【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!!   作:そとみち

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42 トラブルメーカーは俺ではなかった説

 

 

 期末試験の翌日、登校時間。

 俺は峰田と共にいつも通り雄英に向かって歩いていた。

 

「流石にこの時間はあっちーな」

「早朝はまだ涼しいんだけどなー」

 

 もう本格的な真夏に突入する寸前だ。そりゃ暑いってもんよ。

 俺もこの時期は髪を下ろしてると熱が籠るのでポニーテールにすることが多い。高温多湿に強い梅雨ちゃんが羨ましいぜ。

 頬から滴る汗を首にかけたタオルで拭いながら歩いていると、前に見知った後頭部を見つけた。

 左右で髪の色が分かれているパンクな髪色の男子生徒。あれは間違いない。

 

「轟だ。おはよーさん!」

「オッス。おはよ」

「ああ、幾野に峰田……お早う」

 

 轟が俺らの前に居たので、合流して挨拶をする。

 そしてシュバッと即座に轟の右側に移動。

 

「涼しい! 気がする!!」

「轟の左側にはいられねぇからな暑くて。冬は逆の位置に行くけどよ」

「別に個性は発動してねぇが」

 

 いいんだよ気分的な問題なんだから。

 コイツがいればクーラーも暖房も不要だ。一家に一台轟欲しいわ。

 

「そういや轟、明日の休みはまたお母さんの見舞いか?」

「ああ。最近は回復傾向になってきたって医者も言ってた」

「マメだねお前も。よくなってんのは何よりだけどよ」

 

 俺は共に歩きながら、ふと思い出したことを轟に聞く。

 こいつは体育祭以来、毎週末の休みにお母さんの見舞いに行っている様だ。

 心を病んでしまったと聞いていたが、それこそ家族とのふれあいで回復傾向にあるようだ。峰田の言う通り本当に何よりである。

 

 そして、回復もしているならそろそろいいかな? と重ねて俺は轟に話す。

 それは以前からいつかしたいと思っていたこと。

 

「なぁ、俺も轟のお母さんに挨拶してぇんだ。明日、俺もついてっていいか?」

「ああ……お前なら構わねぇ。でもいいのか、せっかくの試験明けの休みなのに」

「いいんだよ、夏休み入ったらキッカケ無くなっちまうし。峰田もどうだ?」

「あー……オイラはまたの機会にするわ。何話していいか思いつかねーよ」

「そか」

「峰田もいつ来ても構わねぇからな」

「サンキュ、まぁいつかな。轟、もしイクノがお母さん相手に暴走したらすぐ呼べな。駆けつけるから」

「ああ」

「流石の俺も轟のお母さんに失礼はしねぇよ!?」

 

 轟のお母さんに挨拶すること。

 美人であろうからぜひお目通りしたいというのが1割、あとは轟にいつもお世話になってるし、友達代表として挨拶しておきたいというのが9割だ。

 口下手なコイツの事だし、学校生活の事とかちゃんとお母さんに話せてないんじゃないかなと思っている。

 俺が学校でも頑張ってますよー、と第三者の視点で伝えてあげればお母さんも喜ぶんじゃないかな。

 

「んじゃ明日な。楽しみにしてる」

「ああ。いつも気ぃ遣ってもらって悪ぃ」

「ええんよ。俺がやりたくてやってんだからな」

「エロが絡まないとどこまでもマトモなんだよなコイツ」

 

 そうして俺たちは俺たちの教室に向かった。

 

 


 

 

 教室にお通夜のような表情をしてるやつが4人おる。

 

「みんな……土産話っ、ひぐっ、楽しみに……ううぅ、してるっ……がらっ……!!」

「俺たちの夏は終わった……」

「林間合宿……行きたかったぜ……!!」

「不甲斐ない……」

 

 芦戸ちゃん、上鳴、切島、障子の4人だ。

 この4人は先日の演習試験で成功条件を達成できなかったのだ。芦戸ちゃんすっごい泣いてる。

 

