【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!!   作:そとみち

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残酷な表現があります。






43 もう終わってしまった話

 

 

【since 保須総合病院】

 

 

 んー……どこから話すかな。

 とりあえず、俺が両親を殺しちまってるって所からか?

 

 あ、いや悪い。めっちゃ言葉選び間違えた。そんな顔しないでくれ。

 でも、全部が全部間違ってるわけじゃないんだよ。

 とりあえず話聞いてくれ。そうだな、まずは俺が個性に目覚めた4歳の頃の話か。

 

 まぁ、知っての通り俺は潜る個性に目覚めたわけだ。

 流石に当時の事は覚えてないんだけど、まぁ何かに潜ったんだろうな。その時は全然、大したことない個性だった。今みたいになんでもいくらでもって感じじゃないしな。ずっと発動もしてなかったし。

 でもほら、そんくらいのガキのころって自分の新しい力で喜ぶじゃん? ……あ、ごめんな。緑谷は目覚めたの最近だっけ。轟も……うん、すごくゴメン。

 

 とりあえずふつーに、まぁガキらしく色々潜ったりしてたわけよ、家の中で。

 机の下からひょっこり出てきて母さんを驚かせたり、父さんが帰ってきたら床からわって出て驚かせたりさ。

 可愛いもんだろ? 多分そんな感じだったんだと思う。もう思い出せないけど。

 

 で、事件が起きたのは俺が6歳の頃だ。

 いつもみたいに俺が家で潜りながら遊んでたわけよ。母さん……あ、俺に似て赤い髪が綺麗で美人な人だったんだけどさ。

 母さんのおなかに潜って、通り抜けてたんだ。なんでもない、ただの遊びさ。背中からお腹に、わーってな。ガキだもん。

 

 で、そん時……何かが起きたんだよな。よく覚えてないんだけど、多分なんか、大きな音がしたんだと思う。家の中の何かが落ちたとか、近くで事故とかでもあったのか。ドンって音だけは覚えてる。

 その音で俺、びっくりして個性が解除されちゃったんだよ。緑谷も前に訓練であったろ? フルカウルが解除されたの。衝撃で個性って切れちゃうからさ。

 で、俺はその時、母さんのおなかに潜り込んでた。その状態で個性が解けちまったんだ。

 

 ……緑谷は見たよな、USJで。俺が個性を解くとどうなるか。

 その瞬間に、そこにあるものを俺の体が上書きするんだ。

 そう、母さんの体を上書きしちまったんだよ。お腹から背中まで、一瞬で。

 

 ……もう、覚えてない。いや、思い出したくなくて忘れたんだと思うけど。

 即死だった。

 よくある話だよな。個性事故。年に2~3回ニュースになるだろ? 個性を制御できてない子どもが親御さんとかをケガさせたりする話。

 それだったんだよな。俺も潜ったままで個性を解除するとどうなるかなんてその時に初めて知ったよ。

 

 まぁ、地獄だったな。

 父さんの悲鳴と……血の匂いと、一面の赤はぼんやり覚えてる。

 俺は母さんを殺してるんだよ。

 罪とかにはガキなんでならなかったけど……あの頃の事は事実として経緯は覚えてるけど、もう思い出せない。

 

 ……そんな顔すんなって。

 まだ話終わってないんだからさ。

 

 で、その後……お母さんの葬儀を終えた後、さ。

 父さんがおかしくなっちまったんだ。

 いや、すぐに狂ったってわけじゃないんだよ。気丈な人でさ、なんとか正気は保って、俺と二人でその後は暮らしてたんだ。

 でも俺も自分が悪かったことは子供ながらにわかっててさ。……悪くない? ん、そう言ってくれてありがとな緑谷。でも、やったことはなかった事にはできないからさ。

 それ以来、俺は個性を『解除』することを恐れるようになって、ずっと個性を張り続けてた。潜りはしなかったけど。

 今にして思えばそもそも個性を使用するなよって話なんだけどな。まぁ当時ガキだったしバカだったんだよ。だからそれ以来ずっと個性は張り続けてるってわけ。トラウマってやつ。

 

 ……どこまで話したっけ。ああ、父さんの話だ。

 父さんもさ、事件の後……すごく口数が少なくなっちまったんだ。

 俺の事は育ててくれたし、怒鳴ったり虐待とかって話じゃないんだけど……やっぱり、俺が母さんを殺したってことを飲み込み切れなかったんだろうな、きっと。

 俺もめちゃくちゃ沈んでてさ……小学校時代、俺マジで無口なガキだったんだぜ? 友達も一人もいなくてよ。信じられる?

