【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!! 作:そとみち
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放課後にサポート科に顔を出して初対面の皆様に挨拶しつつコスチューム改造について相談してみた。
「コスチュームの改良だったら校舎の一階にある開発工房に行けばパワーローダー先生が聞いてくれると思うよ」
「マジ? サンキュ。お礼に俺のおっぱい揉む?」
「出てけ!! 俺の性癖が歪む前に早く出てけよぉ!!」
モブ男くん*1が涙目で教室から追い出してきたので仕方なく退散することにした。
サポート科とも仲良くしたかったんだけどなあ。残念。
そういえば発目ちゃんいなかったな。まぁ放課後だしな。
さて。そんなわけで開発工房に向かっていたのだが、そこで見知った顔と出会った。
「お、心操じゃん。よっす、こないだの体育祭じゃどーもな」
「……幾野か。こっちこそ、世話になった」
普通科の心操だ。
体育祭では共に騎馬戦を勝ち抜いた仲。もはやダチと言っていいだろう。
緑谷のお母さんに心労かけたのはまだ許してねぇけどな。
「どったのこんなところで」
「あぁ……実は相澤先生に」
「俺を探してた? やだもー、あの時の太腿の感触が忘れられなくなっちゃったの♥?」
「話聞けよ平常運転だな相変らずお前」
「メンゴ。で、相澤先生が何だって?」
「……体育祭の後に声かけられてよ。俺も職場体験でいくつかスカウトが来てて、行くならコスチュームまではいかなくてもなんか道具作っておけよってさ」
「おおマジ? やったじゃん! 騎馬戦頑張った甲斐があったな!」
「ああ……礼は言っとく。んで、案が固まったから相談に来たってワケ」
「なるへそ」
心操の話を茶化しつつも聞いていたらなんとこいつにもちゃんとスカウトが来ていたらしい。
やったな、マジで。まぁ洗脳なんつー強個性を見逃すようなプロがいたらそれはありえんと思ってたところだ。
相澤先生にも声を掛けられたとなれば相当買われてるな。あの先生、人を見る目はマジでいいし期待されてんのかもな。
「相澤先生に放課後の特訓なんかも誘われててよ……頭が上がらねぇよ」
「いいじゃん、あの先生つっけんどんだけど面倒見いいからな。特訓俺もたまにつきあっていい?」
「ああ。先生がOK出せばな」
さてはてと話しながら開発工房の扉をノックして、ちゃんと「失礼します」と言ってから扉を開ける。
爆発した。
は?
「……なんで?」
「ゲホッ……!! おい幾野、てめぇ何しやがった……!? 何、誰……!? 重……!」
「いや俺のせいじゃないからね!? ごめんななんか俺だけノーダメージで!?」
心操がぶっ飛ばされて煤だらけになったやんけ!
なお俺はオート個性が発動してノーダメージです。
煙が中から溢れてよく見えん。何があった?
俺はウォールハックを発動して周囲を確認する。
すると、まず俺の横に立っていた心操が衝撃で倒れており。
その上に、部屋の中から爆発の衝撃で吹っ飛んできていたのだろう、発目ちゃんがのっかっており。
おっぱいが心操の胸板で押しつぶされていた。
「殺すか」
「物騒な発言が聞こえたぞ!? ってか……発目だっけ? こいつ」
「ごほっ……あれ!? 貴方たちは先日の体育祭の!」
今すぐ発目ちゃんの下からどきなさい心操。繰り返す今すぐにどきなさい。
美味しい思いしやがってよォ!! 俺の方に発目ちゃんが飛び込んで来てたら倒れることもなく抱きしめてたのによォォ!!
その後煙を払ったり煤を払ったりして開発室内にお邪魔させてもらった。
「あ、パワーローダー先生。ちわっす! ヒーロー科の幾野です!」
「どうも。普通科の心操です、世話になります」
「けけ……悪かったな二人とも、コイツいつもこうでよォ。心操のほうはイレイザーヘッドから話は聞いてるよ」
「発目です! ごめんなさいお二人ともお名前忘れてました!」
二人に挨拶して、部屋の中を見渡す。
すんげぇごっちゃりしてんな。こんなもんなのか開発室って。
「で……幾野のほうはどうした。お前の個性で足りないもん埋めに来たか?」
「そっす。俺の個性、無敵ではあるんすけど火力とスピードが足りなくて。特にスピード、機動力をどうにかしたいなって……コスチュームの改良で何とかならないかなと」
「コスチュームの改良!? 興味あります!! 私に任せてみませんか!?」
「俺も発目ちゃんの事すっごい興味あるな。お互いに理解しあおうか」
「狂人と狂人が出会う恐怖だよ」
急に発目ちゃんがぐいっと顔を近づけてきたので俺も彼女の顎にそっと手を添えて可愛いフェイスで迎える。
したら心操がため息ついてた。幸せ逃げるよ?