「まっ、まだわからないよ! どんでん返しがあるかもしれないよ……!」

「緑谷それ口にしたら無くなるパターンだ……」

「試験で赤点取ったら林間合宿行けずに補習地獄!! そして俺らは実技クリアならず!! これでまだわからんのなら貴様らの偏差値は猿以下だ!!」

 

 上鳴がキエー! と逆切れしてるが、しかしお前らちゃんとよく考えろって。

 シンプルに試験の合否が実技クリアだけで見られるわけねぇだろ。

 

「俺はまだ全然ワンチャンあると思うけどね。あの試験、クリア条件達成かどうかだけで見てると思ってんのか?」

「は!? 何言ってんだよ幾野、クリアしないと赤点に決まってんだろ!?」

「んなわけあるか。だとしたら片方が何もしてなくてももう片方が突破したら二人とも合格ってことになっちゃうじゃん。先生たちが見てたのはクリア云々だけじゃなくて、試験中に何が出来たか、って所だと思うぜ? ってかスナイプ先生が実際にそんなこと言ってたし。ね、葉隠ちゃん」

「あ、うん。私達のペアはセンちゃんがいたから難易度上がってたけど、クリアするしないだけで落とさないよーって言ってたね」

「マジ!? こりゃ若干の希望が湧いてきたか!?」

「いやでも逆に希望をもって叩き落されるの嫌だー!!」

 

 俺はスナイプ先生に聞いた話と、試験の性質から彼らに反論する。

 採点基準は明確には不明だが、クリアしたかどうかだけが採点基準のはずがない。絶対に他の採点項目がある。

 俺が4人の動きを映像で見ていた限りだが、特に障子は索敵やセメントス先生の攻撃への対処はしっかりできていたように見えた。出来ることをすべてこなした上で突破には至らなかったが、俺が採点担当だったら障子は落とさない。

 逆に麗日ちゃんや青山は最後に13号先生にお情けをかけられて突破していたがあれも結構際どいと思う。あと耳郎ちゃんとかも。

 

 そんな話をしていると予鈴が鳴り、速攻で席に着いた俺らの後に相澤先生が教室に入ってくる。

 

「おはよう。今回の期末テストだが……残念だが赤点が出た」

 

 あ、やっぱり赤点はいるんだな。

 さてはてどうなるか……せっかくの林間合宿だしみんなで行きたい所ではあるが……。

 

「したがって───林間合宿は全員行きます

 

「「「「どんでんがえしだぁ!!!」」」」

 

 知ってた。

 

「筆記の方はゼロ。実技のほうで……切島、上鳴、芦戸が赤点だ」

「む……俺は赤点回避できたんですか」

「障子は試験中の行動が評価された。とはいえ赤点ギリギリなのは忘れるな。他にもクリアしたとはいえギリギリのやつもいる……誰とは言わんが自覚して励め」

 

 俺の予想に大体一致した答えが相澤先生から出た。

 まぁそうよな。個性を使ったヒーローの資質を測るテストで試験全体の動きを見ないのはおかしい。

 障子もだが、赤点組も合宿に参加できてよかったな。相澤先生の続く説明を聞くとまぁ当然にして、強化合宿なんだから赤点組参加させない理由はない。

 合理的虚偽再び。

 

「しかし先生! 二度も虚偽を重ねられると信頼に揺らぎが生じるかと!!」

「わあ水差す飯田くん」

 

 そんな中、生真面目な委員長が挙手をしながら指摘した。

 やる気出すためには俺は悪くないとは思うけど確かに何回もやられるとまたかって油断が生まれるかもね。

 

「確かにな、それは省みるよ。ただ全部嘘ってわけじゃない……赤点組は別途に補習時間を設けてる」

 

 そして下される死刑宣告。

 まぁそりゃそうですよね。それは甘んじて受け入れるしかないな3人とも。

 俺も補習には顔出して煽ってやるから安心しろって。

 