 だからいつも家の雰囲気は暗かった。父さんも家で俺とあまり顔を合わせたくないのか、残業が増えて……休みの日にもほとんど会話しないような……そんな6年間だったんだよ。

 俺も自分の事しか考えてなくてずっと塞ぎ込んでたからな、余り父さんの事を見れなかったんだ。

 思えば、少しずつ父さんやつれてたんだよな。……ちゃんとあの時、俺が立ち直って父さんとしっかり話をしてればって思うことは、無くはないかな。

 

 で、俺が6年生になって、もうすぐ卒業って時だ。

 父さんが死んだ。

 急性脳溢血だったって。職場で倒れてさ、出血点が悪くてすぐに脳死になっちゃったんだって聞いた。

 間違いなく過労、精神的な疲労だろうな……俺のせいさ。俺が母さんを殺して、父さんに心労をかけつづけちまったのが原因。

 ……何度も悪いな、緑谷。でもそこは間違いないだろ、事件がなければ普通に父さん生きてたと思うし。俺のせいだよ。そこは俺の中で曲げたくないんだ。

 

 まぁ、もう、ショックだったよな。

 父さんが死んだのも、遅まきながら俺のせいだって気付いてさ。マジで俺あの頃、何考えてたかわからなかった。

 辛くてさ。一応その時に父さんの兄さん……伯父さんに当たる人が俺の後見人になってくれて、中学からはおじさんおばさんのいる千葉に引っ越して、そこで暮らすことになったんだけど。

 もう伯父さんにも伯母さんにも、そのお子さんの従兄とも一言もしゃべれなくてさ。

 めっちゃ気を遣わせちまったんだよね。マジであの頃は生きてるだけで申し訳なかった。迷惑しかかけられなかったよ。

 俺自身ももう生きる気力とかそういうのなかったもんね。ただ生きてただけ。自殺する寸前の人の気持ちって俺少しわかる。

 

 で、中学に入学して初日かな。

 あの頃メンタルやられてたから何がきっかけだったか分からないんだけど、自殺しようって思ったんだよな、確か。

 別にイジメとかはなかったぜ? 小学校じゃ女みたいな外見で何か言われたりしたことはあったけど、そういうんじゃなくて、ホント、きっかけとかはないんだ。

 ただ、これ以上生きてても周りに迷惑しかかけないんだーって、それしか考えられなかったんだよな。ちょっと前の轟や飯田みたいに、視野狭窄だよ、それも特大の。

 

 んでまぁ自殺って言ったらやっぱ飛び降りだよな。放課後に中学校の屋上に行ってさ。飛び降りて死のうとした。

 個性を使ってたらもしかすると潜っちまうかもしれないから、何とか震えながら個性を解除して、さあ飛び降りるぞってなった時だよ。

 

 

 屋上で、峰田が声かけてくれてさ。

 

 

 そう、そん時が峰田と初めて会った時だな。

 あん時お前、俺の事女子と勘違いして追いかけてたんだってな? 超美人がなんか思い詰めてるって思って追ってきたってよ。マジでバカだよなコイツ、入学初日だぞ?

 フェンスに手をかけたところで峰田が声かけてくれて、んで必死に引き留めてくれてさ。

 で、俺もだいぶ暴れたわけよ。あん時が数年ぶりの強い感情だったな。

 泣き叫んでさ。峰田のこと蹴っ飛ばして、噛みついて……息もできなくて。

 頭の中も腹の中もぐちゃぐちゃになっちゃって。過去の事なんかも全部峰田にぶちまけちゃって……もう、子供みたいにさ。いや子供だったんだけど。

 でも峰田も必死に俺をこの小さい体で止めてくれてよ……そんで、言ってくれたんだよな。

 

 ……え? 何? あの時の事言われるの恥ずかしいって?

