【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!!   作:そとみち

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36 バズっちまったなー! かーっ! 人気者はつれぇわー!

 

 

【side オールマイト】

 

 

『緑谷出久! まったく! おかげで減給と半年間の教育権剥奪だ!』

「申し訳ございません……」

『とりあえず体が動いちまうようなところはお前そっくりだよ俊典!!』

「私の教育が至らぬばかりで……いやはや」

 

 私は今、職員室でかつての恩師であるグラントリノからお叱りのお電話を頂いていた。

 緑谷少年をグラントリノの事務所へ職場体験に勧めたのは私だ。私のようにいい勉強が出来ると思ったからだ。

 しかしまさか、ヒーロー殺しの事件にかかわり、級友と力を合わせて解決してしまうとは思っていなかった。驚きだ。

 いや、彼らの力は信じていたが、またトラブルに巻き込まれたという点で驚いている。

 全く緑谷少年はいつも無茶ばかりしてくれる!

 

『まァ今回電話したのは他でもない、ヒーロー殺しの件だ。実際に相まみえた時間は数分もないが───』

「グラントリノともあろう者を戦慄させるとは───」

 

 話は進み、ヒーロー殺しの脅威とそのカリスマ、それから今回の事件で示唆されたヴィラン連合とのつながりについて話し合う。

 これほど大きく事が動いたとなると、かつての大敵、AFOが動いたとみていいと。

 私自身もその線があるものと考えていた。グラントリノとも今後の事について相談し、緑谷少年にはAFOの事をいずれ話す必要がある、と結論を出した。

 私に残された時間は少ない。緑谷少年に託すことになるのは心苦しいが、しかし彼はその力を受け継いだものだ。

 きっと彼ならばやってくれるだろう。私もそのために尽力する。

 

『─────ああ、ついでに俊典。もういっこ気になったことがあんだ』

「は。どういったことでしょうか」

 

 話もひと段落したところで、グラントリノからまた新たな話が出る。

 

『ヒーロー殺しの最後の啖呵の時……唯一動いたヤツがいた。お前んところの幾野潜とかいう嬢ちゃんだ』

「幾野少年ですか? 彼は男性ですよ、あのような身形(みなり)でも」

『なにィ!? あれでか!? はー、流行りのLKYCSとかいうやつか!』

「LGBTQですね。まぁ彼の中身はどこまでも煩悩少年ですが」

 

 話はどうやら幾野少年の事のようだ。

 聞けば、彼はその場に居合わせたどのヒーローもステインの圧にやられて動けなかった時に、唯一動き出してヒーロー殺しに怒りの拳を叩き込んだという。

 締めるべきところは本当に締める子だ。型破りな言動の中に優しさと強さを持つ、逞しい少年だと私も認識している。

 

『ありゃやべぇぞ。あの場にいた中でいっちゃん経験が深ぇおれだからわかる……幾野とかいう坊主、あれは()()だ』

「は……? その、どういうことでしょうか」

『動けるはずがねェんだよ。あの場であの眼光を向けられりゃ、全盛期のお前だろうがそれを受け止めちまうくらいの信念があった。クソみてぇなモンだが、それほどの圧があの場にはあった。だが、幾野は動いた』

 

 現場にいなかった私では感じられなかったものを、グラントリノは感じたのだろう。

 だからこそあの場で動いた幾野少年の事を疑問に思っていると。

 

『なぁ、ハッキリ言うぞ俊典。あの幾野とか言う小僧────』

 

 そして、疑念の結論をグラントリノが口にする。

 

 

『────本当に、個性が『()()』なのか?』

 

 

「……はぁ。いえ、彼は確かに潜り込む個性です。中学時代に相当鍛えたようで、友人の峰田少年と共に目覚ましい活躍をしていますが……」

『にしたってやってることが多過ぎねぇか? わざわざ体育祭の映像も見たぞおらぁ。潜行という枠組みじゃ説明できねぇ動きがいくつかあったように見えたがなあ……』

「……どうでしょうか。本人の申告と、少なくとも授業中などは決して在り得ない動きはしていないと思いますが……」

 

 グラントリノの疑念に、自分も戸惑いを覚えながら受け答えをする。

 グラントリノ自身も答えが今の時点で出ているわけではないのだろう。言葉が疑問形が多い。

 しかし……改めて言われてみれば、幾野少年が個性を使って出来ることはかなり多い。

 彼の従兄である通形ミリオ少年の個性『透過』に近い性質を持つが、応用がかなり利いている。

 普段から見ているから私はそこまで疑問にも思わなかったが、初見のグラントリノからすれば異様に見えたのだろうか……しかし、グラントリノがそこまで言う圧にすら動けたとなると……圧を潜り抜けたとか、なのか?