 


 

 

 さて、話も落ち着いて昼休み。

 

「まぁ何はともあれ全員で行けてよかったね」

「な。やっぱ揃わねぇと寂しいしな」

「一週間の強化合宿か!」

「結構な大荷物になるね……」

 

 話題は当然林間合宿に。

 しおりを見れば川で泳いだりする時間もあるらしい。面白そうで何よりである。

 

「水着とか持ってねーや……みんな準備してる?」

「やめろ上鳴!? 今その話題を出すと……」

ばっちり準備してるから楽しみにしててね上鳴くん♥」

「ほら来た!!」

「幾野お前どんな水着準備してきてるんだよ!? 見るのが怖ぇよ!?」

 

 上鳴の呟きに俺がにっこりメス顔スマイルで返してやる。

 もちろん準備済みに決まってんだろうがオラァン!! お前らの性癖をさらにゆがめてやるよォォ!!

 

「あ、じゃあさ!! 明日休みだしテスト明けだしってことで! A組みんなで買い物行こうよ!!」

「おお良い!! 何気にそういうの初じゃね!?」

 

 そんな話題の中で、大天使ハガクレ=トールが素晴らしい発案をした。

 なるほど、買い物か。いいね、俺は準備万端だけどまだ整えてない奴らも多いし、それはかなり楽しそうだ。

 

 が、悪いが先約がある。

 

「あー、悪いけど俺と轟はパスね」

「え!? センちゃん来ないのー!?」

「ああ、先約。明日は轟と一緒に轟のお母さんの見舞いに行くんだ」

「イクノが今朝話してたヤツか」

 

 俺はワクワクとこちらを見てきた葉隠ちゃんにメンゴ、と手を作って謝る。

 確かにクラスの皆で買い物もめちゃくちゃ楽しそうではあるんだけど、俺は基本的に約束は先着で守りたい。

 買い物だっていつでも行けるし、俺自身は準備はできてるから買うものないしな。

 

「幾野……いいんだぞ、付き添いはいつでも。俺は見舞いに行くけど、お前はまた今度だって……」

「いーのいーの。俺がそっち優先したいだけだから。買い物こそまた今度だっていいわけだしな」

「そうか。……すまねぇな」

「なーんも謝られることない」

 

 ダチとの約束を優先することに、周りもそこまで追及はしてこなかった。

 悪いな、今回は轟を優先させてくれ。ご家族の絆って尊いもんだと思うし。

 あと俺が混ざると夏物ガチコーデ決めてくるからめっちゃ周囲の視線集めて申し訳ないし。

 

 俺ら二人の他、爆豪もかったりィという理由で遠慮。

 後で峰田にどんな感じだったか聞けばいいか。

 楽しんで来いよ、みんな。

 

 


 

 

 さて、クラスのみんなが木椰区ショッピングモールに集まっているころに、俺と轟はお母さんの入院する病院に来ていた。

 

「今夜うちで飯食ってかねぇか幾野。姉さんもぜひって言ってた」

「マジ? お邪魔しちゃおうかなそんじゃ。お姉さんにも挨拶できるの楽しみだわ」

 

 轟と合流し、総合病院の見舞いに来ていた。

 今日の服はマジで俺にしては落ち着いたコーデだ。髪も丁寧にまとめ、飾りも最低限、清潔感のあるユニセックスでまとめてある。

 無駄に着飾る意味ねぇもんな。お母さんに轟の彼女だと勘違いされても困るし。

 片手には小ぶりなアレジメントフラワーもちゃんと持ってきた。

 轟いわく、お母さんは花が好きらしい。

 スイートピーとヒペリカムで調えたが、気に入ってくれるかな。

 

 受付で面会手続きを交わして、病室の前に来た。

 轟が扉を開けて、俺も続く。

 

「母さん。今日は友達連れて来たよ」

「焦凍。……そちらの方?」

「初めまして。焦凍くんに学校でお世話になっています、幾野潜です」

 

 お辞儀をして丁寧にあいさつを交わす。

 初めて見る轟のお母さんは、やはり予想通りの超美人。

 クソッエンデヴァーが羨ましい!! こんな綺麗な人を泣かせやがってクソッ!! こんな情熱を秘めた肉体を……!