「どんなベイビーが欲しいんですか! ピッタリな物作ってあげましょう!!」
「君とのベイビーが欲しいかな」
「アクセル緩めろ幾野」
「発目と話のテンションが合う生徒初めて見た」
やだ……発目ちゃん天使かな?
キレのあるカウンターで返したのにむしろ笑顔を向けてきよる。ヤバイこの子と相性いいぞ俺。
「おや!? 私の自家製が欲しいとは……わかってますねぇフフフフフ!! 初めての依頼、ばっちり要望に合ったものを作らせてもらいましょう!! では早速全身を計測しますね失礼します!!」
「えっちなところ触らないでね? テレちゃうから」
「いいえきっちり全身を測らせていただきます! 可愛いベイビーのためには必要なデータです!!」
「んっ♥そんな所弄られるの恥ずかしい♥」
「俺そろそろツッコむの諦めていいか?」
「このまま発目引き取ってほしいまである」
メジャーを取り出して俺の体を測定しながらも直接触ってきて筋肉のつき方まで見てくる発目ちゃん。
何だこの子えっちか? 峰田に絶対この部屋の存在教えねぇわ独り占めだわ。
「随分とお体が柔らかいですねえ! あれ程の動きを体育祭で見せていたのに無駄な筋肉がない!」
「可愛い子に全身をまさぐられるとちょっと興奮する」
「パワーローダー先生、一応相澤先生と打ち合わせたのがこの説明書なんすけど……」
「うん、声に関するアイテムだったね。見せて……ふむ……面白いなこれ。いいね、ちょっとデザイン考えていこうか」
とうとう俺達へのツッコミを放棄して心操はパワーローダー先生と打ち合わせに入ったようだ。
計測されながら横目でちらりと見たが、首に装着するタイプの変声機か。なるほど、心操の声色を変えられれば洗脳を繰り出す幅が広がる。いい案だと思う。
だが、その上でちょっと俺は心操にアドバイスをしてやることにした。
「心操、その変声機……女子の声も再現できるのか?」
「ん? ……ああ、一応まともな声色なら男女区別なく出来るように要望出してある」
「そっか。じゃあ俺と一緒にメス声出す練習するか」
「何でだよ!?」
俺が適切なアドバイスをしたら心操が頭おかしいのかって顔でこっちを見てきた。
え。いや俺にしてはマジで至極まともなアドバイスなんだけど?
「いや心操お前、女子の声がもしかして普通に声変えるだけで出せると思ってんのか?」
「は……? 声色が高くなれば女子の声になるんじゃねぇのか?」
「ならねぇよ。いいか、女子と男子の声ってのは根本から違うの。ブレスの量、発音のタイミング……甘え声って分かるよな? あれ高い声で男がやってもキモってなるけど女子だと印象違うだろ? あれ全部女子なりのブレスがあるからだからな? 声だけ高くなってもキモ裏声男子にしかならねぇわ」
「……そう、なのか?」
「的外れでもないんじゃないかな。男性の声をどんなに調整して高くしても女性の声にはならないからね」
「そういう練習もしないとちゃんと女の子の声を再現できないぞ♥」
「その声やめろ。……はぁ。でも確かにお前の声はちゃんと女子に聞こえちまうもんな……わかったよ、なりふりは構ってられねぇんだ。教えてくれ」
俺がしっかり説明すると心操もある程度納得はしたのか、一先ずは俺からそういう指導を受けることに了承した。
女子がどう声を出しているかを説明するのは難しいが、男子で女子の声を練習した俺なら適切な指導が出来るだろう。
実際、発音に欠片でも照れが入ったら違和感しか残らないからな。個性をきっちり使いこなすためにもマジで必要な訓練だ。
てなわけでこれから心操くんにはメス声習得してもらいます。
「じゃあまずは俺が練習してた時の参考音声スマホに送るから良く聞いてブレスのイメージ掴んでくれ」
「おう。どんな音声なんだ?」
「ASMRボイス『JK銀髪爆乳シスター初めての筆おろし「ふふっ♥今は神様は見ていません♥いっぱい出しましょうね♥」総集編』」
「学校になんてもの持ち込んでんだお前!?」
「聞かなかったことにしておくよ。個人の趣味だし。ホントに男子だな幾野」
「よくわからない音声を聞いてますね!!」
俺は心操に取っておきのASMRボイスを転送してやった。いいんだこの音声。しっとりしてて。
ブレスも多めだからマジで訓練になる。俺の女声はこのボイスに酷似させている。
つまりこれから心操は俺の女声に似た声をずっと聴くことになるわけだ。
性癖歪みまくれオラァッ!! 引子さん混乱させた報いだオラッ!!