 

 んなこと言うなって、あん時お前が言ってくれた言葉はまだ一字一句覚えてるぜ?

 やだ? ん、じゃあしょうがないか。俺とお前の秘密にしとくか。

 

 まぁ、とにかく俺は峰田の一言で救われたんだよ。

 隣にいてくれるって言ってくれてさ……って、うるせぇな、いいじゃんこれくらいは言っても。

 もう、なんていうかね……俺6年以上もずっと一人だったからさ。いや、父さんと距離詰めなかった俺が悪いんだけど、ずっと孤独だったときに、峰田が初めて俺に向き合ってくれたんだよな。

 ヒーローに見えたよ、その時の峰田が。

 テレビの画面の向こうのヒーローは何で俺を助けてくれないんだー、なんてスネてる時にさ。こいつが、俺の手を取ってくれた。

 俺はあの瞬間を一生忘れることないんだろうな。俺の原点(オリジン)だよ。

 

 

 ……で、まぁ俺はその日から変わった。

 母さんの事も父さんの事も殺しちまった俺が、何ができるか。

 俺、二人に胸を張れるような、立派なヒーローになりたいって思ったんだ。

 あの時の峰田みたいな……俺みたいに泣いてしまってる誰かがいたら助けられるようなヒーローにさ。

 もう恥も何もなかったよね。失うものもないからさ。もうとにかくそれになる! って俺は決意してさ。

 

 その日学校から家に帰ってすぐに伯父さん伯母さん、ミリオ兄さん……あ、従兄な。うん、みんなに俺はヒーローになりたいって伝えてさ。

 そしたらみんなすごく泣いて喜んでくれて……俺が変わったのが嬉しかったんだろうな。多分そん時が俺初めておじさん家族と会話した瞬間だわ。

 んで次の日から猛特訓だよ。ミリオ兄さんも雄英に行くために訓練してたけど、もうそれに付き合ってさ。やれることはとにかく全部やってみた。

 ん? ああ、そうだよ轟、体育祭でお前に言ったことはこの時のことな。もう目標がはっきりと出来たから、それに向かってがむしゃらだった。

 

 峰田と、ミリオ兄さんの親友も呼んで朝は4人でボランティア兼体力づくり、勉強もすっげー頑張って……あと性格も暗いままじゃいられないから変えるようにしてさ。

 そん時かな、峰田の真似っつーか……まぁ、とにかく明るくなれるように努力したんだ。幸いにして俺の小学校時代を知ってるやつはいなかったし、クラスにも受け入れられた。

 あん? あん時のイクノは変わりすぎ? 知るかよ、お前を見て真似ただけだよ。

 性癖を壊すことを趣味にし始めた? お前がいいリアクションするのが悪い。俺は悪くない。うるせぇ黙れ自撮り送るぞ。

 ……まぁ今にして思えば多分この俺が素だったんだろうな。俺今だって無理してる感じ全然ないもん。暗かった時代がやっぱ心が駄目だったんだよ。

 

 あー……まぁ、こんな感じかな?

 それで中学校時代に死ぬほど鍛えて、個性も鍛えて、峰田と一緒に強くなって、雄英に入学した。

 俺のせいで命を失った父さんと母さんに、ゴメンって言うんじゃなくて、頑張ったよって胸を張れるような、恥ずかしくない俺になるためにさ。

 これからも頑張っていくぜ、って話。

 

 だから、これは終わっちまった話なんだよ。

 

 悲しい事件があって、でも峰田のおかげで立ち直れて、俺は今胸を張ってここにいる。

 成績も出せて、ヒーローとして活躍できてる。

 んで、お前らみたいな最高のダチも出来てる。

 

 だから、これからもよろしくな、ってこと。

 これで俺の話はおしまい。

 

 

 


 

 

 俺は溺死しそうになっていた。

 

「ぞんな゛っ…………ぞんな゛づらい゛ごどがあ゛っだのね゛………!!」

「引子さん泣きすぎっす」

 

 部屋中を埋め尽くすほどの涙が引子さんから溢れてアップアップの状態である。

 すげぇな。個性か? でも引子さんの個性は何かを引っ張る力だって緑谷言ってたんだけどな。

 もしかして緑谷もこれできるのか? お前の個性これなんじゃねぇか?

