【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!! 作:そとみち
『さァいよいよラスト!! 雄英一年の頂点がここで決まるっ!!!』
決勝戦の時間になり、俺はジャージに着替えて試合会場に姿を現す。
目の前では爆豪ちゃんがこっちを睨みつけてきている。
そんなににらまれても怖くないぞ! この金髪ツンデレロリ巨乳め!
『決勝戦!! 幾野 対 爆豪!!!』
……なんて余裕ぶっこくことはできない。いや、もうしない。
これまでに俺が戦ってきたダチに申し訳がなさすぎるからだ。
全力で
「……男女」
「ん」
そして試合開始アナウンスの前、珍しく爆豪ちゃんのほうから声をかけてきた。
どうした急に。
お互いに試合会場に上がって近くで爆豪ちゃんを見れば、何やら随分と汗だくの様子だ。
……おかしい。
爆豪ちゃんは連戦とはいえ、前の試合とは15分の時間があったはず。
少なくとも今までずっと汗をかき続けるはずがない。今日の気温は涼しめだ。
であるならば───何か、準備してきたか?
汗をかけばかくほど強くなるスロースターターであることは緑谷ノートを見せてもらって知っている。
俺との戦いに備えて来たか爆豪ちゃん。
「テメぇの個性は無敵だ」
「急に褒めてくるじゃん」
「現実を見てるだけだクソが。……何の縛りもねぇタイマンならお前は負けねぇ。けどこりゃ試合だ」
「そうだな。10分のルールもある」
「ケッ……だからせめて、このルールの中じゃ俺がテメェに完膚なきまでに勝ってやる」
「ほう? 面白ぇ」
爆豪ちゃんが急に褒めてくると思ったら落としてきた。上げて下げてくるってやつか?
しかし……やっぱり決勝トーナメントになってから爆豪ちゃんの様子がおかしいな。
いつものクソ下水煮込みじゃない。それ以上に……地に足がついているというか。
油断、マジで欠片も出来ねえな。
「テメェも全力で俺を殺しに来やがれ───その上で俺がお前をブッ殺す!!」
「俺だって元々───そのつもりだぜ爆豪ちゃんよぉ!!」
お互いに啖呵を切りあって、構える。
『っしゃ準備いいなァ!? レディーーー!!! START!!!』
試合が始まった。
様子見、なんてもうしない。
爆豪ちゃんの場合、スタミナが持てばという前提だが、空中に留まることで俺からの攻撃をすべて無力化することが出来る。
もちろん10分全てをそれで果たすことはできないだろうが、最後の1分とかで逃げられたら面倒だ。
だから真っすぐ。距離を詰めて掴みにかかる────────と、一歩目を俺が踏み出したところで。
『アアアアアァァァァンンン!?!? 何やってんだ爆豪ゥゥーーーーー!?!?!?』
爆豪ちゃんがバックステップで場外ギリギリまで下がったのちに。
唐突に脱ぎだした。
「何やってんの爆豪ちゃん!?」
「うるせェ!! 恥もクソもあるか俺がやれること全部やってテメェに勝つんだよォ!!」
余りに予想外の行動に流石の俺も次の一歩を踏み出すのを躊躇ってしまった。
上のジャージを脱ぎ捨てて爆豪ちゃんのたわわなロリ巨乳が……いや無理だわ流石にもうそういう目で見れねぇわ筋肉質な体が見えて来たわ。
脳内フィルターをカットし、爆豪の姿を正面から捉える。
上のジャージを脱いだその下、爆豪が着ているインナーが見える。
そのインナーもまた、試合開始前に随分と汗を……いや、その量がおかしい。
まるで水にどっぷりつけてそのまま引き上げたかのような水分含有量。
「……!? まさか!?」
そこで俺はまず嫌な予感を覚えた。
そして、予感に至った理由を導き出す。
明らかに準備してきたものだ。普通に汗をかくくらいではああならない。まるでフルマラソンでもしてきたかのような、
汗────そう、汗だ。それを、あえて爆豪は下着のインナーに溜めてきた。控室でどっぷり汗でもかいたのだろう。
では、もしあれが。
全部
「かっちゃん、まさか───!?」
「爆豪、行けェェェ!!」
観客席で叫ぶ緑谷と切島の声が随分と近くに響くような錯覚を覚えた。
爆豪の個性は爆破だ。手から出すニトロのような液体を爆発させている。
そして今、インナーも脱いだ爆豪がそのインナーをぎゅっと丸めて両手に掴み、まるでこちらの足元に向けてドルオーラでも撃つかのように構えてきた。
爆豪の狙いは────
「────やべぇっ!?」
「もう遅ぇよ男女ァァ!!!」
俺は慌てて個性を発動、足元に潜り込む。
透過率マックス。まるで落ちるように沈んでいく。
間に合うか、いや、間に合え。
俺が沈み込んで一瞬後、爆豪の手が火を噴いた。
【FABOOOOOOM!!!!】
『ッッッッッ!!!! とんっでもねぇ爆発だァーーーーー!?!? なんだアリャアッ!? 爆豪ここまで威力高い爆破出来たかァーーーー!?!?』
『幾野相手に手加減無しで……だけじゃ説明できん威力だな。恐らく先ほど握っていたインナーに爆発の元である手汗を染み込ませてたんだろ』
『何とォ!? 試合前に汗吸わせてたってことかァ!? えっとこれどういう判定になるんだ!? サポートアイテムの持ち込みは厳禁で……』
『自分の汗だ、武器なんざ欠片も持ち込んでない。これダメにしたら電気貯め込んでくる上鳴なんか話にならないだろ』
『てことはセーフ判定か!! ってか威力ヤッベェーーーーーー!?!?