 後で自撮り送ってやるからな覚悟しとけよエンデヴァー!!!

 

「幾野()()()ね……初めまして、焦凍の母、(れい)です。焦凍がとってもお世話になってるみたいで……」

「あ、母さん。違うんだ」

「すみません、こんなんですけど男です」

 

「────────え?」

 

 その瞬間、冷さんが完全にフリーズ。

 違うんですよ!! 脳をさらに壊すために来ているわけじゃないんですよ!!!

 

「趣味でこんな外見してますけど俺はただのエロ男子なので安心してください! 焦凍くんとはただのダチなんで!!」

「幾野のやつ、学校で下ネタばっかり言うんだよ。下らなくて……でも、みんなのムードメーカーみたいな感じでさ。悪い奴じゃねぇんだ。だから心配しないで、そういうアレじゃないから」

「あ、そ、そうなのね? 見た目によらないのね……ふふ、でも焦凍のそんな慌てた顔、初めて見た」

「笑顔が素敵……!! 本当にお綺麗ですね冷さん……!!」

幾野。流石のお前でも母さんにコナかけたら覚悟しろよ」

「それはないですわよ!? あっでもぜひ仲良くしてくれたら嬉しいです! 焦凍くんの学校での事いっぱい話すんで!!」

「くすっ、ふふ……ええ、聞かせて? 焦凍が、普段どんな風なのか……」

 

 轟の珍しいツッコミも入って掴みは成功かな。本当に、花のようにお淑やかに笑う人だ。

 優しい人だったんだろうな。早く良くなってくれるといいな。

 病室の花瓶入れにお見舞いの花を飾ると、冷さんはとても喜んでくれた。

 うん、よかった。次はまた違う花持ってきてあげよう。

 

 その後、3人でいっぱい学校の事などを話した。

 轟も、学校で見たことがない穏やかな笑顔を見せていた。

 本当にお母さんが好きなんだな、こいつは。

 

 


 

 

 1時間ほどの見舞いを終えて、病院を後にした俺達。

 この後は正直時間が空いている。夕飯を誘ってもらえたのでお邪魔させてもらうつもりだが、それだってあと数時間はある。

 

「ちっと時間空いちまったな」

「せっかくだしクラスのみんなと合流すっか? まだ買い物してるだろ多分」

 

 そう考えた俺は、ポケットからスマホを取り出した。見るのは2時間ぶりか。

 病院での見舞いなので、当然にしてサイレントマナーモードにしておいたのだ。面会の最中に着信なんて入れちゃ失礼だしな。

 そして電源ボタンを押して画面を起動させると、そこには普段では考えられない量の着信が表示されていた。

 

「……あん? やべぇ量の通知来てる。なんだ?」

「ん? ……俺の方も来てるな。クラスから……?」

 

 慌ててスマホを操作して通知の内容を見る。

 おおよそはクラスのグループラインだ。峰田からもいくつか来ている。なんだ、買い物で何かあったか?

