【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!!   作:そとみち

3 / 177
ランキング入ってました。感謝。
面白いと思ったらお気に入り登録とか感想とか評価とかいただけると嬉しいです。




3 名は個性を表す説あると思います

 

「ふーう。これで60Pってところか」

 

 俺は実技試験の残り分の時点でまず合格間違いないだろうポイントは稼げていた。

 個性と相性のいい試験で助かった。敵ロボの数と時間から見ても流石にこれだけ稼げばいけるだろ。

 もう残り敵ロボの数も少なくなってきたし、あとは消化試合か。

 

「峰田のほうは頑張ってっかな……ま、アイツなら問題ないだろうけど」

 

 別試験会場で試験を受けているだろう親友の事をふと考える。

 この程度の敵ロボなら、アイツなら軽くいなせるだろう。

 筆記試験もお互いに落としてないし、二人での合格がリアルに見えてきたことでだいぶ嬉しさもこみあげてきている。

 だが最後まで気を抜くわけにはいかない。残り3分、試験官にちゃんとアピールしねぇとな。

 

「さて、んじゃ次の敵ロボは……っと!?」

 

 市街地を走っていると、背後から凄まじい轟音が生まれたので咄嗟に振り返る。

 そこには超巨大な敵ロボがビルに手をかけて姿を現していた。

 あれが0Pのお邪魔ロボってやつか。()()()()()()()()()()()()

 

「しかし、このサイズはやべぇな!!」

 

 俺は思考を切り替える。

 試験に向けた本気ではなく、人を助けるために本気になる。

 逃げ遅れる様な生徒が出てはならない。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()が、他の生徒はアレに一撃でも貰えば良くて重傷、打ちどころが悪ければ万が一もあるだろう。

 避難誘導が必要だ。

 

「焦らず全力で下がれっ!! 命あっての物種だ! 周りに怪我して動けない奴がいたら運んでやれ!!」

 

 周りの受験生たちが我先にと必死に逃げる中で、俺は大声を上げた。

 少しでも周りが落ち着いてくれればいいのだが。

 

 さらに、俺は個性を発動。

 周囲の捜索を行う。

 先程口に出したように、もし物陰で怪我して動けないような奴がいたら大変だ。

 俺自身で運ぶか、場合によっては増強系の個性を持ってるやつにお願いして運んでもらわないと────む。

 

「いた……!」

 

 動けなくなってる生徒。女子。

 他の人が逃げる時に、個性の余波で崩落したビルの傍に一人。

 恐らく落ちてきた瓦礫を避けようとしたのだろうが、瓦礫に脚が挟まっちまってる。

 動いてるから気を失ってたりはしてないようだがまずいな。

 あの瓦礫を俺一人で持ち上げられるか?厳しい。

 ならばパワーのある個性の持ち主に応援を頼むしかない。

 

「誰かっ! 瓦礫を持ち上げられる個性の奴はいるか!? 脚を挟んでる子がいる!」

 

 声を上げ、何人かが振り返ってくれたが、「すまん!」と返事が返ってきたり、首を横に振られたり。

 駄目か。確かに近くにいる数人の個性は見たが瓦礫を持ち上げたり破壊できたりするタイプの奴らじゃない。

 ヒーローを目指すならそれでも止まってほしかったが、自分の命が絡んでいる状況だ。無理強いはできない。

 ならば他──駄目なら俺の個性を無理に使ってでも──と考えていると、颯爽と飛び跳ねる黒い影が視界に映った。

 あいつは……影みたいな攻撃で敵ロボを倒していたやつだ。パワーも十分にあったのを俺は個性で見ていた。

 あいつなら行ける。

 

「おいっ!! そこのカラス君!!」

「っ、俺か? 俺は常闇だ」

「じゃあ常闇! 悪いが力貸してくれ!! そっちのビルの向こうの路地、瓦礫に脚挟まってる女子がいる! 助けてやってくれ!」

「お前、感知系か!? っすぐに向かう! お前も早く逃げろ!! 黒影(ダークシャドウ)よ、行けっ!」

『アイヨ!!』

 

 カラス頭の男子、常闇に俺は叫んだ。

 どうもあいつはヒーローの素質があるようで、俺の簡単な指示ですぐに向かってくれた。

 これで向こうは大丈夫だな。あの黒影とかいう個性のパワーは把握してる。あのサイズの瓦礫をどかすなら何とかなるだろう。

 女の子の怪我が小さいのを願う。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()