「お体の計測終わりましたよ!! さて、アナタはどんなベイビーをご所望ですか?」
「お、ありがとね発目ちゃん。そうだな……イメージとしては瀬呂のテープとか梅雨ちゃんの舌みたいな、ワイヤー飛ばして高速移動できるアイテムが欲しいんだよね」
「む! となると私が体育祭で使った『ザ・ワイヤーアロウ』のようなやつですね!?」
「そんな名前だったんだ。そうね、あれがイメージに近い。で、出来れば場所取りたくないから手首辺りから出して、こう、スパイダーマンみたいに移動したいんだけど」
さて、改めて俺の求めるアイテムの話に戻る。
発目ちゃんが前に使っていたワイヤーアロウもいいんだが、あれでは装備がデカすぎる。できれば体はすっきりさせておきたい。
だからこそ、手首にパーツを装備する感じで、街中とかビルとかで飛び回れるようにしたいんだよな。
近接戦闘は体育祭でそこそこ出来たのを考えれば、俺の今のはっきりした課題は足場のない所にすぐに移動する速さだ。障害物競走の第二種目がはっきりとそれを表している。
「なるほどイメージは分かりました!! ですがかなり難しいですね!!」
「アレ!? なにゆえ!?」
「あー……幾野。お前の言うイメージはよくわかるし、かっこいいから誰もが求めるよなァそういうアイテム。でもヒーローがそういうの使ってるの見たことあるか?」
「……あれ? ないっすね?」
「確かに、腕からワイヤー飛ばして移動なんてぱっとイメージできるけど誰もそんなアイテム使ってねぇよな」
発目ちゃんにダメ出しされた。んでパワーローダー先生が話に混ざってきて、俺と心操は先生からかけられた問いにあれ? と首をひねった。
確かに。誰もが考える道具なのに使ってる人誰もいない!
「先日私が使ったワイヤーアロウは射出機構を
「……ん? どゆこと?」
「射出する
「……ワイヤーの先端を鉤状に尖らせる以上、どうやっても拳銃とかと同じ凶器扱いになっちまうってことか。スナイプ先生みたいに個性由来でしっかり許可とってねぇと使えないと*2」
「その通りです!! 重ねて言うとバネ仕掛けなどの法的にセーフな機構で放つにしてもやはり装備が大型になりますね!! 何とかしたいと考えた結果が先日のワイヤーアロウですが、安定して壁面に突き刺す射出機構とさらに回収機構までつけるとなるとあのサイズを下回れないのですフフフフフ!! いつかは作り上げてみたいものですが!!」
「なるほどなぁ」
発目ちゃんとパワーローダー先生の説明に、俺と心操は納得を覚えた。
成程確かに言われてみればそのとおりだ。そもそも発目ちゃんが以前に使ってたアレよりも小型で便利なものを作ってくれってのも無理な話だったな。
ふむ。そうなるとどうすべ。
俺のコスチュームは出来ればあのぴっちり感は残したい。けど機動力のためなら多少は装備をゴツくしちまっても……いや、待てよ?