 わからない。この電話で答えが出るような物でもないのだろう。幾野少年本人も、私が普段の様子を見る限り、冗談は言うが嘘をつくような性格でもない。

 個性を偽って登録しているという事でもないとは思うのだが……。

 

『……ま、ちっくら気になったってだけだから別に今すぐどうしろってんじゃねぇよ。おれが耄碌したって可能性もあるしな。ただ、意識はしてみてくれ』

「わかりました。彼の事もよく見るようにします」

『おぅ。あの小僧も鍛えりゃ将来は相当なモンになるだろうからな、教師としててめぇがちゃんと導いてやれや俊典』

「肝に銘じます」

 

 それで話は終わり、電話を切った。

 ふむ。AFOの話が勿論最も大きな内容であったが、しかし幾野少年か。

 確かにあの子の個性は極めて強力なものだ。本人も弱点をしっかり理解し、改善しようと努力している。

 クラスメイトからの信頼も厚い。他のクラスともコミュニケーションも取れているし、ヒーローとしての素質は十分だ。

 グラントリノが言うからではないが、今後はもっと注意してみてあげてもいいかもしれないな。

 

 まぁ私にまで性癖揺らしに来る冗談を言う所だけはやめてもらいたいがね!!

 

 


 

 

「短い間でしたがお世話になりました!」

「色々迷惑かけて申し訳なかったっす!」

「本当よ! 保須市の件は大変だったわ……まぁ駅前の戦闘でテレビに映って知名度はさらに上がったからいいけど……!」

「つらい……君たち二人という事務力を失うのが本当につらい……!」

 

 俺と峰田は職場体験も最終日を迎え、俺はマウントレディと会計士さんに最後の挨拶をしていた。

 途中、保須市でのヒーロー殺しの一件はあったがその翌日には職場体験に復帰。

 これ以上変な事件に巻き込めないと、地元の渋谷で普段通りのヒーロー活動に勤しみ、そこそこの事件解決を手伝って、無事に終了を迎えたというわけである。

 なお結局ファッションショーには同行させてもらえませんでした。クソがよ。

 

「幾野くんも峰田くんも、一先ずはお疲れさまでした。現場でもよく動けていたし、事務仕事もしっかり覚えてくれたわ。学校への報告は満点で考えています」

「マジすか。有難い」

「頑張った甲斐あるなぁ!」

「ただし保須市の一件でマイナス20点! 貴方たちは悪くないけど大切な生徒を預かる身として危険に飛び込む様な事は本気で怒ってるんだからね! 貴方たちは悪くないけど!! 偉かったけど!!」

「理不尽だ!!」

「オイラめっちゃ活躍したのに!!」

「トラブルメーカーなのかもね二人とも。渋谷でも結構事件あったもんなぁ」

「いやトラブルメーカーは峰田だけです」

「どう考えてもお前だろうがよォ!?」

 

 マウントレディの講評に一先ずはふんがーと反論したが、まぁでも考えてみればあれはしょうがない。

 誰の責任でもなくヴィランが悪いのだが、それにしたって大人の立場で子供を巻き込んだことは気にしているのだろう。

 先日にちゃんとその辺も謝ってくれたので、俺も峰田も言うほど怒ってはいない。

 むしろ心労かけてすみませんでしたマウントレディ。

 ストレスで小じわが増えちゃってたらごめんなさい。

 

(よこしま)な視線を感じるわ。……ま、でもなんだかんだこっちも楽しかったわ。貴方たちとは気を張らずに付き合えたし。こっちも学びのある一週間を過ごせた。次に会えるのは仮免を取ってインターンになったらね。強制はできないけど、ぜひまた顔を出してくれたらうれしいわ」

「また仕事手伝ってくれたら毎日メシ奢ってもいいよ俺は。ホントに助かったよ二人とも」

「ええ、そん時はまたぜひお邪魔させてください」

「オイラもまたここ来たいっす!」

「ん! 楽しみにしてるわね!」

 

 マウントレディと会計士さんと笑顔でぐっと握手をして、ビルを後にした。

 随分と濃密な5日間だった。プロの仕事を見せてもらい、また大きな事件にかかわって、マジでデカい経験ができて俺達も満足だ。

 

「じゃ、帰るか」

「んだな」

 

 俺と峰田はお世話になったマウントレディ事務所に背を向け、駅に向かって歩き出した。

 俺たちのヒーローアカデミアに帰るために。

 

 

 

「────パトロール中に駅前のメイド喫茶にめっちゃ可愛くてボインな子見つけたんだよね」

「寄るしかねぇじゃん……」

 

 この後めっちゃ立ち寄った。

 

 


 

 

 翌日。

 俺は殺されかけていた。

 

「ハハハハハ!!! 爆豪ちゃんお前マジでアッハハハハハハハ!!!」

「マジか!! マジか爆豪!!」

「ひーーー!! 8:2!! 8:2になってやがる!!」

「笑うな! クセついちまって洗っても直んねえんだ!!」

「ぶっっはははははは!!」

「おい笑うなぶっ殺すぞ!!」

「やってみろよ8:2坊やぁ!! アッハハハハハハ!!!」

「ダメだ死ぬ!! 笑い死ぬ!! 無敵の個性を貫通して俺爆豪ちゃんに殺される!!!」

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」

 

 笑い死ぬわマジで!!