 

「さて……お前にはこれ以上行かせねぇよデカブツ!!」

『GYAAAAAAA!!!』

 

 常闇を見送り、俺は超大型敵ロボに相対して挑発する。

 どっかにカメラがあるのだろう、そうじゃないと生徒に向かって攻撃できないしな。

 そして頭みたいなところが明らかに俺の方を向いてくれた。助かる。無視されたらそれはそれで面倒なことになったんだ。

 お邪魔ロボってプレゼントマイクが言ってたから、近くの生徒を無差別に攻撃とかするタイプなのかもしれん。

 こいつの注意を残り時間引きつけてれば俺の勝ちだ。

 

「かかってこいや!! デクの坊!」

『GYAOOOOOOOO!!!』

 

 こちらに向けて振り下ろしてくる巨腕を大きく横に飛びのいて回避する。

 俺の方から攻撃してぶっ壊してもよかったのだが、あのサイズだと流石にちょっと面倒だ。

 残り時間も少ない以上、俺の勝利条件はこれ以上コイツを前に進ませない事だ。

 だったらシンプルだ。挑発して攻撃を誘発する。

 一撃一撃が大きな動作だし、回避するのは苦でもない。個性無しの俺の動きでも避けきれるだろう。

 叫びながら腕を振るってくるが、その度に俺は全力で回避した。叫びながら攻撃するタイプか。

 

「ヘイヘイピッチャーびびってるー!! 動きがスロウリィだぜー!?」

『GYAOOOOOOOO!!!』

 

 そのまま煽りつつ攻撃を回避していると、どうやら常闇は無事に女の子を救出できたらしい。

 振り返り、常闇が出口付近に走る姿を見つける。

 個性を発動したままなので、黒い影の中にいる女子の姿も見えていた。

 そのまま常闇は生徒たちが避難したところにたどり着き、黒い影を解いて女の子を下ろして─────って。

 

「えっ全裸!? あれ全裸だよねぇ!?」

 

 余りの驚愕に俺は思わず全力で大型ロボに背を向けて振り返り女の子をガン見してしまった。

 クソァ!! 望遠鏡持ってくればよかった!!

 でもあれ絶対服着てないって!? えっ、さっきは建物の向こうだったから気付かなかった! 全裸やん!!

 常闇が横たえる女の子の胸元の大いなる双丘が重力と拮抗し黄金比を保ってるやん!!

 

「え…? なんで周りの奴らなんも反応してないの……!? 怖……」

 

 少なくともここに峰田がいたら一目散に駆け寄ってジャージをかけてやるところやぞ。

 とか思ってたらちゃんと常闇がジャージかけてやってた。優しい。でももうちょっと粘れなかったか?

 

 ─────なんて、下らない思考に耽っていたのが悪かったのだろう。

 何故かこちらに飛び出してきた常闇が、何かをこちらに叫んだ途端に。

 

『終ゥ了~~~~~~~~!!!!』

 

 試験終了の声を告げるアナウンスが響き。

 それと同時に、

 

『──────!!』

 

 俺の頭上から振り下ろされる超巨大敵ロボの大きな腕が。

 ズシン、と俺の体を押し潰すように地面に突き刺さった。

 

 


 

 【side 常闇】

 

 

 実技試験で十分なポイントを稼ぎ、満足していたのもつかの間。

 突如現れた0P敵ロボの被害から逃れるべく走る学生たちの波に合流するように黒影を使って走っていた。

 一つの目的は勿論、危機から逃れるため。

 もう一つは、もし逃げる生徒の中で身の危険がある様なものがいれば、助けるため。

 俺が目指すものはヒーロー。

 であれば、赫奕たる騒乱の内に不運が舞い降りし者を救うのもまた使命。

 

「おいっ!! そこのカラス君!!」

「っ、俺か? 俺は常闇だ」

「じゃあ常闇! 悪いが力貸してくれ!! そっちのビルの向こうの路地、瓦礫に脚挟まってる女子がいる! 助けてやってくれ!」

 

 そんなときに、俺に叫んできた女子がいた。

 口調はまるで男のようだが、その顔は傾国すら思わせる美貌。中性的な声色。意志を感じる瞳。

 彼女もまた試験を受ける学生の一人なのだろう。

 その口から語られる内容に俺は了承の意を返してから、驚愕を覚えた。

 