さっきの説明をまとめるとこうだ。
突き刺さなきゃいけないから先端が尖って大きくなる。
先端が尖る以上、火薬は使えない。
火薬が使えない以上、射出機構がデカくなる。
だから場所を取る。
…………これ、
「……発目ちゃん、細めのワイヤーってある?」
「はい? いくらでもありますよ? その辺に転がっています」
「片付けもしような発目」
俺は物は試しと、床に落ちてるそこそこの長さの良く動くワイヤーを拾い上げる。当然その先端には何もついていない。
適当でいいんだ。ついでに拾ったガムテープをワイヤーの先端にぐるぐると巻いて簡単な重りを作る。
「何やってんだ幾野?」
「いや……ちょっと思いつき」
俺は先端に重りがついて簡易フレイルと化したワイヤーをぐるぐると回して勢いをつける。
そして適当な壁に投擲して。
─────個性を発動。
「……お?」
「おお!? 壁に先端が
「……なるほどな? そうか、幾野の個性……持ってる物も潜らせられるんだったか。カカ、こりゃいい」
俺が投げた重り付きワイヤーは壁にぶつかると思いきやそのまま壁を通過。
そしてワイヤーに張り巡らせてた個性を弄って壁に埋め込んだまま固定。当然壁に埋まったワイヤーはそこから外れることなく、引っ張ればピンッと張力を生んだ。
そう、俺が使う以上、先端の尖りはほぼ不要になる。
埋めることは俺の方でできるのだから、大仰なパーツをつける必要すらない。
極論、先端にピンポン玉がついててもどこにでも突き刺せる。
「……フォォォ……! すごい個性ですねそれ!? 出来る事広がりまくりじゃないですか!? フフフフフイメージが次々湧いてきましたよフフフフフ!!!」
「これで何とかなるかな?」
「少なくとも先端は何とかなるでしょう!! ですが射出機構がやはりネックです!! 小型化したとしてもまだ手首には巻けないですが腕全体を覆ってしまえば!!」
「重りは必要だから鉄球でもつけるとして、それでもやっぱり火器は厳禁だからね。回収機構も小型化するとはいえまだ手首サイズにはならないかな」
「ロマン求めるのも大変だな」
「んにゃぴ……」
俺の案でフックのほうの問題は解決したが、それでもやはり射出機構と回収機構が問題らしい。
んー、腕を覆うくらいなら何とかなるか?
腕を覆う……ん?
ひらめいた。
「発目ちゃん。腕を覆うように作るとして、肘の先、二の腕まで必要な感じ?」
「いえ、そこまでには至らないでしょう!! ガントレットのような感じになるかと!!」
「なるほどね? じゃあ、それさ───」
俺はまたしてもそこらに落ちてるパーツの中から、だいたい500mlペットボトルくらいの大きさの鉄の棒を拾う。
そして、それを自分の腕に埋め込んで見せる。
「────射出機構をさ、こうやって
「っっっっ!!!!! 天才です!! 天才ですよアナタ!! 手首にワイヤー、腕の中に射出機構と回収機構!! イケます!!!」
「何でもありだなマジで幾野の個性」
「自分の個性に噛み合うアイテムを使うのもヒーローの資質だからね。しかし中々いいアイデアだ。ふむ、心操のペルソナコードと合わせて開発急いでみるか……」
どうやらお眼鏡にかなったらしい。
俺にしか装備できない、俺にしか使えないワイヤーロープ。
手首と、さらにそこから肘までの腕の中に
埋め込むワイヤー。名付けるなら『ダイブワイヤー』とでもするか。
これがばっちり開発されれば、俺の強力な武器になりそうだ。
「これは忙しくなりますよぉ!! デザインについて打ち合わせましょう!! どんな外見がいいですかイクノさん!!」
「あ、初めて名前呼んでくれた嬉しい。そうだね、手首には既にリングみたいの着けてるからそこから大きくは形変えたくないかな……」
「パワーローダー先生、俺のペルソナコードもデザイン案いくつかいいっすか」
「勿論。折角ヒーロー目指すんだ、カッコつけろよ。ケケ……」
その後、俺と心操と発目ちゃんとパワーローダー先生でめっちゃ新しいアイテムについて構想を練った。
なお完成時期についてだが、心操のは既存の技術で組めるんだけど俺のは根本から新開発になるらしく、職場体験が終わるころに完成見込みらしい。
ま、仕方ないか。完成を楽しみに待つとしよう。