 そしてラインを開き、峰田の送ってきたメッセージを読むと。

 

「……!? 緑谷がヴィランと遭遇しただと!?」

「何やってんだアイツ……!!」

 

 慌てて峰田に連絡を取り話を聞くと、ショッピングモールで買い物している中で緑谷が一人でいたところでUSJで見た手マンこと死柄木弔と遭遇したらしい。

 襲撃が目的ではなく、緑谷とは会話しただけでショッピングモールを去って行って被害はなかったらしいが、当然にして事件になりショッピングモールは一時的に閉鎖。

 ヒーローと警察が捜査に当たるも結局死柄木は見つからず、緑谷は警察署に連れられて事情聴取を受けていると。

 マジで何やってんだよアイツ。いや被害はなかったらしいから無茶しなかったのは偉いけど。緑谷に責任は何も無いけど。

 真のトラブルメーカーはもしかして緑谷か? 思えば保須市の件だってアイツだけたまたま巻き込まれてるからな。

 あいつトラブルを引き寄せ過ぎだろ。主人公かよ。

 

 そして事件の顛末を聞いて、俺はある人の心配に思い至った。

 それは緑谷のお母さんだ。きっとあの人の事だ、死ぬほど我が子を心配していることだろう。

 

「悪い、轟。俺……引子さんとこ行ってくるわ。緑谷の事心配してるだろうから……」

「ん、緑谷の母さんだっけ。……わかった。姉さんには事情伝えとく」

「すまん、折角誘ってもらったのに」

「構わねぇ。……お前はいつも優しいな」

「イケメンに言われるとテレちゃうぜ」

 

 轟にも了解を取って、俺は緑谷の自宅へと向かうことにした。

 もしかしたらもう迎えに行っているかもしれないが、緑谷も事情聴取とかもあるだろう。今ならまだいるかもしれない。

 あの人は旦那さんもいなくて日本に一人だ。心細いだろう。せめて学校の友人で顔も知られてる俺が心配ないように声をかけてやりたい。

 俺が心労を聞いてやれば気持ちも楽になれるかもしれないしな。

 

 


 

 

 集合住宅の緑谷ん家のチャイムを鳴らすと、引子さんがすごく焦燥した顔で出迎えてくれた。

 

「幾野くん!? どうして……」

「緑谷の件を聞きまして。心配で立ち寄らせてもらったんです。引子さんも既に警察から連絡入ってますよね?」

「うん、事情聴取が終わるころに警察の方が迎えに来てくれることになってるの……またあの子、事件に巻き込まれて……!」

「泣かないでください……大丈夫、怪我はしてないって聞いてます。俺も付き添わせてください」

「いつもごめんねぇ……!!」

 

 ふくよかな引子さんの肩をそっと抱いて、泣き止むように落ち着かれるまで支えた。

 この人も本当によく泣く人だ。緑谷の涙の量はお母さん譲りだな。

 それだけ心配かけてるんだぞ緑谷、マジで頑張れお前。

 

 部屋に通されて、お茶を出してくれるのを頂き、少し落ち着かれた引子さんと話をする。

 何度か遊びに来ているし、例の心操事件で電話などもしており、俺の事はちゃんと緑谷のただの友人としてわかってもらえている。

 緑谷のためにも、少しでも引子さんの心労をいたわってやりたいところだ。

 

「ねぇ幾野くん……雄英の生徒ってみんなこうなの? 事件に巻き込まれて、怪我をして、危ない思いをして……」

「……緑谷は今の時点でちょっと巻き込まれ過ぎですが……でも、いずれはみんな辿る道だと思います。俺の従兄に2年上の先輩がいるんで聞いた話なんすけど、仮免を取ってインターンが始まったら、プロヒーローの元で現場に臨みますから。ヒーローを目指す以上、遅かれ早かれかと……」

「うぅ……心臓がもたないよ……」

「お気持ちは察します。でも……立派なヒーローになることは緑谷の望みでもあります。仮免を取れば国が力を認めたことになる。緑谷も、俺も峰田も……みんな、それを覚悟して雄英に来てますから」

 

 引子さんの息子を心配する言葉に、しかし嘘はつけなかった。

 今はまだ仮免を持たない立場で個性の使用も戦闘も許されていないが、仮免を取得してからはインターンでプロヒーロー事務所の元で実際の事件に立ち合い、ヒーロー活動をすることになる。