 視界にすら映らぬ先の事象を、この女は己が意のままに把握している。

 恐らくは感知系の個性なのだろう。

 であれば今回の試験は些か相性が悪い。

 ポイントを稼ぐのも楽ではない、もしかすればあまり良い成績を残せていないのではないか。

 

 だが、そんなことは関係なしに彼女は人を助ける道を選んだ。

 己の細腕では救出が叶わぬと知り、力を持つ俺に声をかけた。

 その志、眩しいほどにヒーロー。

 敬意を表する。であれば、俺も彼女の意志をせめて遂げよう。

 俺は彼女の指示の通り、ビルの向こうにある路地に駆けた。

 

 だが。

 

「……!? 誰もいないぞ!?」

 

 その先に映る光景に俺は息をのんだ。

 確かに彼女の言う通り瓦礫が散乱している。しかし、彼女の言っていた要救助者が見当たらなかった。

 一瞥し、改めて確認しても、誰もいない。

 なぜだ?

 先程の女の言葉はまさか虚言?

 

「ごめんなさーい!! 助けて!! 脚が挟まっちゃって…!!」

 

 だが、そんな思考を巡らせる俺に声が届いた。

 瓦礫の傍からその声は聞こえる。だが誰もいない。

 

「どこだ!? まさか瓦礫の下か!?」

「ちがーう! 瓦礫に脚挟まってるだけ!! 透明なのが個性なのー!! ここー!!」

 

 声の後にバシバシ、と音がして、瓦礫の傍の埃が僅かに舞った。手で地面を叩いたのだろう。

 透明人間か。そういえば試験開始前、服だけが宙に浮いていたな。彼女か。

 そこにいるのははっきりした。先ほどの女はこれを感知していたのだ。

 際どかったと言えよう。もしあの女がこの透明人間を感知していなければ、俺が来なければ、誰も気づけずにあの超巨大ロボの攻撃の余波で万が一もあり得た。

 これは試験なので本当に危うくなればプロヒーローが助けに来るであろうが、そのような事態にならなくて僥倖であった。

 

「いま助ける! 悪いが動くな、目視できんので体の位置を図る! 黒影!」

『アイヨッ!! オジョーチャン、ウゴクンジャネェゼ!!』

「うわきゃあ!? や、優しくしてね!?」

 

 俺は黒影で透明人間の体を包み、位置と体勢を確認し、負担にならないように瓦礫を払う。

 しかし……透明人間が全く見えないということは。服は、その。

 ……やめよう。今考えるべきではない、救助を優先だ。

 

「瓦礫はどかした。脚は抜けるか?」

「うん、大丈夫そう……ありがと! 痛っ…!」

「無理をするな、骨折の可能性もある。支えて遠くに離れるぞ」

「ごめんね、試験中なのにこんな……えっと……」

「常闇だ。常闇踏陰。こっちは個性の黒影(ダークシャドウ)

『ジットシテロヨー』

「常闇君と黒影君ね、ありがと!! 私、葉隠透!!」

「葉隠か。礼なら俺ではなく、お前の存在を感知し俺に指示を与えた女に言え。赤く長い髪を持つ女だ」

 

 俺は葉隠の体を黒影で包み、改めて人が集まる出口付近に向かう。

 あそこまで人が集まれば何かあっても対処しやすいだろう。そこに葉隠を一度置いて、ジャージを脱いで体にかけてやる。

 透明なので俺も葉隠の姿は見えなかったが、女子に対しては配慮するべきであろう。ここに誰かがいると知らせる意味合いもある。

 踏まれてしまってはたまったものではないからな。

 

 さて、これで救助は完了した。

 改めて超大型ロボの方に振り返れば─────そこには、何故かこちらを見て棒立ちになっている先ほどの赤髪の女の姿が見えた。

 

「っ!? あの女……!?」

「えっ!? 何々!? 戦ってるの!?」

 

 バカな。

 なぜまだあそこにいるのか。

 逃げろと伝えたはずなのに……いや、もしや俺が葉隠を救出する時間を稼いでいたのか?

 

「……!? 何をしている!? 後ろだ女、気付け……!!」

 

 棒立ちのままの女の、その隙を逃す巨大ロボではない。

 今度は雄たけびを挙げぬままに、静かに腕を持ち上げ、今にも振り下ろさんとしている。

 距離がある。これでは俺は間に合わない。

 気付け、女。気付け!!