なんてことを考えやがる爆豪。
俺から逃げ切ることを考えてた飯田や轟と違って、
ギリッギリで潜行が間に合った。
いや、別に爆破を受けることだけ考えればノーダメージでギリギリもクソもないんだが、今回ヤバかったのは判定だ。
爆豪の捨て身の大爆撃で、会場の8割がぶっ飛ばされてしまった。
つまり、この時点で俺が爆発を潜行で受け流していたとしても、そこに立っていれば場外判定になるという事だ。
そうしないためにも、えぐり取られる地面のさらに下まで潜り込まなければならなかった。
そういう意味でのギリギリ。
「マジかよ、やってくれんじゃねぇか爆豪……!!」
吹き飛んだ試合会場の底で、俺は爆豪の姿をウォールハックで捉える。
見れば、流石にあれほどの威力は戦闘コスチューム無しでは受け止めきれなかったのか、両手の先から肘辺りにかけてまで火傷の跡が見える。
相当の激痛のはずだ。肩だって外れかねない威力。
思えば、爆豪のコスチュームの手首辺りにある手榴弾を模したパーツから放つあの技に似ている。
あのパーツは爆豪の手汗を一時的に溜めておける道具であり、それに指向性を作って爆撃を放っていると緑谷に聞いた。
今回はそれを、汗のチャージはインナーに染み込ませることで、指向性は両手で放つ先を絞ることで擬似的に再現した。
だが素手でやった分、反動もダイレクトに体に返ってきているといったところか。
まったく。
そうやって自分の体すら顧みず、勝ちにくるなんてよ。
────今のお前、
「……幾野くんの姿は見えない!! まだ場外判定になっていないと判断します!! 試合続行!!」
試合続行にしてくれるミッドナイト先生の俺への個性の信頼が厚いね。
だがこうなれば俺が地表に出てくるゾーンが随分削られたことになる。
どうする。一度爆豪から少し離れたところに出ていくか、それとも爆豪の足首をダイレクトに狩りに行くか。
そう悩んでいたところで、爆豪が次の動作を進めた。
軋み焼けた腕を動かして、先ほど脱ぎ捨てて己の脚の下に踏みつけていたジャージを拾い上げ、真っ二つに引き裂いたのだ。
その動作を見て、俺は察する。
インナーに染み込んでいた手汗で先ほど大爆発を起こしたが、当然にしてインナーからジャージに染み込んだ手汗もあるだろう。
ならば、今度はそれを燃料に未だ残る2割の試合会場を爆発でぶっ飛ばすつもりか。
そうなれば俺はもう爆豪の足元からしか出てこれない。
それすら吹き飛ばされた上に、残り時間を空中で待機されれば、俺は勝てなくなる。
「くっ、そ────やらせるか!!」
俺は急いで地中を蹴り進んで爆豪の足元へ向かい、その足首を掴みにかかった。
一度掴んでさえしまえば俺の勝ちだ。
その後いくら爆発しようが、空を飛ぼうが俺が爆豪の体から離れることはない。
爆豪が破り捨てたジャージをそれぞれ両手に巻き付けて、今にも左右、残る試合会場を爆破しようと構えたのが見えた。
今しかない。
俺は地中から手を伸ばす──────それが、爆豪の計算とも知らずに。
「─────お前が強いってのを俺は認めてんだよ、幾野」
最後に。
爆豪の呟きが、聞こえるはずのない地中に響いた気がした。
「だからこそ───テメェが俺を掴みに来るのはこのタイミングしかねェよなァァ!!」
「────!! し、まっ……!!」
爆豪の脚の裏側から手を地上へと伸ばし、爆豪に潜り込んだ瞬間に。
コイツは、左右に向けていた両手を足元へ振り下ろしてジャージごと起爆させ、
『ッとォーーー!?!? 爆豪まさかの自爆ゥゥーーーーーー!?!?!』
『いや……
『何ィッ!?!? 爆破した先には幾野の姿ァァァーーー!!! 怪我一つねぇけどこれはっ!! これは明らかにッッ!!