 それはずる過ぎるだろ爆豪ちゃんよ。いや爆豪。フィルター外したわ!

 瀬呂と切島と笑い死にそうになってたら爆豪がキレて髪が爆発しボンッと元に戻っていた。

 

「元に!! 元に戻った!! ブァハハハハハハハ!!」

「死ぬーーー!! 死んじまうーーーーー!!!」

「アハハハハハ!! 腹筋いってぇえええ!! ハハハハハハ!!」

 

 その後爆豪ちゃんの攻撃をするするかわして落ち着いてから、他のクラスメイトの話も耳にしていく。

 俺らほどとんでもない経験した生徒は流石にいなさそうだな。梅雨ちゃんががんばったようだ。パトロールとトレーニングをしながら密航者を捕まえたとか。

 ……トレーニング? え、俺らトレーニングとかしてない……会計士さんの手伝いしかしてない……。

 

「お茶子ちゃんと葉隠ちゃんはどうだったの? この一週間」

「とても……有意義だったよ……」

「新たな自分に……目覚めたね……」

 

 話しかけられた麗日ちゃんと葉隠ちゃんの方を見れば、なんか二人ともオーラみたいなのが上がってる。

 一週間で変化凄い。武術的な構えをしてますね。

 バトルヒーローの所に二人で行ったんだったか。近接戦闘が考えられる二人が武を覚えるのはいい事だ。

 今度無理しない範囲で組手付き合ってあげようかな。

 

「……ま、一番変化というか大変だったのは……お前ら5人だな!」

 

 そして上鳴が話題を広げ、教室にいる俺達5人……俺と緑谷、飯田、轟、峰田の方を向いた。

 俺達がヒーロー殺しと会敵したことはクラスの皆も知っている。グループラインで共有したからだ。

 

「そうそう、ヒーロー殺しな!」

「……心配しましたわ」

「命あって何よりだぜ、マジでさ」

「峰田はすげー活躍だったな! 駅前の映像見たぜ、マウントレディと一緒に脳無と戦ってたの」

「オイラめっちゃ頑張ったからな。あの後渋谷でファンになった女の子にサイン書いたぜ」

「マジかよ羨ましいな!!」

「映像と言えば……()()()だよな」

 

 その中でも峰田の活躍は()()の映像として残っている。

 だが、映像が残っているのは俺も同じだ。

 

 非正規で、ステインが最後の啖呵を切った時の動画がネットに流れていた。

 その最後、ステインが言葉を吐き切った後に俺がぶん殴るところまでしっかり残っていたのだ。

 

 恣意的に俺のシーンだけ切り捨てられたものもあったが、オリジナルの動画は俺までばっちり映っている。

 選手宣誓やその前の取材映像でも俺の顔は売れていたため、世間では正論パンチを繰り出したセンシティブヒーロー『イグジスト』として割とバズっているようだ。やったぜ。

 まぁ、動画にステインの言うことに同意するようなコメントも多かったのは業腹なんだけどさ。

 

「あの動画の最後の幾野の啖呵は見事なもんだったよなぁ!」

「あんがと。俺もあんとき咄嗟に口走ってたから、あんなこと喋ってたんだーって映像見て思い出したけどな」

「俺も動画見たけどさ、ヒーロー殺しの言うことも一理あってかっけーなとか思っちゃったけど……結局幾野が言った言葉が全てだよなー」

「か、上鳴くん……!」

「え? ……あっ、飯田……ワリ! ヒーロー殺しの事肯定してるわけじゃなくてさ……!」

「いや、いいさ。上鳴くんの言う通り……幾野くんがあの場で言ったことが全てだ。ヒーロー殺しは信念の男ではあったが、やり方を間違えた。警鐘を鳴らすためにヒーローを粛正するなど本末転倒だ」

 

 上鳴が少し口を滑らせたが、飯田はそこまで気にしていないというふうに微笑みを見せる。

 こいつも自分の気持ちを乗り越えられたからな。俺も今は全く心配していない。

 

「俺の家族のような被害者をこれ以上出さぬためにも!! 俺はこれからもヒーローへの道を歩み続ける!!」

「飯田くん……!」

「さあそろそろ始業だ!! 席につき給え!!」

「よっ、かっこいいぜ委員長!」

 

 そしてビシィ!! と効果音すらなりそうなほどの飯田のいつもの腕の動きが出て、教室はいつもの調子を取り戻した。

 そうだな、俺達はまだ歩み始めたばっかりだ。ヒーローへの道を。

 

 これからも、みんなで一緒に歩いていこうぜ。

 

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