 

「女っ!! 避けろ!?」

 

 思わず駆け寄りながら放つその言葉に、へ?と間の抜けた顔を浮かべたその女の、頭上に。

 

『終ゥ了~~~~~~~~!!!!』

『──────!!』

 

 試験終了のアナウンスと同時に、その巨腕が振り下ろされた。

 

 

 ────────即死。

 

 

 その二文字が、脳裏によぎる。

 

「っ……!! おいっ!! 返事をしろ、おいっ!!」

 

 なぜ、なぜあんな油断をした。

 試験終了が間近だったから気が抜けた?

 俺が葉隠を助けたことを知って気が抜けた?

 

 なぜ逃げなかった。

 なぜ俺は間に合わなかった。

 なぜプロヒーローは助けなかった……!!

 

「おいっ!! まだ俺は、お前の名前も聞いていないぞ……!!」

 

 動きを停止した巨大ロボの巨腕に近づき、叫ぶ。

 後方、学生たちが避難しているところでは、何人かがその光景を目撃してしまったのだろう、動揺したり気を失ったりする大混乱が起きてしまっている。

 何人かはこちらに駆け寄ってきているが、しかしその間もロボの腕の下から返事はない。

 

「おいっ!! 誰か手を貸せ!! この腕をどける……!!」

 

 だが、まだ生死が確定しているわけではない。

 ならばできることはある。俺は後続からくる集団に声を掛けながらも、黒影を用いて腕をどかそうと─────

 

「あ、ワリ。普通に生きてっから」

「ッッ!?!?」

 

 唐突に、俺の後ろから声を掛けられた。

 中性的な声。間違いなくあの女で、振り返ればそこには全くの無傷のそいつがそこにいた。

 怪我はしていない……いや、ジャージが汚れたり破れたりもしていない。

 散歩の途中とでも言うかのような気軽さに、思わず俺も腰を抜かし、ぺたんとその場に座り込んでしまった。

 

「大丈夫かー? そうだよな、悪い。心配したよな俺の事」

「な、お、お前っ……ど、ういう、ことで……」

「あー、個性だ個性。絶対死なない確信があってさ、さっきの女の子も助かってたしすっかり気が抜けちまったんだわ。ポイントも稼げてたしな」

 

 あっけらかんという彼女に、まず驚きが俺の内を通り過ぎ、その後に安堵が生まれ、そうして怒りが沸き上がってきた。

 この女は、俺に、ここまで心配させて─────!!

 

「……貴様! そういう能力があるならそう言え!! よほど心配したぞ俺は!!」

「あー、うんうん悪い悪い。マジでちょっと反省してるわ。そうだよな、峰田じゃねぇもんなみんな」

「誰だそれは! ……全く、無事であったからいいものの。見ろ、お前の死に際を見て幾人かは意識を飛ばしてしまったぞ」

「え、マ? ……うわマジだ。こりゃ悪いことしたなぁ。もしかしてこれのせいで俺、試験落第ってことはないよな?」

「知らん、落ちてしまえ貴様など」

「ひでぇよ常闇ー! あ、そういや女子救出はマジでナイスな! 俺の代わりに助けてくれてありがとよ!」

「フン……!」

 

 鼻息を荒く返事を返してやると、女もまたごめんって、とはにかむような笑顔と共に謝罪を零してきた。

 コイツは……くそ、卑怯だ。

 そんな顔で謝られては、折れぬ男はいないだろう。俺の怒りも随分と雲散霧消してしまった。

 

「……名前は」

「ん?」

「貴様の名前だ。俺はまだ……貴様の名乗りを受けていない」

 

 試験官も集まってきて、女が無事であることが分かり、集まってきた生徒達にも安堵の空気が広がってきていた。

 試験内容は芳しくない者もいるだろうが、死んだと思われていた女が生きていたことで、一つの活劇を見たかのような安堵感があるのだろう。

 まったく、騒がせてくれる。

 

「そういやまだ言ってなかったっけ。俺は幾野だ。幾野 潜(いくの せん)。好きに呼んでくれ!」

「イクノか。……貴様の名、忘れん。雄英で会おう」

 

 俺はイクノから延ばされた握手に応じ、彼女の柔らかい手を強く握りしめた。

 




常闇君の脳が破壊されるまであとわずか(確信)
常闇は犠牲になったのだ……性癖の破壊者、その犠牲の犠牲にな……。

葉隠ちゃんも筆者の推しです。出番増えます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。