己の足元を吹き飛ばした爆豪。
その脚を掴んでしまっていた俺。
当然にして、爆豪は爆破の衝撃で体を宙に浮かせて。
その分、俺が地上に体を出してしまうことになり。
そして、俺が地面からでてきたその地表は、爆豪に吹き飛ばされて既に試合会場ではなくなっていた。
「─────幾野くん、
────────負けた。
「─────勝者!! 爆豪くんっっ!!!」
……爆豪の体が落ちてくる。
最後の爆発で足元を吹き飛ばし己の体を浮かすのに、恐らくはすべての個性許容量を使い果たしたのだろう。
すでに意識は落ちて、両腕両足もボロボロで。
でも、落ちてくる爆豪の表情が。
やり遂げた漢の笑みを浮かべていたのを、俺は見届けた。
「……やられた。完敗だぜ、爆豪」
俺は爆豪の体をお姫様抱っこの姿勢に受け止めて、晴れ渡る青空を見上げる。
『以上ですべての競技が終了ッッ!!!』
粉々になった試合場に無傷で佇む敗者の俺と、ボロ雑巾になり目を伏せる勝者の爆豪を包む大歓声。
激しく熱い一日が、終わった。
『今年度雄英体育祭一年優勝は───A組 爆豪勝己!!!!』
「どうよ峰田? 俺の髪変なところないかな? やっぱツインテールにしたほうがいい?」
「いいから早く壇上に上がれよォォォォ!?」
俺は自分の髪がさっきの爆発で万が一にも乱れてないかを峰田にチェックしてもらっていたらケツを蹴飛ばされて渋々表彰台に上った。
んにゃぴ……一番注目される瞬間だから身嗜み整えたいじゃんねぇ……。
「それではこれより! 表彰式に移ります!」
ミッドナイト先生の挨拶により、表彰式の壇上に登った俺達4人に拍手喝采が贈られる。
3位の台に常闇と轟。2位の台に俺。1位の台に爆豪だ。
なお爆豪は先ほどの試合でジャージの上着を全損しているが、今は緑谷から奪ったジャージを着用している。
ん? いや別に爆豪は普通に立ってるよ? 俺との試合でだいぶ疲れてるけど。
「いやー、まさか爆豪が一位かぁ」
「センちゃん惜しかったよー!」
「イクノは最後焦ったよなー。もっと地中で待ってりゃ爆豪がぶっ倒れたかもしんねぇのに」
うるせぇ峰田。
俺だって分かってんだよ焦ってたってのは!
今にして思えば爆豪の脚を狩りに行くタイミングを読まれたわけだからあそこで冷静になってりゃ全然勝ちがあったんだよなぁ!! くっそー悔しいなぁ!!
「メダル授与よ! 今年メダルを贈呈するのは勿論この人!!」
「私が!! メダルを持って来「我らがヒーロー!! オールマイトォォ!!」
オールマイト被ってるし。ウケる。
まずは3位からのメダル授与だな。常闇からか。
「常闇少年おめでとう! 強いな君は!」
「もったいないお言葉」
「ただ! 相性差を覆すには個性に頼りっきりじゃダメだ! もっと地力を鍛えれば───」
「──いえ、お言葉ながらそれは存分に承知の事。俺の目指すものはまだ遠く、しかしそれに並ぶためにも更なる努力を」
「ンン!! 向上心の塊!! いいね、その調子で頑張り給え!!」
「御意」
常闇がなんか俺の方を向きながらそんなことを言ってきた。
えっもしかして意識されてる? やだ、照れちゃう♥
もう一回脳破壊できそうだなこいつ。
「続いては轟少年! おめでとう!」
「……ども」
「緑谷少年との戦いで目覚め、幾野少年との戦いで吐き出した。どうだい、今の気分は」
「……悪くないです。キッカケと、支えをダチにもらえました。あなたが緑谷を気にかけるのも……幾野が周りに一目置かれてんのも少しわかった気がします」
そう言って轟も俺の方向いてきた。
え? もしかしてモテ期か?? モテ期なのかこれ????
何で男子しかいねぇんだよクソがよ。
「俺も貴方のようなヒーローになりたかった。ただ……俺だけが吹っ切れてそれで終わりじゃダメだって
「……顔が以前と全然違う。深くは聞くまいよ、君はここでよい出会いに恵まれた。今の君ならきっと清算できるさ」
そうしてぎゅっとオールマイトが轟を抱きしめる。
常闇も抱きしめられてたし俺もこれ抱きしめられるのかな?