 もちろんそれに伴う実力を身に着けてからという話にはなるが、いずれ俺たちはみんな危険に携わることになるんだ。

 引子さんの心配も御尤もだし、当然のものではあるが……安全な道でヒーローになることはできない。

 

「でも、緑谷はここ最近本当に強くなってます。俺は彼がオールマイトをも超える立派なヒーローになれると思っています。引子さんの心配も本当に分かりますが……応援も、してやってください」

「うん……ごめんなさいね、息子の友人に気を遣ってもらっちゃって。息子の応援もしたいんだけどね、どうしてもね……」

「わかります。緑谷はどうにも、見てて心配になる感じがありますからね。でも、いいやつなんでダチもいっぱいいますから。大丈夫ですよ、もしあいつがピンチになったら次こそ俺や友達たちが助けます」

「本当に幾野くんには頭が上がらないわ……これからも出久の事よろしく頼むわね」

「もちろんです。親友ですよ、あいつは」

 

 少しずつ引子さんも落ち着いてきて、微笑みも見せるようになってきた。

 よかった。俺のさっきの言葉で更に思い悩ませたら申し訳ないとも思っていたんだ。信頼を稼いでおいてよかった。

 これならまだ俺が緑谷のベッド下に忍ばせてたグラビア雑誌は見つかってないかな。セーフセーフ。

 

「でも、幾野くんのほうも大丈夫なのかしら?」

「ん? 俺ですか?」

「ええ、その……以前の保須市でも、出久と一緒にいたのでしょう? 例の映像も見たわ、ヒーロー殺しの……親御さんはご心配なさっていないかしら?」

「あー…………」

 

 そうして引子さんから、話の流れで俺の家族を心配する言葉が漏れてしまった。

 うん、ちょっと話題ミスったかな。でもここで家族関係の話題を出さないわけにもいかなかったし、引子さんの心配も御尤もだ。

 はぐらかしてしまってもいいのだが、しかし俺は親友のお母さんに嘘は吐きたくない。

 俺の事を知ってもらうためにも、聞いてもらおう。

 

「ちょっと俺んち事情があって。心配はされてないというか……」

「え、っと? ごめんなさい、聞かない方がよかったかしら……?」

「いえ、そういうわけでも。あまり面白い話ではないですけど……俺の事、聞いてもらっていいです?」

「ええ、勿論。聞かせてくれるなら。息子の友達だもの」

 

 話を聞いてくれると言って優しい笑顔を見せる引子さんに、俺は不思議と安心というか、安らぎを覚えた。

 ……俺、結構やっぱ気にしてんのかもな。

 過去自体は完全に吹っ切れてるんだけど、前に緑谷たちに聞いてもらった時も、俺の過去を知ってもらえたことにほっとする気持ちもあった。

 そういうもんなのかもな。轟も飯田もきっとそうなのだろう。

 辛い過去は、余り抱え込むもんじゃない。知ってくれてる人がいるってだけで、活力になるんだ。

 

 

「じゃあ、聞いてください。俺の話を」

 

 

 俺は引子さんに、俺の過去を語りだした。

 

 

 






次回 43話

「もう終わってしまった話」





















(シリアス終了)

クラネスハインド様よりファンアートを頂いたので紹介させていただきます!

①色んなフリフリ衣装を着用するセンちゃん

【挿絵表示】

センちゃんのフリフリコーデの一覧を描いてもらいました。
この辺りの服はセンちゃん全部持ってることにしよう(決意)した(拙速)
オールマイトコスもオールマイトに負けるかとコスプレ用に購入しましたね。
個人的にはゴスロリが熱い。これから毎日峰田の脳を焼こうぜ。

②ビックリマンシール風センちゃん

【挿絵表示】

ビックリマンシールっぽいセンちゃんを描いてもらいました。
白と赤と黄色だから色のバランスがいい……(自画自賛)
エロいも可愛いもカッコイイもこなせるセンちゃんをこれからも描いていきたい所です。

ファンアート心より感謝申し上げます。有難うございました!
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