 

 先程、引子さんに俺の過去の話をかいつまんで伝えたら、余りにも号泣してしまったのだ。

 優しい人だ、本当に。話の途中でも、俺の事を否定しないでいてくれた。

 ようやく少し涙が落ち着いてきて水が引いてきたので、改めて話をする。

 

「……俺がヒーローを目指す理由は、それなんです。大切な友人が、俺を救ってくれた。だから、そいつみたいに俺も誰かを助けたいんです」

「うんっ……! 立派だよ、幾野くん……!」

「勿論、その中には緑谷だって、引子さんだって含まれてます。だから、困ったことがあったら言ってください」

「うん……! 幾野くんも、出来ることがあればいつでも私に言ってね……!!」

「有難うございます。……変な話しちまってすみませんでした」

「いいのよ、そんな! 君が話してくれて嬉しかったわ……これからも出久をよろしくね!」

「はい、勿論です!」

 

 涙を拭いながらも笑顔を見せてくれた引子さんに、俺も笑顔で答える。

 心労をかけるまいとしてきたのに心配させてしまったな。そこはちょっと反省だ。

 でも、聞いてくれてやっぱり俺も救われる気持ちもあった。

 峰田に出会えてから俺がやってきたことは欠片も恥ずかしくないけれど、それはそれとして知ってもらえているというのはお互いに救いがある事なのだろう。

 俺も今後はもし悩みがある人がいればそれを聞いてやりたい。

 

 と、話もひと段落したところでチャイムが鳴らされて、警察が迎えに来た。

 俺は引子さんと共に事情を話して同席させてもらい、緑谷を迎えに行く。

 

「出久! 本当にこの子は心配かけて……!」

「ゴメンね母さん。大丈夫だよ何ともないから、泣かないで……幾野くんもごめん、心配かけて母さんまで……」

「なーんも謝ることない。……むしろ引子さんにちょっと俺の話聞いてもらっちゃってさ、俺も心配かけちゃってスマンなほう」

「え? ……その、過去の?」

「ああ。……ホントにいいお母さん持ってんな緑谷。これ以上引子さんに心配かけんなよ」

「出久……幾野くんと仲良くね。こんなにいい子中々いないんだから」

「うん! ホントにありがとう幾野くん!」

 

 警察署前で、また涙を溢れさせてしまった引子さんの背中を撫でてやりつつ、無事な様子の緑谷を見て安堵した。

 全くマジで心配かけまくり過ぎだよお前。

 いや今回はちょっと俺も人の事言えなさすぎなんだけど。もしかしたら俺潜在的にマザコンの可能性ある。

 引子さん、冷さん……あとおっぱい大きいヒーローが好きで……リカバリーガールの優しさも好きで……あれ? 俺これマジでマザコンか???

 新たな性癖に目覚めてしまったか? やべぇって。

 忘れろ……忘れろ……級友の母親は恋愛対象ではない……!!

 

 その後警察の車で緑谷たちが家まで運ばれた後、俺も一人暮らしの家までついでに送ってもらった。

 警察の人になぜか俺のことめっちゃ知られてて話が弾んだ。まぁステインの動画で有名だしな。

 

 

 そして翌週の最終登校日に、合宿は実施するが行き先は当日まで明かさない運びになったことが相澤先生の口から語られた。

 当然の対処か。実施してくれるだけ有難いな。

 

 さて、こっからは夏休みに入って時間が出来る。

 いろいろやっていきますか。

 





センちゃんに悲しい過去……
ですが作中で表現している通り、これは終わってしまった話です。
彼の中では綺麗に振り切っている話で、今後この話を何度も蒸し返して話が暗くなることはありません。
センちゃんが強く前を向いて今後もヒーローアカデミアで過ごしていくための、一つの出来事(オリジン)があったということで。

勿論、本作の雰囲気もギャグ多めのいつものノリは変わりません。
今後もご愛顧いただけますと幸いです。
林間合宿前に閑話とプールとエキスポいれます。
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