大丈夫?? オールマイト過激派に狙われないかな俺???
「さて……幾野少年!! 大暴れだったな!! 言っちゃなんだが間違いなく一番目立ってたのは君だったぜ!!」
「えへへ……オールマイトにそんなこと言われると照れちゃいますね♥」
「ここの声は放送に乗らないよ?」
「そっすか」
ついいつもの癖で声を作ってしまったがオールマイトに冷静にツッコミを入れられた。
そっか。じゃあ素の俺で。
「本当によく暴れたよ! 清々しさすら感じられたな! 選手宣誓の伏線回収は残念だったが……」
「いえ、あれを聞いてた人の脳破壊が出来た時点で目標達成したので」
「ブレないな君は!!」
「数少ない取り柄ですかね」
HAHAHA!! と笑われながら肩をぽんぽんと叩かれる。
俺も併せてにっこりと笑顔を返しておいた。顔は放送に映るしバッチリ美少女スマイルだ。
「強い個性だ。しかし、今日だけでもまた課題が見えたことだろう」
「ええ、存分に。俺が目指すヒーローに向けて、足りないもんだらけです」
「ウム! それが分かっているのは偉い! まだまだ教えることがいっぱいあるぞ幾野少年!」
「楽しみにしてますよ、また熱い授業お願いしますねオールマイト先生」
その言葉でニカッ! とオールマイトが笑顔を見せて、俺に手を差し出してきた。
俺も手を差し出して応じる。
握手握手。
なんで??????
「抱きしめてくれないんすか?」
「イヤ……他の学年の表彰式でも女子生徒とかには一応、ホラ? 配慮するようにしててね???」
「俺は男子ですが????」
「じゃあ最後に爆豪少年だな!!」
「逃げるなァァァ!! 俺の外見から逃げるなァァァァ!!!!」
俺の言葉をスルーして爆豪の方に向かうオールマイト。
覚えとけよNo.1ヒーロー。いつか絶対変な噂流してやるからなァ……!!
「爆豪少年、見事な一位おめでとう!!」
「ッス」
「元気がないな? ……あえて言うが、見事な番狂わせだった!! 決勝で君は見事に君の可能性を示した!! プルスウルトラを体現したのだ、胸を張ってくれ!!」
「……この一位を価値のねェもんだとは思ってねぇ。けど……」
「けど?」
「
そう言ってまた爆豪が俺の方を向いてきた。
何だお前ら。全員俺の事好きすぎんか。
だが全員男子である。頼むから女子になれ。
もういいよ爆豪ちゃん復活ね?? 金髪ロリ巨乳になーれっ。可愛いね♥
「うむ! 相対評価に晒され続けるこの世界で不変の絶対評価を持ち続けられる人間はそう多くない! それを忘れることなく……一つの『
「……おぅ」
そう言って恭しく頭を上げて、オールマイトからメダルを拝領する爆豪ちゃん。揺れてる揺れてる(幻覚)。
拍手が沸き上がり、爆豪ちゃんを抱きしめるオールマイト。どうして。
「さァ!! 今回は彼らだった!! しかし皆さん! この場の誰にもここに立つ可能性はあった!! ご覧いただいた通りだ!!」
最後にオールマイトの総括が入る。
長かった体育祭も終わりか。マジで色々あったぜ。
いい想い出になる日まで、俺もまた前に進もう。
そう、最後の〆の言葉のように。
「次代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!! ってな感じで最後に一言!! 皆さんご唱和ください!! せーの!!!」
「「「「プルス・ウル『お疲れさまでした!!!』
えっ。
ウケる。
マジでオールマイト先生最後まで何やってんです????
「ふーう」
明日明後日と休みであることを相澤先生に帰りのHRで案内され、家に帰ってきた。
一人暮らしのアパート、そこの
「やあ!! 今日は頑張ってたな、
「は……?」
勝手に鍵のかかった部屋に上がってのんびりグラビアを読む様な人間は一人しかいない。
短い金髪、漫画みたいな顔。鍛え上げられた体。
雄英三年生、今年に入ってBIG3と呼ばれるようになった学園最強の一人にして、
「……
通形ミリオが、そこにいた。
「体育祭お疲れ様!! 久しぶりに従弟と飯でも食べに行こうと思ってさ!! よければどうだい!?」
「それ奢り?」
「もちろんだよね!!」
「っしゃ太っ腹ぁ! 行こうぜ! よし峰田も呼ぼ」
「あんまり人増やすと俺の財布がしぼむんだよね!! 峰田くんまででよろしくね!!」
次回、ヒーローネーム発表。
あとそこそこ区切りが良かったのでここまでの話のあとがきみたいなものを活動報告でまとめてます。
ここすき紹介などもしてますのでよかったらご覧ください。いつものやつ。
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