、力任せにジャイアントスイングの要領で切島が梅雨ちゃんを場外に投げ飛ばして決着となった。

 女子の舌を掴んでぶん回す切島マジ鬼畜。

 

 

 次、爆豪ちゃんと麗日ちゃん。

 

「緑谷くん、先ほど言ってた爆豪くん対策とは何だったんだい?」

「ん! 本当大したことじゃないけど……かっちゃんは強い! 本気の近接戦闘はほとんどスキなしで、動くほど強力になっていく個性だ。空中移動があるけど……とにかく浮かしちゃえば麗日さんは主導権を握れる」

「麗日ちゃんの個性、触れば終わりって捉えると死ぬほど強いよな。無力化まではいかないけど」

「うん、幾野くんの言う通り……だから速攻で間合いを詰めて事故でも何でも麗日さんは触れればいい! かっちゃんは大抵最初は右の大振りから始まるからそれを避ければ……」

 

 緑谷と飯田と共に試合が始まった会場を眺めながら講評を始める。

 緑谷が言う作戦もまぁ御尤もだが、しかし爆豪ちゃんが本当に右手の大振りから始まるかね。

 だってよ、その緑谷が言う爆豪ちゃんの癖って。

 

「二度は油断しねぇよ丸顔ォ!!」

「!? やばっ……ぶわっ!!」

「なっ……かっちゃんが左!?」

「麗日くん!?」

「やっぱりか」

 

 緑谷が既に一度打ち破った戦い方だろうに。

 俺の予想通り、爆豪は同じ轍を踏まなかった。

 危機感を覚えて咄嗟に突進を止めた麗日ちゃんは何とかしのげたが、爆豪ちゃんの初手は左手の振り下ろしからの爆撃だった。

 

 あいつはバカではない。

 緑谷や轟、峰田や常闇がいかに戦闘で輝こうと、本物の天才はアイツだけだ。

 そして、この試合は欠片も油断していない。

 いや、アイツは今日はもう油断するようなことはないだろう。

 

 なにせ、既に二度も負けている。

 障害物競走では緑谷に。騎馬戦では俺に。

 その悔しさが、アイツに容赦をする甘さを与えていない。

 誰よりも貪欲に頂点を欲するアイツだからこそ。

 

「……麗日ちゃんもよくしのいでる。が、厳しいな……スタミナなら爆豪ちゃんに分があり過ぎる」

「が、がんばれ麗日さん!」

「むぅ……一方的になり始めた!」

 

 試合は進み、爆豪ちゃんが一方的に攻め始めた、ように見えるだろう。

 だが俺の目には違うものが写っている。

 粉塵が舞う試合場、それをウォールハックで一瞥すれば一目瞭然だ。

 瓦礫が、宙を浮いたままなのだ。

 

 恐らくあれが麗日ちゃんの最後の策。

 あれを一気に重力解除して振り下ろしてその隙に……って所か。

 

「ありがとう爆豪くん───油断してくれなくて」

「あ……?」

 

 あ、麗日ちゃん何やってんの!?

 隙を突いて解除しないと身構えるでしょ爆豪ちゃんが! 何も言わずにやればよかったのに!

 

『流星群ーーーー!!! 瓦礫が落ちてくるゥ!! だがっ何と爆豪会心の爆撃ッ!! 麗日の秘策を堂々と正面突破ッッ!!!』

 

 oh……。

 爆豪ちゃんの迎撃が間に合ってしまった。

 言わなくても間に合ってた可能性もあるけどちょっと失策だったかもな。ウォールハックで全部見えてた俺だから分かる視点なんだけどさ。

 

 その後、麗日ちゃんが再度突っ込もうとしたところで許容限界超過(キャパオーバー)

 まああんだけ瓦礫浮かせてたらやむ無しか。配分少しミスってたかもな。それだけ自信あったんだろうけど。

 意識はあるものの倒れてしまった麗日ちゃんを見てミッドナイト先生が行動不能を宣言し、爆豪ちゃんが勝ち上がった。

 

 うーん。

 女子同士の試合は見ごたえがありましたね。

 惜しかったところもあったが、流石は爆豪ちゃん、ってところに落ち着くか。

 決勝はアイツとかもな。

 

「麗日さん……」

 

 やはり普段から仲いいだけあって緑谷は麗日ちゃんを応援していたのだろう。

 なんか敵討ちに行くみたいな雰囲気出して控室に向かっていったが、お前こそ次の相手が正念場だからな。

 

 轟焦凍。

 アイツの闇を何とかするのは、きっとお前であってくれ。

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